異世界転生したけどお家に帰りたい。

ノベルバユーザー237344

理不尽な始まり

風で吹かれ揺れた木の葉の音で僕は目を覚ました。
目蓋を開けると枝葉が見え、枝葉の隙間から日の光が僕の体を照らしていた。
遠くの方から川の流れる音が聞こえてくる。
僕は地面で寝ていた。
背中に不快な異物感があり、僕は体を起こし地面を確認する。
地面には様々な草が生えており、その中に混じって地面から露出した木の根っことピンポン玉くらいの石があり、背中に不快感を与えていたんだ。
僕は立ち上がり、周りを見渡し状況を確認した。
木々が生えており枝葉で光が遮光され薄暗くなっていて不気味な雰囲気が漂っている。
僕は小学生の頃、近所の友達と近くにあった、森の中に秘密基地を作って遊んだ事を思い出した。
秘密基地と言ってもアニメや漫画の中の子供が作るような秘密基地と言う訳ではない。
ただ、葉っぱや折れた枝や雑草を掃除して家にあった、使わない木箱を椅子がわりに置いただけで、雨が降れば秘密基地で遊ぶ事は出来ない。
そんな、幼い日の思い出をのんきに思い出せるのは、今の異常事態に現実感が無いから、現実だとわかっていても、これはひょっとして夢なんじゃないかと思ってしまうから。
夢の中に居るような、ふわふわとした感覚が思考を鈍らせた。
僕は気がつくとぼーっと露出した樹木の根っこを見つめていた。
こんなことでは駄目だと頭を横に振る。
もう一度、状況を確認しようと周りを見渡そうとした時、後ろに気配を感じ振り返った。
すると視界いっぱいに毛が見えた。
それが、動物の体毛だと認識し上を見上げ、僕を見下ろす顔が見えた瞬間、頭に強烈な衝撃を受け、その勢いで僕の頭は首から下を引っ張り地面に叩きつけられた。
痛い、と言う感覚を先に感じ、その次に自分が頭を横から殴られたのだと、理解した。
背中に不快なゴツゴツとした異物感がある。
自分は地面に倒れている事を理解した。
朦朧とした意識の中、自分を殴った動物を見る。
熊の様な見た目をしており、紫の色の体毛が生えていて靴下を履いてる様に足は白い毛が生えていた。
僕の体の右腕側の方向に少しだけ離れて、こちらの様子をうかがっている。
足には鋭い爪が生えていて、あの爪で掻かれていたら顔の肉をえぐり取られていただろう。
僕を殴った時は二本足で立っていたが、今は四足歩行でこちらにゆっくりと近づいて来ている
意識が遠のいていき頭が回らない。
紫色の体毛の動物が顔を近づけてきた。
僕はこの動物が止めを刺そうと、僕の首を噛み千切ろうとしているのだと理解した。
とっさに首を守ろうと、右手で握りこ拳を作り、顔を近づけて来ている動物を殴った。
拳は動物の眉間に当たった、が、全く効いていない動物は力弱く眉間に当たった拳の腕に噛みいてきた、腕に激痛が走り思わず声を上げたくなったが、なんとか堪える。
声を出してしまったら負けた気がしてしまうから。
だが、そんな意地は簡単に砕かれた。
噛まれた腕から何かが折れて砕かれていく音が聞こえ、想像を絶する激痛が僕を襲った。
僕は痛みに声を出してしまった。
目頭から涙が溢れた痛みに対する涙なのか、恐怖の涙なのかはわからない。
死にたくない。
家族の事や友達の事を思い出して、生への執着が強くなっていった。
自分の身に起きている理不尽に、怒りにも似た感情がこみ上あがる。
その時、噛みつかれている右腕が炎に包まれ、動物に燃え移り、頭が炎に包まれている。
何が起こっているのか、全く理解できない。
体が自然に燃える、人体発火現象を思い浮かべたが、否定した。
一瞬で腕が燃えるなんて聞いた事無い
数秒後、先程まで右腕に力強く噛みついていた動物は力なく倒れこんだ。
が、安心は出来ない、右腕がまだ炎に包まれていてる。
僕は川が流れている音のする方に走った。
木の根っこに躓きながら数分走り続け、やっと川が見えてきた。
まだ、右腕は炎に包まれている、が熱は感じない、不思議に思ったが気にせず川に近づいた。
川の前でしゃがみこみ水に腕を急いで入れた、炎で水が蒸発する音が一瞬聞こえ炎が完全に消えた。
腕を冷やすため、しばらく水に浸けておこう。
水に浸けた右腕に感覚が無く不安で体が震える。
水に浸けている右腕から水が黒くなり川下に流れていった。
炭化した右腕の皮膚が剥がれて黒く染めているんだろう。
この川、深いなそれに流れが少し強い、この川に落ちたら陸に上がるのに苦労するだろう。
数十分が経過した。
もういいだろうと思い腕を水から出し立ち上がった時。

ポチャン…

何かが水の中に落ちる音がした。
何が落ちたのか水面を見るが何もない、水中に沈んだんだろう。
僕は何か違和感に気づく。
すぐにその違和感の正体に気づいた。
炭化して脆くなった物が落ちたんだ。
あの動物の頭を炭化させた炎で炭化した。
僕の、右腕が千切れて水中に落ちたんだ。

僕は意識が遠うのき川に落ち、川下に流されて行った。



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