雑学部!!

白兎

ランドセルの雑学

 
 夏休みも終わり、新学期が始まった。
 初日は三時間授業で、終了のチャイムと共に、帰宅する生徒がほとんど。しかし、雑学部は部室にて集まっていた。その理由は――


「はぁ……俺帰りたいんだけど。っていうか、なんで一回やったもんやらされてるの俺?」
「そんなこと言わないで手伝ってよ。霧崎さんが来る前に!」
「いや、絶対に間に合わんだろ」


 津樂と一ノ瀬は、ペンを必死に走らせる。というのも、一ノ瀬の課題が全く進んでいなかったのだ。津樂も嫌々ながら、手伝わされている。霧崎はまだ部室には来ていない。彼女がこの場に来ることは、一ノ瀬にとっては最悪だろう。


「絶対に怒る……というより、達也の手伝いすらなくなるよね」
「そうか? 以外に「仕方ないわね」とか言ってあいつも手伝うかもよ。とりあえず、責めれらる前にいろいろと褒めちぎっとけば大丈夫だろ。子猫みたいに目を輝かせて頼めばやってくれそうじゃん。あいつ以外にチョロイし」
「そうね。それがあなたの場合、その輝いた目玉を取って、どこかの小学生の自由研究のテーマとして渡すのだけれど」
「どんな研究内容だよそれ……うわっ!?」


 津樂の背後に迫る笑顔の皮をかぶった悪魔、霧崎がそこに立っていた。


「霧崎さんいつから!?」
「ついさっきよ。で、これは一ノ瀬さんの課題が全く進んでいずに、とりあえず津樂君を半ば強引に部室に連れ込んで、さんざん課題を手伝い基やらされた後に、近くのごみ捨て場に捨てるってことでいいのかしら? そういえば明日は粗大ごみの日だったわね」
「前半まであってたんだけどな。っていうか俺って粗大ゴミなの? 俺、人形と同じ扱いなの?」


 半ばサイコパス発言の霧崎に、津樂は若干引いている。
 そんなやり取りをしていると、一ノ瀬がペンを放り投げて、ぐったりと椅子にもたれがかった。


「あーもう疲れた。なんで高校の課題ってこんなに多いの? 小学生の頃に戻りたい」
「小学の頃でも課題はあったろ?」
「確かに、課題の量は今よりあまり無かったわね。昔は三日もいらなかったのに、今では五日ほどかかるもの」
「それでもすげぇよ」


 そんな話をしていると一ノ瀬は机に突っ伏して、


「でもさーほんとに小学生に戻りたいよね。今日学校に来る途中に小学生見かけたんだけど、私もあんなんだったのかなーって懐かしくなってさ。大きなランドセル背負ってさ。今のランドセルって昔よりも大きいんだよ」


 物思いに耽る一ノ瀬に、津樂はペンを回しながら、


「ランドセルって小学生の体のわりに大きいのは、転んだときにクッション代わりになって後頭部を守るよう作られてるらしいぞ」
「そうなんだ~まぁ、確かにランドセルってクッションみたいだよね。枕にしたこともあるしね」
「そんなことより良いの? もうこんな時間だけど……」


 思い出に浸る一ノ瀬に、霧崎は時計を指さし、一ノ瀬の表情は外と同様、一気に暗くなった。
 結局、三日間津樂は一ノ瀬の課題を手伝わされる羽目になった。



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