観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
決着4
怖い。怖い怖い。奥歯ががたがたと震え出し、身動きが取れない。鼓動だけが、暴れたように動いている。二度目なんて関係ない。この怪物を、この恐怖を克服するなんて無理。
でも、でもでも。ここで耐えないと、あの子を救えない。助けられない。だからどうか、耐えて私。この時、今だけ。少しだけでいいから。お願い、耐えて。
「くっ!」
恐怖に震える瞳に熱が灯り始める。この恐怖を前にして、すぐに発狂することはない。
けれど、いつまでももたない。早く倒してしまわないと。
私は焦る。しかし、そこへ現れた叫び声に、焦りは不安へと変わった。
「ギャアアオウ!」
「そんな」
小型のメモリー。四角い体に四肢のついた怪物が、何体も現れたのだ。噴水の広場をぐるりと囲んでいる。
数は十体? ううん、二十はいるかもしれない。蠢く黒い集団が、叫び声を上げて長い腕を振り回している。
しまった。包囲された。これでは広場を選んだのが逆効果だ。逃げることも隠れることも出来ない。ましてや多勢に無勢。まさか、こんなにも現れるなんて思っていなかった。
一斉にメモリーが押し寄せる。叫び声と長い腕を振り回し。
すかさずホワイトは両手に拳銃を握り発砲した。別々の方向へ銃口を向け、迫り来るメモリーを迎撃する。
何度も銃声が鳴り響くと共に、メモリーが体を地面に沈めていく。しかし、メモリーの進軍は止まらない。
奴らに物理的な攻撃は効かない。どれだけ傷つこうとも、すぐに元の形を取り戻し侵攻してくる。
ホワイトは別の巨大な銃器までも取り出し掃射した。強烈な発光が闇に煌めき弾幕が集団を蹂躙する。
けれど、それでも止まらない。無限に再生を繰り返し、メモリーは一歩、また一歩と近づいてくる。これではジリ貧だ。
「ホ、ホワイトッ!」
私は縋りつく声で、正面にいる白い背中に呼びかけた。だってこんな。数があまりに違い過ぎる。加えて、今回は本体である大型までいるのに。
窮地だった。なにもかもが不利の状況で、勝てるなんて思えない。
なのに、ホワイトは言った。
「慌てるな」
「だってこれじゃ」
「心配ない」
「どうして?」
「俺が倒す」
「倒すって……」
この数を? たった一人で?
ホワイトは全ての銃器を消すと歩き出す。歩調に乱れはない。平然と、いつも通りの様子で歩いていく。この状況にも臆することなく。
そして、本体である巨大なメモリーの前で立ち止まった。
「忘れ去られたメモリー、ナムガラー」
ナムガラー。それがこのメモリーの名前?
「母親を前にして興奮しているな」
「グオオオオ!」
ホワイトが見上げる先には大型の黒い怪物がいる。持ち上がっているサソリの胴体、そこから生えたいくつもの脚が蠢いている。赤く光る目が、ホワイトに視線を当てる。
「しかし、遊びは終わりだ」
けれど、彼は諦めていなかった。いえ、いいえ違う。確信している。当たり前のように倒せると思っているのだ、彼、ホワイトは。
「世界に害なすものならば、俺はなんであろうが排除する」
怪物、ナムガラーを前にホワイトは宣言する。私にこれほどの恐怖を与える怪物を前にして怯えも見せず。
けれど、どうやって倒すの? 分からない。こんなにも数が違うのに。私はそう疑問に思っていると、ホワイトは冷淡な口を動かした。
「使うぞ、世界の意思を知るといい」
そして続ける、彼は言葉を紡ぎ始めた。瞬間。
世界が、軋んだ。
でも、でもでも。ここで耐えないと、あの子を救えない。助けられない。だからどうか、耐えて私。この時、今だけ。少しだけでいいから。お願い、耐えて。
「くっ!」
恐怖に震える瞳に熱が灯り始める。この恐怖を前にして、すぐに発狂することはない。
けれど、いつまでももたない。早く倒してしまわないと。
私は焦る。しかし、そこへ現れた叫び声に、焦りは不安へと変わった。
「ギャアアオウ!」
「そんな」
小型のメモリー。四角い体に四肢のついた怪物が、何体も現れたのだ。噴水の広場をぐるりと囲んでいる。
数は十体? ううん、二十はいるかもしれない。蠢く黒い集団が、叫び声を上げて長い腕を振り回している。
しまった。包囲された。これでは広場を選んだのが逆効果だ。逃げることも隠れることも出来ない。ましてや多勢に無勢。まさか、こんなにも現れるなんて思っていなかった。
一斉にメモリーが押し寄せる。叫び声と長い腕を振り回し。
すかさずホワイトは両手に拳銃を握り発砲した。別々の方向へ銃口を向け、迫り来るメモリーを迎撃する。
何度も銃声が鳴り響くと共に、メモリーが体を地面に沈めていく。しかし、メモリーの進軍は止まらない。
奴らに物理的な攻撃は効かない。どれだけ傷つこうとも、すぐに元の形を取り戻し侵攻してくる。
ホワイトは別の巨大な銃器までも取り出し掃射した。強烈な発光が闇に煌めき弾幕が集団を蹂躙する。
けれど、それでも止まらない。無限に再生を繰り返し、メモリーは一歩、また一歩と近づいてくる。これではジリ貧だ。
「ホ、ホワイトッ!」
私は縋りつく声で、正面にいる白い背中に呼びかけた。だってこんな。数があまりに違い過ぎる。加えて、今回は本体である大型までいるのに。
窮地だった。なにもかもが不利の状況で、勝てるなんて思えない。
なのに、ホワイトは言った。
「慌てるな」
「だってこれじゃ」
「心配ない」
「どうして?」
「俺が倒す」
「倒すって……」
この数を? たった一人で?
ホワイトは全ての銃器を消すと歩き出す。歩調に乱れはない。平然と、いつも通りの様子で歩いていく。この状況にも臆することなく。
そして、本体である巨大なメモリーの前で立ち止まった。
「忘れ去られたメモリー、ナムガラー」
ナムガラー。それがこのメモリーの名前?
「母親を前にして興奮しているな」
「グオオオオ!」
ホワイトが見上げる先には大型の黒い怪物がいる。持ち上がっているサソリの胴体、そこから生えたいくつもの脚が蠢いている。赤く光る目が、ホワイトに視線を当てる。
「しかし、遊びは終わりだ」
けれど、彼は諦めていなかった。いえ、いいえ違う。確信している。当たり前のように倒せると思っているのだ、彼、ホワイトは。
「世界に害なすものならば、俺はなんであろうが排除する」
怪物、ナムガラーを前にホワイトは宣言する。私にこれほどの恐怖を与える怪物を前にして怯えも見せず。
けれど、どうやって倒すの? 分からない。こんなにも数が違うのに。私はそう疑問に思っていると、ホワイトは冷淡な口を動かした。
「使うぞ、世界の意思を知るといい」
そして続ける、彼は言葉を紡ぎ始めた。瞬間。
世界が、軋んだ。
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