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スキルイータ

北きつね

第二百十三話


 カトリナに住宅問題を任せて2週間が経過した。

「どうだ?」
「問題ありませんよ。表面的には」
「また微妙な言い回しを覚えたな」
「えぇそうですね。普段会話をする人たちは大丈夫なのですが、フラッとやってきて無理難題を投げていく人がいるので、その人対策のためですよ」
「へぇ~それは大変だな。それで?」
「誰かの入れ知恵かわかりませんが、全部の部屋に温かい空気と冷たい空気が出る装置や自動的にお湯が溜まる装置がついていて、値段が合わなくなっています」
「そうか、誰がそんな余計なことを言ったのかわからないけど、確かに、既存の家よりも高くなってしまいそうだな」
「えぇそうです。どうせ、なにか考えているのでしょう?」

 そりゃもちろん考えているよ。
 これからが本番だな。

「ルートガー。作らせている部屋のサイズや防音や耐震設計は変えてないよな?」
「えぇカトリナにもそれは厳命していますので、変えていません」
「それなら大丈夫だ」
「え?」
「カトリナのところに行くぞ」
「え?あっわかりました」

 ルートガーを連れて、カトリナのところに移動する。
 カトリナは、仕事を任されてから、ダンジョンの中にある工房に引きこもっている。自分で指示して作らせた部屋をカスタマイズして住んでいるのだ。

 転移門のところにいる執事エントに、カトリナへの面会を依頼する。
 誰が来ても、同じオペレーションをするように徹底している。

「ツクモ様。ルートガー殿」
「忙しいところ悪いな」
「いえ、ご一緒ということは、あの件ですか?」
「値段のことだな」
「わかりました。どうぞ、私の部屋でお聞きします」

 転移門のすぐ近くの区画に、職人たちの街ができ始めている。
 やはり、平屋のように使っているのだな。

 住宅を抜けて、少し広くなった場所にいくつかの部屋が作られている。
 どうやら、中央にある部屋が、カトリナが普段の生活や執務をしている場所のようだ。周りは、カスタマイズを試したりしているのだろう。

「どうぞ」

 その中の一つの部屋に通された。日本式の部屋で、入り口で靴を脱ぐのを徹底した。その成果が現れている。

 部屋に入ると、普通の執務室のようになっている。
 ワンルームを改造したようだな。簡易キッチンもついている。トイレもしっかりついているようだ。場所も変えていないようだな。

「カトリナ。いろいろやってくれたようだな」
「楽しくて・・・つい・・・。ダメですか?」
「ダメじゃないが、ルートが困っているので、その助けをしようと考えている」
「お願いします。まだ、やりたいことの半分程度しかできていません!」

 やはり、カトリナにまかせて正解だったようだ。
 いろいろ考えているようだし、アイディアをきいいてみると、なるほどと思えてしまう。

 宅配の概念がない世界で、受け取りボックスのようなことを考えつくとは思わなかった。確かに、ワンルームだと一人で生活することが多くなる。帰ってきたときに、配送されていたらいろいろと便利に思えるのだろう。
 商人としての考えも混じっているのは間違いないが、心地よいくらいにアイディアが出てくる。

「わかった。わかった。カトリナ。そのアイディアの話は、ルートとしてくれ。実現方法は、職人たちとしてくれ」
「わかりました!それで?」
「あぁ部屋を持つのに、必要なスキルカードが上がってしまうのが問題になってしまうということだったな」
「はい」

 ルートガーとカトリナに現状の認識を改めさせる必要がある。
 まずは、家はワンメイクで作っている世界から建売住宅の概念を持ってきて、建売も団地のように規格化された物を売ることになる。一気に時代を進めてしまおうと思っている。躊躇してもしょうがない部分だと考えた。

「ルート。今の物で算出するとどのくらいになる?」
「概算ですが、レベル8が1-2枚というところです。職人への手当を考えると、3枚は欲しいです」
「月でどのくらい売れば下げられる?」
「え?」
「だから、これは量産するのに意味がある。そのための規格だからな。顧客の要望を聞かない代わりに値段を抑えるとこで対応する」
「あっ!」

「逆にするか?カトリナ。月産で、同じ物がどのくらいの数が作られる?」
「今のペースなら月産で20は作ることができます。なれてきたら、50くらいは行けると思います」

 50は無理だとして、25/月で考えておけば問題ないということになりそうだ
 部屋も3部屋を使うパターンも出てくるだろうし、もっと組み合わせた部屋も必要になってくるだろう。
 設備は自由にできるけど、水回りは調整する必要が出てくるかもしれないけど、取水と排水さえしっかりしていれば問題はないだろう。問題は、取水のところをまとめられるかどうかだけだけど、最悪はスキル水を付与した魔核をつけたタンクを屋上に配置すればいい。
 電気の配線やネットワークの配線が必要ないだけでかなりの自由度が確保できる。

「ルート。これなら、売値は落とせるだろう?」
「えぇでも、難民に買わせるのは無理だと思いますよ?」
「そうだな。今のままだとまだ難しいな。どんなに落としたとしても、レベル7が5枚は必要だろう?」

 カトリナが上を向いて顎に手をやって考えるポーズをする。カトリナの癖なのだろう。

「そうですね。どんなに頑張っても、レベル7が4枚はもらわないと無理ですね」
「そうだな。カトリナ。悪いけど、外枠だけできている物がどのくらいある?」
「50くらいは準備できます」
「20個くらいを1/50にして持ってきてもらえるか?」
「わかりました」

 カトリナが席を外した。

 ルートガーが俺を睨んでいるが一旦無視させてもらおう。
 説明は一度で終わらせたい。

 15分くらいしてカトリナが戻ってきた。
 執事エントが箱状の物を持ってきている。

 小さくしても、重さも変わっているからって重いことには違いはないからな。

 部屋を受け取って、重ねていく。
 1階4部屋の5階建てにした。

「ツクモ様?」
「うん。見ただけではわからないだろうけど、外側に通路を作って、階段をつければ、同じ面積で5倍が住める」
「そうですが・・・」
「それだけじゃなくて、1階には人ではなく商店を入れたりしたらどうだ?」
「え?」
「そして、この部屋は賃貸とする」
「賃貸?」
「行政区や代官たちに、部屋を買ってもらって、部屋を人に貸す」
「借りますか?」
「カトリナ。この設備が、普通の宿屋よりも少しだけ高い値段だったら借りないか?」
「・・・。借りますね」
「最初は、難民の対策用としておくけど、実質的には、増える人口に対応するためだな」

「あっ!」

 急にルートガーが大きな声を上げる。

「ツクモ様。この部屋は、組み合わせが自由ですよね?」
「ある程度はだけどな。内装のほうが自由度は高いと思うぞ?」
「わかりました。これで、特権意識がある奴らには高い値段で売って、規格化された部屋の方の値段を下げるのですね」

 おっさすがはルートガー。

「そうだな。もっと言えば、この積み上げた部屋をマンションと呼ぶけど、マンションの部屋を高級路線にしてもいい。作り方はかなり自由にできるからな」

「だから、水回りやドアの位置は固定だったのですね」
「そうだな。ある程度の自由は許すけど、あまり自由に作りたいって言い出したら、特別な値段設定にすればいいからな。そのために規格化するのだからな」

「既存の宿屋が困りませんか?」
「ん?困らないと思うぞ?」
「え?」
「カトリナ。全員が全員、食事を作ったり、掃除ができるのか?」
「・・・」
「1泊や2泊なら宿屋のほうがいいだろう?」
「そうですね」
「それに、長期滞在を考えるのは、冒険者だろうけど、冒険者がダンジョンから帰ってから、自分で料理を作ったりはしないだろう?大人数のパーティーなら、部屋をいくつか長期で借りて、メイドを雇ったりするかもしれないけど、一般的には宿屋を選ぶだろう」
「そうですね。商隊も、チアル街や各拠点にする場所には、部屋を用意することを考えますが、それ以外は宿屋を・・・はっ」

 カトリナが急に慌てだした。
 上をむいて考え始めた。

「ツクモ様。これ、商隊に売り出すのですよね?」
「難民の対策が先だけどな」
「うちの商隊でまとめて買ってもいいですか?」
「いいぞ?開発者特典で、原価ベースで売ってやるぞ」
「!!ありがとうございます。従業員の人数分の部屋をこれで用意したいと思います」
「そうだな。そうしたら、喧嘩にもならないだろうな」
「はい!」

 規格化された部屋のいいところは、設備の違いでもめたりしないことだ。
 部屋の場所なんかで文句が出ることは考えられるが、まだそこまで熟成されていないことを考えれば、従業員には同じ部屋が用意されるだけでも大きなメリットになってくるに違いない。

 そして、難民の対策用に作った部屋がそのまま住居が不足している地域の助けにもなるだろう。

 カトリナには、引き続き設備の充実を行ってもらう。
 合わせて原価の算出方法を確立してもらうことになった。
 計算方法は、簡単に説明だけして、あとは、ルートガーと詰めてもらうことになった。

 建築に関しても、いろいろな意見やアイディアがあるようなので、好きに作ってもらうことになった。
 今までは、平面で考えていたものが立体になったので、考え方も変えなければならない。

 エレベータだけは開発しておこうかな。
 近いうちに必要になってくるだろうからな。スキルを駆使すれば、それほど難しくはなさそうだよな。

 俺が全部をやるのも面倒だな。

「カトリナ。ルートガー。一つ開発して欲しい物があるけどいいか?」
「なんでしょうか?」「はい?」

 簡単に、エレベータの説明をする。

「必要なのでしょうか?」
「どうだろうな。2-3階なら必要ないけど、5階を超えたあたりから必要になってくると思うぞ」
「??」

 ふたりともピンと来ないようだ

「お前たちはまだ必要ないだろうが、ミュルダ老が毎日5階にある部屋に行くのは大変だろう」
「そうですね」
「それに、荷物を持っていたら余計に面倒だと思ってしまうだろうな」
「はい」

 最初がルートガーで次がカトリナだ。
 二人ともこれで気がついたようだ。

 急務ではないが、5階を超えるような場合には設置を考えたほうがいいだろうという意見だけを伝えておく、あとは二人に任せることにした。

「ツクモ様?」
「なんだ?」
「ありがとうございます」
「ん?どうした?」
「いえ、なんでもありません」
「そうだ、ファビアンとリヒャルトを次の全体会議にゲストとして呼んでいるからな」
「え?」「は?」

 二人の表情が固まった。

「え?なぜ?」
「新種の現状を聞くのには、ファビアンが一番の適任だろう?」
「そうですが?なぜ、今?」
「カトリナの件を伝えたら是非と言っていたぞ?カトリナ。逃げるな!」

 実際に、ゼーウ街にも難民が来ているらしい。
 それらの対策を求められている。冒険者には、森の奥には行かないように言っているようだが、犠牲者が減っていない。
 街にも不穏な空気が流れていることから、何かしらの意見交換がしたいと思っていたということだ。

 流石に、ヨーゼフが街を動くのは得策ではない。
 友好的にはなっていると言っても、一時は敵対していた街でもあるし、チアル街が新興の街であることから、頼るのならエルフ大陸のほうがいいのではないかという意見もあるらしい。
 そこで、ヨーゼフの懐刀であるファビアンが使者として、チアル街を訪れることになった。
 違和感も何もない話だが、タイミングが絶妙なことは間違いない。

「ツクモ様。それでは?」
「ん?」
「私のことを」
「言ってないぞ?カトリナが自分で話すべきだろう?」
「え?ありがとうございます」
「ファビアンならここを見せてもいいからな。リヒャルトはダメだ。あいつは、商売にすぐにつなげる。まだ、チアル街に戻すまでは教えるわけにはいかない」
「はい」
「ルートガー。そういうことだから、ファビアンが来たら、カトリナと二人だけにしてくれ」
「はい。でも、よろしいのですか?」
「大丈夫だ。最悪、ここにファビアンを閉じ込めればいいだろう?俺がヨーゼフに話をするから大丈夫だ」
「わかりました」

 カトリナのことはこれで大丈夫だ
 ファビアンが来てくれたら、部屋ももう少し形を変えるだろう。

 その後、少し部屋の設備に関しての話をして、カトリナをおいて迎賓館に戻った。

「ツクモ様。全体会議はどうしますか?」
「しないという選択肢はないだろう?」
「そうですね。でも、よろしいのですか?」
「うーん。代官と一緒に警備や防御を行っている者も来てもらうことになるだろうな」
「わかりました」
「頼むな。俺は行かなくていいよな?」
「えぇそうですね。迎賓館にいてくれるか、クローンを近くに派遣してください」
「わかった。チアルを送り出す。俺は、シロとホームにいることにする」

 全体会議の話をルートガーとしてから、ホームに戻ることにした。

 ホームに戻るのに、ブルーフォレストダンジョンから戻ることにした。

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