生意気な義弟ができました。
生意気な義弟ができました。43.5話(1)
「瀬戸さん、あっち混ざらないんですか?」
ベランダで一人夜風にあたっていると、部屋から麻海くんが出てきて声をかけてきた。カラカラと開かれた引き戸の隙間からは、リビングでお酒を飲む楽しそうな声が聞こえる。
「あとで行くよ、今は若い子で楽しんでくれれば」
そう言えば麻海くんは、瀬戸さんそんな老けてないでしょ、と笑いながら隣に来た。
「麻海くんこそ、いいの?混ざってこなくて」
「はい、向こうは向こうで楽しそうですし。何より、瀬戸さんとちょっと話してみたかったんです」
麻海くんは、微笑ましそうにリビングの方を見てからそう言った。どうやら部屋の中では、酔った真澄くんが夏向くんと西くんを離さないで困っているらしい。
「瀬戸さんって、もとから男が好きなんですよね?ナオさんと付き合ってたっていうのもさっき聞きましたけど、よく誠くん落とせましたね」
笑ってそう言う麻海くんは、誰がどう見てもイケメンだと認める顔立ちをしている。爽やかで王子様のような雰囲気からは、きっと女子も放っておかないだろう。
「落としたっていうより、向こうから飛び込んできたって言うのかな…、適わないよ、誠くんの好奇心には」
「あはは、そんな感じなんですね」
想像がついたのか、麻海くんは整った顔で綺麗に笑って見せた。
「麻海くんは、真澄くんのことどう思ってるの?」
ずっと真澄くんが悩んでいるようだった。店に来ては誠くんに相談して、僕がアドバイスしたこともあっただろうか。きっと真澄くんはああして悩むほど、麻海くんのことを大切に想っているのだろう。
麻海くんは、夜空を眺めながらゆっくりと口を開いた。
「フラれたんですけどね、なんていうか…未練タラタラなまま、教育実習に行ったんです。そうしたらそこで…西くんと出会って」
そう言って、リビングでじゃれ合いに巻き込まれて困っている様子の西くんを見つめた。こちらと目が合うと、助けてくださいと言わんばかりに見つめてくるのを、麻海くんは楽しそうに手を振るだけで返した。それを見て西くんはあからさまにショックを受けたような顔をする。
「西くん、この中で一番歳下ですけど、基本誰とでも話せるタイプなんです。明るくて、見てるとこっちが元気もらえるような。それに救われたんですかね、俺は」
そう話す麻海くんはとても楽しそうだ。それを見てると、きっと彼は西くんに純粋に惹かれていっているのだということが分かる。
「…麻海くんは、どうして西くんと付き合ってないの?」
そう聞くと、麻海くんは少し俯いて考えるようにした。
「なんていうか…利用したくないんです、西くんの気持ちを。真澄くんを忘れるために利用してるみたいで、嫌なんです。だから西くんには…ちゃんと踏ん切りついてから告白します」
そう断言する麻海くんは、僕にはもう十分西くんを好きだというように見えた。けれどきっと、彼の中でけじめをつけなくては解決しない事なのかもしれない。そう思って僕は何も言わなかった。
「…早く、瀬戸さんみたいな大人になりたいなって思います」
「…え?麻海くんだって十分大人だと思うけどな」
僕がそう言っても、麻海くんは首を横に振るばかりだった。
「大人びているように見えるだけです。中身はまだまだガキで、自分がどこまで我慢できるのか……分かりません。一応前科持ちなんで、今度はちゃんと…傷つけるんじゃなくて、守ってあげたい」
きっと真澄くんのことを言っているのだろう。自分のことで悩ませてしまったと、後悔しているのだろうか。西くんに同じ想いはさせたくないと、おそらくそう感じている。
「…すごく無責任なこと言うけど、きっと大丈夫だよ、麻海くんなら。そんなに大切に想ってるんだから」
そこまで大切にあの子のことを考えられるなら、きっと傷つけてしまうことは無いだろう。
俺がそう言えば、ありがとうございますと麻海くんは笑った。
「ま、麻海さん!マスター!俺って犯罪者っ!?」
唐突にそう叫んでベランダを開けてきたのは真澄くんだった。なんだか泣きそうになりながらこちらを見ている。僕がどうしたのと聞くと、必死に説明してくれた。
「お、俺、未成年に手出してるから、そうなんじゃないかって成樹くんが……!あっ、でもそれだったら麻海さんだって、」
「残念、俺はまだ手なんか出してないよ?」
それを聞いて真澄くんは、一気に青ざめた顔をした。リビングの方では、からかって面白がっているのか、成樹くんと零央くんがクスクスと笑っている。
「ど、どうしよ…れ、零央ぉ〜…」
結局、そう言って零央くんに泣きついて行った。こういう賑やかなのも、たまには楽しいものだと感じて、僕は麻海くんと顔を見合わせて笑う。
「生意気な義弟ができました。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
平凡男子の受難
-
113
-
-
花魁男子!!
-
116
-
-
許されることはない
-
47
-
-
貴方を知りたい//BoysLove
-
25
-
-
ひまっ!そうだ、使い魔になってみよう!
-
87
-
-
感じるのは快楽だけ
-
270
-
-
その魔法は僕には効かない。
-
44
-
-
前世は、女なのに、今世は、男?!なんでやねん!!
-
23
-
-
お兄ちゃんと内緒の時間!
-
54
-
-
少年愛玩ドール
-
117
-
-
偏食な子犬拾いました
-
30
-
-
そこからはじまる恋!
-
14
-
-
王子さまの婚約者は○○○です!?
-
71
-
-
闇と雷の混血〜腐の者の楽園〜
-
111
-
-
試行錯誤中
-
10
-
-
キミの次に愛してる【BL】
-
16
-
-
日常【BL】
-
31
-
-
学生時代
-
16
-
-
好きになったらいけない恋
-
17
-
-
鮫島くんのおっぱい
-
95
-
コメント