《冷姫》に告白をした結果泣かれてしまったが、なぜかその後積極的に話しかけてくる件

ささかま

第三話



「あーー終わった〜!!」


「勇、うるせえ!!」


 昼休みが終わり、その後の授業は何事も無く終わった。あの後クラスの女子達からは質問攻めにされ、男どもからは非難の声を浴びせられた。


「なんだよ。まだ怒ってんのか?」


「当たり前だな」


 コイツのせいで、スマホを没収された。しかも、反省文まで書かなきゃいけなくなってしまった。…何もしてないのだから、反省文なんて書けねぇよ…。


「まぁまぁ…後でなんか奢ってやるからさ」


「そうか…なら、メック一回で許してやろう」


 某ハンバーガーショップ一回で許してやるなんて、僕はなんて優しいのだろうか。まぁ、一つしか頼まないとは言っていないのだがね。


「さて、じゃあメックにい…く?」


「ん?どうしたんだ?」


 勇が顔を向けて固まっている方を見てみると…ドアの横に立って、クラスの中に視線を巡らせているせが…結奈の姿があった。まるで誰かを探しているような…まさかじゃないよな?凄く嫌な予感がするんだが…。
 しばらくしてこちらの方を向いて…目が合った。すると、彼女は心なしか嬉しそうな表情を浮かべながら…とてつもなく巨大な爆弾を投下してきた。


「啓介君こっちこっち〜…あっ!」


 あっ!じゃないんだよあっ!じゃ…。ホラァ…クラスのみんながフリーズしてんじゃん…。どうすんだよこの空気…。


(お、おい…今アイツ名前で呼ばれてたよな!?)


(まさか、付き合ってるのか!?)


「…コホンッ。久本君、用事があるからついてきて頂戴」


「わかった…」


 今更取り繕っても遅いよ…取り敢えずこの場から離れた方がいいな。


「悪いな、勇。メックはまた今度な」


「お、おう…おまえ、《冷姫》とどんな関係ーー」


「あー、その話は今度な!」


 説明してたら長くなるしな。まぁ、そのことは今度でいいだろ。






 瀬川さんが向かった先は、下駄箱だった…。


「あのー、これってもしかして…」


「そうよ。一緒に帰るの」


「……」


 うん、やっぱり…。そうか、そうだな。周囲の視線によって俺を精神的に殺そうってことか。






「……」


「……」


 気まずい…どうすんだよこの空気!?なんか話題…あったかな…


「ねぇ」


「うぉいっ!?」


 ビクッてなっちゃったよ。てか、変な声出しちゃったよ!!いきなりすぎるだろ…


「今日のお昼に、私が何か言いかけてたの覚えてる?」


「えっ、まぁ…覚えてるよ」


 確か、貴方の事が…ってやつだ。そういやまだ聞けてなかったな…。


「あの時言いたかった事をもう一度言うね。私、キミの事が…」


 だが、またしても彼女の言葉を最後まで聞くことは叶わなかった。


「お〜い啓介!!」


 振り返ってみると、僕達の背後から、走ってくる勇の姿が見えた。


「どうしたんだ?」


「なんか、先生が渡したい書類があるんだってよ」


 書類?別にそんなもの明日でもいいんじゃないか?


「それ、今行かなきゃダメか?」


「ま、まぁ…呼んできてくれって言ってたからさ」


 まぁ、勇が言うんだからそーなんだろうな。しょうがない。学校に戻ろう。


「てなわけで、ごめんね。俺、学校戻らなきゃ」


 取り敢えず、歩いてきた道を逆に走り始める。学校は、走ればほんの数分で到着出来る距離だ。めんどいけど、走ろう。


「……」


 瀬川さんが何か言った気がした。立ち止まって振り向いてみると、どうやら勇となにか話しているようだ。…多分、気のせいだな。








「え?そんな書類は無いよ?」


「え?どういうことですか?」


「確かに、今日渡し損ねた書類はあったけど…別に、明日でも問題ないものだったからね」


 なら、なぜ勇は呼んできてくれって言われたと言ったんだ…?


「取り敢えず、はいこれ」


「あ、ありがとうございます…」


 受け取った手紙を見てみても、別に明日でも問題ないようなモノだった。…まぁ、いいや。多分、まだ走れば瀬川さんに追いつける筈…。クラスから出て、下駄箱に向かおうとして…話しかけられた。


「あ、久本君じゃないか」


「…こんにちは。長谷川先生」


 名前を呼ばれて振り向いてみると、そこに立っていたのは…瀬川さんのクラスの担任である、長谷川忠則はせがわただのり先生だった。
 長谷川先生は、数学の先生で教え方がとても上手い。また、受験などでとても親身になって接してくれるので、生徒から人気のある先生だ。


「ちょうどよかった。これを運ぶのを手伝ってくれないか?」


「いいですよ」


 先生が手に持っていた、大量のノートの半分を受け持つ。


「悪いな、職員室まで頼むよ」


「わかりました」




 職員室までノートを運んだら、今度は印刷した手紙をクラスまで運ぶのを手伝ってくれと言われたり…なんだかんだで時間がかかってしまった。


「お疲れさま。これ、お礼にあげよう」


「ありがとうございます」


 お礼にくれたのは、1つの饅頭だった。家帰ったら食べよう。これから追いかけても瀬川さんはもういないだろうな…。


「そういえば、さっき生徒達が騒いでいたけど…君は瀬川さんと付き合っているのか??」


「えっ!?」


 おいおい…まさかあのことが先生にまで広まっているとは…。


「付き合ってないですよ」


「ふむ、そうか…。なら、なるべくははやく解いたほうがいい」


「…?えぇ、そうします…」


 何故か、先生が誤解、っていう所だけ強調した気がしたけど…気のせいかな?


「じゃあ僕はこれで帰ります。さようなら」


「…あぁ、さようなら」


 さて、とりあえず勇を問い詰めるか。もう、メックだけじゃ許せないな。なにを奢らせようか…。
 こんな事を考えていたせいで、先生の様子が少しおかしかった事に僕は気づかなかった…。





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