死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~
第71話『ご対面』
「おつかれさんじゃったな」
見覚えのある真っ白い空間でお稲荷さんとご対面。
しかしこの時はもう一人、別の女性がいた。
童女姿のお稲荷さんと異なり、なんというか色気のある大人の女性だ。
顔もお面で隠しておらず、優しげな微笑みをたたえて俺の方を見ている。
金髪金眼で服は厚手の着物を何枚か重ねて着ているが、首から鎖骨のあたりはしっかり出ていて、そこから見える肌は透けるように白い。
髪や目の色はともかく、顔の造形はなんとなく和風で、切れ長の目は半分閉じられているようにまぶたが厚い。
「紹介しよう。ワシの古い友人のコンちゃんじゃ」
「まいどー。コンちゃんですぅ」
コンちゃんと呼ばれた女性が軽く頭を下げる。
「あ、えっと、どうも、はじめまして」
「あらぁはじめましてやなんて嫌やわぁ」
「はい?」
顔を上げたコンちゃんが左手で口元を抑えつつ、俺に向かって右手を軽く振る。
関西のおばちゃんか。
「さっきまでくんずほぐれつお互いを求め合うた仲やないの」
「はい?」
何を言っとるんだこのおねーちゃんは。
……いや、この声。
聞き覚えあるぞ?
「なんじゃ、鈍いの。改めて紹介するが、金色九尾狐のコンちゃんじゃ」
「九尾……って、やっぱあのラスボスか!?」
「おう、お主の睨んだ通り、彼女がラスボスじゃ」
「ちょっとおふたりさん嫌やわぁラスボスやなんて……。そないゴテゴテした呼び方やのうて、ウチのことはコンちゃんて呼んでくらはらへん?」
「コンちゃん……ですか?」
「そ、コンちゃん。……コンコン♪」
と左右の手でキツネの形を作り、台詞に合わせて手を傾ける。
「すまんの、コンちゃん。ほれ、ショウスケも謝らんか」
「ああ、えーっと、すいませんでした……」
「ふふ……ええんよ、わかってくれたら」
手で口元を隠し、クスリと笑うコンちゃん。
……だめだ、美人だからすげー絵になるはずなのに、最初の印象のせいで関西のおばちゃんにしか見えないや。
いやいや、そんなことより気になることが。
「あのー、ところでラスボスって……」
「せやからそのゴテゴテしたんやめてぇなぁ」
「ああ、ごめんなさい。でもお稲荷さんにちょっと確認したいことがあるんで……」
「ほなちょっとの間聞かんといたげよ」
と、コンちゃんは横を向いて手で自分の耳を塞いだ。
とりあえず声のトーンを下げてお稲荷さんに語りかける。
「あ、どうも……。で、お稲荷さん、ラスボスってことは……」
「うむ。コンちゃんを倒したら世界救済成功ということじゃな」
その言葉に思わず息が漏れる。
「それならそうと早く言ってよー」
「何でもかんでも答えを渡したら罰にならんじゃろうが」
「まぁ、そうかもしんないけどさぁ」
「しかし、どうじゃった、コンちゃんは? なかなか絶望的じゃったろ?」
「ええ、まぁ」
「絶望的て、そない物騒な言い方やめてくれへん?」
いや、耳塞いでんじゃじゃなかったのかよ。
「しかし強うなっとけと言うたのに、全然じゃったな」
「いや……。でも最後の一撃は結構効いたんじゃない? 最初のと合わせて16億ぐらいダメージ与えたわけだし?」
「コンちゃんのHPは一兆じゃ」
「ファッ!?」
「対コンちゃん戦のダメージは累積形式じゃから、残り9984億じゃな」
「イナちゃんアレ忘れたらあきまへんで、ダンジョンの分」
コンちゃん、もうちゃっかり会話に混じってんのな。
「おう、そうじゃったな。エムゼタシンテ・ダンジョンのダンジョンコアを停止した分でマイナス20億じゃったかの? あと無銘のダンジョン3つがすべて初回制覇でそれぞれ50億じゃから、ダンジョンコア停止分で合計170億マイナスじゃな」
「ああ、ダンジョンコアを停止しろって、そういうことね」
「そういうことじゃな」
「初回制覇はボーナスでかいの?」
「うむ。小規模であっても初回というだけでボーナスがつくのう」
「それでも残り9814億? 絶望的じゃん……」
「せやから絶望的とか言わんといてっ!!」
コンちゃんがわざとらしく頬を膨らませて抗議する。
美人なんだけどなぁ……。
「でも、結構効いたように見えたんだけどなぁ。コンちゃん一瞬消し飛ばなかった?」
「ああ、あれなぁ。ホンマは結界でバシっと防いで『そんなん効けへんでぇ』ってしたかってんけど、あっさり抜かれてもうたやろ? っていうか、アレなんなん?」
「あれはああいうスキルじゃな。あらゆる防御を無視するんじゃ」
「ほなかわしたったらよかったなぁ」
「それも無理じゃ。あれは回避不能じゃからな。一度狙いをつけられたら例え次元を超えても逃げられんよ」
「えげつないわぁ……。ほな食らうしかなかったんやねぇ」
コンちゃんは片手で頬を押さえ、ため息を付いた。
「……で? 結局なんで一瞬消えたの?」
「顔におもいっきり食ろうてもうたから見られるんが恥ずかしゅうてねぇ。それで一旦巨大化解いて隠れさしてもうたんよ」
そんな理由かよ!
「ほしたらショウスケはん『……やったか?』とか言うやん? ウチ昔っから生存フラグっちゅうのんやってみたかったんよ」
……こっちが必死で戦ってるってのになんだよこの緩さはよぅ。
俺……なんか悲しくなってきたわ。
「しかしコンちゃん。生存フラグっちゅうんであれば、もう少し早めに登場せんと効果が低くならんかの?」
「いやぁ、せやけどな? なんかあのお馬はんがエラい疲れてるみたいやったし、ちょっと休ましたりかったんよ」
「コンちゃんは優しいのう」
……なに? なんなのこの空気!?
さっきまでの激アツバトル展開が台無しじゃんか!!
「あ……だからあの時不自然に妖怪が消えたのか」
「せやで。ほんでお馬はんが休んだところで颯爽と登場しようとしたんやけど、ショウスケはんまで寝ようとするんやもん、ホンマかなんわぁ」
「いやいや、こちとら命がけで戦ってんだからしょうがないでしょうが!!」
「まぁ、最後の最後でよう起きてくらはりましたなぁ。おかげでなんとか格好つきましたわ」
なーんか、アホらしくなってきたぞ。
「あ、そうだ。最初の一撃でがっつりダメージ与えたように見えたけど? ほら、前足とかちぎれたじゃん? ダメージ的には大したことなかったんじゃないの?」
「あれねぇ。ショウスケはんまだまだ弱いて聞いてたから最初はかなり弱めに顕現しとったんよ。HPで言うたら1億ぐらい? ほしたら意外と痛うてねぇ。ほんで再顕現の時は思いっきり力解放さしてもろたんよ」
えーと、再顕現てのは、俺が最初に<決死の一撃>食らわせた後、再生してた時のことかな。
「えっと、じゃあ最初の段階で1億当ててたら倒せたとか?」
「そらないわぁ。きっちり一兆削るまで消えまへんでしたで?」
「じゃあさ、最初の一撃で6000万ダメージ与えてたじゃん? その後再顕現したって話だけど、その時の残り4000万ぐらいは?」
「きっちり引き継がしてもうてます」
「さいですか……」
なんかシステムがよくわからんけど、一兆ダメージ与えるまでは倒せないってことね。
ちょっと厳しすぎねぇ?
「あのさぁ、罰だから厳しいのは仕方ないかもしれないけど、このペースで行ったら相当時間かからねぇ?」
「うむ、このままじゃとな。じゃが、今回かなり消費出来たから、次は半分ぐらいになっとるかの?」
「せやねぇ。今回はどうせ失敗する思て妖怪大放出したし、再顕現の時は気持ちよう暴れさしてもうたしねぇ」
「ごめん、何言ってるか全然わかんないんだけど……」
「ふむ。ではそろそろ本題にはいろうかの」
「本題?」
「そうじゃ。なぜ世界は滅ぶのか。百鬼夜行とは何なのか。もうお主には話してもいい頃合じゃろうて」
そう言うとお稲荷さんは軽く居住いをただし、淡々と語り始めた。
見覚えのある真っ白い空間でお稲荷さんとご対面。
しかしこの時はもう一人、別の女性がいた。
童女姿のお稲荷さんと異なり、なんというか色気のある大人の女性だ。
顔もお面で隠しておらず、優しげな微笑みをたたえて俺の方を見ている。
金髪金眼で服は厚手の着物を何枚か重ねて着ているが、首から鎖骨のあたりはしっかり出ていて、そこから見える肌は透けるように白い。
髪や目の色はともかく、顔の造形はなんとなく和風で、切れ長の目は半分閉じられているようにまぶたが厚い。
「紹介しよう。ワシの古い友人のコンちゃんじゃ」
「まいどー。コンちゃんですぅ」
コンちゃんと呼ばれた女性が軽く頭を下げる。
「あ、えっと、どうも、はじめまして」
「あらぁはじめましてやなんて嫌やわぁ」
「はい?」
顔を上げたコンちゃんが左手で口元を抑えつつ、俺に向かって右手を軽く振る。
関西のおばちゃんか。
「さっきまでくんずほぐれつお互いを求め合うた仲やないの」
「はい?」
何を言っとるんだこのおねーちゃんは。
……いや、この声。
聞き覚えあるぞ?
「なんじゃ、鈍いの。改めて紹介するが、金色九尾狐のコンちゃんじゃ」
「九尾……って、やっぱあのラスボスか!?」
「おう、お主の睨んだ通り、彼女がラスボスじゃ」
「ちょっとおふたりさん嫌やわぁラスボスやなんて……。そないゴテゴテした呼び方やのうて、ウチのことはコンちゃんて呼んでくらはらへん?」
「コンちゃん……ですか?」
「そ、コンちゃん。……コンコン♪」
と左右の手でキツネの形を作り、台詞に合わせて手を傾ける。
「すまんの、コンちゃん。ほれ、ショウスケも謝らんか」
「ああ、えーっと、すいませんでした……」
「ふふ……ええんよ、わかってくれたら」
手で口元を隠し、クスリと笑うコンちゃん。
……だめだ、美人だからすげー絵になるはずなのに、最初の印象のせいで関西のおばちゃんにしか見えないや。
いやいや、そんなことより気になることが。
「あのー、ところでラスボスって……」
「せやからそのゴテゴテしたんやめてぇなぁ」
「ああ、ごめんなさい。でもお稲荷さんにちょっと確認したいことがあるんで……」
「ほなちょっとの間聞かんといたげよ」
と、コンちゃんは横を向いて手で自分の耳を塞いだ。
とりあえず声のトーンを下げてお稲荷さんに語りかける。
「あ、どうも……。で、お稲荷さん、ラスボスってことは……」
「うむ。コンちゃんを倒したら世界救済成功ということじゃな」
その言葉に思わず息が漏れる。
「それならそうと早く言ってよー」
「何でもかんでも答えを渡したら罰にならんじゃろうが」
「まぁ、そうかもしんないけどさぁ」
「しかし、どうじゃった、コンちゃんは? なかなか絶望的じゃったろ?」
「ええ、まぁ」
「絶望的て、そない物騒な言い方やめてくれへん?」
いや、耳塞いでんじゃじゃなかったのかよ。
「しかし強うなっとけと言うたのに、全然じゃったな」
「いや……。でも最後の一撃は結構効いたんじゃない? 最初のと合わせて16億ぐらいダメージ与えたわけだし?」
「コンちゃんのHPは一兆じゃ」
「ファッ!?」
「対コンちゃん戦のダメージは累積形式じゃから、残り9984億じゃな」
「イナちゃんアレ忘れたらあきまへんで、ダンジョンの分」
コンちゃん、もうちゃっかり会話に混じってんのな。
「おう、そうじゃったな。エムゼタシンテ・ダンジョンのダンジョンコアを停止した分でマイナス20億じゃったかの? あと無銘のダンジョン3つがすべて初回制覇でそれぞれ50億じゃから、ダンジョンコア停止分で合計170億マイナスじゃな」
「ああ、ダンジョンコアを停止しろって、そういうことね」
「そういうことじゃな」
「初回制覇はボーナスでかいの?」
「うむ。小規模であっても初回というだけでボーナスがつくのう」
「それでも残り9814億? 絶望的じゃん……」
「せやから絶望的とか言わんといてっ!!」
コンちゃんがわざとらしく頬を膨らませて抗議する。
美人なんだけどなぁ……。
「でも、結構効いたように見えたんだけどなぁ。コンちゃん一瞬消し飛ばなかった?」
「ああ、あれなぁ。ホンマは結界でバシっと防いで『そんなん効けへんでぇ』ってしたかってんけど、あっさり抜かれてもうたやろ? っていうか、アレなんなん?」
「あれはああいうスキルじゃな。あらゆる防御を無視するんじゃ」
「ほなかわしたったらよかったなぁ」
「それも無理じゃ。あれは回避不能じゃからな。一度狙いをつけられたら例え次元を超えても逃げられんよ」
「えげつないわぁ……。ほな食らうしかなかったんやねぇ」
コンちゃんは片手で頬を押さえ、ため息を付いた。
「……で? 結局なんで一瞬消えたの?」
「顔におもいっきり食ろうてもうたから見られるんが恥ずかしゅうてねぇ。それで一旦巨大化解いて隠れさしてもうたんよ」
そんな理由かよ!
「ほしたらショウスケはん『……やったか?』とか言うやん? ウチ昔っから生存フラグっちゅうのんやってみたかったんよ」
……こっちが必死で戦ってるってのになんだよこの緩さはよぅ。
俺……なんか悲しくなってきたわ。
「しかしコンちゃん。生存フラグっちゅうんであれば、もう少し早めに登場せんと効果が低くならんかの?」
「いやぁ、せやけどな? なんかあのお馬はんがエラい疲れてるみたいやったし、ちょっと休ましたりかったんよ」
「コンちゃんは優しいのう」
……なに? なんなのこの空気!?
さっきまでの激アツバトル展開が台無しじゃんか!!
「あ……だからあの時不自然に妖怪が消えたのか」
「せやで。ほんでお馬はんが休んだところで颯爽と登場しようとしたんやけど、ショウスケはんまで寝ようとするんやもん、ホンマかなんわぁ」
「いやいや、こちとら命がけで戦ってんだからしょうがないでしょうが!!」
「まぁ、最後の最後でよう起きてくらはりましたなぁ。おかげでなんとか格好つきましたわ」
なーんか、アホらしくなってきたぞ。
「あ、そうだ。最初の一撃でがっつりダメージ与えたように見えたけど? ほら、前足とかちぎれたじゃん? ダメージ的には大したことなかったんじゃないの?」
「あれねぇ。ショウスケはんまだまだ弱いて聞いてたから最初はかなり弱めに顕現しとったんよ。HPで言うたら1億ぐらい? ほしたら意外と痛うてねぇ。ほんで再顕現の時は思いっきり力解放さしてもろたんよ」
えーと、再顕現てのは、俺が最初に<決死の一撃>食らわせた後、再生してた時のことかな。
「えっと、じゃあ最初の段階で1億当ててたら倒せたとか?」
「そらないわぁ。きっちり一兆削るまで消えまへんでしたで?」
「じゃあさ、最初の一撃で6000万ダメージ与えてたじゃん? その後再顕現したって話だけど、その時の残り4000万ぐらいは?」
「きっちり引き継がしてもうてます」
「さいですか……」
なんかシステムがよくわからんけど、一兆ダメージ与えるまでは倒せないってことね。
ちょっと厳しすぎねぇ?
「あのさぁ、罰だから厳しいのは仕方ないかもしれないけど、このペースで行ったら相当時間かからねぇ?」
「うむ、このままじゃとな。じゃが、今回かなり消費出来たから、次は半分ぐらいになっとるかの?」
「せやねぇ。今回はどうせ失敗する思て妖怪大放出したし、再顕現の時は気持ちよう暴れさしてもうたしねぇ」
「ごめん、何言ってるか全然わかんないんだけど……」
「ふむ。ではそろそろ本題にはいろうかの」
「本題?」
「そうじゃ。なぜ世界は滅ぶのか。百鬼夜行とは何なのか。もうお主には話してもいい頃合じゃろうて」
そう言うとお稲荷さんは軽く居住いをただし、淡々と語り始めた。
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