観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
登場
混乱する私を見つめ、久遠の瞳に涙が浮かび始める。薄暗い中で光る一滴が、久遠の頬を流れ落ちた。
「ごめんなさい……」
「久遠!?」
「あ、あああああ!」
途端、久遠の悲鳴が玄関に広がった。身を捻らせ激痛にもがいている。私は急いで駆け寄ろうとするが、さらに異変が起こった。
玄関の扉が独りでにバタンと閉まる。さらには窓から差し込む日差しがなくなり、空が暗黒に包まれる。校庭も影に覆われ漆黒と化した。そして、
『助け、て。ザッ、ザー……、タス――ザッ――ケ、テ……』
「そんな!」
久遠の悲鳴に混じって小女の声が聞こえ始める。黒い世界の出現。よりにもよってこのタイミングで?
「久遠!」
久遠は今も苦しんでいる。私は止まっていた足を動かし久遠に近づく。しかし、そんな私を強い目つきで久遠が見てきた。
「近づいては駄目です!」
「でも!」
制止を求める久遠の叫び声。その瞬間、久遠の悲鳴が一段と高くなった。
久遠が体を丸める。リボンが解け白い髪を振り乱し、体を抱きしめて、
「ああああああああああ!」
最も大きな久遠の悲鳴を最後に、一瞬で、体が、――潰れた。
「えっ」
全身がビー玉ほどの大きさにまで縮まり空間に浮遊している。私はあまりの驚愕に声がひきつり、何も言えなかった。
すると縮んだ久遠の体、そこから腕と足が生え出した。みるみると体を作り、膨らんでいく。最後に顔が現れ、廊下に立った。
「そんな……」
そこに現れた人物。それを目にした瞬間、驚愕は衝撃となって私を襲った。
何故なら。それは、それは、その正体は。
「やあ、ご機嫌ようアリス。ワンダーランドの入り口へようこそ」
「白、うさぎ……!」
そこにいたのは、悪夢の最後に必ず現れる、あの白うさぎだった。外見は小学生ほどの男の子。黒のタキシードにシルクハットを被り、うさぎの耳と足をしている。
帽子に片手を当ててお辞儀をした後、笑顔と共に両手を広げた。
「いやー、こうして会うのは初めてだねアリス。ようやく会えた。いつも夢の中でしか会えなかったのは寂しかったよ。そしてこうして会えたことに、僕は今興奮を禁じ得ない。観測者、黒木アリス。世界を観測し創造する存在。君に出会えて光栄だよ、アリス」
「どうして、ここに……」
衝撃が頭を貫く。白うさぎの登場に酩酊感すら覚える。どうしてここにいるのか。目眩に体がふらつきそう。
「ああ、不思議だろう? でも簡単な話さ。ここは黒い世界。メモリーの影響により生まれた、表層世界と深層世界が融合した特異点。だからこうして僕はここにいられるんだ、深層世界の住人でありながらね」
白うさぎは得意気に語る。浮かべる微笑は夢の時と変わらない。
「ごめんなさい……」
「久遠!?」
「あ、あああああ!」
途端、久遠の悲鳴が玄関に広がった。身を捻らせ激痛にもがいている。私は急いで駆け寄ろうとするが、さらに異変が起こった。
玄関の扉が独りでにバタンと閉まる。さらには窓から差し込む日差しがなくなり、空が暗黒に包まれる。校庭も影に覆われ漆黒と化した。そして、
『助け、て。ザッ、ザー……、タス――ザッ――ケ、テ……』
「そんな!」
久遠の悲鳴に混じって小女の声が聞こえ始める。黒い世界の出現。よりにもよってこのタイミングで?
「久遠!」
久遠は今も苦しんでいる。私は止まっていた足を動かし久遠に近づく。しかし、そんな私を強い目つきで久遠が見てきた。
「近づいては駄目です!」
「でも!」
制止を求める久遠の叫び声。その瞬間、久遠の悲鳴が一段と高くなった。
久遠が体を丸める。リボンが解け白い髪を振り乱し、体を抱きしめて、
「ああああああああああ!」
最も大きな久遠の悲鳴を最後に、一瞬で、体が、――潰れた。
「えっ」
全身がビー玉ほどの大きさにまで縮まり空間に浮遊している。私はあまりの驚愕に声がひきつり、何も言えなかった。
すると縮んだ久遠の体、そこから腕と足が生え出した。みるみると体を作り、膨らんでいく。最後に顔が現れ、廊下に立った。
「そんな……」
そこに現れた人物。それを目にした瞬間、驚愕は衝撃となって私を襲った。
何故なら。それは、それは、その正体は。
「やあ、ご機嫌ようアリス。ワンダーランドの入り口へようこそ」
「白、うさぎ……!」
そこにいたのは、悪夢の最後に必ず現れる、あの白うさぎだった。外見は小学生ほどの男の子。黒のタキシードにシルクハットを被り、うさぎの耳と足をしている。
帽子に片手を当ててお辞儀をした後、笑顔と共に両手を広げた。
「いやー、こうして会うのは初めてだねアリス。ようやく会えた。いつも夢の中でしか会えなかったのは寂しかったよ。そしてこうして会えたことに、僕は今興奮を禁じ得ない。観測者、黒木アリス。世界を観測し創造する存在。君に出会えて光栄だよ、アリス」
「どうして、ここに……」
衝撃が頭を貫く。白うさぎの登場に酩酊感すら覚える。どうしてここにいるのか。目眩に体がふらつきそう。
「ああ、不思議だろう? でも簡単な話さ。ここは黒い世界。メモリーの影響により生まれた、表層世界と深層世界が融合した特異点。だからこうして僕はここにいられるんだ、深層世界の住人でありながらね」
白うさぎは得意気に語る。浮かべる微笑は夢の時と変わらない。
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