ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 

湊湊

25.「愚者の提案」

 
 入学してから一週間で俺はこの学園から外部へと脱出をしようと試みた。その動機は不健全なものであり、思春期の性欲の暴発という極めて不純な内容だった。今では脱出することが出来なかったのは因果応報と自負しており、天罰覿面であると嘲笑するに相応しいとも考えているくらいだ。
 だけど二宮の努力はそんな風に一蹴し、愚にもつかないと評するに値するようなものだっただろうか?
二宮は俺とは異なり苦難を重ね、俺とは異なりルールの範疇で最大限の望みを叶えようとした。他の生徒達が快適な生活のために惜しみなく使用する学園ポイントも、この閉鎖的な学園生活のストレスを解消するために用いる様々な娯楽品の購入をも諦め、決して散財もすることなくただひたすらに積み重ねたのだ。それを想像するだけで俺は呼吸が苦しくなり、容赦のない疲労感に身体が震えてしまう。
 だがそんな彼女の努力の結晶は……天上ヶ原雅の暇つぶし、あるいは余興によって完全に潰されてしまったのだ。そんなことが許されていいのか?規律を破った俺とはわけが違うのだ。規律を遵守し行動した彼女が報われないというのであれば一体誰が報われるというのだろうか?……俺には納得がいかなかった。


「結局……それで駄目だと言うなら……原点回帰で原点突破する以外に何があるってんだよ?」


 合法で駄目なら違法しか手立てはない。仮に一日外出権を使っても脱出出来ないのであれば、最早違法である「脱出」しか方法はないだろう。
 無理も通せば道理は叶う。俺が脱出に失敗したのには幾つか要因がある。一つは情報不足。第二に慢心。第三に……人手不足だ。これに尽きると思う。逆に言えばそれらの要素さえ満たせれば学園脱出も決して不可能ではなくなるだろう。
 そして勿論計画の中心は俺だ。俺がやらずして誰がやるというのだろうか?俺が救わなければ誰も救われない。
 だからこそ、戦う覚悟を定めよう。今の俺にはどれだけの信頼出来る仲間がいると思っているんだ。笑わせるなよ、天上ヶ原雅。お前の退屈しのぎが全て順調に進むと思っているなら大間違いだ。必ずやお前の予想を超えて、お前をあっと言わせて上で、二宮を学園の外に出してやる。俺は確固たる決意を胸に宿して、まずはその一歩を踏み出すことにしたのだ。






「それで……話とは何なんだい?勿論君のために時間を空けることは全く苦では無いから問題は無いんだけど、内容を把握していないと流石に少し不安でね」


 まず俺が一番信頼を寄せており、無条件で手助けをしてくれそうな三枝に声を掛けることにした。今は良く晴れた昼休み。俺と三枝は人気の少ない裏庭でこっそりと会話をしていた。 


「ああ、悪いな三枝。お前に一生の頼みがあるんだ。多分これが一番大きな頼みごとだ」


「君からの頼み事であるならば、恐らく僕が断ることは少ないとは思うけれど、もしかしたら内容によるかもしれないね。それで……一体どうしたんだい?」


「ああ。聞いてくれ。実は……二宮の件だ」


「なるほど……今の君が夢中になるとすればそれが一番なんだろうね」


 昨日の一件のことは何とか消化し二宮は平然と登校しているように振る舞っていたが、それでも平常時の元気があるかと言われればそんな筈も無い。彼女は俺に心配を掛けないようにとただただ強がっているだけだったのだ。そしてそんな健気な姿がより俺の心を痛めつける主因となっていたのだ。
 三枝は適度にそんな俺の苦悩を知って、今まで慰めてくれることもしていた。そんな彼女だからこそ俺は、二宮が理事長に騙されていた一件についても包み隠さずに全てを告げたのだ。


「二宮さんは、結局のところ理事長の策略によって、自分が望むような一日外出の権利を果たすことが出来なかったと。そういう理解で問題ないかな?」


「ああ。そうだ。あのくそ女……酷い話だとは思わないか三枝?」


「うん。これは非常に悪質だと僕も思うね。特に理事長が二宮さんの思惑を知っていてそのような振る舞いをしたとするならば、僕も君と同様に彼女を許すことなんて出来ないよ」


「なっ!そうだろっ!あいつは最低な糞野郎なんだよっ!絶対に許しちゃいけないんだよ」


 流石俺の不肖の友人である三枝薫だ。二宮の苦悩を理解し、俺と同じような思想を抱く優しき相棒だ。だから俺は単刀直入に彼女に話をすることにした。


「だからさ。俺は考えたんだ。二宮が正攻法で努力を積み重ね、正攻法で戦ったことを愚策に潰えさせるのなら……最早『違法』で戦うしかないってな」


「違法で戦う?それはどういう……」


「つまりだ。……理事長にばれないように二宮を学園の外へと逃がすって話だよ。そうすれば二宮の望みは叶えられるだろう?」


「ふむ……」


 三枝は少し考えるようにしながら掌を顎に付けた。そして……しばしの沈黙と共に俺に答えを告げる。


「櫻井君。僕は君の考えに……」


「賛成することは出来ないかな」


 三枝は初めて俺を冷笑するような視線を浴びせながら、そんな予想外な発言を述べた。 



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