雑学部!!

白兎

ラジオ体操の雑学

「お兄ちゃ~ん、いくよ~」


 幼めの声がノックと共に津樂の部屋に扉越しで聞こえる。
 最近の若いもんは元気だなと十七歳の津樂は眠たく重い体を起こして、部屋のドアを置けた。


「佐奈……お兄ちゃん眠たいから一人で行って来いよ」


「駄目! お兄ちゃんただでさえ運動不足なんだから」


 小学生の妹、津樂つがく 佐奈さなは、毎年ラジオ体操に参加している。高校生になった津樂も半ば無理やりに去年も参加した。もちろん津樂にスタンプと言うのは存在しない。


「スタンプ溜めてもらえるのってお菓子だろ? お兄ちゃんが買ってやるから、ほらいっといで」


 立ち去るよう手を払うように動かし、佐奈は少し膨れた顔を見せる。


「もう、グダグダ言わないで早く準備する」


「へいへい……」








「ふぁ~あ、ったく、なんで夏休みなのに早起きしてラジオ体操? まったく、考えたアメリカに文句を言ってやりたい」


「え? ラジオ体操って日本発祥じゃないの?」


「ラジオ体操はアメリカの保険会社が健康と衛生思想のために考案したのが元なんだ」


「へ~それならアメリカに感謝だね?」


「どこが?」


「だって、確かラジオ体操って五回すれば一日の最低限の運動量を満たすんでしょ?」


「じゃあ、一回しかやらない朝のラジオ体操って無意味じゃねぇか」


「確かに……そう考えたらラジオ体操ってなんで二番までなんだろうね? 女性でも最低運動量って三回なんでしょ?」


「いや、教育番組の体操番組ではラジオ体操は第三まであったんだけど、第三は戦後すぐに制作されてラジオで伝えんのが難しくて普及しなかったんだ。ま、今では有効な有酸素運動として注目されてるみたいだけど」


「そこまで知っててなんでやらないの?」


「愚問だな。お兄ちゃんはこうして歩くだけでものすごい運動なのだ! 現にもうしんどい」


「それって単に体力がないだけじゃ……」


「……」


 確信をつかれて無言で見つめるしかできない津楽であった。





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