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生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。43話





「マスターお邪魔します!」
「お邪魔します」
「真澄と零央くんか、どうぞー」


俺と零央は、マスターの代わりに出てきた誠に促されるまま家に入った。キッチンではマスターが親睦会のための食事を調理しているようだった。

「マスターこれ、お酒とかジュースとかいろいろ買ってきました」
「ありがとう。誠くん、冷蔵庫にしまってもらっていい?」

誠はマスターにそう言われると、手の空かないマスターの代わりに俺からコンビニ袋を受け取って冷蔵庫にしまっていく。その姿はなんだかもう、まるでこの家の住人のようだ。

「あ、真澄さん、こんちわ」

リビングでは、先に到着していたらしい、成樹くんたちが親睦会の準備を手伝っていた。相変わらずの赤茶な髪が不良っぽさを醸している。

「久しぶり、成樹くん、なんかちょっと背伸びた?」
「ん、たぶん5センチくらい伸びた」

滅多に会わないので、顔を合わせないうちに成長期の成樹くんはどんどん身長が伸びていくらしい。その隣には、なんだか大人しそうな男の子がいて、この子がどうやら成樹くんの恋人らしい。

「こ、こんにちは、夏向って言います」
「あ、こんにちは、えっと…真澄です。誠の友達です」

向こうが丁寧に挨拶をしてくれるので、俺も思わずぺこりと頭を下げてしまう。

「そのイケメン、真澄さんのカレシ?」
「あっ、えっと、そう…かな」

成樹くんに尋ねられ、俺は隣の零央に目をやった。

「あと、義理の弟でもある」

零央はそう付け加えて名乗った。そのあとは、どうやら歳も雰囲気も似ているからか、零央と成樹くんはすぐに打ち解けて、まるでずっと前から知り合いだったかのように喋っていた。なんだかんだ言って俺と夏向くんも、控えめな性格が似たのか話しやすくて、すぐに仲良くなった。

親睦会の準備が着々と進められていると、しばらくしてインターホンが鳴った。誠がまた玄関まで出て行くと、次は麻海さんたちが到着したようだった。

「こんにちは瀬戸さん、お邪魔します」
「お、お邪魔します!」

麻海さんの後ろには、俺よりも背の低い男の子がいた。どうやら噂の、麻海さんの友達以上恋人未満の相手らしい。マスターや誠とは本当に面識があるらしく、挨拶を交わしている。それが終われば、二人ともリビングの方へやって来る。

「麻海さん、こんにちは」
「真澄くん、しばらくぶりだね」

そう言って、相変わらずの爽やかな笑顔で微笑む麻海さん。すると、俺と麻海さんの間に零央が割って入った。

「こんにちは、麻海さん。俺のこと忘れないでくださいね?」
「もちろん忘れてないよ、零央くん、お久しぶり」

零央が挑発的な態度を取るも、麻海さんは変わらないように振舞っている。

そういう所、さすがは麻海さんだ。それに比べて零央はいつまでも根に持ってガキだな…。なんて、言ったらめちゃくちゃキレそうだ。

「こっちは西くん、俺の、トモダチかな」
「こ、こんにちは!えっと、よろしくお願いします!」

紹介されて、どこか慌てたように元気よく挨拶してくれた。頭を上げれば、なぜかじっと俺を見つめてきた。

「……えっと…俺の顔に、なにかついてる…?」
「あっ、いや!違うんですごめんなさい!」
「…そう?俺は真澄、こっちは零央。よろしくね」

首を横に振って否定する西くんに、俺は優しく自己紹介する。そうすれば、向こうも嬉しそうに笑ってくれた。二人は成樹くんたちにも声をかけて喋っているようだった。

一通りマスターの料理が終わったようで、みんなでそれをテーブルに並べる手伝いをする。準備が終わり、そろそろ親睦会を始めようというギリギリのところで、再びインターホンが鳴った。


「やっほー!みんな集まってる〜?」

誰よりも明るい声でそう言って入ってきたのはナオさん。初対面の人ばかりだというのに、さすがのコミュニケーション能力だ。その後ろからは、なぜか相良くん、それに続いて早見くんが入ってきてみんな呆然とする。

「な、なんで三人一緒にっ?」

何の接点もなさそうな三人が揃って到着したので、俺は思わず真っ先につっこんでしまった。

「えぇ?えっとね、すぐそこのコンビニで相良くんと会って、顔がタイプだったから話しかけたら目的地一緒だった〜みたいな?あと、こっちの早見くんはマンションの前でウロウロしてたから声かけたの〜」
「あの早見さんは完全に不審者っぽかったですね」
「う、ウロウロなんかしてねーっての…。あとこれ…」

ナオさんはご機嫌に説明して、相良くんは早見くんをクスクスと笑っているようだ。早見くんは、至極居心地悪そうに眉を顰めてから手元の紙袋を差し出してきた。

「えっこれ有名なパティスリーのアップルパイじゃない!?すっごく高いやつ!」

ナオさんは誰よりも先に紙袋を覗いて目を輝かせた。そう言われると、早見くんは満更でもないというように得意げに笑った。

「…まぁ、いきなり押しかけんのに何も無いのも悪いと思って」
「…は、早見くん、俺ほんとに来てくれると思わなかった」

俺が思わず驚いてそう言うと、早見くんはこちらを見て苦笑いした。どうやら、俺の隣の零央の存在にも気づいたらしい。

「橋場が来いっつったんだろ。ってか俺だって来るつもり無かったんだけど?こんな男だらけの親睦会…」

早見くんは、ブツブツと愚痴を零し始める。が、それを妨げるようにナオさんが早見くんの首に腕をまわして声を上げた。

「よぉし!みんな揃ったことだし、早く親睦会始めよー!」

ナオさんの明るい声に釣られて、妙な親睦会は開催された。













「まぁことぉー!酒持ってこいー!」
「おいおい、誰かこの酔っ払いどうにかしてー…」


俺が上機嫌で誠に言うと、誠は面倒そうにした。すると、俺のふわふわとした視界が反転する。

「もう、おにーさん飲みすぎ。こんな危ない人がたくさんいる中でよく呑気に酒なんか飲めるよね」

どうやら零央が俺の体を引き寄せたようで、俺は力の入らない体を零央に預ける。

「おいおい、危ない人って、まさか俺のことじゃないよな?」

缶ビールに口をつけながら、早見くんは愚痴を零すように言った。

「それなら俺もちょっと心当たりありますけどね」

相良くんは、相変わらずの飄々とした笑みを浮かべて軽く言う。それに対して、零央は眉間に皺を寄せた。

「早見さんと相良だけじゃない、もう一人心当たりある人いますよね?」

零央がそう言うと、テーブルの向かいに座る麻海さんが反応した。

「え?それって俺のことかな」
「他にいないでしょ」

零央が肯定すれば、麻海さんの隣に座る西くんが首を傾げた。

「麻海さんって、危ない人なんですか…?」
「…ん?さあ、どうだろう」

わざとらしくはぐらかす麻海さんを見て、西くんは頭を混乱させる。どうやらそれを面白がるように麻海さんは笑っているようだった。

「真澄くんって男の子にモテるんだねぇ〜それじゃ零央くんも大変そお」

ナオさんが、いつもと変わらない調子で言う。この中の誰よりもお酒を飲んでいるはずなのに、全然酔っている様子はない。

「大変なんてもんじゃないですよ、おにーさんほんと手がかかってしょうがない」
「おまえ義弟のくせに生意気ぃー…ちょっとは義兄あにき敬えよなぁ」

俺が相変わらず生意気な態度の零央に文句を言うと、誠が口を挟んだ。

「弟なんてみんなそんなもんだぞー。うちの弟見ろよ、敬意なんて微塵も無い」
「え、俺ちゃんと敬ってるつもりなんだけど?」

成樹くんがそれに反応すると、誠は、どこがだよとツッコミを入れる。俺がテーブルの缶チューハイに手を伸ばそうとすると、それは何も言わずに零央の手に阻まれた。俺は仕方なく酒を諦めて口を尖らせる。

「にしても、春日家が兄弟揃って男と付き合ってると思わなかったなぁ…」
「義兄弟でくっついた真澄には言われたくねーな」

誠がそう言うと、周りはみんなうなづいた。俺はそれに何も言い返せない。誠はしばらくすれば、キッチンで酒のつまみを料理しているマスターの所に手伝いに行ったようだった。

「…いーもん、俺新しい弟見つけたし…。ね〜?」

我ながら能天気に、夏向くんと西くんに駆け寄った。二人とも戸惑ったようにするのが、とっても可愛らしい。

「いくら真澄さんでもそれは許せねぇー、夏向は絶対俺の」
「成樹くんケチー…麻海さんはそんなガキみたいなこと言わないけどー?」

俺は夏向くんを取られたので、西くんに顔を寄せて成樹くんに言ってみせる。それを聞いて、成樹くんは悔しそうにして、麻海さんは苦笑いした。

「お、俺別に麻海さんのってわけじゃないです…!」

恥ずかしがるように、西くんは慌てて顔を赤くした。その仕草も可愛らしい。

「あんまりそういうこと言ってると、零央さん妬いちゃいますよ…?」

成樹くんにホールドされた夏向くんが、困ったようにそう言う。俺がそう言われて零央に目をやると、確かに零央は眉間に皺を寄せていた。

「別に妬いてない」

そんなこと言っちゃって、まったく、零央も大概ガキだな。

なんて心の中で、素直に妬いてくれているであろう零央に、密かに愛おしさを感じた。

するとふいに、ナオさんが夏向くんにグイッと顔を近づけて叫んだ。

「すっごい美少年!お人形さんみたいじゃないっ?」
「な、ナオさん、離してくださいっ」

両手で頬を挟まれ、慌てる夏向くん。ナオさんは聞き入れずにそのまま顔をじーっと見つめる。

「可愛い〜なんで前髪で隠しちゃうの?うちの美容院来てくれれば可愛くカットしてあげるよ?」
「だーめ、んなことしたらまた変な虫寄る」

ちゃっかり仕事先を勧めるナオさんに、成樹くんは離れろと言わんばかりに夏向くんの顔を覆い隠した。

「いいなぁ、俺もそれくらい可愛ければ誠くんも…」

ナオさんがしょんぼりとしたように呟くと、会話を聞いていたのかキッチンの方から誠が、何か言いました?とわざとらしく聞いてきた。その冷たい態度に、ナオさんはまたもやため息を零す。


しかし妙なメンバーで開かれた親睦会では、意図したようにあっという間に親睦が深まったようだった。



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