ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 

湊湊

40.「作戦会議と宣言」



 6月27日の午前0時。きっかりと日付が変わる時間になったことを確信し、俺は目を見開き周囲を見渡した。ここは生徒会室。この場を選んだ理由としては、万が一にも監視の目が届かない一室だからだった。立花さんの話によれば生徒会室には理事長の私物の監視カメラ等は設置されていないらしい。
 どうやらそれは、先代の生徒会長が監視されることを厭い、強引に設置をさせないようにしたことが始まりのようだ。立花さんの話が嘘ではなく事実なのだとして話を進めれば、この部屋は作戦実行前の集合場所としては最適であり、作戦が漏れる可能性も極めて少なくなるだろう。
 作戦開始は午後0時半を計画しており、現在は作戦についての説明をするために『主要メンバー』に集まって貰った次第だ。既にしばらくの間沈黙を続けていたことで、いい加減に痺れを切らしたのだろう。少し苛立ちを覚えている様子の花京院は、俺に対して棘のある言い回しで言葉を投げかけた。


「それで……今回の作戦とやらについて、さっさと教えて欲しいものですわね。あなただけ偉そうに把握しているなど何だか不愉快ですのよ」


「まあまあ、落ち着いてくれ。俺としてはどんな形であれ事前に作戦が漏洩してしまうことを防ぎたかったんだよ。作戦直前で誰にも連絡が出来ない状態ですぐに実行に移す。そうすることで……仮に裏切り者がいたとしても報告することは不可能だろうし、報告されたとしても対策を講じるまでに多少は時間が掛かり、作戦を中止させにくいだろうからな」


「う、裏切り者ってっ!私達の中に裏切り者が混ざっているとでも言うんですの?」


「ただの言葉の綾だよ。だが今のは、協力してくれる善意ある人達に対する失礼な表現だったな。すまん。だけど……俺の目的はただ一つだ。二宮を外に脱出させる。そのためには法にでも反しない範囲であれば何を行うことも辞さない覚悟だ。だから、姑息で見苦く失言をしてしまった俺をどれだけ糾弾してくれも構わねえ」


 俺は真剣な態度を崩さずに花京院と向き合いながらそんなことを言った。


「うわー、櫻井マジでキモイ最低じゃん!よくもそれで、したり顔出来るよねー」


「櫻井っちの小物っぷりには愛莉ちゃんもドン引きだよっ!」


「本当に糾弾しますかね普通っ!お前ら作戦実行前だって言うのに余裕だなおいっ!つーか、お前ら二人が一緒だと面倒臭さ半端ねえぞっ!」


 そんな風に俺が二人にツッコミを入れている最中で花京院は少しシュンとした様子になりながら返答をした。


「……私は、べ、別に糾弾しようなどとは……そんなつもりで言ったわけではありませんわ」


「ああ。お前が本当は優しい性格をしているって俺は知っているからな。わかっているよ花京院。俺も気にしていないから気にすんな」


 だって今回の作戦だって、二宮のためと言ったら速攻協力を承諾したもんな。ほんとお前は良くも悪くも純粋なやつだよ。


「ふ、ふんっ!好きに言っていればいいですわっ!」


 どうにか、花京院は照れながらも矛を収めたようだ。取り巻き二人も俺に文句を言いたげではあったが、空気を読んで黙ってくれていた。よしよし。


 だから俺もいい加減に本題に入ろう。今回の二宮外出計画の全貌について。表情を改めて厳しく締め直してから俺は集まってくれた人たちと向き合いながら言葉を発し始めた。


「まずは皆さん。改めて今日は二宮の為に協力してくれることを心から感謝します。皆、協力する理由は様々あれど、それでも集まってくれた皆には感謝してもしきれないです」


「……」


「さて……既にこの場には今回の計画協力者が集まってくれています。一年A組からは、花京院。田中。鈴木。早乙女。三枝。俺。そして脱出をする二宮。更に生徒会からは、東雲会長、柊副会長、高野会計、小鳥遊書記の四人が。そして学園側からの最大の助け舟として立花さんが味方をしてくれています。総勢十二人。今宵はこの十二人で協力していこうという所存です」


 実際増援がいるからもっと多くなりそうなんだけどな。ただ、混乱させてしまう可能性があるから明確にここで言及するのは辞めておこう。


「それで……櫻井君。作戦の方の準備は問題なく完了したのかい?」


「ああ。俺が今考えられる限りの作戦と事前準備は出来た筈だ。これで失敗したらもう知らんってレベルだ」


 とはいえ、穴が無いとは言わない。そもそも学園から脱出する為の作戦とか意味わからんし、立案経験をしたことがある奴なんてほとんどいないだろうということもあり、抜け目のない作戦を作れる奴なんてそうそういないだろう。まあひとまず作戦のクオリティーがどうかはこれから説明していくって感じで。


「それじゃあ、早速だけど作戦について説明していきます。まずは、今回の計画における前提条件について。……ぶっちゃけた話、今回はあくまで二宮の為の作戦なので、二宮さえ脱出することが出来れば何も問題は無いんです。それを念頭に話を聞いてください」


「……」


 一同は無言の状態だったが頷きを見せてくれた。俺はそれを確認してから話を始めた。


「今回の作戦において一番のキーパーソンになるのは、立花さんの存在です。立花さんは戦闘能力に優れ、仮に黒い服を着た屈強な男達が襲い掛かったとしても、数人程度であれば問題なく対処することが出来るでしょう。そして、何より大きな功績は……学門の開閉についての絶対的な知識を持っている点です。立花さん。宜しければ校門の開閉について説明をお願いします」


「はい。皆さん、改めまして立花です。時間も無いので簡略化した形で校門のシステムについて説明をしておきます。この学園の校門を開閉するための手段は主に一つしかありません。それは校門横の事務室にある開閉スイッチを押すことです。その場のスイッチを押さなければ門の開閉は事実上不可能ということになります」


「事実上とは?何か他にも方法はあると言うんでしょうか?」


「はい。もう一つ手段はあるのですが……私たちの現状では手に入れることも不可能であり用いることも適いません」


「それは一体?」


「端的に申し上げますと雅様が持っている『キーホルダー』を起動させることで、校門の開閉が可能になります」


「き、キーホルダー、ですか?」


「はい。お分かりにくいでしょうから多くは語りませんが……ともかく、雅様であればそれを用いることで門の開閉は可能ですが、私たちが開閉をするのは事務室の開閉スイッチを押す必要があるというわけなのです」


「……」


「しかし、事務室へと辿り着くためには、問題が発生しています」


「問題……ですか?それは一体なんですの?」


 恐らく事情を知らないであろう花京院はそう疑問を呈した。


「消灯後。つまりは二十二時以降に校門付近に近寄ると、理事長室と生徒会室、更に校門横の事務室。設定によっては、学年室に情報が行き渡る場合も存在します。これが最も厄介なのですよ」


「警報……それじゃあ、どう隠密行動をしてもばれちゃうんじゃない?深夜にやる意味なくて大爆笑なんですけど?」


「そうだな。多分俺たちだけだったら、どうにもならなく最悪の問題点だった。だけど、今は立花さんが味方に入る。このハンデはあまりにも大きすぎるんだよ。ぶっちゃけ今回の作戦においてその辺りの問題は余裕にも程があるって感じだ」


「余裕にも程がある?それは一体何でなの?」


「だってよ。立花さんは既に既存の知識を駆使して全ての警報が鳴らないように設定を弄り終えているんだからな」


「……なっ!」


「既にこれで理事長サイドや教員サイドから行動が露呈する可能性は格段に下がっているんだ。だから失敗する可能性はかなり低くなるだろう。


「待ってくれ。だが、あの頭が働く理事長のことだ。警報を切ったくらいのことでは打ち破ることは出来ないのではないか?目敏い彼女のことだ。私たちの策略に即効的に対処をしてくると思うのだが?」


「いい質問です柊先輩」


 俺も作戦内容と事前準備段階では、この程度では理事長の策略を出し抜けるとは考えていなかった。あの理事長はどこまでも深淵が深くどんな切り札を隠し持っているからすら分からない。
 もしかしたら、右腕である立花さんにすら知らせていないような策略を講じるのではないかとすら疑ってしまっていた。


「ですが恐らくそれでも問題ないでしょう。ですよね立花さん?」


「ええ。そもそもですね―――――」


「雅様は現在学園内にいませんから」


「は?」


 一同は素っ頓狂な声を上げる。当然だ。あの理事長と対峙しなければならないという圧倒的な不利な条件からスタートしていることは一同予想していた筈だ。
 だけど、対峙すべき理事長は学園内に逗留していない。これ程までに滑稽なことも無いだろう。だが事実なのだ。


「ちょっと待ってください。櫻井君。立花さん?理事長が学園内にいないって……どういうことですか?」


「言葉通りですよ。理事長は天上ヶ原家の会合があるようで、学園の外に出向き実家に帰参しているとのことです。そうですよね?立花さん?」


「ええ。本日は月に一度の本家での会合となっており、一晩本家の方に宿泊してくるという旨を私は承っております。ですから櫻井君の発言に虚偽はありません。間違いなく現時点で雅様は学園内にいないというのは事実です。そもそも夕方の時点で私は彼女の見送りを致しましたので間違いようもありません」


「……」


「流石にあの女が学園にいないとなれば、二宮の学園脱出は確実に実施しやすくなるでしょう。とはいえ……幾ら理事長が学園内にいないと言ってもまだ安心はできません。あの理事長のことです。黒服の何十人かくらいは事前に用意をして刺客を放つことは十分に予想できます。ですからこの場にいる皆さんにやって欲しいことは立花さんの掩護です」


「立花さんの護衛?」


「はい。今回の作戦において尤も頼りになるのは間違いなく立花さんです。戦闘のエキスパートである彼女ならば、恐らく誰が襲い掛かって来ても負けることはありません。ですが……多勢に無勢になってしまえば、どうなるかは分かりません。結局のところ、向こうの陣営は二宮さえ捕らえてしまえばそれで全て解決ですから。この点では向こうにアドバンテージがありますね」


 とはいえ、既にこれだけ有利な条件がこちらも揃っているのだ。こんなところで失敗する訳には行かない。


「そんな訳で今から作戦のための役割分担ついて発表します。まずは―――――」


 そうして俺は各員の役割分担に関して大まかに説明をした。多少は個々人に対して俺が提案をしてそれを受諾して貰うといった形になった。


「ひとまずこれが作戦の各員の役割分担等ですが何か質問や疑義はありますか?」


「……」


 しばしの沈黙の後、東雲会長が堂々と挙手をした。その眼は少しばかり攻撃性を含んでいようで俺は肝を冷やしてしまう。


「なあ櫻井。お前……何かまだ情報を隠してはいねえか?」


「それは一体どういう意味でしょうか?」


「どうもこうもねえよ。ただ……何となくお前は表層的な要素しか俺たちに説明していないんじゃねえかと思ってな?ここまで来たら俺たちの間で隠しごとは無しって方がいいんじゃねえのか?俺の杞憂だったらいいんだけどな?」


「なるほど……流石は東雲会長という訳ですね。隠し事は出来ないということですか……」
 まったく東雲会長の慧眼ぶりには驚かされる限りだ。確かに俺はこの場ですら完全には説明していない部分があった。それは俺と立花さんと三枝、そして二宮だけで共有していたとある要素だった。


「櫻井君。ここは説明しないことで動揺を防ぐことよりも、説明して納得して貰ったほうがいいかもしれませんね」


「そうですね立花さん。分かりました。……確かに東雲会長の言う通りに、俺は皆さんに説明していない作戦内容がありました。誤解しないで欲しいのは、それはあまりにも強烈な内容だったので、動揺させないために敢えて話をしなかったんです」


「御託や言い訳は必要ねえ。今更お前が悪意を持っているだなんて誰も考えてはいねえよ。そんなことはこの場にいる人間なら全員理解している筈だ。だからさっさと全てを話せ」


「ありがとうございます。それでは……実はですね……―――――――という作戦を実施するんですよ。これによって……作戦の成功は揺るぎなくなり、天上ヶ原雅はほぼ完全に足元を掬われることになるでしょう」


 本来であれば仲間にすら情報を漏洩させるつもりは無かったが、東雲会長からの追及ということもあり、二宮と三枝と立花さんとの、とある『最終手段』に関する概要をあますことなく説明した。 
すると……堂々たる振る舞いでおなじみの東雲会長ですら、少し動揺した後に俺と二宮に焦点を合わせて言葉を掛けた。


「おい櫻井。それは真剣に言っているのか?三枝の方は別に問題ねえだろう。だがよ。二宮の作戦はあまりにも危険過ぎるんじゃねえか?」


 始めに主張をしたのは東雲会長だったが、追従するように他のメンバー達も我慢できなくなったようで、俺を糾弾し始めた。


「そうですよっ!櫻井君。流石にその作戦は私も納得出来ませんっ!あまりにも二宮さんが可哀想です!」


「……っ!櫻井っち。それに関しては愛莉ちゃんですら賛成できないよ」


「馬鹿なことを言わないでくださいましっ!あなたは自分が何を言っているのか分かっていらっしゃいま
すのっ!?」


 矢継ぎ早に作戦の危険性に関する指摘が飛び交ってくる。その反応もまた俺にとって予想の範疇だった。何故なら……一番初めに作戦を考案した癖に誰よりも作戦実施を厭う想いを持っていたのは俺だからな。皆の気持ちは理解しているつもりだ。


「そもそもですね櫻井君。もしもその作戦を実施するのであれば私は少し疑問が生まれてしまいましたよ」


 そこでボルテージを上げだした小鳥遊先輩が完全にお説教モードになりながら俺に作戦の概要について改めて問い始める。


「第1にそのような方法をとるのであれば、どうして深夜に実施するというのでしょうか?今の話を聞いている限りでは、わざわざ深夜に実施する必要性がないのではないでしょうか?第2にそもそも設置の段階で下準備を済ませているのであれば、隠れてその作戦だけを実施すればいいのでは?私たちの行動の意義は果たして存在するのでしょうか?」


「お答えしましょう。深夜に作戦を実施しようと考えた理由に関しては、日中よりも深夜の方が視界も悪く、二宮が脱出後に行動しやすいと考えたからです。そして万が一、脱出がばれたり遁走するような形になった時に、日中よりも深夜の方が目立ちにくいのではないでしょうか?特に今回の作戦では公共交通機関を使うことはないので、人が多ければ目立ちにくいということはありません」


「それは少し納得しかねます!どう考えても日中の方が作戦を実施しやすく『事故』を招く危険性事態も減らせる……」


「俺も無論迷いましたが……それは先ほどの第二の質問の答えを含めた上での決断なんです。小鳥遊先輩。俺が作戦において何よりも重要視していることは、天上ヶ原雅の『慢心』を利用することです。俺は『天才』という存在が何よりも嫌いです。何故なら天才は得てして『凡人』を無意識的に下に見るのが大好きですからね。そして非常に不愉快なことに天上ヶ原雅は完全に『天才』の人間です。それも俺が今まで見てきた中でどう考えてもトップクラスの。これは三枝にも指摘されたことですが……天上ヶ原雅は確実に俺のことを下に見て……俺を蹂躙することを目的として、必ずや奇想天外な方法でも用いて邪魔をしてくることでしょう。彼女は俺のことを見下した上で真正面から潰してくる筈です」


「それが一体どうしたと言うんですか?」


「そんな天才の妨害であるからこそ……隙が生まれるんですよ。あいつは必ずや油断を招きます。俺を誰よりも大したことのない人間だと『知っている』のだから。だからこそ、彼女は俺の策略を潰した後に『慢心』する筈です。そしてそこが―――――致命的な間隙になり得ます。皆さん。考えてみてください。普通に考えて俺が学園計画を実施するとしたらそれは、夜でしょうか昼でしょうか?」


「それは……夜の方が目立ちにくいから妥当でしょうね」


「そうです。だからこそでなんです。……分かって頂けたでしょうか?敢えて夜なんですよ。あの女を誘い出すのは確実に夜の方が成功させやすいんです」


「……まだまだ納得していない部分はありますが……櫻井君の主張に関しては理解することができました」 
 ぶっちゃけ論理性の欠片もないような気がしたが―――――俺の必死な説得によって作戦の意図と目的自体は理解して貰えたようだ。


「それにさらに付随して言えば作戦は一夜で済むとは限りません。どんなトラブルがあるか分からないのですから、それも踏まえた上で天上ヶ原雅を騙す必要があります。だからこそのこの作戦を同時進行することが大切になるんです。あの女の油断こそがきっと勝利に繋がる筈でしょうっ!」


「……」


「……」


 そこで再び沈黙が広がってしまう。俺の作戦実施の意図自体は何とか納得は出来たとしても結局のところ―――――


「作戦の意義については理解出来たけどさー。結局のところ、二宮の負担が大きすぎるってのには変わり無いよねって話」


 早乙女までが意見を纏めるような発言をした。……ああ、その通りだ。正論過ぎる。


「俺自身も……元々は反対だったよ。もしも失敗でもしてしまえば……一巻の終わり。冗談とか誇張抜きで二宮は『死ぬ』だろうからな」


「それならっ!」


「それでもっ!」


「……っ!に、二宮さん?」


 声を張り上げたのは俺では無かった。他ならぬ二宮だった。彼女が叫ぶ姿は新鮮なものであっただろう。三枝ですら動揺を隠せないようだ。


「皆さんが今回の作戦を危険視し、私の身を案じてくださるのはとても嬉しいです。ですが……作戦を実行するからには、どんな手を使ってでも私は『彼女』に会いたいと考えています。ですから、たとえ危険だったとしても……私の我が儘に付き合ってくれる皆様の優しき思いに答えるためにも……私は絶対に作戦を成功させたいんです。だから……だからどうぞよろしくお願いしますっ!」


 まさか寡黙な二宮がこうして人前で自分の思いの丈を零すとは考えていなかったのだろう。だから誰にとってもそれは衝撃的だった。そして何よりも作戦を実施する本人の意志の強靭さを理解させるには十分だった。


「……」


「……」


「俺だって二宮にこんなことをやらせるべきじゃないってことは分かっていますよ。だけど……俺は二宮の意志を尊重してやりたいんです。彼女は今まで中等部時代から一つだけの思いを胸に抱きしめながら学園主席を維持してきました。その思いが延長戦上に繋がり、今は自分の命と同様になるほど、学園の外に出て邂逅を遂げたいという意志を持っているんです。だから俺からもお願いします。皆さん、改めて考えてみてください。二宮の意志を尊重するということを主軸に改めて……どうぞよろしくお願いしますっ!」


「……」


「……」


「私からも……補足はしておきましょうか。一応は櫻井君と私の方でリハーサルは済んでいます。二宮さんの方も作戦を成功させるだけの運動神経は兼ね備えているようです。だから問題は無いでしょう。私もまた二宮の意志を尊重して差し上げたいと思います。皆さまはいかがでしょうか?」


「……」


 しばらくの間……永遠とも思えるような沈黙を挟んだ後にゆっくりと東雲会長が口を開いた。


「……」


「おい、二宮。お前と話すのはこれが初めてだな?」


「はい。東雲会長」


「……ふんっ!いい眼をしてやがるっ!中々に肝が座っているじゃねえかっ!何かを成し遂げるためにそこ
までの覚悟を持って戦おうとするなんて普通は出来ることじゃねえっ!気に入ったっ!気に入ったぜっ!お前自身がそこまでの意志を持っていると言うなら……もう言うことはねえな。二宮。絶対に作戦を成功させようなっ!」


「はいっ!」


 東雲会長は笑顔のままで二宮に親愛を込めた思いを表出した。二宮は力強い東雲会長の思いを受け止めて大きく頷いた。


「はぁ……本当はこんなことは絶対に止めるべきなんでしょうけれど……どうやら二宮さんは私以上に頑固そうなので説得は無理そうですね。ですが二宮さん。どうしても途中で無理そうだと感じたなら無理はしてはいけませんよ。あなたが実行出来なかったとしても……きっとこの場に居る人たちは誰もあなたを責めるようなことはしないでしょうから。それだけは念頭に置いてくださいね」


 小鳥遊先輩は少しの呆れと母性的な言葉を授けた。


「小鳥遊先輩。ご配慮ありがとうございます」


「愛莉もまた二宮さんのことをほとんど知らないけれど……でも、櫻井っちが気に掛ける大事な人だって知っているよ。だからさ。これを無事に終えて最後は皆で笑って過ごすために……頑張ろうねっ!」


 愛莉は愛莉で二宮と友好を深め二宮をリラックスさせようとしているみたいだ。


「ええ。よろしくお願いします。高野先輩」


「私は認めた訳ではありませんが……その、二宮さんがそこまでおっしゃるなら仕方ないと納得せざるを得ないでしょうね。ええ、そうですわ。二宮さん。私のライバルとしてあなたにはこれからも隣にいて貰わらないと困りますから……必ず成功させることですわ。いいですわね?」


 花京院は相変わらずツンデレという奴だった。だけど……一番いいと思えたのは花京院のその真意を二宮が理解出来ているということだろう。


「ええ。大丈夫よ花京院さん」


 二宮はその本来の優しき少女性を垣間見せ花京院の思いを受け取った。……ったく入学式の時のクールなお前はどこに行ったんだよ。


「ねえ二宮。ウチは手伝えることなんて全然ないけどさ。とりあえず……やれるだけやってるから、アンタにベタ惚れの櫻井の意志を尊重するって意味でも頑張って」


「……ええ。分かっているわ早乙女さん。ありがとう」


 早乙女もまた二宮をフォローするような形で優しく声を掛けた。あとベタ惚れっては訂正しておきたいが、まあ無粋だろうから放置だなこれは。


 こうして何とか反対意見を持ち合わせている連中をも説得することが出来た。立花さんと三枝には、事前に作戦内容を伝えていたからな。これでこの場の人間は大体説得することが出来ただろう。鈴木と田中も「来栖様がお認めになったのだから励むがいい」って感じみたいだし。よし……これでもう問題はないだろう。


「……さて、改めて誰か質問や意見がありますか?」


「……」


「了解です。それでは最後に今回の作戦の要となる二宮に改めて一言挨拶をして貰いましょう」


「……ええ」


 二宮は部屋の中心に移動し、誰からも見える位置に移動した。


「まずは皆さんに今回のことで深くお礼を申し上げたいと思います。私が学園の外に行きたいと考えているのはあくまで私的な用事なんです。だからこれはあくまで私の我儘です。ですから……協力してくれて本当にありがとうございます。皆さんの善意を受け取って私は必ずや悲願を果たします。これは宣言です。皆さんどうぞよろしくお願いしますっ!」


「……」


 短い挨拶ではあったが、二宮の本心は生徒会室にいる人たち全員に届いたはずだ。皆、二宮に対して力強い拍手をした。……さて……これで十分に士気も高まったことだろう。
 あとは……二宮をこの学園から逃がすだけだ。……勝負だな天上ヶ原雅。俺は大地に付けている足に力を込め、来るべき時に備えた。



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