T.T.S.

沖 鴉者

FileNo.0 The Christmas Miraculous offstage Chapter 3-9




 紙園エリは鋭い眼光を閉ざし、指で眉間を揉みながら報告を終える。


「……とにかく、玄山は全てを知って時間跳躍した可能性が高く、何をするか分かりません。被害を最小限に抑えられる様、不審な行動に注意して下さい。……あぁ全く、ウンザリです、貴方にこんな事を話すなんて……絵美さんをお願いします。ぞんざいな貴方とは違って、彼女は繊細です。いざとなったら……宜しくお願いします」


 全てが消え、渋谷の街が帰って来た。
 まるで白昼夢から覚めた様な感覚は嘘ではなく、夢を見る時の脳の動きを参考に組まれたプログラムは、エリの長い長い解説を刹那の間に収めていた。
 大して溜まってもいない灰を落とし、余りに複雑な事件の背景を一瞬で飲み込んで、源は煙草を咥え、模索する。
 今、この場にいる全ての人間に強烈な事情と葛藤が纏わり付いていた。
 玄山の言動を反芻し、大隈の言葉を思い出し、相棒バディの焦燥の意味を酌む。
 深く息を吸い込むと、ピンと張った綺麗な空気に濃密に絡みつく煙草と都市の匂いが、鼻腔の奥をツンと突いた。
 前頭部が引き締められる様な感覚に寄せられ、源の中にアイディアが練られて行く。
 それは、誰の為でもない、この場で最も納得させたい人間の為の案。


 大きく息を一つ吐く。
 夜空に昇る火気の、その余りに剥き出しの存在感に、源は嫌悪感を覚えた。


『……面倒臭ぇなぁ……』


 追って吐き出す煙草の主流煙で口元を汚し、今一度冬の大気を大きく吸い込む。
 空気の張りが肺を突き刺し、縮こまる。
 主演を張る覚悟は決まった。

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