意味がわかると怖い話(自作)
空き巣被害にご注意を 解答/解説(フルver)
【解答】
アパートには泥棒が侵入していた。そしてその部屋の住民は、室内に泥棒がまだ潜んでいることに気付かずに帰宅してしまっている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【解説】
解答を見ていただければわかるように、「意味がわかると怖い話」という括りで見ればオチとしては非常にベタな話になっています。
今回の話で最も重要なのは、途中で視点が別の人物に変わっており、さらに時間帯も微妙に変わっているということです。
まず視点がどこで変わっているかと言うと、
『…少し神経が過敏になっているのかもしれない。そう思うと気を取り直し、そっと扉を開けた。』
の部分です。この次の『玄関から上がって…』以降は、別の人物からの視点による物語になっています。
ここはわかりやすくするために行間をあえて二行空けておきました。しかし、行間の違いに気付かなくても、注意深く読めば「もしかしてどこかで視点変わってる?」となる箇所が存在します。
それは、冒頭の『空が暮れ泥んできた』の部分と、本文ラストの『どっぷりと日が暮れた空』の部分を比較すればわかります。
そもそも暮れ泥むとは、「まだ日が暮れていない状態」、正確には「日が暮れかかっている状態」のことを指します。
一方で『どっぷりと日が暮れた』というのは、(まあそのままですが)「日が暮れた状態」のことを指します。
しかも『どっぷり』なんて言っているのですから、そりゃあもうめちゃくちゃ暮れているわけです。なんか日本語おかしいですが。
もし視点が途中で変わっていないとした場合、語り手が玄関扉を開けた時にはまだ日は暮れていなかったのに、リビングに入った時にはもうすっかり日が暮れていたということになります。
リビングへ行くのにどれだけ時間掛けてるんだって話ですよね。
そこで、ようやくどこかで視点が変わっている可能性が出てくるわけです。
あとはどこで視点が変わるかを考えるわけですが、まあキリのいい箇所を探せば自ずと前述した箇所になると思います。ずれたとしてもそこまで大きくずれることはないはずです。
じゃあそれぞれ誰の視点なのか、という話ですが、結論から言うと、前半が「泥棒」で後半が「部屋の住人」です。
順を追って解説していきます。
まず前半です。
ここでは語り手は『空き巣の被害が深刻化しているという話を耳にし』て、『気を付けなければ、と思っ』ています。
これは単純に「自分が空き巣の被害に遭わないように気を付けよう」という意味にも取れますが、「住民の空き巣への警戒度が高まっているから、これからは(泥棒をしているところが)見つからないように今まで以上に気を付けよう」という意味にも取れます。
そしてその後アパートに入る時、語り手が誰かの視線を感じるシーンがあります。語り手はこれを『空き巣の話を聞いて少し神経が過敏になっているのかもしれない』と分析しています。
これも「誰かに犯行を見られているかもしれない」という警戒心による行動だとしても不自然ではありません。
しかしこの段階ではあくまで前半が泥棒視点である「可能性がある」というだけで、まだ断言はできません。
強いて言うならば、本文冒頭で「アパートまで『帰って来た/戻って来た』」ではなく、「アパートまで『やって来た』」と表記されていること、前半部分のラストが「『(周囲を警戒して)そっと』扉を開けた」と補完できること、といったヒント(?)は散りばめているのですが、まあこれで泥棒視点であることに気付けというのはいくらなんでも無茶苦茶です。
だから、とりあえずそのまま後半へ移ります。
後半は、変に推測するまでもなく明らかに住人の視点であるとわかります。
『ああ、そう言えば今朝、鍵掛けたっけ』
『そろそろクーラーでも……掛からないだろう』
これらの箇所を見れば、この視点はまごうことなき住人の視点だということになります。
そして、途中で視点が変わっていることに気付けば消去法で前半部分は少なくとも「住人視点ではない」ということがわかるはずです。
また、後半のラストで住人は『一人暮らしで呼ぶ人もいない』ことがわかりますから、前半部分で部屋に侵入したのは「住人の知人ではない」ということになります。
すると必然的に前半部分で部屋に入った人間は「住人の許可を得て入ったわけではない」ことがわかり、そうなると十中八九、前半部分は泥棒視点であることになります。
また、後半部分で、住人がリビングに身に覚えのない鍵が掛かっていて戸惑うシーンがあります。これは『あまり覚えていないが今思えば掛けたかもしれない』と納得していますが、結論から言えば掛けていません。
その後の部分で、住人は一日前に合鍵屋に部屋のスペアキーの作製を依頼していたことがわかります。
本物の鍵があるなら、そちらを使えばいいはず。第一、スペアキーは本物の鍵を紛失した時のためにある予備の鍵ですから。
しかし住人は出来たてホヤホヤのスペアキーを使っていることから、本物の鍵はとっくに紛失してしまっていることがわかります。
そして一日前にスペアキーの依頼をしていたということは、その段階では住人の手元にはスペアキーもなかったということです。つまり、一日前の時点で住人は鍵を何一つ持っていなかったということです。
なのに、リビングに掛けられるはずのない鍵が掛かっているなんて変ですよね。
つまりこれは、住人が施錠したわけではなく、室内にいる誰かが内側から施錠していることになります。この「誰か」が誰であるかは、もう明白ですよね。
そして住人はリビングへ入ると、部屋の窓を全て全開にしています。その時に『鍵を開けて』いるわけですから、住人がリビングへ戻った時点で部屋の窓は全て施錠されていたことになります。
そうするとリビングは完全密室になり、必然的に泥棒は住人と同じ室内にいるということになります。
泥棒が咄嗟に押入れに隠れるなり何なりしたのか、住人はすぐには気付いていない様子ですが。
この話の解説は以上になりますが、それと一つ、「前半の後半とでアパート(または部屋)が変わっている可能性もある」という指摘もできると思います。確かに、前半と後半で登場するアパート及び部屋が同じだという描写はどこにもありません。
しかしもしそうだとしたら今回の話は怖いところなんて何一つなくなってしまうので、「多分同じなんだろうな」と察していただけるとありがたいです。この辺、設定が少し甘くて申し訳ないです。
また、前半部分で泥棒があっさりとアパートに侵入できているのは、ピッキング的な力が働いているからと考えてください。別にここには特に深い意味はないです。
以上で今回の解説(フルver)は終わります。
アパートには泥棒が侵入していた。そしてその部屋の住民は、室内に泥棒がまだ潜んでいることに気付かずに帰宅してしまっている。
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【解説】
解答を見ていただければわかるように、「意味がわかると怖い話」という括りで見ればオチとしては非常にベタな話になっています。
今回の話で最も重要なのは、途中で視点が別の人物に変わっており、さらに時間帯も微妙に変わっているということです。
まず視点がどこで変わっているかと言うと、
『…少し神経が過敏になっているのかもしれない。そう思うと気を取り直し、そっと扉を開けた。』
の部分です。この次の『玄関から上がって…』以降は、別の人物からの視点による物語になっています。
ここはわかりやすくするために行間をあえて二行空けておきました。しかし、行間の違いに気付かなくても、注意深く読めば「もしかしてどこかで視点変わってる?」となる箇所が存在します。
それは、冒頭の『空が暮れ泥んできた』の部分と、本文ラストの『どっぷりと日が暮れた空』の部分を比較すればわかります。
そもそも暮れ泥むとは、「まだ日が暮れていない状態」、正確には「日が暮れかかっている状態」のことを指します。
一方で『どっぷりと日が暮れた』というのは、(まあそのままですが)「日が暮れた状態」のことを指します。
しかも『どっぷり』なんて言っているのですから、そりゃあもうめちゃくちゃ暮れているわけです。なんか日本語おかしいですが。
もし視点が途中で変わっていないとした場合、語り手が玄関扉を開けた時にはまだ日は暮れていなかったのに、リビングに入った時にはもうすっかり日が暮れていたということになります。
リビングへ行くのにどれだけ時間掛けてるんだって話ですよね。
そこで、ようやくどこかで視点が変わっている可能性が出てくるわけです。
あとはどこで視点が変わるかを考えるわけですが、まあキリのいい箇所を探せば自ずと前述した箇所になると思います。ずれたとしてもそこまで大きくずれることはないはずです。
じゃあそれぞれ誰の視点なのか、という話ですが、結論から言うと、前半が「泥棒」で後半が「部屋の住人」です。
順を追って解説していきます。
まず前半です。
ここでは語り手は『空き巣の被害が深刻化しているという話を耳にし』て、『気を付けなければ、と思っ』ています。
これは単純に「自分が空き巣の被害に遭わないように気を付けよう」という意味にも取れますが、「住民の空き巣への警戒度が高まっているから、これからは(泥棒をしているところが)見つからないように今まで以上に気を付けよう」という意味にも取れます。
そしてその後アパートに入る時、語り手が誰かの視線を感じるシーンがあります。語り手はこれを『空き巣の話を聞いて少し神経が過敏になっているのかもしれない』と分析しています。
これも「誰かに犯行を見られているかもしれない」という警戒心による行動だとしても不自然ではありません。
しかしこの段階ではあくまで前半が泥棒視点である「可能性がある」というだけで、まだ断言はできません。
強いて言うならば、本文冒頭で「アパートまで『帰って来た/戻って来た』」ではなく、「アパートまで『やって来た』」と表記されていること、前半部分のラストが「『(周囲を警戒して)そっと』扉を開けた」と補完できること、といったヒント(?)は散りばめているのですが、まあこれで泥棒視点であることに気付けというのはいくらなんでも無茶苦茶です。
だから、とりあえずそのまま後半へ移ります。
後半は、変に推測するまでもなく明らかに住人の視点であるとわかります。
『ああ、そう言えば今朝、鍵掛けたっけ』
『そろそろクーラーでも……掛からないだろう』
これらの箇所を見れば、この視点はまごうことなき住人の視点だということになります。
そして、途中で視点が変わっていることに気付けば消去法で前半部分は少なくとも「住人視点ではない」ということがわかるはずです。
また、後半のラストで住人は『一人暮らしで呼ぶ人もいない』ことがわかりますから、前半部分で部屋に侵入したのは「住人の知人ではない」ということになります。
すると必然的に前半部分で部屋に入った人間は「住人の許可を得て入ったわけではない」ことがわかり、そうなると十中八九、前半部分は泥棒視点であることになります。
また、後半部分で、住人がリビングに身に覚えのない鍵が掛かっていて戸惑うシーンがあります。これは『あまり覚えていないが今思えば掛けたかもしれない』と納得していますが、結論から言えば掛けていません。
その後の部分で、住人は一日前に合鍵屋に部屋のスペアキーの作製を依頼していたことがわかります。
本物の鍵があるなら、そちらを使えばいいはず。第一、スペアキーは本物の鍵を紛失した時のためにある予備の鍵ですから。
しかし住人は出来たてホヤホヤのスペアキーを使っていることから、本物の鍵はとっくに紛失してしまっていることがわかります。
そして一日前にスペアキーの依頼をしていたということは、その段階では住人の手元にはスペアキーもなかったということです。つまり、一日前の時点で住人は鍵を何一つ持っていなかったということです。
なのに、リビングに掛けられるはずのない鍵が掛かっているなんて変ですよね。
つまりこれは、住人が施錠したわけではなく、室内にいる誰かが内側から施錠していることになります。この「誰か」が誰であるかは、もう明白ですよね。
そして住人はリビングへ入ると、部屋の窓を全て全開にしています。その時に『鍵を開けて』いるわけですから、住人がリビングへ戻った時点で部屋の窓は全て施錠されていたことになります。
そうするとリビングは完全密室になり、必然的に泥棒は住人と同じ室内にいるということになります。
泥棒が咄嗟に押入れに隠れるなり何なりしたのか、住人はすぐには気付いていない様子ですが。
この話の解説は以上になりますが、それと一つ、「前半の後半とでアパート(または部屋)が変わっている可能性もある」という指摘もできると思います。確かに、前半と後半で登場するアパート及び部屋が同じだという描写はどこにもありません。
しかしもしそうだとしたら今回の話は怖いところなんて何一つなくなってしまうので、「多分同じなんだろうな」と察していただけるとありがたいです。この辺、設定が少し甘くて申し訳ないです。
また、前半部分で泥棒があっさりとアパートに侵入できているのは、ピッキング的な力が働いているからと考えてください。別にここには特に深い意味はないです。
以上で今回の解説(フルver)は終わります。
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コメント
姉川京
とりあえずここまで読んでみましたが、話作るの上手いですね!とても自作とは思えません!これからもお互い頑張りましょう!
あともしよろしければ僕の作品も読んでください。