生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。9話



「おにーさん、どっか行きたいとこない?」

俺がキッチンで朝ご飯を作ってると、後ろから零央が声をかけてきた。

「別にないけど……なんで?」
「デートしようよ」
「……いや……遠慮しとく…」

零央から"あんたを落とす宣言"をされてから数日、変わったといえば変わった。ちょっと前までの冷めた態度は少しマシになった気もするが、あの生意気さは全くといっていいほど変わらない。

「…てか…なにしてんの?」

俺が味噌汁を作っていれば、零央は寄ってきて俺の背後にピタリとくっつく。Tシャツの下に手を潜り込ませて、俺の腰まわりを触る。

「セクハラしてる」
「離れろって…くすぐったいし…」

"俺を落とすって本気で言ってんの?"なんて、聞きたいけど聞けやしない。だって、あんな震え声で言われたら本気以外の何者でもないじゃないか。

…………けど……零央の言うことだぞ…?きっと一時の気の迷いに違いない…。

「てかお前、受験生だよな…遊んでる場合じゃないだろ」
「えー、つまんないこと言わないでよ。じゃあ勉強教えて、まだ夏期講習の埋め合わせも全部出来てないし」
「…お前がちゃんと勉強に集中してくれるならな」
「んー、まだまだ思春期真っ只中の高3男子だし?それは保証できないかな」

やっぱりふざけてやがるこいつ。

すると、突然リビングのドアがガチャっと勢いよく開いた。

「ただいま!真澄、零央くん、お土産たくさん………………」

「えっ」
「あ」

元気よくお土産の入っているであろう紙袋をこちらへ向けた母さんは、俺たちを見て言葉を失った。
無理もない、義弟おとうと義兄あにの背後にピタリとくっついて服の中に手を入れているのだから。

零央は、無言のままパッと俺から手を離して一歩退いた。

「…あー…母さん……」

俺が何とか取り繕おうと言葉を探していると、母さんの後ろから巧さんが顔を出した。

「ふたりともただいま。ん?どうしたそんなところで立ち止まって」
「き、聞いて巧さん!この子たち、いつの間にじゃれ合うほど仲良くなっちゃったみたいなの!」

母さんは、嬉しそうにそんなことを言った。

「本当か?嬉しいなぁ仲良くなってくれて」
「…あー、そう、俺実はずっとこーいう兄弟が欲しくて」

零央は、テキトーな事を言って笑った。

「か、母さんも巧さんもおかえり、そういえば今日帰ってくるって言ってたっけ?」
「あぁ楽しかったよ、久しぶりの旅行。家を空けてすまなかったね」
「いや、楽しんできてくれたならよかったです」

…………なんとか誤魔化せたみたいだ……。

母さんと巧さんは手一杯の紙袋をテーブルに広げて、楽しそうに旅行の話をしだした。俺と零央はそれに一日中黙って付き合うことにした。


























「まーこーとー…」
「おまえなぁ…」

バイト終わり、いつものように誠の働く喫茶店に立ち寄った。誠は何か言いたげな顔をしてコーヒーを俺の前に差し出す。

「…俺さ…モテ期かも……」
「はぁ?」
「…なんて冗談を言いに来たんじゃなくてさ。この前出たレポートの課題見せてください」
「なんなんだよおまえ」

誠は持っていたトレイで俺の頭をパコッと叩いた。

「誠のウェイター姿も様になったよなぁ」
「そりゃもう2年は続けてるからな」
「…今日マスターは?」

カウンターの方を見ても、マスターの姿はない。

「あー、さっきから中で電話してる」
「電話?へえ、意外と忙しいのな」
「てか真澄も珍しいな、課題見せてなんて」

誠は、相変わらずガラガラな店内を見てから、目の前の席に腰掛けた。

「まぁな…最近ちょっといろいろありすぎて…」
「なに、麻海さんのこととか?」
「……まぁ…それもそうなんだけど…」

誠はじっとこちらを見つめてきた。俺はその透き通ったまっすぐな視線に居心地の悪さを感じる。

「…モテ期とか言ってたな、麻海さんの他に?誰だ?」
「勘は鋭いよなほんと…。…………義弟……とか言ったら、笑う…?」

俺が恐る恐る聞くと、誠は表情を変えないまま俺をしばらく見つめて。

「ふっ」

鼻で笑った。

「義弟?本気で言ってるのかそれ?笑うに決まってんだろ」
「いや、俺も冗談であってほしいんだけど…」

誠は遠慮の欠片もなく俺を馬鹿にするみたいにして笑った。

「いや、ほんとなんだってば、マジで…こんなことお前くらいしか相談できるやついないし…」

俺が思わず小声で訴えかけると、誠はピタっと笑うのをやめた。それでから、徐々に神妙な顔つきになった。

「………マジで…?」
「さっきからそう言ってるだろ…」
「義弟って、親の再婚相手の息子だろ?いくつだっけ」
「高3。いかにも俺とは真逆な感じ…」

俺がコーヒーの口をつけて言うと、誠は頬杖をついてこちらを見た。

「真逆って?」
「…ほら、いかにも陽キャって感じで……、もし同じクラスにいても絶対関わることないだろうなーっていう…麻海さんに対しても生意気だし…」
「え、麻海さんと顔合わせてんの?なに、修羅場??」

誠は食いつくようにそう言った。

……あれは確かに…………修羅場だったのかもしれない……。

思い出すだけでも背筋が凍る。

「…麻海さんについては…ちゃんと断ったし…とにかく、」
「おい待て」

俺が話を続けようとすると、誠は真剣な顔をして口を突っ込んだ。

「今、断ったっつった?麻海さんの告白を?」
「…………あぁ……まぁ…」
「おいお前、麻海さんみたいな完璧な人が好いてくれるなんて、そうないぜ?」
「…………男だけど……」

誠は、そんなの関係ないだろ、と言い張った。

「まぁ子孫繁栄は期待できないけどな」

真面目な顔してふざけたことを言う。

「ふざけたこと言ってる場合かよ…俺だってちゃんと考えたんだよ、考えた上で答え出したんだ」
「…ふーん。まぁ、男女おとこおんな関係なくおまえが誰と居たいかってのが大切だろうからな、いいんじゃん?」
「………なんだよかっこつけたこと言いやがって」

俺はティーカップをゆっくり揺らしてから、口をつけた。

「だから、性別とか気にしないで向き合ってやれよって言ってんだよ、その義弟くんもさ」
「…………ん…わかってる」

誠はなんだかんだいって真剣に相談に乗ってくれる。おかげで少しすっきりしたような気もする。

「ありがとな、また来るわ」
「おう、がんばれよモテ男くん」

俺は、コーヒーをぐいっと飲みほして、席を立った。




























「だーかーら、ここはこっちの公式使うんだってば。さっき言ったばっかだろ?」
「えー…そんなこと言ったっけ」

零央は、つまらなさそうな顔をしてシャーペンを転がした。

「さっきまでの集中力どこ行ったんだよ…もう休憩かー?」
「…いや、もっかい教えて」
「はいはい」

こいつと出会ってまだ一ヶ月も経ってないけど、零央がズカズカと遠慮なく俺に干渉してくるおかげで、俺もだんだんこいつのことがわかってきた気がする。

ただの生意気なマセガキかとも思ったけど…いや、それもたぶん間違ってはないんだろうとは思う。でも、争い事は嫌いですみたいな顔して負けず嫌いで、自分の意思はちゃんと持ってて。ただムカつくくらいどこまでも気分屋で、自分勝手で、いつも振り回される。何を考えてるかなんてよくわからないし…。

「おにーさん」
「えっ、あ…なに?」
「なにじゃなくて。そんなに見つめられたらムラムラするんだけど」

零央は憎たらしい表情で笑ってそう言った。俺は思わず自分の目を手のひらで覆い隠した。

「…ごめん」

……………めちゃくちゃガン見してたんだろうな…恥ずかしい……、てかなんで俺が謝ってんだ……。

「……零央は…その……ノンケだよな…」

正面に座る零央に、俺は小声で聞いてみる。すると、零央は表情を変えないまま答えた。

「うん、普通に女の子好きだけど?」
「…………じゃあ…俺見て、ムラムラするとか…………絶対嘘だろ…」

俺はどこからどう見たって男だし、女の子みたいに魅力がある訳でもない。

「なんで?好きな人にムラムラすんのって別に普通じゃん。俺の最近のオカズおにーさんだし」
「っ!は、はぁ!?お、おま、お前何考えてっ…」

とんでもないことをカミングアウトしだした義弟に、俺は思わず言葉を失う。そんなの言われた俺の方が恥ずかしすぎて、今にも顔から火を吹きそうなくらい熱いのが自分でもわかる。

「そんなに驚く?それともなに、許可いる?」
「ん、んな…………も、もういい、勝手にしろよ……」

そんなの止める権利俺にないし、いきなりそんなカミングアウトされてもただただ恥ずかしいだけだ。

「でもやっぱ本物が一番だよな」

零央はそう言って持っていたシャーペンを置いて俺の手のひらを掴んだ。そのまま口元まで持っていって俺の指に軽くキスする。その光景はまるでファンタジーの世界の王子様だ。

「や、やめろよ馬鹿…っ」

俺はびっくりして一瞬で手を引き抜いた。零央はおもしろがるみたいにして笑った。

「そんな赤くなって、俺のこと好きなんじゃん?」

勝気な表情でそんなことを言われ、俺の体温はさらに上がる。

「………………す、好きとか……よくわかんないし……おまえと違って恋愛経験少ないしな…」

俺は零央の目を見ることができなくて、俯いて小さな声で言った。

そりゃ女の子に恋したこととかあるけど、ろくに喋ることもなくて、いつもただ遠くから見てるだけで終わってた。そんなのほんとに恋してたのかも怪しいし、恋愛とか、考えれば考えるほど分からなくなって俺には難しすぎる。

「なにそんな難しい顔してんの」
「そ、そりゃするだろ………おまえだって、どうしたらそんなに割り切れるんだよ…。男だし、義理とはいえ兄弟だろ…」

俺がそう言うと、零央はしばらく黙った。

「……いちいちそんなの考えてたら疲れない?キスしたいと思ったらするし、エッチしたいと思ったらする、そこにこぎ着けるためにおにーさんを俺のモノにする。欲しいものは全部欲しい。それだけじゃない?」

……こいつは…………貪欲だ、貪欲すぎて何も言えない……。

そんなストレートな言葉を吐かれ、思わずドキリとする。俺が黙り込むと、零央はその隙に俺のおでこにキスした。

「っ、な、なに…」
「おにーさんがちゃんと好きって言ってくれるまでは、これで我慢しとく」

………………お、王子様気取りやがって……イケメンってだけで似合うから、余計ムカつくし…………、急にそんな扱いして、振り回されてばっかだ俺……。

「これも、すっげー悔しいけど、まだ我慢する」

零央はそう言って俺の首筋に指を触れた。

だんだんと消えかけてきた、キスマークだ。麻海さんが上書きしたと言っていた。

「……これは……おまえがあのとき好きにしろなんて言うから…」
「その時はほんとにそう思ってた、けど…後になって後悔してる。どこまでしたのあの人と」
「どこまでもなにもない…なにもしてない」

ほんとはちょっといろいろあったけど、それを言ったらまためんどくさいことになりそうなので、テキトーにはぐらかす。

「あっ、てか勉強!勉強してたんだろ!」
「はは、今更?そっちが始めたんじゃん」

危ない危ない、また勉強から道が逸れるところだった。


























「零央の夏休みももう少ししたら終わりだな」

巧さんが、出勤前にネクタイを締めながらそんなことを言った。零央はそれを聞いて面倒くさそうにした。

「あ、そういえば、零央くん夏休み明けに体育祭あるんでしょ?仕事で見に行けないけど、頑張ってね」
「へー!体育祭?懐かしいな、俺見に行こっかな」

ただの思いつきでそんなことを言ってみる。すると、零央がこちらを見た。

「…ほんとに言ってんの?別に何も面白いことないと思うけど」
「学生生活最後の体育祭だろ?楽しめよ。零央はなんの競技出るの」
「忘れた、でもなんかいろいろ出る」

テキトーだな。

「でもいいじゃない、真澄どうせ休みなら見に行って来なさいよ」
「そうだな、俺たちは行けないから代わりに行ってくれるかい」

巧さんは、そう言って俺に体育祭のプログラム表を俺に渡した。

どうせまだ夏休みだし、誠でも誘って見に行くかな。

「おにーさん来んの?じゃあ、本気出さないとじゃん」
「どうせ運動得意なんだろー、見に行ってやるんだから優勝しろよな」
「はは、楽勝楽勝」

体育祭なんて、足を引っ張るだけで嫌なものだったけど、見に行くのは楽しみだ。




























暑い、暑すぎる。


「どこにいんの、義弟は」

誠がTシャツをパタパタと仰いで聞く。

「さあ…でもたぶんあのへん?」

赤組と言っていたので、俺はテキトーに赤組の方を指さした。

空は青く晴れて、絶好の体育祭日和だ。生徒達は体育着姿で応援席に座っている。明るい音楽が流れて賑やかなグラウンドを見て、懐かしさを感じる。

すると、ポケットでスマホが通知音を鳴らした。

「あ、零央からだ……てかスマホ没収されるんじゃないの」
「イマドキそんなの律儀に守ってる高校生の方が少ないと思うけどな」
「そうか…?少なくとも俺は守ってた…」

そう言うと誠は、真澄らしい、と笑った。

「リレーと借り物競争出るってさ。あ、リレーはもうそろそろ始まる…悪いな休みの日にまで付き合ってもらって」
「いいや、俺もその義弟見てみたいしなー、何せ麻海さんと張り合うくらいだからな」

完全におもしろがってるな誠……。


BGMが焦燥的なものに変わって、すぐにリレーが始まった。零央の姿を見つけようと目を凝らすと、すぐに見つかった。

「あっ、あいつ、アンカーだ」

俺が指さすと、誠はそっちを見た。

「へえ、あれが義弟」
「見ろよ、もうちょっとでバトンまわってくるぜ」

このドキドキ胸が高鳴る感じ、俺まで高校生に戻ったような気分になる。

赤色のバトンを受け取ると、零央は全速力で走り出した。

「うぉ、すげーはや、」
「きゃー!!零央くんかっこい〜!」
「零央くん頑張ってー!」

俺が零央の足の速さに感動するよりも先に、隣の応援席から耳が痛くなるような甲高い黄色い声が聞こえた。俺は思わず呆気に取られて黙り込む。

「おまえの義弟…人気者なんだな」
「そ…そうらしい…」

さすがの誠も、苦笑いしている。

白組の女子までもが、零央の名前を叫んで応援している。予想はしていたが、まさかここまでとは。

あっという間に零央が走りきると、パンッとゴールの合図が鳴らされた。もちろん赤組は一番だ。

 「零央くん借り物出るらしいよ?運命的な出会い来ちゃうんじゃない!?」
「きゃ〜どうしよう手引かれて走ったらキュン死にする自信ある〜」

隣からはそんな声が聞こえた。

「零央くん?おまえの義弟なんかすげーな、そのうちおまえ女の子に背中刺されるんじゃね?」
「……いや洒落になんない…」

有り得なくないな…、と背筋がぞわぞわした。

「でもなんか優越感な。あんな人気者が俺のこと好きって」

冗談のつもりで笑ってそんなことを言ってみせると、誠は少し目を丸くしてまじまじとこちらを見つめた。

「…真澄、もう告白OKしちゃえば?」
「なんでそうなるんだよ」




他にもいろいろな競技を終えると、借り物競争の順番がやってきた。応援席の女の子たちはそわそわし出す。

「青春だなーこういうの」

誠は楽しそうにした。

「俺は嫌な記憶しかないなー…。高1のとき、男の先輩に借り出されてさ…俺走るのめちゃくちゃ苦手だったから、手引かれて走ったらコケたんだよな」
「そりゃ見せもんだなー、俺はドキドキしながら紙開いたら校長先生って書いてあってテンション下がったっけ」

そんな笑い話をしていれば、応援席がドッと沸いた。

「次零央くんの番だよ!私の出席番号引いてくれないかな〜」
「そういえば最近彼女と別れたらしいよ?チャンスなんじゃない?」

……そういえばそうだ、あいつ元カノのこと引きずってたんじゃ……。

そんなことを考えてる間に、パンっといつ合図とともに、借り物競争がスタートした。目で零央を追うと、お題の紙を開いたらすぐに走ってこちらの方へ走ってくる。その瞬間、応援席の子たちはさらにザワつく。

「…4組の13番、誰」

零央が隣の応援席の前で紙をひらりと見せて、無愛想に声を上げた。それをぼーっと見てた俺は、零央と目が合った。すると、一瞬だけ笑ってヒラヒラと手を振ってくれた。俺が手を振り返そうとすると、それよりも先に女の子が手を挙げた。

「わ、私13番!」

そう言って前に出てくると、零央はその子の手を引いて走り出した。手を繋いでゴールするのが決まりらしい。後にした応援席では女の子たちの叫び声が頭を打つ。

「うわー青春だなぁ戻りてー」

俺はただそれを呆然と眺めていた。
零央は女の子に合わせるようにゆっくりと走る。手を引かれる女の子は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。

「…………あぁいうのが、似合うよな…あいつは」

俺が呟くように言うと、誠は呆然とする俺の顔を覗き込んできた。

「なに、俺なんかじゃ釣り合わないって?」
「……まぁ……そうだな、釣り合うわけないけど…」
「…何もう付き合ってるみたいなこと言ってんだよ」
「えっ、」

誠にそう言われ、俺はハッと我に返り自分の口を塞いだ。

「………………何言ってんだろ俺……」

なんだか女々しいことを言ってる自分に、血の気が引いた。

「もう一回言うけど、告白OKしちゃえば?」
「なんでだよ」




借り物競争が終わると、零央がやって来た。改めて体育着姿を見ると、ほんとにただのガキだ。

「零央、おつかれ。速いじゃん」
「見てたんだ、でもリレーは俺がバトンもらう前から一位だったけど」

零央は無愛想にそう言った。

「どうも、おにーさんの友達?」
「真澄の親友、春日かすが まことって言います、よろしく零央くん」
「一人で来るのもなんかなって思って付き合ってもらった」

すると、誠がいきなり零央の背中を叩いた。

「それにしてもやるな、麻海さんと張り合うなんて」
「ちょ、誠…!」

突然そんなことを言う誠に、俺はびっくりした。零央は、ちょっと驚いたようにしてから、察したのかすぐに憎たらしい表情で笑った。

「まぁ、楽勝ですよ、すぐ俺のにしてみせるんで」

零央は恥ずかしげもなくそんなことを言って俺を見た。

「馬鹿か…!なにそんな恥ずかしいこと言ってるんだよ…」
「お熱いね〜」

誠は、ふざけたように口笛を吹いて茶化す。

「わかったから…もう、もう戻れよおまえ…!」

俺は零央の背中を応援席の方へ押し戻す。

「はいはい、来てくれてどーも。誠さんもありがとうございます」

零央はそう言ってヒラヒラと手を振ってから戻って行った。

……麻海さんにはくそ生意気なくせに、誠にはちゃんと礼言うのかよ。

「すげー好かれてんじゃん、まぁ頑張れ」
「何をだよ…」



零央の運動能力と人気度を体感した一日だった。


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コメント

  • 砂糖漬け

    大好きですこの作品!!!最高です(*゚O゚*)

    4
  • Coro

    通知来て飛んできました

    6
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