観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
買い物2
店内は明るいが静かで、慣れない高級な雰囲気に畏縮してしまう。すぐにホワイトに駆け寄るが、自然と声が小さくなってしまう。
「ちょっと待って、なんでここに来たの? 食事するために部屋を出たんでしょう?」
「おい、こいつに合う服を選んでくれ」
「かしこまりました」
「無視しないでよ!」
背の高い彼を見上げ必死に声を掛けるが、ホワイトは無視して店員に注文している。自分勝手な人。まるでわけが分からない。なんで説明してくれないのよ。
「ねえってば!」
「俺は外で待っている」
いや、外で待ってるって。それよりも答えてよ。ちょっと、ねえ、私を一人置いて行かないでよ!
「信じられない」
行ってしまった。私を置いて。知らない国に置いてかれた気分。どうしよう、私は立ち尽くす。唖然と不安が込み上げてくるが、そうね、とりあえず逃げましょう。
「お客様」
と、初めの一歩を踏み出す直前、女性の店員さんに声を掛けられてしまった。
「まずはお体のサイズを測りますので、こちらへどうぞ」
「あ、いや、その~」
そう言われ私はまたもずるずると連れて行かれてしまった。そのまま更衣室へと入ってしまう。これでは逃げられない。そんな、私は捕らわれの身か。
「それでは計測しますので、まっすぐ立っていてください」
言われるまま、私は鏡の前に立ちまっすぐ姿勢を正す。すると店員さんがメジャーを手に体の周囲を測り始めた。
いや、というか私なに言われた通りにしてるんだろう。パニックになっているとはいえ、流され過ぎでしょう。
それよりも早く誤解を解いて店を出ないと。そうよ、すぐにでも謝ってここから、え? 両手を上げる? あ、はい、分かりました。
いや、だからそうじゃなくて。え? 好きな服? うーんと、好きな色は黒で、派手なのは、苦手かも。
じゃなくて、私は平々凡々とした市民の一人であって、こんなお店のお世話になるような人間じゃないのよ。
だから私は一刻も早くここから出ていかないと、え? これを着る? あ、はい、分かりました。て、そうじゃなくて!
「いったいなんなのよ……」
私は手渡された服を途方に暮れた気持ちで手にし、ため息を吐いた。
今日はおかしい。黒い世界に迷い込んで怪物に追われたり、見知らない男に助けられたり、かと思えば服を買いに行ったり。
夢が変わったくらいでこの変わりよう。日常というものは、こうもぐるりと変わるものだっただろうか?
「どうでしょうかお客様、着心地のお具合は?」
「え?」
声を掛けられて我に戻る。ほとんど気にしないまま服を着替えていた私は、そこで店員さんの言われるままに改めて正面の鏡を見つめてみた。
「…………うわあ」
知らず、声が漏れる。
気づけば私は黒のドレスを着ていた。スレンダーラインのすっきりしたドレス。滑らかな生地は光沢のある黒を映し、肩は露出していて胸元から着用するタイプ。
裾は膝上くらいで、シンプルなデザインながらもそれが落ち着いた大人な雰囲気を出している。自分で言うのもあれだけど、綺麗だ。
なんだか分からないまま着ちゃったけど、
「……ふふ」
まあ、いいんじゃない?
私は鏡の前でちょっとポーズをとってみた。腰に片手を当てて表情も作って。
うん、いい感じ。やっぱりあれよね、自分でいうのもあれだけど、私けっこう可愛いし? こういう服も似合っちゃうか~。
「ちょっと待って、なんでここに来たの? 食事するために部屋を出たんでしょう?」
「おい、こいつに合う服を選んでくれ」
「かしこまりました」
「無視しないでよ!」
背の高い彼を見上げ必死に声を掛けるが、ホワイトは無視して店員に注文している。自分勝手な人。まるでわけが分からない。なんで説明してくれないのよ。
「ねえってば!」
「俺は外で待っている」
いや、外で待ってるって。それよりも答えてよ。ちょっと、ねえ、私を一人置いて行かないでよ!
「信じられない」
行ってしまった。私を置いて。知らない国に置いてかれた気分。どうしよう、私は立ち尽くす。唖然と不安が込み上げてくるが、そうね、とりあえず逃げましょう。
「お客様」
と、初めの一歩を踏み出す直前、女性の店員さんに声を掛けられてしまった。
「まずはお体のサイズを測りますので、こちらへどうぞ」
「あ、いや、その~」
そう言われ私はまたもずるずると連れて行かれてしまった。そのまま更衣室へと入ってしまう。これでは逃げられない。そんな、私は捕らわれの身か。
「それでは計測しますので、まっすぐ立っていてください」
言われるまま、私は鏡の前に立ちまっすぐ姿勢を正す。すると店員さんがメジャーを手に体の周囲を測り始めた。
いや、というか私なに言われた通りにしてるんだろう。パニックになっているとはいえ、流され過ぎでしょう。
それよりも早く誤解を解いて店を出ないと。そうよ、すぐにでも謝ってここから、え? 両手を上げる? あ、はい、分かりました。
いや、だからそうじゃなくて。え? 好きな服? うーんと、好きな色は黒で、派手なのは、苦手かも。
じゃなくて、私は平々凡々とした市民の一人であって、こんなお店のお世話になるような人間じゃないのよ。
だから私は一刻も早くここから出ていかないと、え? これを着る? あ、はい、分かりました。て、そうじゃなくて!
「いったいなんなのよ……」
私は手渡された服を途方に暮れた気持ちで手にし、ため息を吐いた。
今日はおかしい。黒い世界に迷い込んで怪物に追われたり、見知らない男に助けられたり、かと思えば服を買いに行ったり。
夢が変わったくらいでこの変わりよう。日常というものは、こうもぐるりと変わるものだっただろうか?
「どうでしょうかお客様、着心地のお具合は?」
「え?」
声を掛けられて我に戻る。ほとんど気にしないまま服を着替えていた私は、そこで店員さんの言われるままに改めて正面の鏡を見つめてみた。
「…………うわあ」
知らず、声が漏れる。
気づけば私は黒のドレスを着ていた。スレンダーラインのすっきりしたドレス。滑らかな生地は光沢のある黒を映し、肩は露出していて胸元から着用するタイプ。
裾は膝上くらいで、シンプルなデザインながらもそれが落ち着いた大人な雰囲気を出している。自分で言うのもあれだけど、綺麗だ。
なんだか分からないまま着ちゃったけど、
「……ふふ」
まあ、いいんじゃない?
私は鏡の前でちょっとポーズをとってみた。腰に片手を当てて表情も作って。
うん、いい感じ。やっぱりあれよね、自分でいうのもあれだけど、私けっこう可愛いし? こういう服も似合っちゃうか~。
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