ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 

湊湊

37.生徒会役員との対峙」(後編)





「……」


 流石にこの演出は誰も予想していなかったのか、度肝を抜かれたようだ。天上ヶ原雅の秘書である立花さん。学園内で理事業務を施行しているのは理事長ではなく、主に彼女だという噂をされているほどの絶対的な存在。学年内でも理事長に継ぐ権力者であり、生徒に対して懲罰を下す権利すら持っているとのことだ。(今回の一件で協力を依頼するにあたり三枝から色々と教えて貰った)。
 俺以外の生徒に対しても、優秀な彼女の成果は学園内では轟いているようだ。実際に入学式の際、俺は女子生徒達から教われそうになった際に立花さんが助けてくれたこともあったしな。
 あの時は、立花さんが登場した瞬間にどうしてあの女生徒達が動揺したかが良く分からなかったが、今なら理解することが出来る。それだけ立花さんは絶対の存在なのだと。
 実際に彼女の経歴を知った上で彼女と接すると、その偉大さには足が竦んでしまいそうになる。それ程までに偉大なるお方。あのクソ理事長とは異なり真の意味で尊敬できる人間。それが立花沙也加さんという人物なのだ。
 そんな彼女の予定通りの登場に俺は一安心をしながら4人に語り出す。


「どうです皆さん?立花さんの登場で……状況がまるで変化したとは思いませんか?」


「そ、それは確かに……立花さんさえ協力して下さるのであれば……色々な点において問題が消失するでしょうね」


 そう。声を震わせ俺の発言を肯定した小鳥遊先輩の発言は全く持って正しい。まず、大前
提として作戦遂行の難易度が大きく変動することは間違いないだろう。
 あの日散々と三枝に指摘されたが、作戦遂行において立花さんという存在はあまりにも厄介だというのは事実だというのは確定的だ。
 仮に理事長の私兵として登場する可能性の高い黒服全員に対して何とか対処をしたとしても、立花さん一人が理事長に付き従い、学園脱出計画の参加者全員を捕らえるようなことになれば、計画は失敗に終わってしまうのだ。
 立花さんがいる限りは、作戦を成功させ二宮を連れ出すことなど到底不可能。しかし、しかしだ。逆に言えば立花さんが邪魔をしない状況にさえなれば計画の成功率は飛躍的に向上する筈だ。ただそれだけの話だ。
 そして―――――ただそれだけの話なのだから俺は立花さんを味方につけた。本当にそれだけの策略だった。
 ところで立花さんの存在は決して作戦遂行の可能性を飛躍的に向上させるだけには留まらない。今回ここで立花さんを呼んだのはそれが目的ではないからだ。立花さんの存在は東雲会長の説得の大きな要因になり得る。それこそがわざわざ登場して貰った理由なのだ。


「あ、あの……櫻井君。立花さんは……本当に君の協力者になったんですか?その騙されているとかではなくて?」


「いえ。騙されているなんてあり得ません。間違いなく……立花さんは今回の一件においては理事長と袂を分かち、俺の協力者になってくれたんですよ小鳥遊先輩」


 俺はその質問に堂々と回答するが、俺が堂々としようが懸念自体が生まれない筈も無い。怪訝そうに眉を潜めながら東雲会長は俺に詰問をする。


「おい櫻井と立花。俺は東雲の人間として立花家がどれだけ天上ヶ原家に対する服従を絶対のものかとし
ているかを知っている。だからこそ立花の協力は嘘としか思えねえぞ?」


 そんな東雲会長の問いに正面から立花さんは回答を述べる。


「いいえ。服従というのには表現として誤謬があります。確かに我が立花家は代々、天上ヶ原家に遣えている家系です。その任を遂行し天上ヶ原家の補佐役として一族の繁栄の助力になることが生きがいであるとも言えます。しかし……だからと言って、それは天上ヶ原の傀儡として活動することとはイコールではないのです。主君が道を違えた時にはそれを正すこともまた使命なのです。今回の二宮冬香さんの一件に関しては、私は確実に雅様に問題があるように考えています。ですから櫻井君の話に乗り、雅様にお灸をすえようと考えた次第です。何か問題がありますでしょうか?」


「雅の考えに問題がね……立花。お前多分それだけじゃないだろう?」


 ニヤリと笑みを浮かべて東雲さんは立花さんに問う。……なるほど、隠し立ては出来ないようだ。俺は立花さんの代わりに答えることにした。


「ええ。幾ら主人のやり方に対して問題を抱えていると思っていたとしても……流石に自分からそれを崩すことは難しかった。だからこそ自分からではなく、他者からのアプローチによる行動をするチャンスを立花さんは待ち構えていたんです。そして俺が提案したことによって、立花さんは絶好のチャンスとして乗ることが出来たんです。勿論……天上ヶ原雅にお灸をすえるっていうだけが行動の動機ではないですがね」


「それだけじゃないか……おい櫻井、お前は他にどんな策略を行使したって言うんだよ?金にも男にも名誉にも全く興味を示さねえ堅物の立花をよ?」


「本当はこんな手を使いたくは無かったんですけどね……俺は立花さんに絵画を献上する代わりに絶対の協力を依頼しました」


「絵画?櫻井君は絵を描く人なんですか?」


 小鳥遊先輩は俺にそんな質問をした。以前会話の中で説明したことがあったかもしれないが、改めて説
明することにした。


「いいえ。実は俺の親父は名の知れた芸術家で……この学園を卒業した後に立花さんには親父が描いて家に飾ってある絵画を差し上げると提案したんです。それによって、立花さんとの取引は確固たるものになりました」


 昨日の夜。俺は三枝に叱咤激励されたことによって、立花さんにどうしたら協力して貰えるかの方法論について迷っていた。その時に以前、立花さんは俺が学年内の美術館に寄った際に俺の親父の力作である『夜櫻演舞』に惚れていた姿を思い出したのだ。
 だからこそ、そこに俺は注意を向けたのだ。立花さんは、理事長と同様に親父の絵画に酷く入れ込んでいると。
 そこで俺は今日の一限の時間に美術館に向かい、立花さんの定期的な絵画鑑賞の訪問を待ち、そこで親父の絵画と協力を交換条件にしたのだ。
 ところで実はこの交換条件に関しては中々に俺が有利なものだ。何故なら自動的に俺は後出しという形にならざるを得ないからだ。
 現状では俺は家に戻ることは不可能であり、契約が果たされるのは俺が自宅に戻れる立場になった時……それは最速で(実際は家に戻るつもりはないが)今回の学園脱出計画の際だ。
 そして俺が学園から脱出するのは立花さんのフォローが無ければ成し遂げることが出来ない。それらの要素をまとめると立花さんはあくまで俺に協力し作戦を成功させることが必要になるという訳だ。
 しかもこれが肝なのだ。立花さんがもしも自分の立場や責任を厭うことによって、作戦時に力の出し惜しみでもしてしまえば、俺は絵画を献上することは絶対にしない。
 つまり、絵画を手に入れたいと考えている立花さんは全力で俺に協力し、二宮の学園脱出を果たさなければならない。
 まあ協力を依頼するにあたり、立花さんが親父の絵画にどれだけ拘泥しているかが最も重要になるのだがそれに関しては問題ないようだ。
 何故なら俺が絵画の話題を出した瞬間に立花さんは瞳孔が開く勢いで俺の手を取ったからな。あの時の動揺ぶりは流石に嘘ではないだろう。
 そんなこんなで俺と立花さんは一蓮托生の関係に至ったのだ。
 ここまでの流れがスムーズで俺としては一安心だ。後は……東雲先輩を籠絡するだけだ。


「さて……なにはともあれ……わかっていだだけましたか東雲会長。……これが俺の全力です。俺は二宮の悲願を果たすためにここまで必死に準備をしてきました。そして立花さんが理事長を今回の一件に関してだけとはいえ『裏切る』ともなれば……必ずあの理事長も狼狽する筈です。それに伴いあなたの……理事長に対する『嫉妬』の念も浄化することが出来る筈です。ですから……今一度俺はあなたにお願いします。二宮冬香の一件について俺に……協力してください!」


「……」


 東雲先輩は黙ったままで足を組み、腕も組んでいた。どこかでも傲岸不遜な態度だったが、そのカリスマ性によって何ら不快感は無かった。彼女は俺に無言の圧力を掛けている。立花さんだけは悠然としていたが、他のメンバーは流石の緊張感に汗をかいていた。


「……ふん。……いいだろう。たまには雅の野郎もぎゃふんと言わせてやらねえとなっ!東雲家を舐められねえようにしてやんよ!」


「東雲先輩っ!ありがとうございますっ!」


 俺は慇懃に頭を下げた。……何とか、東雲先輩から言質を取ることが出来た。……これで一段と成功する可能性が著しく増えたことだろう。


「ただしだっ!」


「……っ!」


 東雲先輩は続けざまに言葉を述べる。


「あくまで俺が協力すると言っただけだ。他の三人については協力するとは言ってねえし強要する気はねえ。だから木葉、愛莉、美春。お前らは今回の一件について好きな方を選べ」


「いいえ。会長。私は会長に付き従うだけですので……会長がやると言えばやらせて頂きます」


「そうか。それじゃあ、俺の援護は任せたぜ木葉っ!」


「はいっ!」


 予想通り会長に対して忠義の心を持ち合わせている柊先輩は即座に決意をしていた。あとは……愛莉と小鳥遊先輩だ。……ちょろそうな方から行くか。今日も含めて散々俺を弄り倒してくれた愛莉さんよ。今回ばかりは俺がお前を弄んでやるからなって……なんか悪役っぽいな俺……


「さて愛莉。東雲会長や柊先輩は協力することにしたが……お前はどうするんだ?俺に協力してくれるのか?」


「それは……迷っているんだよね。だって愛莉ちゃんも流石にこんな展開になるなんて予想外だったし」


 愛莉は非常に困惑をしているようだ。無理もない。話がとんとん拍子で進んでしまっている上に、愛莉とて理事長に対する恩義があったり単純に懲罰に対する忌避感もあるのだろう。……今から俺がすることはそんな愛莉を追い詰めるような行為だ。……悪いな愛莉。今からお前には俺の口車に乗って貰うぜ。これはお前だからこそ通用する最低の技法だ。


「なあ、愛莉。いま俺はおかしくて笑っちゃいそうなんだよ」


「……何で?」


「だってそうだろう。高野愛莉ともあろう人物が、まさかこんなところで臆病風に吹かれているとはな?これが面白くなくて何だっていうんだよ?ああ滑稽だな。滑稽極まりないぜ。校門の前で俺を捕らえた頃のお前の輝きはどこに行ったんだ?キャラ薄まってんぞマジで」


「櫻井っち……喧嘩売ってんの?」


 流石にこの挑発的な態度には友好的な愛莉でも腹立たしさを覚えたのだろう。だが、俺とてこんなところで退く訳にはいかない。俺は二宮の悲願を果たしたい。それだけの思いで戦っているからな。


「愛莉。いつも俺はお前の話を聞き逃していたけどよ。お前は漫画が好きなんだよな?特に少年漫画のように熱い展開が」


「……うん。そうだけど?」


「はっ!だけど、俺には到底そうは思えないな。お前が少年漫画が好き?馬鹿も休み休み言えよ。お前みたいな奴が漫画が好きなんて百年早いわ。二度とそんな発言なんてするなよ。見ていて俺の方が恥ずかしいからよ」


「……なっ!今の発言は流石に櫻井っちでも許せないよっ!訂正してっ!」


 いい感じにボルテージが上昇しているようだ。すまんな愛莉。許してくれ。だけど言い調子だ。その調子でもっともっと熱くなれ!


「櫻井君!今のは愛莉ちゃんに対して言い過ぎですっ!愛莉ちゃんが可哀想ですよっ!」


 未だ籠絡されていない小鳥遊先輩は俺を容赦なく追い詰める。……そうだ。それでいい。感情的になればなるほど俺の思う壺だ。人を籠絡させるためにはまず、感情論に走らせなければならない。ロジカルに考えている内は協力なんてさせにくいからな。


「愛莉。お前はただ単純に理事長に対して反抗した結果として懲罰を受けることにびびっているだけだ。なんて臆病な奴なんだよ」


 俺は理事長が俺に対して嘲笑をする時と同じような笑みを浮かべた。愛莉は今までにない程に苛立ちを募らせているようだ。そうだ。それでいいぞ。


「櫻井っち……何が言いたいの?」


「ただ単純にお前は少年漫画の主人公とは違って、クズで臆病で卑怯な人間だってことだよ。少年漫画の主人公だったら仲間が困っていれば有無を言わさず、助けるのが定石。普段は少年漫画の中で自分よりも強き人間に、権力に必死で抗う人間に憧憬の念を抱きつつも、いざ自分が現実の世界で同じような状況に陥った時には何もしようとはしねえ人間だ。もしも、少年漫画の中で卑怯で燻っている人間を目撃した際には、無能であり卑怯な人間だと揶揄する癖に、自分は何もしねえ最低のモブキャラだっ!」


「……っ!何でそんなことまで言われなきゃなんないの!?」


「お前が卑怯で臆病でどうしようもねえ奴だってことを俺が知っているからだよ。いいか愛莉。お前がもしも少年漫画のような熱い人間であると証明をしたいのなら、俺に協力し二宮を助けることだ。お前の頭をフルに回転させて良く考えてみろっ!天上ヶ原雅によって一体どれだけ二宮冬香という人間が傷ついたと思っているんだっ!例え誰が擁護しようが天上ヶ原雅は『悪の権化』そのものだ。そんな風に傷ついている少女をたかたが『身の保身』のためだけにどうするかを迷うなんてよっ!どれだけお前は凡人なんだよ」


「……っ!」


「お前がもしも……もしも少年漫画の主人公のように悪を倒す正義の味方になりたいのであれば……誰にも恥じることのない生き方をしたいのであれば……俺に協力するべきだ。俺に協力するか、身の保身に走り何もしないか。どちらを選ぶんだよ、愛莉?今だ。今選ぶんだよっ!」


 急かすように俺は愛莉を追い詰めていく。奇しくも愛莉の中二病ぶりは俺に通ずるところがある。俺は他者に容認されるために英雄になりたいと考えているが、愛莉は空想に対する果て無き憧憬を抱いている。いずれにせよ『かっこいい』ってことに対する執着が存在しているということだ。
普通の奴であればこんな説得じゃ絶対に通じない。しかし殊に愛莉の感情を揺るがすにはこれが適切。周囲を見渡せば何を言っているんだ。お前達はという顔をされているが愛莉だけは真剣な表情で葛藤を繰り返しているようだった。そして……愛莉は。


「……っ!そんなの……実質的に選択肢は一つしかないじゃんっ!」


「そうだ。……そして、俺は他ならぬお前に前者を選択して欲しい」


「えっ?」


「あたりまえだろう?いいか愛莉。俺はお前の力を誰よりも必要としている。作戦の決行には生徒会役員全員の協力が必要なんだ。その中でも俺はお前の力が合った方がいい。いや……違うな。俺はお前と共に学園脱出計画を実行したいと思っているんだよ」


「櫻井っち……」


「この学園に来てから俺は色んな奴と知り合ってきた。クラスメイトの三枝だって早乙女だって欠かすことの出来ない存在だ。だけどよ。それはお前も同じだよ愛莉。出会った当初からお前は明るくいつだって俺のことを支えてくれていた。そんなお前がいなけりゃ上手く行く作戦も到底上手くは行かなくなっちまう。だから愛莉。頼む。俺はお前の友人として……お前に頼みたい。俺に……協力してくれっっ!俺はお前に誓ってやるっ!」


「絶対にお前が退屈しないような脱出計画にしてやるから俺に協力しろっ!漫画みたいにわくわくして、友情・努力・勝利を……見せてやるからよっ!」


 そんな俺の千元に愛莉は―――――


「櫻井っち……うん。いいよ。協力したあげよう。その代わり……絶対作戦を成功させようねっ!」


「ああっ!」


 よっしゃーと内心で俺は歓喜していた。愛莉なら必ずこういったノリで攻略できると信じていたから嬉しさの極みだった。


「ちょっと待ってください。愛莉。あなたまで何を籠絡されているんですかっ!」


 そこで俺と愛莉の仲を裂くようなお邪魔虫となる小鳥遊先輩が乱入をした。先ほどから俺に物を申したかがっていたが、ようやくと小鳥遊先輩の順番となったことで俺と真正面から対話をすることにしたようだ。


「まあまあ小鳥遊先輩。いいじゃないですか。折角こんな風にして盛り上がっているんですから」


「いやいやいや、駄目ですよ!確かに二宮さんの件に関しては理事長側が明らかに悪く、嫌がらせをしているとしか思えません。ですが……だからと言って私たちが学園の規律を破るなど到底許されることではないんです。勿論、私は懲罰が怖いのではないですよ。個人的には二宮さんに対する援助はしてあげたいです。ですがその援助方法は何か別の方法があるんではないでしょうか?その方法を模索していくことが先決……」


「小鳥遊先輩。それでは聞きますが、学園外のとある人物に会いたいと渇望する二宮の心を癒す方法を具体的に述べてみてくださいよ」


「それは……」


 小鳥遊先輩は答えに窮する。……流石にこれは可哀想だった。答えのない命題を叩きつけるようなことは俺としてもしたくはない。だが、これはあくまでほとんど確定事項だ。二宮の心を癒す方法は外出をし、会いたい人に会う以外は存在しないのだ。


「小鳥遊先輩。俺のやり方が正しくないことなんて既に理解しています。俺が学園脱出計画を推奨することは、二宮に嫌がらせをしたのと同じくらいに悪質なやり方です」


 それを自認出来したのは三枝がいてくれたからだ。……全くあいつには本当に頭が上がらないな。


「ですが、それを理解した上で俺はそれでも規律を破り、白花咲女学園の生徒の振る舞いとして相応しくない行動を取りたいと思います」


「そこまで……櫻井君は……」


「ええ。俺は真面目ではないですからね。だからなんですよ」


「え?」


 素っ頓狂な声を彼女は発した。まるで理解が追いついていないかのように。すみません小鳥遊先輩。愛莉と同様にあなたの『個人特性』を刺激して説得させて貰いますね。


「おっとすみません。俺は真面目ではないんです。ですが、小鳥遊先輩は真面目であり、一般的で規範や規律を破る白花咲女学園の中で普通の生徒だってことはわかっています」


「ま、ま、待ってくださいよっ!」


 俺の発言の戦略について理解出来たのか、その場にいる全員が口をそろえて言い始めた。……ってか、こ
れに関しては説得に協力するってよりもただの弄りってかんじだぞおい。


「美春は生徒会のメンバーの中でも唯一真面目な奴だからな。今回の一件は真面目ではない一件であるから参加しないのは仕方ねえんだろうな。美春。無理だけはするんじゃねえぞ」


「はい。美春はあくまで真面目ですから」


「美春っちは真面目だからなー」


「小鳥遊さんは真面目なお人だと聞き及んでいるますから。参加辞退はやむを無いでしょう」


「皆さんっ!真面目真面目って言わないでくださいっ!というかまさかの立花さんまで掩護射撃するってもうどうしようもなく追い詰められてしまっているんですけどっ!」


 皆一様にして小鳥遊先輩が何よりも嫌がる「真面目」の連呼をしていた。……ってか、容赦ねえな。あんたら仲良しの生徒会一同じゃねえのかよと内心、小鳥遊先輩の苦悩を感じてしまう。
 だが、小鳥遊先輩は動揺している。今がチャンスだ。現在の俺は真面目で品行方正な生徒を悪の道に誘う悪鬼に違いない。だが、俺は悪鬼を倒すために悪鬼に身を落とした人間。絶対に譲れるかよ。


「それじゃあ小鳥遊先輩は真面目ではない手伝いをしてくださいますか?」


「それは……っ!」


「やっぱり真面目なんですね」


「いや、それは真面目だとか言う話ではなく……」


「真面目ってことですよね。要するに?」


「……っ!分かりましたよわかりましたよっ!外出の手伝いでも何でもしてさしあげますよっ!櫻井君なんて大嫌いですっ!」


「よっしゃー、言質をゲットだぜーっ!」


 かなり強引な手当て……というか、俺の株駄々下がりっぽくて悲しいとか思いつつも、かくして俺は生徒会メンバー全員を説得することが出来たのだった。


 しかし……これだけで済ませるのは流石にフェアではないだろう。三枝は俺に指摘したこととして、作戦協力を仰ぐにあたって、その責任の所在を明らかにしリスクに関する話題をしっかりとすることの重要性を説いたのだ。とはいえ、生徒会役員は(愛莉は知らんが……)聡明な連中だから今更語るまでもないのかもしれない。だから最終確認ってことで簡単に聞いておこう。


「皆さん、ここまで散々煽るようなことを言っておいて恐縮ですが……今回の一件によっては学園を退学になったり今後の人生に大きく影響を及ぼし得るそんな危険なことです。可能な限り俺もフォローしますし、仮に学園を退学になりそうな時には全面的に俺が責任をとる所存です。ですが皆さんにもリスクが無いとは言えません。それでも……協力してくれますか?」


「……今更何を言ってんだって話だよ櫻井。俺たちは雅を徹底的にコケにしてやるんだろう?だったら御託はいい。俺はやるぜ櫻井!」


「私はあくまで会長の御意見に従うだけだ!櫻井……絶対に成功させよう」


「愛莉ちゃんは櫻井っちと二宮さんを助けるために協力するよーん!櫻井っち……最高に楽しい脱出劇を宜
しくねっ!」


「わ、私は……真面目ではないですからね。たまには不良になってやりますよっ!ええっ!」


「……皆さん。ありがとうございます!」


「櫻井君。よくぞ皆さんを説得しましたね。感心しました」


「はい。立花さんもありがとうございます」


「それに……以前までのあなたと見違えたようです。……この調子で頑張りなさいませ……あなた自身の成長のために」


「はいっ!」


 かくして……生徒会メンバー全員の承諾を得ることが出来た。これで大よそ俺の知り合いの承諾は得ることが出来ただろう。早乙女の方の協力は既に済んでいるし、花京院もオーケ。後は……


「東雲さん。この後少しだけ付き合って貰っていいですか?東雲さんのカリスマ性を見込んで頼みたいことがあるんですよっ!」


「おう。なんでも言えよ。協力してやら!」


 こうして作戦遂行を完全にするための策略を仕上げを始めるのだった。





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