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生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。43.5話(2)




「はーやっみくん、飲んでる?」


リビングがあまりにも騒がしいので、キッチンに立って水を飲んでいるとナオさんが声をかけてきた。右腕を俺の首にまわしてきて、左手には缶ビールを持っている。

「…まぁそこそこ」

今日会ったばかりだというのに、この人はなぜだかこんなにも馴れ馴れしく話しかけてくる。最初は不愉快だったが、この短時間で慣れてきてしまっているのが不思議だ。

「せーっかく来たんだから楽しもうよぉ、ね?」

そう至近距離で問いかけてくるナオさんからは、アルコールの匂いがする。真澄のように酷く酔っているようには見えない。まぁ、どちらにしろ絡んでくる酔っ払いに違いはないが。

「…別に、今日来るつもり無かったですし」
「え〜?でもちゃんとマンションまで来てたじゃん、美味しいアップルパイまで持って」

顔を寄せてニヤニヤと笑ってくるので、俺はそれを払って眉間に皺を寄せた。

「そ、それは、叔父が行けって言っただけ。手土産は、いきなり押しかけんだから常識だろ」

俺が思わずタメ口を利くも、ナオさんは一ミリも気にする様子は無くまた強引に腕をまわしてきた。

「へぇ〜さては、早見くんどこぞのお坊ちゃんだなぁ?じゃなきゃあんな高級パティスリーのお菓子、そう易々と買ってこれないよぉ」

ほんと美味しかった、とうっとりするようにそう言った。金持ちかということについては否定しないが、わざわざ肯定するのも面倒で何も言わないことにした。

「あ!いい所に相良くんはっけーん!」

唐突にナオさんはそう言って、俺を引っ張ったままそこを通り過ぎようとした相良とかいう高校生を引き止めた。

「…ちょっとナオさん、俺ちょっと外出ようと思ったんですけど」

相良は苦笑いでそう言うものの、俺のように振り払うことはしなかった。俺はどうも、この愛想のいい笑みを浮かべる高校生が苦手だ。

「ねぇねぇ、二人は真澄くんになーにしたの?」

ナオさんは、話も聞かずに突然そんなことを聞いてくる。俺はため息をついて、相良は苦笑いを浮かべた。

「…別に、ちょーっと遊んでやろうと思っただけ」

言わないと離してくれそうにも無いので、俺はかなり要約して投げやりに答える。そうすると、相良も釣られるように調子を変えず口を開いた。

「俺も大したことしてないですよ、零央に嫌われてるだけで」

軽々と言うのでホントか疑わしい。

「えーおもしろくなぁい。じゃあ別に真澄くんのこと好きってわけじゃないの??」

ナオさんにそんなことを言われ、俺は鼻で笑った。

「まさか、ナイナイ。別に俺ホモじゃないし…」

俺が橋場を好きだなんて、笑っちゃう話だ。

そう思って相良の方を見れば、相良はぼうっと賑やかなリビングの方を見ていた。

「……まぁ、そっちの高校生はどうか知らねーけど」

興味は無いが、俺が意味ありげに言えば相良は一瞬驚いたような顔をしてから、貼り付けたような笑みに戻して、え?と首を傾げた。

「えっなになに、相良くんは真澄くんのこと好きなのっ?」

ナオさんは興味津々に、小声で相良くんを覗き込む。

「…いやー、まぁ、タイプではありますけど。手なんか出したら零央に殴られかねないですよ」

苦笑いでそう言う相良に、俺もそういえばあのカレシに殴られたなと嫌な思い出が蘇った。

「へぇそっか〜みんな片想いなんだねぇ」

呑気な調子でナオさんはそんなふうに言う。案の定、まったく人の話を聞いていないようだ。誰が片想いだ、とツッコミを入れるのも面倒で俺はただ溜息をついて黙っていた。すると、ナオさんは俺と相良の顔をグイッと寄せてまた小声で喋った。

「ふふ、なんなら失恋の傷慰め合っちゃう?3Pでもしちゃう?」

なぜか楽しそうに軽くそんなことを言ってしまうこの人。

「はは、何のジョーダン。全っ然笑えねー」
「…俺一応、未成年なんですけど?」

俺と相良は苦笑いでそう返した。それでも変わらずナオさんはひとり楽しそうだ。

「んもぉつれないなぁ〜まぁいいよ、俺も誠くんのことは裏切れないしねー!でも二人のこと気に入ったから、どうしても寂しくなったら付き合ったげる〜」

酒の勢いなのか本気なのか知らないが、軽い調子でそんなふうに言ってくる。誰が男なんか、と跳ね除けてやろうと思ったが、楽しそうにするのでなんだかそんな気も失せてしまった。

「あはは、二人とも照れちゃってかーわい!」

訳の分からないことを言って、ナオさんは俺たちの髪をわしゃわしゃと犬でも撫でるかのようにしてきた。俺と相良は何か言いたげにしながらも、目を合わせて、何を言っても無駄だと悟った。




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