死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~

平尾正和/ほーち

第19話『初めての魔法』

 さて、もう一度魔力玉まりょくだま(思いつき。正式名称不明)を出してみよう。


 スキルレベルが上がったおかげか、さっきよりなんとなくコツがわかる。


 ……ほら、すぐ出せた。


 MP消費も半分以下になってるよ。


 これ、慣れればもっと効率化出来るね。


 次はこの魔力玉を動かしてみる。


 あれだ、イメージとしては願い玉集め漫画の最初のライバルの人がやってたアレ。


 そう、神さまに一撃加えたアレね。


 とりあえずゆっくりと動かしてみる。


 あんま勢い付けて壁とかに当たったら大変だし。


 ぐぐっと念じると、魔力玉が動く。


 よしよし、何となくイメージ通りに動くな。


 しかし、ちょっと動かしただけですげー疲れてきた……っておい!


 ステータス見たらものすごい勢いでMP減ってるんですけど!?


 やばいやばい、とりえあえず手元に戻して……、うん、維持だけなら減りも緩やかになったね。


 ただ、これまた取り込むとなるとMP消費するよなー。


 たぶんこのままだと気絶するなー。


 よし、散らしてみよう。


 なんというか、このまま気を抜くととんでもない方向に飛んで行くか、下手すりゃ爆発しそうなんで、じわーっと霧散させるイメージで。


 う……、MPの減りがちょっと早くなった。


 でも……ギリギリ、なんとか。






《スキルレベルアップ》
<魔力操作>




 ……………………。


 おっと、気絶してしまったようだ。


 でも特に部屋が散らかった様子はないから、上手いこと霧散できたんだろう。


 時計を見ると零刻ちょい過ぎ。


 いかんいかん、寝すぎたな。


 おかげでMPはまた回復して、600に届きそう。


 基準がわからんけど、これって多いのかね?


 まあいい、もう2~3時間練習したら寝よう。


 さて、もう一度魔力玉をだす。


 今度は少し小さめで。


 ……よし、MP消費はさらに減ったな。


 これを動かして……と。


 よし、消費速度もちょっと落ちてるぞ。


 うん、さらに自由に動かせるようになってるな。


 じゃあ魔力玉を維持しつつ、リュックサックから雑巾を出してみる。


 これをちょっと厚めに折りたたんで左手に持ち……、あんま勢いをつけすぎずにぶつけてみる。


「イッテェ!!」


 おお? あんま勢いつけてないのに雑巾貫通して……




《スキル習得》
<無魔法>




 へ……?


 マジで?


 俺、魔法覚えちゃったよ。


 なるほどねぇ、こうやって純粋な魔力を動かすのが<無魔法>なわけだ。


 っつーか、手から血ぃ出てんじゃん!!


 よく見ると手のひらがちょっとえぐれてるわ……。


 とりあえず『止血』して『下級自己回復』っと。


 うーん、血は止まったけど、傷は完全に塞がってないね。


 まぁあとは自然治癒に任せよう。


 しかし、こうなるとちょっとこの魔力玉訓練は危険だなぁ。


 ……じゃあ、例えば手に魔力をまとってみたらどうだろう?


 こう、手袋をはめる感じで……って、そうそう上手くはいかないな。


 なんか無駄に魔力が放出されて、MPが激減したので今日はもう寝よう。




**********




 翌五刻(午前10時)ごろに起き、街を出て人気ひとけのないところに来た。


 今日は採取キットも武器もレンタル無し。


 何をするかというと、そう、魔法ですよ。


 せっかく<無魔法>覚えたんだから、試したくなったんだよね。


 武器とキットのレンタル代を魔術士ギルドの宿泊費に充てることにしたので、最悪今日はボウズでもいい。


 とりあえず威力と射程を知りたいので、適当な木を相手に試してみる。


 まずは5mから。


 確か<無魔術>の一番初歩の攻撃魔術は『魔矢まし』だったな。


 それをイメージしてみよう、見たこと無いけど。


 まず魔力玉を出して……細い棒状に変形……お、イケるな。


 んで、木に向かって発射!!


「おお!?」


 樹の幹の真ん中を狙ったんだが、ちょっと外れたものの、かすった部分はバグン! って感じでごっそりえぐれてた。


 ……でも、これMP消費ハンパねぇな。


 一発で50減ったよ。


 今の最大値が600ぐらいだから、10発以内には抑えないとな。


 もう一度試してみる。


 よーく狙って……、発射!!


「ぃよし!!」


 今度は狙い通りドゴッ! って感じで真ん中に当たったぜ!


 木に近づいて見てみると、半分ぐらいには達してる感じだな。


 これだとジャイアントラビットなら、急所さえ突けば一発で仕留められそうだ。


 ただ、狙いつけたらMP消費が70ちょいになったよ……。


 その後も色々試したが、3m以内ならMP消費50バージョンでも確実に当てることが可能。


 10mまで離れると、狙いをつけても外れるし、仮に当たっても威力が足りない。


 あと、試しに『魔弾まだん』をイメージしてみたところ、こっちのほうが効率が良かった。


 たぶん、俺は矢よりも銃弾の方がイメージしやすいからだと思う。


 さて、MPも残り少なくなってきたし、一旦街に戻るか。




**********




 街に戻った俺は、冒険者ギルドで昼食を終えた後、魔術師ギルドに行った。


 外に出てる時はお昼抜きでも特に気にならないが、街にいるとどうしてもランチが食べたくなるのはなんでだぜ?


 まぁいい。


 とりあえず魔術師ギルドで寝台の清掃が終わったことを確認。


「一応確認なんですが、今寝台を借りたとして、途中で外出しても問題無いですかね?」


「ええ。明日の清掃までは10Gで使い放題よ」


 よしよし、じゃあ2~3時間休憩したら狩りに出よう。




**********




 ある程度MPを回復させた俺は、改めてジャイアントラビットの生息地を訪れた。


 とりあえず5mの位置から獲物を狙う。


「え!?」


 魔力玉を出した時点で気付かれ、逃げられてしまった……。


 そうか、よくよく考えれば魔力を多めに出してるわけだから、気付かれやすくなるのか。


 これは盲点だったぞ……。


 とりあえず魔力玉を霧散させ、今度は10mの位置で試してみる。


(この距離だと大丈夫か……)


 そのままの状態で少しずつ近づくと、大体7~8mぐらいで気付かれることが分かった。


(この距離だとちょっと不安だなぁ)


 そこで今度は<気配隠匿>を意識しながら魔力玉を出してみる。


(ぐっ……! MP消費が激しいな)


 現状、魔力玉を出すだけならMP10ぐらいで出せるようになっているのだが、<気配隠匿>を意識すると50近く消費する。


(これでどこまで近づけるか……)


 足音にも気をつけつつ、獲物に近づく。


 <気配隠匿>を意識した状態だと、魔力玉を出してるだけで、どんどんMPが消費されていく。


 だがここは実験の意味もあるので、頑張って近づいてみる。


(よし、ここまで近づいたら確実に仕留められるな)


 <気配隠匿>さえ意識しておけば、3mぐらいまで近づいても気づかれない。


(よし……喰らえ!!)


 魔力玉で作った『魔弾もどき』を発射する。


 実際の銃弾の速度を知っているわけではないが、たぶんそれに劣らないであろう速度で『魔弾もどき』がジャイアントラビットの後頭部を捉える。


「……なんちゅう威力」


 ジャイアントラビットの頭は『魔弾もどき』が当たると同時に爆散した。


(初めてってことでちょっと魔力込めすぎたかな……)


 都合150近いMPを消費したわけだしな。


 仕留めた獲物を見に行こうと一歩踏み出したところで、視界が暗転する。


「クソッ……」


 魔力酔いだな。


 踏ん張ればなんとか気を取り戻すことが出来た。


 俺はその場に座って『瞑想』を開始。


 これは魔力操作訓練中に発見した”MP回復速度があがる魔力の練り方”に、勝手に俺が名前をつけたものだ。


 回復速度があがると入っても微々たるもので、今は魔力酔いを落ち着かせるために行っている。


「……よし、だいぶ落ち着いてきだな」


 1分程度で落ち着いてきた。


 そもそもMP残量にまだ余裕はあるので、魔力酔いさえ治れば問題なく動き回れる。


 ただ、それでももう200は切っているので、あと1羽が限界だろう。


 とりあえず仕留めた獲物は一旦放置し、次の獲物を探す。


 次は普通に気配を殺した状態で近づき、3mほどまで近づいた状態から<気配隠匿>を意識する。


 その状態で『魔弾もどき』をさっきの3割ぐらいの威力を意識して発射。


 今度は首の裏に当たった『魔弾もどき』がそのまま喉を貫くだけにとどまった。


 魔力量を抑えてはみたものの、やはり<気配隠匿>を使いながらの魔法使用は難しいらしく、MPは80ほど消費してしまった。


 念のため立ったまま瞑想し、落ち着いてから獲物を拾う。


 2羽まとめて解体し、収納した。


 魔法に比べると魔術のMP消費はホント少ないんだよな。


 まあ生活魔術と攻撃魔法だから比較にならんのかもしれんけど。




**********




 その日は素材を納品せず、魔術師ギルドに直行した。


 なんというか、この世界じゃ魔術は当たり前でも魔法は特別って感じだから、なんとなく魔法を使えるってことは隠しておきたいんだよね。


 で、武器レンタル無しで魔物を仕留めたとなるとどう思われるのか怖いので、明日は武器レンタルした上で2~3羽仕留めて、まとめて持って行こう。


 その日の夜は手に魔力を纏わせる訓練を行ったが、結局うまくいかないまま、十一刻(22時)ごろにMP切れで気絶した。




《スキル習得》
<気絶耐性>



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