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生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。20話




「ばーか、ここはさっきやったろ?」
「…ムリ、いろいろムリ。おにーさんと勉強とかやっぱ集中できない」

零央は、不満そうな顔でテーブル越しに俺を見た。

「んなこと言ったって…巧さんに任せられてるしな、おまえの家庭教師役」

俺は手に持った赤ペンをクルっと指先で回して言う。

「夏休みまでじゃなかったの。教えてもらえるのはありがたいけど、相手がおにーさんじゃムラムラして集中できない」
「……お、おまえなぁ……」
「ねえ、二回目は?次いつさせてくれるの」

俺はその質問にドキッとした。

「……べ、別に…いつとかは決めてないけど…」
「じゃあ、明日?いや、今日?今夜?」

俺は、迫り寄る零央の体をぐいーっと押し返した。

「ば、馬鹿、んな急ぐなよ…!」

まったく、零央の横暴っぷりには呆れる。あんなの、次とか考えただけで……。

「っ……ぁーもう!集中しろよ!今はちゃんと勉強しろ!大切な時期だろ?受験生だぞ」

俺がテーブルに向き直って言えば、零央は真剣な顔をして黙り込んだ。行動がいちいち自由で、振り回される。

「…なんだよ、いきなり黙って」
「…いや?進路、考えなきゃなって」
「………おまえ、ほんとに決めてないのかよ?まったく?」

俺が疑うように食ってかかると、零央は頬杖をついて教科書をじっと見つめた。ただ見つめているだけで、読んでるというわけではなさそうだ。

「当たり障りのない大学進学しとけばいいかなって思ってた。実際、初めの進路希望調査でもレベルの合いそうな大学名書いて出したし」

なにか考えるようにしながら、零央は話す。

俺も、受験の頃はたくさん悩んだっけな……。まぁ、俺には教師っていうやりたいことがあったけど…。

「…なんか、アドバイスとかはできないけど…とにかく、後悔しないようにな?俺は、おまえを応援するし」

…なんだか、大したことが言えなくて申し訳ないな……。

零央は、どーも、と軽く言って俺のおでこにちゅ、とキスした。そんな、向こうはなんとも思ってないような行為に、俺はいちいち心臓が止まりそうになる。

…まさか、他の女の子にも軽々としてないだろうな……。

なんて、馬鹿馬鹿しいことを考えてしまうこともある。

「タラシはこれだから…」
「え?なに」
「……なんでもない…」

俺がため息混じりに言うと、零央はトイレに行くと言って部屋を出て行った。

もうあっという間に男子高校生の部屋へと変化を遂げた、この部屋を、俺はふと見回した。引っ越してきてまだ2ヶ月程だろうか、酷く長かったように感じるのに、実際は驚くほど経過していない。

そんなことを思って零央の部屋に寝っ転がると、ベッドの下に何か紙のようなものを見つけた。俺はそれに手を伸ばして取ってみる。

「……これ………」

パステルカラーの封筒に、可愛らしい丸文字で"鴨野くん"と宛名が書かれている。誰がどう見てもそれは女の子からの手紙、いや、さらに言えば"恋文ラブレター"であることは確かだ。

俺はそれを手に取って困惑した。

……こいつ…これベッドの下に落としたのか…?なんだよその扱い…やっぱモテるやつは違うのか?どうせ、こんなの山ほどもらってるんだろうけど…。

「………………」

…………………………返事……どうしたんだろ……。

やはり、一番に気になってしまうのはそこで。

俺が寝そべってそれを呆然と見つめていれば、突然ガチャリと扉を開けて零央が戻ってきた。俺は、なぜかとっさに手に持っていた零央宛の手紙を背中の後ろに隠す。

「…零央、休憩、しよ」
「え?いいの、まだ途中だけど」
「い、いい。ちょっとコンビニ行ってくる…」
「じゃあ俺も──」
「いい、ついて来るな」

俺はそう言って立ち上がり、背中に隠した手紙がバレないように部屋を出た。

突っぱねたからかどこかしょんぼりと気の落ちたような顔をしていたのが見えたが、きっと何か甘いものでも買って帰ればすぐ機嫌を直すだろう。

俺はとりあえず自分の部屋に入って、手に握っていたそれをじっと見つめた。可愛らしい丸文字で書かれた宛名を見ると、沸々と複雑な感情が込み上げる。

…………流れで持ってきちゃったし…どうすんだよ、これ…。

中身を見てみたい、なんて愚かな思いが浮き出るが、もちろんそんなこと許されない。俺は頭を横に振って、ぐるぐるとした気持ちを振り払う。不本意に持ってきてしまった手紙を机の引き出しにしまい込んで、俺はコンビニに向かうべく家を出た。



時刻は夜の22時過ぎ、秋独特の夜の肌寒さがひんやりと体を冷やす。近いからいいだろうと思って薄着で出てきてしまったため、コンビニまでの道のりが少し辛く感じた。


ラブレターなんてそんなの、きっとあいつは腐るほどもらってる。それに、零央を信用してないわけじゃないし、何も考えることなんてないはずだ。それなのに、さっきから同じことばかりが頭の中をぐるぐると掻き乱す。


あの手紙を書いたのはどんな子なんだろう。きっと俺なんかよりもずっと可愛い女の子で、勇気を出してあの手紙を渡したに違いない。クラスも同じなのだろうか。零央とどんな接点があって好きになったんだろう。普段、教室で零央とどんな話をして、どういうふうに呼ばれるんだろうか。


なんて、考えても無駄なのは分かっているのに、そんな女々しいことばかり考えてしまう。


俯いて歩いていると、暗がりで後ろからガバッと誰かに抱きつかれて、俺はビクリと体を硬直させた。

「ぅわっ、だ、だれ、」
「俺だよ、やっぱついてきた」

顔を覗かせてそう言ったのは零央で、俺はホッとした。

「……なんだよ、ビックリさせんな…」
「おにーさんがなんか寂しそうな顔して家出てったから?やっぱついてってあげようと思って」
「……んな顔、してないし…」

してたとしたら、それは、手紙のことだ。

人気ひとけが無いからと言って、零央は俺の手を握って歩いた。その手は俺よりもずっと暖かくて、俺もぎゅっと握り返した。

「嬉しい、おにーさんが抵抗しなくなったの」

零央は、隣から俺の顔を覗き込むようにして言った。その顔は本当に満足気な表情で、俺は思わずドキリとしてしまう。

…………俺だって、ポーカーフェイスなおまえがそうやって本音出してくれるの…嬉しい……。

なんて、絶対言ってやらないけど。

出会ったときはあんなに悪態つかれてたのに、今じゃ仔犬みたいに懐かれて………いや、仔犬というより大型犬か…。


今まで付き合ってきた女の子にも、こういうふうに、手を繋いで笑ったのかな……。


零央が付き合ってきた女子なんて、たくさんいることくらい、聞かなくても分かる。慣れたように俺をドキドキさせたり、デートしたり、それ以外にもいろいろ…。

俺にとっては初めてのことばかりなのに、零央にとってはどれも数回目のことで。

見ない相手に嫉妬したって無駄なのは分かってるけど……やっぱり、考えちゃうんだよ。


「ちょっと。おにーさん聞いてる?」
「っ……え、」

ハッと我に返り顔を上げたら、零央の不機嫌そうな顔がこちらを見つめていた。

「な、なに、ごめん…聞いてなかった」

……こんな女々しい感情、零央が知ったらさすがに呆れられる……。

「だーかーら、今夜、やっぱエッチしようよ」
「………は、はぁっ?何言ってんだよ、んな急に──」

ドカッと顔が熱くなって、俺が慌てて反対しようとすると、その口はキスで塞がれた。抵抗する間もなく、体を道沿いの壁に押し付けられ、口の中に舌が入り込んでくる。夜遅くで暗がりだからといはいえ、まさかの行動に俺は頭の中が混乱した。

外だぞ…!?こいつ、調子乗りやがって…っ。

そんなのお構い無しに舌先で俺の口内を弄んで、やっと離れたかと思えば、次は俺のパーカーの襟の隙間から見えた鎖骨に下を這わせた。首筋まで零央の舌のヌルヌルとした生暖かい感触が上がってくると、背筋がゾクリとして腰が抜けそうになる。

「……んっ、…馬鹿……っ」

当たり前のように倒れそうになったところを器用に支えられて、俺を見下ろす零央の目を鋭く睨んでやった。

「はぁ、ダメ…やっぱコンビニやめて帰ろ。父さんたち今日は帰ってこないし、ね?」

いいでしょ?とでも言いたげな顔だ。

俺の返事を待たないまま、零央は俺を家まで引っ張った。

いつも自分勝手で、気分屋で横暴で、それなのに突然優しくしたりして、振り回されてばっかだ。

分かってるのに、それに逆らえない俺も俺だけど……、しょうがないだろ…あんなふうに強請られたら…。

支えられてた腰のあたりがまだ火照っていて、心臓が鳴り止まない。



家の中に引っ張られれば、零央は急かすように俺を自分の部屋へ招き込んだ。されるがままベッドに押し倒されて、薄暗い部屋の中で零央が俺のパーカーとTシャツを捲りあげた。

俺は熱の篭った視線を浴びて、思わず口を噤んで何も言えなくなってしまう。

零央は触れるだけの軽いキスを何度もして、それから俺の胸の突起を指先で弄んだ。俺は体に走った刺激にビクンと反応してしまって、羞恥で顔を覆い隠した。零央の熱い指が俺の体に触れる。

…………くそ、こうやって、どれくらいの女の子を翻弄してきたんだよ。

こんな時でさえ、…いや、こんな時だからこそ、ズルズルと引きずってしまっている気持ちが一気に湧き出てくる。

「っ、……………馬鹿、零央の馬鹿……っ」

俺が覆い隠した腕の下でそう言うと、零央は目を真ん丸くして手を止めた。

「……なに、なんなの?」

零央は不思議そうな様子で、俺の顔を覗き込んできた。俺は目を合わせたくなくて、ふいっと横へ視線を逃がす。

「…ぅるさい……嫌いだ、零央なんか……っ」

心にもないことを口突けば、途端に目の端から涙が零れた。

零央が慣れたふうに触るから、ごちゃごちゃな頭の中が余計掻き乱される。

「どーしたの、泣いちゃって」

零央はまるで子供でもあやすみたいに俺の目元を拭って優しく笑った。

……どうせ、こんなふうに優しくすれば、今までの女の子はみんな有無言わせず扱えてきたんだろうな。

自分でも呆れるくらい、沸々と真っ黒い感情が顔を出す。

こんな俺、零央に見せたくない。


俺が何も答えられずにいると、零央はおでこにキスしてきた。

「ごめんおにーさん、…我慢、できないから…いい?」

そう言って、硬くなった自分のものを、ズボン越しに押し付けてきた。俺の心臓は跳ねて、零央の目を見れば、まるで俺に拒否権なんかないみたいに鋭い視線が貫いた。

俺は返事をする代わりに、黙って零央の背中に腕を回してぎゅっとしがみついた。

……結局絆されちゃうのも、悔しい。

零央は俺のズボンとパンツを剥ぎ取って、深いキスをした。舌を絡められれば、あっという間に俺の頭はぼーっとして息をするので精一杯になる。ドキドキと熱をもったそれを軽く扱かれれば、俺のものはドクリとだらしなく先走りを垂らして水音を立てる。

「…は、おにーさんのほうが待ちきれないみたい」
「う、るさ……っ」

零央は先走りをローション代わりに、後ろの孔に指を宛てがう。ぷつりと指が一本入ってくれば、そこはそのまま入ってきた太い指を奥まで受け入れてしまう。中を擦られる度にビクリと腰が跳ねて声が漏れる。それがやっぱり恥ずかしくて、俺は必死に耐えた。

そんなのも知らないで、零央は指を一本、また一本と増やしていく。

「ん、ぁっ……零央っ、も、いい…からぁ……っ」

次第に追い詰められる熱に耐えきれなくて、俺は急かすように零央に訴えた。

腰がジクジクと熱を溜めて、苦しい。

「…はいはい、煽んないでよね…おにーさん一回イっとこうか、苦しいでしょ?」

そう言って、零央は中の指を意図的に動かして、俺の弱いところを掠めた。それだけでも心臓が止まりそうになるのに、前まで一緒に触られてすぐに達しそうになる。

「ぁっ、や、」

何度聞いても自分から出てるとは思えない、女みたいな甘い声が耳に残る。

「…かわい、こーふんする…」

耳元でそんなことを囁かれた瞬間、俺はビクリと絶頂に達して熱を放った。

「……っぁ、はぁ………っ」

零央の手の中にドロドロと吐き出された白濁が視界に入って、ドカッと恥ずかしくなる。それでも、一度イってしまったせいで体はぐったりと重く動かない。

「あーぁ、おにーさんほんと体力無いなぁ…まぁ、そっちのが暴れないしいっか」

俺は反論する元気もなくて、ただひたすら呼吸を整えようと肩を上下していた。零央はズボンの中から興奮しきった自分のものを露わにするとあっという間にゴムを装着してから、口角を上げて笑った。

「記念すべき二度目の夜だね、おにーさん」

そんなふざけたことを言ってるにも関わらず、その表情は高校生とは思えないくらい大人びた色気を纏っていて、ドキリと喉の奥が詰まるみたいな感覚に襲われた。柔らかくなった後ろにそれを宛てがわれれば、バクバクと心臓が跳ね上がる。

「すげー期待してるって顔してる」
「………は、早く、して……っ」

俺はすぐそこにいる熱を焦らされて、思わず懇願の言葉を吐いてしまった。

そんな後悔をする暇もなく、期待していた熱は押し寄せる。





















────朝か。


そう悟って目を覚ますと、隣には零央が眠っていた。腰のあたりが鈍く痛みを持っている。

二度目のこの光景も、何だか複雑な気分だ。

──結局、頭の中がごちゃごちゃなまま抱かれてしまった。

嫉妬とか恋人とか、零央と出会うまではそんなの無縁で他人事だったのに。いざ自分がそんなもの抱えてみると、黒いものに包まれたみたいに自分の嫌なところばかりが顔を出して、もうどうしていいか分からなくなる。

俺をこんなふうにしてしまった張本人は呑気に隣で寝てるし、きっと零央はこんなことで悩まない。

スースーと寝息を立てて眠る零央の首元からは、細いチェーンにぶら下げられた黒いペアリングが覗いた。そのすぐ横に視線をずらせば、零央の肩あたりにはくっきりと、俺が最中に残したであろう歯型が痛々しく痕になっていた。


………………なんか、独占欲の塊みたいで、恥ずかしい。


なんだか複雑な心境になって、俺は重い腰を持ち上げて静かにベッドを降りた。






























「…ちょっとー、起きたら隣に誰もいないって寂しいじゃん」

不満げに髪をかきあげて、零央がリビングへ降りてきたお昼頃。俺はシャワーから出てきたところで、冷蔵庫を覗いていた。

「…あぁ、ごめん」

黙ってベッドを出てきたことを素直に謝ると、零央は少し驚いたようにしてからキッチンへ入ってきて俺の顔を覗き込んだ。

「…なに怒ってんの?やっぱなんか怒ってるよね、昨日から」
「………別に、怒ってない」

俺がペットボトルの水を飲もうと口を付けたところで、零央がそれを取り上げて言う。

「いや、怒ってるね。そんなに嫌だった?セックスするの。すげー気持ちよさそうだったのに」

唐突に出た直接的な言葉に、俺はカッと顔が熱くなる。

「ちが、違う!そうじゃないけど、」

……………そうじゃないけど、なんだ。

こんな醜い俺は、見て欲しくない。

俺はその先の言葉が出てこなくて俯いて黙り込んだ。

これじゃまるで、駄々をこねる子供みたいじゃないか。

「なにさ、言いたいことあるなら言って欲しいんだけど?」

零央はもどかしいのか、焦らすように俺に詰め寄る。

これ以上零央の機嫌を損ねたくないのに、喉がつっかえたみたいに何も言えなくなる。

零央は俺から取り上げたペットボトルをキッチン台に置いて、小さく溜息を漏らした。俺はそれにビクリと肩を揺らす。

「…そんなに言えないなら、いいけどさ。俺が悪いことしたならそれはそれではっきり言って」

そう吐き捨てられて、俺は恐る恐る顔を上げた。零央は俺と目を合わす前にふいっと踵を返して行こうとする。


……嫌だ、違う、喧嘩をしたいわけじゃないんだ。


俺は零央が行ってしまうのが悲しくなって、咄嗟にドンッと体当たりする勢いで後ろから抱きついた。

「れ、零央、待って…違う、から…。おまえは悪くない……!」

俺が必死にそう言えば、零央はゆっくりこちらを振り向いて俺の目を見つめた。その顔はなんだかちょっと驚いてるような顔で、俺の言葉を待っているようだった。

「……俺が、勝手に…………嫉妬、して…」

俺が消え入りそうな声でそう言うと、零央はすかさず問い詰めた。

「嫉妬…?なにそれ、どういうこと」

…………そう、なるよな……。

俺は少し躊躇してから、やっぱり諦めてゆっくりと口を開いた。

「……お前の部屋に、手紙が、落ちてて…たぶん、女子からの…。それに、なんか、モヤモヤして。ペアリングとか噛み跡とか全部、零央に対する独占欲の表れみたいで、恥ずかしくなって…」

俺が必死に言葉を紡げば、零央はじっとそれを待ってくれた。まだ自分の中ですら整理できていないのに、それを他人に説明するなんて難しくて上手く言葉になってるか分からない。

「…顔も名前も知らない相手に、嫉妬なんか…見苦しいし……でも零央は女子に人気者で、どうしていいか分かんないし……。零央が今まで付き合ってきた女の子のこととか考えちゃうし、慣れたように触られればそれだけで複雑な気持ちになる…」

言ってて、自分でも女々しいと痛感した。

すると零央は俺の頬を手のひらで包んで、唇に触れるだけのキスをする。


「…へえ、なんだ、かわいー」


零央は、俺の悩んでたことをその一言で片付けてしまう。

可愛いなんて、こんな醜い感情のどこが。

「女子からの手紙っていうのはちょっと心当たりないけど、なに?ヤキモチ妬いてくれたんだ?それだったら、ちょっと…いや、だいぶ嬉しい」

零央は子供みたいな無邪気な笑顔で笑って俺を見つめた。俺はなんだかそれが悔しくて、精一杯反抗してやろうと睨む。

「っ……て、手紙、落ちてただろ、可愛らしい封筒に…中身は読んでないけど、丸文字で宛名が書いてあった…」
「……あー、もしかしたら、勝手にかばんの中に入れられてたのかも。俺読んでないしそんな手紙」

零央は苦笑いでそう言った。俺は青ざめて、急いで二階へ駆け上がってまたリビングへ戻ってきた。


「こ、これ、ベッドの下で拾ったんだよ」

引き出しから取ってきたパステルカラーの封筒を零央へ差し出す。案の定、零央はポカンとした顔でそれを受け取った。その中身を開けて、零央はこちらへ視線を送った。

「…たしかに俺宛だけど……、一緒に読む?ラブレター」

ニヤリと笑って、零央はひらひらとその手紙をこちらへ見せた。俺は、その中身が気になる気持ちを抑えられず、コクリとうなづいた。


「…………よ、読む…」





そのあと一緒に、零央へ宛てられた手紙を読んだ。これを書いた女の子には申し訳ないと思いつつも、やっぱり読んでみたかったのだ、零央への恋心を。

文面は丁寧な字で綺麗に書かれていて、気持ちが篭っているのが痛いくらい分かった。こんなふうに想われる零央は、やっぱりモテるんだと改めて実感してしまい、少し複雑になった。

それでも零央は、ちゃんと断るから安心してよ、と笑って俺の頭を撫でるものだから、俺はなんだかホッとして泣きそうになる。

恋愛からいろいろ、経験が豊富なのは仕方がないから許して、と零央が困ったように言った。俺だってそんなのどうしようもないことだって分かってるから我慢するけど、やっぱり、もっと前から零央とこうなれてたらなんて、考えてしまうものだ。

そうしたら、俺にとってだけじゃなくて、零央にとっても、俺が"初めて"になれてたかもしれないのにな。





「…零央の初めてを全部、俺がもらえたらいいのに」


ソファの上でそう呟くと、隣の零央がこちらを見つめるのが分かった。何も言わずにクイッと顎を上向かされて、バチッと視線が絡まる。恥ずかしいことを言ったせいで体温が急上昇するが、なんでか目を離せなくてただひたすらバクバクと心臓が鳴った。


「心配しなくても、こんなに好きになったのはおにーさんが初めて」


そう言って、またキスしてくれた。



───そんな単純な言葉で気が済んじゃう俺も、相当こいつに惚れてるんだろうなぁ。






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コメント

  • あんこ、

    今回も最高です!!!ご馳走様でした(❁´ω`❁)アリガトウゴザイマス
    このcpやっぱりめっちゃ好きです!!!次回も楽しみにしています!!!!!!(落ち着け)

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