T.T.S.
FileNo.1 Welcome to T.T.S. Chapter1-2
2
2166年。
超光速運動素粒子タキオンの発見と生成、及び質量を司るヒッグス粒子との組み換え実験に成功した人類は、カー解のブラックホールに於けるリング状の重力特異点の物質通過に成功。
夢にまで見たタイムマシンシステムを開発した。
だが、これはパンドラの匣にしかならなかった。
【この世界で現在を生きる皆様、初めまして。我々はTLJ-4300SHの設計情報の奪取、及びその発明者を拘束した世界民意代行組織です。
“正しく世界をぶっ壊す”を理念に、日夜活動しております。
我々を如何なる組織と定義するかは、皆様の解釈にお任せします。
ですが、どうか私見に固執せず、議論を重ねて下さい。
結果、“公共の敵”の汚名をラべリングされるのならば、我々はそれを甘んじて受け入れましょう。
何故なら、今日程個々の主張が力を持つ時代は過去になく、また、我々が観測している限りに於いて、未来にもないからです。
ディストピアが遣って来る訳ではありません。
ただ、我々はこれまでにない規模の存亡の危機に直面します。
幾ら綺麗事を並び立てようとも、種の保存と言う大義の前に人権はありません。
よって、皆様には現在ある貴重な自由を謳歌して頂きたいのです。
我々が何を成そうとしているかをしっかりと見て頂きたいのです。
それが、我々の目的であり、目標であり、手法であります】
ある日突然、このメッセージと共に名もない組織がタイムマシンの独占を表明したのだ。
メディアはこの組織を、タイムマシンのもたらす薔薇色の世界の皮肉として“薔薇乃棘”と名付けた。
この声明の直後より、薔薇乃棘は一般人を対象にした時間旅行の提供と声明を一つ発表する。末尾に、こんな文言を残して。
【我々を阻むと言うならば、T.T.S.諸君の挑戦は大いに歓迎する。
coノH】
それは、世に公表されずに組織された、ICPO内にある特務機関への挑戦状だった。
輝かしき人類の栄光を取り戻す任を負った彼等も、こう堂々と指名されてしまっては、背に腹は変えられない。
【薔薇乃棘と呼ばれる組織とその声明に対しては、捜査の秘匿性を考慮する我々が答えられる事は少ない。
だが、我々は薔薇乃棘の犯行に対し、厳正な姿勢で捜査に当たる所存である。
彼等の行っている事は、人類のみならずこの世界そのものを危機に曝している事を、皆様にはご了承頂きたい。】
SF評論家や物理学者からの参考見解も付加されたこの声明と共に、初めてT.T.S.は世界にその身を曝した。
彼等の告げる“この世界そのものを危機に曝している事”はシンプルだった。
それは、タイムマシンの私的利用によって起こり得る数々の弊害。
所謂“親殺しのパラドックス”等の一般的な矛盾事項だ。
彼等はそれらを一括りに、“現在破綻”と表現した。
重ねてT.T.S.は、ICPOに寄せられた国際犯罪の内、薔薇乃棘によると思われる事件の一部をメディアに公開した。
中でも、世間の注目を集めた事案が三つ。
一つは、主要国首脳会議に於ける日本国総理大臣の暗殺事件。
もう一つが、世界で五台造られたタイムマシンの内、四台が爆破された事件だ。
両事案は犯行声明を挟んだ僅かな時間差で発生しており、予てから薔薇乃棘による犯行ではないかとの考察は多かった。
だがそれ故に、公式機関の認定には大きな意味があった。
何故ならば、一連の事件は証明してしまったのだ。
薔薇乃棘が、如何に計画性に長けた犯罪組織であるかを。
T.T.S.が一連の事件を秘匿していた理由は、直ぐに知れた。
意図せず人質となっていた民衆が混乱し、世界中でシュプレヒコールが渦を巻いたからだ。
しかしそれでも、残る一つの事案に比べれば、まだ影響は少なかったかも知れない。
何故ならそれは、T.T.S.の民衆に対する誠意であると共に、T.T.S.への信頼を著しく脅かすものでもあり、皮肉な事に、新たな脅威を生んでしまう切欠にもなってしまったからだ。
世間が最も注目した薔薇乃棘の爪痕。
即ち、“TLJ-4300SHの設計情報の奪還、及び発明者拘束阻止の失敗”だった。
この言葉の意味する所を正確に考える者は、民衆の中にはいなかった。
彼等はただ、こう思ったのだ。
『タイムマシンは本当に出来た!時間旅行が可能になったんだ!』
読者諸賢はもうお気付きであろう。
新たな脅威の正体とは、先の薔薇乃棘の提案に乗った一般人の事である。
そうして、T.T.S.は薔薇乃棘と愚かな民衆の捜査と言う二つの案件を抱える事になった。
だからこそ、3年たった今も尚、世界は薔薇乃棘とT.T.S.のシーソーゲームに踊らされている。
2166年。
超光速運動素粒子タキオンの発見と生成、及び質量を司るヒッグス粒子との組み換え実験に成功した人類は、カー解のブラックホールに於けるリング状の重力特異点の物質通過に成功。
夢にまで見たタイムマシンシステムを開発した。
だが、これはパンドラの匣にしかならなかった。
【この世界で現在を生きる皆様、初めまして。我々はTLJ-4300SHの設計情報の奪取、及びその発明者を拘束した世界民意代行組織です。
“正しく世界をぶっ壊す”を理念に、日夜活動しております。
我々を如何なる組織と定義するかは、皆様の解釈にお任せします。
ですが、どうか私見に固執せず、議論を重ねて下さい。
結果、“公共の敵”の汚名をラべリングされるのならば、我々はそれを甘んじて受け入れましょう。
何故なら、今日程個々の主張が力を持つ時代は過去になく、また、我々が観測している限りに於いて、未来にもないからです。
ディストピアが遣って来る訳ではありません。
ただ、我々はこれまでにない規模の存亡の危機に直面します。
幾ら綺麗事を並び立てようとも、種の保存と言う大義の前に人権はありません。
よって、皆様には現在ある貴重な自由を謳歌して頂きたいのです。
我々が何を成そうとしているかをしっかりと見て頂きたいのです。
それが、我々の目的であり、目標であり、手法であります】
ある日突然、このメッセージと共に名もない組織がタイムマシンの独占を表明したのだ。
メディアはこの組織を、タイムマシンのもたらす薔薇色の世界の皮肉として“薔薇乃棘”と名付けた。
この声明の直後より、薔薇乃棘は一般人を対象にした時間旅行の提供と声明を一つ発表する。末尾に、こんな文言を残して。
【我々を阻むと言うならば、T.T.S.諸君の挑戦は大いに歓迎する。
coノH】
それは、世に公表されずに組織された、ICPO内にある特務機関への挑戦状だった。
輝かしき人類の栄光を取り戻す任を負った彼等も、こう堂々と指名されてしまっては、背に腹は変えられない。
【薔薇乃棘と呼ばれる組織とその声明に対しては、捜査の秘匿性を考慮する我々が答えられる事は少ない。
だが、我々は薔薇乃棘の犯行に対し、厳正な姿勢で捜査に当たる所存である。
彼等の行っている事は、人類のみならずこの世界そのものを危機に曝している事を、皆様にはご了承頂きたい。】
SF評論家や物理学者からの参考見解も付加されたこの声明と共に、初めてT.T.S.は世界にその身を曝した。
彼等の告げる“この世界そのものを危機に曝している事”はシンプルだった。
それは、タイムマシンの私的利用によって起こり得る数々の弊害。
所謂“親殺しのパラドックス”等の一般的な矛盾事項だ。
彼等はそれらを一括りに、“現在破綻”と表現した。
重ねてT.T.S.は、ICPOに寄せられた国際犯罪の内、薔薇乃棘によると思われる事件の一部をメディアに公開した。
中でも、世間の注目を集めた事案が三つ。
一つは、主要国首脳会議に於ける日本国総理大臣の暗殺事件。
もう一つが、世界で五台造られたタイムマシンの内、四台が爆破された事件だ。
両事案は犯行声明を挟んだ僅かな時間差で発生しており、予てから薔薇乃棘による犯行ではないかとの考察は多かった。
だがそれ故に、公式機関の認定には大きな意味があった。
何故ならば、一連の事件は証明してしまったのだ。
薔薇乃棘が、如何に計画性に長けた犯罪組織であるかを。
T.T.S.が一連の事件を秘匿していた理由は、直ぐに知れた。
意図せず人質となっていた民衆が混乱し、世界中でシュプレヒコールが渦を巻いたからだ。
しかしそれでも、残る一つの事案に比べれば、まだ影響は少なかったかも知れない。
何故ならそれは、T.T.S.の民衆に対する誠意であると共に、T.T.S.への信頼を著しく脅かすものでもあり、皮肉な事に、新たな脅威を生んでしまう切欠にもなってしまったからだ。
世間が最も注目した薔薇乃棘の爪痕。
即ち、“TLJ-4300SHの設計情報の奪還、及び発明者拘束阻止の失敗”だった。
この言葉の意味する所を正確に考える者は、民衆の中にはいなかった。
彼等はただ、こう思ったのだ。
『タイムマシンは本当に出来た!時間旅行が可能になったんだ!』
読者諸賢はもうお気付きであろう。
新たな脅威の正体とは、先の薔薇乃棘の提案に乗った一般人の事である。
そうして、T.T.S.は薔薇乃棘と愚かな民衆の捜査と言う二つの案件を抱える事になった。
だからこそ、3年たった今も尚、世界は薔薇乃棘とT.T.S.のシーソーゲームに踊らされている。
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