スキルイータ

北きつね

第二百九十九話


 ゼーウ街に着くまで、ルートガーは抵抗していたが、決定は変えなかった。ルートガーに悪いが、ゼーウ街で、ゆっくりとデ・ゼーウの手伝いをして欲しい。

 ゼーウ街から、ダンジョンまではスムーズに移動が出来た。
 デ・ゼーウが手配を終わらせていて、俺たち6名はすんなりとダンジョンに入ることが出来た。

 カイとウミとライは、俺の側に居る。
 ダンジョンには、俺とイェレラとイェルンとロッホスとイェドーアとデ・ゼーウからのごり押しで、ファビアンが一緒に潜っている。

 ファビアン以外の4人には、ルートガーの”ツケ”で武器と防具を渡している。
 スキルカードは、防御系を主に渡している。気にしないで使うように言っているが、果たして使うか微妙な所だ。

 防御系のスキルカードは、レベル5やレベル6が多い。
 レベル5では、結界/障壁/防壁/耐性を、渡してある。レベル5なので、感覚では1万ほどの価値だ。
 レベル6は、硬化を渡している。殆どの物理攻撃が利かなくなる。

 他にも、索敵や探索も渡した。
 攻撃系のスキルカードは、自分が持っている物を使ってもらう事になった。

 ファビアンが後ろで、何か言っているが、スキルカードで命が助かるのなら、スキルカードを惜しむ理由はない。渡しておいて、使わなければあとで回収すればいい。俺が持っているのに、渡していなくて、命の危険があるほうが怖い。

 俺の従者ではないが、大切な仲間だ。

 低階層は、4人で戦わせる。
 これは、ルートガーとの約束だ。

 中層からは、相手を見て判断をする。

 フェビアンは、物資の搬送を担当する。戦えとは言っていない。物資を運んでくれるだけで助かる。

 ファビアンは、契約で縛らせてもらった。
 俺が使うスキルは、”他言無用”という契約だ。レベル7のスキルカードを使った。

 ダンジョンは、チアル大陸にあった物よりも難易度は低そうだ。

「ツクモ様」

「大丈夫だ。俺も、カイもウミもライもまだ戦っていない。余裕がある証拠だ」

 従者の4人だけで戦っても、十分に対応が出来ている。
 出て来る敵も、カイとウミなら簡単に対処ができる。後ろをライが警戒しているが、保険のような感じだ。

「そうですか?聞いた話では、10階層のセーフエリアまで行くのに、慣れたパーティーでも6日はかかると・・・」

 それは、ダンジョンの踏破に慣れていない者たちのパーティーだろう?
 この難易度なら、チアル大陸に居る者たちなら、3日程度だろう。早いパーティーなら2日もあれば十分だ。

「そうか?地図も貰っている。探索が目的ではないから、時間を掛けてもしょうがないだろう?」

「地図を持っていたとしても・・・。そうですね。探索が目的ではないので・・・」

 どこか納得が出来ていない様子だ。
 ファビアンには説明していないが、従者たちが使っている武器は、チアルダンジョンの下層でも通用する武器と防具だ。防具は、サイズの問題があって、揃いにはならなかったが、部位の防御だけでも対処ができるはずだ。

 戦闘では、大量に渡しているレベル3のスキルカードを使っている。
 効果は、レベルの高いカードほどではないが、オーバーキルの状態になってしまっている。

 レベル3でも、【体力強化】【攻撃力向上】【速度向上】【命中向上】を使えば、地力の差もあるので、簡単に倒せる。

 状態異常攻撃をしてくる魔物が出てきた時には、ライが【状態異常半減】を使って補助を行っているので、よほどのことが無ければ苦戦はしない。

 10階層までで、俺とカイとウミが手出しをした回数は0回だ。
 後方から来た魔物をライが倒したのが3回あっただけで、4人だけで対処が終わった。

 今は、10階層のセーフエリアで休憩をしている。

「ファビアン殿。階層主の戦闘後に11階層・・・。中階層に入りますが、どうしますか?」

 デ・ゼーウとの取り決めで、ファビアンは、10階層までは必ず連れて行くことになっていた。
 10階層より下の階層は、難易度も跳ね上がる(と、言われている)。必ず、ファビアンを守れる保証はない。ここから先は、自己責任だと話をしている。

「ツクモ様。20階層までご一緒しても?」

 ファビアンの狙いは解っている
 俺やカイやウミの戦闘を見たいのだろう。確かに、20階層まで進めば、俺たちが戦う場面もある。だろう。

「いいけど、守れる保証はないぞ?」

 自己責任を強調しておきたい。着いて来てもいい。契約で縛りを付けているから、スキルに関しては、報告ができない。先頭の様子で、スキルの類推はできるが、正式な物は解らないだろう。それに、スキルが解っても、対処ができないスキルも多い。あと、レベル7になれば、有効な枚数を俺たちが抑えているスキルカードも多い。対処は、不可能だろう。
 レベル7に対策を考えずに対応しようとしたら、レベル8のスキルカードが必要になってしまう。

「解っています。10階層までのご様子だと、大丈夫だと思いますが・・・」

 確かに、大丈夫だと思う。ファビアンの護衛をライが行えば、20階層どころか、最下層まで連れて行くことはできるだろう。
 でも、連れて行ったとしても、俺たちにメリットがない。デメリットも少ないが・・・。戦闘が始まったら、ライにファビアンを隔離してもらって、戦えば様子も見られない。ファビアンも安全。俺たちは何も困らない。
 でも、それなら、この階層で別れた方が楽だ。攻略の速度に違いが出て来る。

「そうだな。大丈夫だとは思うが、積極的に守らないぞ?いいのか?」

 もう一度、しっかりと話した方がいいだろう。俺たちが戦いだしたら、ファビアンが無防備になる。
 そのことに気が付いたら、自分が戦うことに辿り着くと考えた。

「はい」

 ダメだった。
 デ・ゼーウに知られたくなくない情報だけど、開示しておいた方がいいだろう。

「それから、帰りはどうする?」

 帰りを考えていないようだ。
 当然だな。セーフエリアは、階層主の部屋の前にある。そして、階層主を倒さなければ、次の階層には進めない。戻ってくるときには、階層主は存在しない。どんな理屈なのか解らないが、ダンジョンでは”そう”なっている。不思議に思っても、それがこちわりだ。
 だから、ファビアンは20階層のセーフエリアで待っていれば、帰りも俺たちと一緒に帰ることができると思ったのだろう。

「え?」

「10階層なら、誰かと一緒に地上に戻れる可能性はあるが、20階層だと難しいぞ?」

 しっかりと説明したほうがいいだろう。
 待っていれば大丈夫だというのは、攻略したあとの情報がないのだろう。

「ツクモ様たちは?」

「このダンジョンが、チアルダンジョンと同じなら、最下層に地上に戻る方法があるはずだ」

 このセーフエリアに来るまでの行程で、チアルダンジョンの話を何度も聞いてきたので、ファビアンの目的の一つに、チアルダンジョンの情報収集があるのだろう。希望通り、最下層の話を教えた。
 このダンジョン名前は無いがチアルダンジョンと同じである可能性は低い。
 しかし、ダンジョンが成長している。階層の雰囲気が変わっているという情報もあることから、ダンジョン・コアがあるのだろう。

 最下層に辿り着いて、最下層の階層主を倒しても、地上に戻る魔法陣が出なくても、ダンジョン・コアを支配するか、手元にダンジョン・コアに乗っ取らせれば、最下層から地上に向かう方法は準備ができる。

「・・・。ここから、地上に帰ります」

 ファビアンは、目を瞑って考えてから、地上に戻ると決断した。
 命との天秤では、命に傾くのは当然だ。それに、俺たちは攻略を目的としている。攻略されるまでに、20階層のセーフエリアで待ち続けると考えれば苦痛に感じるのだろう。食料の問題も発生する可能性もある。
 俺たちは、10階層のセーフエリアで食料を収納から取り出す所を見せている。スキル枠を利用しているが、スキルの情報なので、ファビアンに見せても大丈夫だと判断している。

「それがいいだろう」

 10階層の階層主と戦う前に、ファビアンと別れる事が決定した。
 11階層からは、俺とカイとウミも戦闘に参加する。4人が危ない時には、ライに隔離してもらう作戦に切り替える。

 さっさと攻略して、低階層に鉱山を設定しよう。
 あとの交渉は、ルートガーに任せれば安心だ。

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