スキルイータ

北きつね

第二百四十二話


 パレスキャッスルまで、1日の距離になった。

「カズトさん。僕、カイとウミと模擬戦をします」

「わかった。カイとウミも頼むな」

 大陸の中なので、目立った護衛は連れていない。
 エルフ大陸での移動の時に、どうしようかと思っているのだが、パレスキャッスルでルートと相談しよう。

 休憩中に、シロはカイとウミを相手に模擬戦を行っている。
 身体がなまっていると言っているのだが、動いていないと嫌なのだろう。

『旦那様』

 レッシュとレッチェがロングケープから戻ってきた。
 ルートに行程を伝えていたのだ。変わっていないから、必要ないと思ったが、定期連絡を入れておかないと、問題が有った時に対処が難しい。

 レッシュが俺の肩に止まる。レッチュは、シロの模擬戦が見える位置にある木で羽を休めている。

 レッシュが運んできたルートからの書簡を受け取って読み始める。
 もっとも、報告書だけなら書簡にする必要は無いのだが、パレスキャッスルの代官が近くに居たのだろう。信用はしているが、信頼はしない。俺たちの連絡手段を教える必要はない。

 ルートからの連絡では、新種はやはり見つけられなかったようだ。
 港の部分は、昔から雑多な建物が多かったので、復興に合わせて区画整理をおこなうと書かれていた。パレスキャッスルは、大きな港を持っているが、現在ではそれほど使われていない。ロックハンドに向かう船のハブ港の役目の方が大きい。
 エルフ大陸との交易の量は多かったが、俺が大陸をまとめてからは少なくなっている。エルフ大陸から買っていたものが、大陸の中だけで賄えてしまっているからだ。エルフ大陸にしかない物だけの交易になっている。
 今までは、エルフ大陸から買っていた物が多くて、エルフ大陸がこちらから買っていた物が少なかった。そのために、スキルカードがエルフ大陸に流れていた。それが、今では大陸の中で回っている。エルフ大陸とアトフィア大陸との交易は少なくなって、中央大陸のゼーウ街や周辺との交易は増えている。中央大陸は、都市国家の塊だと考えていれば良く、一つの街との交易が他の街にも波及しない。中央大陸向けというよりも、ゼーウ街との交易が増えて、パレスケープが発展している。

 ルートと相談だな。
 港の復興は必要だろうけど、大きくする必要はないだろう。
 それよりも、機能的に作る方がいいだろうな。ルートが送ってきた、区画整理では現状の港よりも、1.5倍近い大きさになる。スラムに近い貧困街を潰して港にする計画のようだけど、ルートならこんな杜撰な計画は立てないと思う。
 代官からの提案なのだろう。

「シロ!カイ!ウミ!」

 模擬戦をしていた、3名を呼び寄せる。
 カイとウミには、尻尾があるので、呼び寄せる時に、嬉しそうに近づいてきて、尻尾を振っているのがわかる。
 尻尾がないはずのシロにも尻尾が見えるような気がした。それも、猫ではなく、犬の尻尾だ。大型犬を呼び寄せるような気がしてしまう。

「そろそろ行くぞ」

「はい」

 皆の声が重なる。
 他にも商隊や移動をしている者も居る。資材を持った者たちは、休憩しないで移動をしている。復興の資材だ。復興の方針は決まっていないが、復興は決まっている。必要になる資材が余れば、資材はそのままロックハンドに移送される。ロックハンドは、交易を行っていないので、資材置き場にするには丁度いいのだ。

 移動を開始する。
 カイとウミは、俺に寄り添うようにしている。シロは、疲れたのか眠そうにしている。

「シロ。寝ていいよ。無理はしないように」

「はい。少しだけ、眠ります」

「膝枕でもしようか?」

 冗談のつもりだったが、周りに人が居ない状況なので、シロが少しだけ考えて、うなずいた。
 可愛かったので、頭を撫でてから、膝を貸した。嬉しそうにしてから、頭を俺の腿に乗せてきた。髪の毛を撫でていると、シロから寝息が聞こえてきた。

 模擬戦も横目で見ていたが、激しく動いていたので疲れるのも当たり前だろう。ウミやカイは余裕だったが、シロは動きに付いていくだけでも大変だったのだろう。

 今日、泊まる予定になっているPAに到着するまで、シロは目覚めなかった。代官から歓待を受けてから宿に入った。明日の昼過ぎにはパレスキャッスルに到着する。この宿には、風呂はなかったが簡易的なシャワーが設置されていた。
 シャワーが有ったし、シロと二人だけでゆっくりと過ごした。シロは、馬車の中で寝ていたのにも関わらず、疲れたのか俺の腕の中でぐっすりと寝ている。満足そうな微笑みさえも浮かべている。俺も、シロの体温を感じながら目を閉じた。明日は、パレスキャッスルでルートと話をしなければならない。最悪は代官から事情を聞いて考えなければならないだろう。もう、ルートが領主でいいよな?

---

「カズトさん。見えてきました」

「そうだな」

 シロが見えてきたと言っているのは、パレスキャッスルではない。
 実際には、パレスキャッスルももうすぐ見えてくるのだが、エリンが迎えに来てくれているのだ。

「パパ!」

「エリン!」

 竜体から人の姿に戻って、俺に飛び込んでくる。その後で、シロのお腹を擦って匂いを嗅いで、”まだみたい”となにかを待っている雰囲気を出している。
 迎えに来たことになっているが、ルートからの連絡では、エリンが落ち着かなくなっていたので、俺を迎えに行くという名目を与えたようだ。

「エリン。新種は見つからなかったのか?」

「ううん。どこにも魔物の匂いがしなかった。海に出来始めていた、魔物の集団は潰したけど、他には感じなかった」

「そうか・・・。そうなると、新種というのも怪しいな」

「え?」「へ?」

 エリンはニコニコしているが、俺の言葉に反応したのか、シロとモデストだ。

「カズトさん?」

「新種が現れたと言っているのは、代官だけだろう?」

「でも、街が破壊されたって・・・」

「モデストはどう思う?」

「判断は出来ませんが、魔物が出たのは間違い無いでしょう。ただ、新種ではなく、違う魔物であった可能性があります」

「モデスト。調べてくれるか?」

「はっ代官を中心に調べます」

「頼む。滞在は、2-3日を予定している」

「かしこまりました」

 面倒なことにならなければいいとは思うけど、難しそうな雰囲気だな。
 ルートが証拠を見つけてくれていたらいいのだけど、そうじゃなかったら、モデストを残していくか?エクトルの問題があるから残していけないから、誰か他の者を呼び寄せるか?エリンに、サイレントヒルに飛んでもらって、誰かを連れてきてもらうのが理想的か?

 新婚旅行のつもりだったのに、面倒なことになってきた。

 そのまま、考えがまとまらないまま、1回の休憩を挟んで、馬車はパレスキャッスルに到着した。
 検閲を待っている馬車の横を通り抜けて、パレスキャッスルの門に向かう。

「ツクモ様。お待ちしておりました」

 ルートが挨拶をする。その横で、小太りの男性が汗を拭いながら挨拶をしてくる。代官だ。

「ルート。報告は、後で聞く。移動で疲れた、先に今日の宿に案内してくれ」

「かしこまりました」

 ルートは俺の意図を正しく理解したようだ。
 代官に命じて、俺の馬車に乗り込んできた。代官は、部下と一緒に乗ってきた馬車に乗り込んで宿に先に移動するようだ。

「それで?」

「カズト様。勘がいいですね」

「そうか、残念だ」

「はい。代わりはどうする?」

「暫くは、私が代官の代理をやります。元老院に連絡をして、見繕ってもらいます」

「わかった。連絡はしていないのだな」

「残念ながら、あの強欲が張り付いていたので連絡が出来ていません」

「そうか、エリン。ペネムかティリノかチアルの所まで移動して、伝言を頼む」

「わかった!パパとママには頑張ってもらわないと!」

「待ってください」

 ルートは、エリンが連絡に戻るのに反対した。

「ここで、エリン嬢が居なくなれば、馬鹿が暴走する恐れがあります」

「そうか?」

「はい。やはり、エルフ大陸との交易が減ったのが原因だと思います」

「俺は、このまま知らない”ふり”をして、エルフ大陸に渡った方がいいのか?」

「危険が伴いますが、お願い出来ますか?」

「大丈夫だ。レッシュとレッチェを使いに出すか?」

「それがいいでしょう」

 簡単に、書簡に簡単に説明だけを書いて、レッシュとレッチュに渡す。元老院に直接は渡せないので、フラビアとリカルダに渡すように命令する。

 後は、暴発しないようにルートが交渉することになった。

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