ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 

湊湊

16.「生徒会役員共の集結」

「で?……俺をここに呼び出して何がしたいんだ?」
 単刀直入に俺は八重歯を見せつけながら瞳を爛々と輝かせている少女に問いかける。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃんー。櫻井っちー。私たち既にそういう関係じゃん。なんていうかラブラブ的な?相思相愛的な?」
「お前が懲罰に際して合意もなしにノリノリで襲ってきただけだろうが!……つーか、別にラブラブじゃねえだろ?」
「もう。そんなにカリカリしない方がいいよ。安心してよ。何にも理由なしには襲ったりしないからさー」
「何にも理由なしに襲ってきたらお前に関しては腹パンすんぞ。俺は男女平等主義者だからその辺はきっちりと平等に対処するからな」
 柊先輩は戦闘能力高いから反撃することは困難であるが、こいつに関しては別だった。最初出会った時のあの悍ましい雰囲気は既に雲散霧消と化し、ただの憎たらしくも愛らしい戦闘能力の皆無の先輩って感じだからな。恐らく腹パンしたら普通に泣き出すだろう。
「いやーん。櫻井っち怖いー。腹パンとか慣れているけど怖いー♪」
 愛莉は、自身の動きを可愛いと勘違いをしているのか知らないが、身をよじらせながらそんな言葉を吐き出していた。……別に可愛いとなんて思わない。そう……そう、別に愛らしい小動物みたいで可愛いとなんて思わねえぞ。嘘じゃねえからな。
 って、誰に言い訳をしてんだ俺は……下らないことを考えるのは辞めて、改めて状況でも整理しておこう。
 ここは第四校舎四階の生徒会室。気品漂う紅茶の香りは素晴らしいと思うが、俺は、のこのこと断罪をされた場に再び舞い戻ってしまうという愚挙に出ていた。
 事の発端としてはホームルームを終えた愛莉が放課後になった途端に、俺の教室にまで足を運んで、さながら誘拐するかの如く、俺を生徒会室にまで引きずりこんだのだ。そして現状に至る。
「で、愛莉。俺はどうしてここに呼ばれたんだよ?」
「だからそれは君が知るには少しばかり早いって。そんなに焦ったところで、漫画とかでも敵役の人は答えてくれないでしょ?」
「面倒くさいなお前はっ!二宮とか三枝は許せるけどお前は許せねえわっ!遠回しな発現とか思わせぶりな発言とかでもお前だけは腹立つわっ!」
 これが普段からの行いの差と言うやつなのだろう。俺が追い詰めると彼女は観念したかのようにしながら、俺の質問に答えることにしたのだ。
「うーんとだね。愛莉ちゃんは生徒会の会計じゃん?そして、木葉は副会長。まだ、役職がない人がいるよね?」
「えっと……生徒会長と書記か?それがどうかしたのか?」
「うん。実はその中の生徒会長がこの学園に入学した唯一の男子生徒であり男色家の君に大変興味があるみたいでねー。知り合いですよーって言ったら、是非とも連れてこいって言われちゃってさ?」
「なるほどな。まあ理解したよ。……ちなみになんだけどよ」
「ん?」
「生徒会長はマトモな人なんだろうな?」
 この学園に来てからは由緒正しき権力者であっても、やばい人がいることは既に身体で理解している。まあ、特に理事長のことなんだか。ってか、大体の元凶はあいつなんだよな。一応言えば花京院みたいにお嬢様っぽい女でもやべえのはいるけど。何にしても、頭のネジが飛んだような女と接触したくはないところだ。
 愛莉は俺の問いに何と答えようか少し迷ったような様子を見せた後に答える。
「生徒会長は……うーん。理事長と同じくらい面白い人かなー」
「最悪じゃねえかっ!それは絶対あかんやつだわっ!」
 その発言を聞いた瞬間に俺は全身悪寒が走ってしまった。面白い人とは俺にとっては全く面白くない人であることの方が絶対多いってっ!
「悪いな愛莉……そんな情報を聞いて俺がここで生徒会長と会ってたまるか……俺は平穏無事に暮らすことが基本的には目標なんだよ。それじゃあな」
「あ……ちょっと……」
 制止しようとする愛莉を他所にして、運よくロックされていないドアを通過し、俺は生徒会室から飛び出た瞬間―――――
「すまんな櫻井。今回は生徒会長の命令なので、お前も拘束しなければならないのだ。許して欲しい」
「ってまた柊先輩かよっ!これどうしようもないですねっ!」
 外で待機していたのか、今偶然やってきたのかは定かではないが、俺の認知の速度を遥かに超越したような縦横無尽な動きで俺は為す術もなく動きを封じ込められる。
 そして、再び生徒会室の中に閉じ込められてしまい、暗証番号と指紋認識のロックをされてしまった以上、逃げることは不可能になってしまった。
「あ?おかえりー櫻井っちー」
「……俺はもう本当に帰りたいよ」
「まあまあそんなに落ち込まないで親睦でも深めようよ。折角だしねー」
「……わっーたよ。もう逃げねえよ。逃げる方が疲れる気すらしてきたし……」
 いい加減逃げることの限界を悟り始めたことから俺は逃げることを諦めた。そして、席に座り直し、二人に色々と聞いてみることにしたのだ。
「で、だ。そもそもその生徒会長ってどんな人なんだ?さっき愛莉は理事長みたいと言っていたけど?」
「にしし……性格自体は微妙に異なっているけどね。けど、理事長みたいってのは本当なんだよね。だって理事長と会長は親戚関係にあるみたいだし」
「親戚関係?」
 俺は思わずそんな発言に頭を抱えてしまいそうになる。
「大丈夫だって。理事長よりは遥かにマシだから。それに理事長とは違って櫻井っちに対して恐らく好意的だからね」
「おい少し待て愛莉。お前は理事長に対する不敬と会長に対する敬意が足りていないのではないか?」
「だって別に愛莉はあの二人に心酔しているわけではないし。あの二人に協力して愛莉ちゃんが生徒会に在籍しているのは定期的に漫画を輸入してくれるという約束に基づいて協力しているだけだからさー」
「何?お前漫画の為に協力してんの?」
「んにゃ。そうだよ。だって愛莉にとって漫画こそが全てだからね。だから愛莉は揺るがない。櫻井っちをこうして捕らえているのも漫画のためだよん」
「……」
 どんだけこいつ漫画が好きなんだよと言いそうにもなったが、まあ人の趣味にケチをつける気はない。 それに俺だって漫画は特別詳しくはないが、嫌いではないからな。気持ちは多少なりとも分かるつもりだ。
「えっと……それで、生徒会長はいつになったら来るんだよ?」
 既に俺が愛莉に誘拐されて生徒会室に入ってから二十分程度が経過していた。
「まあまあ櫻井っちもそんなに慌てないで。きっともう少しすれば……」
 っと、絶好タイミングで部屋の扉から音が聞こえる。どうやら外側から指紋認証と認証番号を外部から入力されたことで扉が開いたようだ。
 ようやくと……俺の宿敵である理事長の親戚関係の生徒会長の登場という訳か。流石に緊張感は募り額には汗がにじんでしまう。
 この学園に来てからはキャラクター性が濃すぎるのが困りものなので、至って凡百な人格をしていて欲しいと夙に願う。
「いやー、遅れてしまいまして申し訳ないです。少しクラスの方でもめ事が起きていましてね。その処理をしていたことで、こうして遅れてしまった所存です」
「……」
 そうして登場した女性は……ん?何だか俺の希望通りに平凡な様相をしている女子生徒だった。もっと言えば、この学園内でも屈指の平凡さをしている一般生徒のようにしか見えなかった。彼女は俺の方に視線を向けてから屈託のない笑顔で喋り始めた。
「あっ!もしかして櫻井芳樹君ですか。愛莉と木葉から既に話は聞いていますよ。へぇー、本当に男子生徒がいるんですね。何だか新鮮な体験ですよー。学年が違うこともあり、あなたのお顔を直接拝見するのは初めてですから少し緊張してしまいますね。ああ、どうぞ、どうぞ。これから気軽によろしくお願いしますね?」
 彼女はすぐに俺と手を取って腕をぶんぶんと振り回した。一瞬、これは怪力パターンで俺が痛い痛いと主張することになるとも予期したが、全く持ってそんな展開にもならない。
女子高校生の平均的な握力で、極めて良心的な範囲で俺の手は握手と言う行為を通して握られたのだった。
 ……これが生徒会長?とても失礼な考えだが、些か彼女は凡百とした一般人のように思えた。この学園に入学してから俺の周囲に入る人は皆個性豊かであり、どこか特徴があった。  
かなりの良識人である三枝だって、よくよく考えれば僕という一人称を用いて個性的な存在なのだ。
 だが、眼前の女性はどうも特徴らしい特徴があるような気がしない。……うーん。ぶっちゃけ多分容姿が極めて地味なんだろうな。
 別段今の俺は女は恋愛対象に含んでいないが、それでも容姿の良し悪しについての認識は問題はない。
 それを踏まえた上で彼女の外見は地味だった。愛莉は八重歯を覗かせ快活に笑う金髪の美少女であり、柊先輩は高校生とは思えない程に貫禄があり、学園屈指の黒髪の美人と呼んでも過言ではない。
 そんな二人と比べると彼女は極めて平々凡々な容姿をしていた。髪の色は純黒であり黒縁の眼鏡を掛けており、そのメガネのダサさがいい感じに庶民感を漂わせている。スカートの長さは膝下15㎝程度であり一般的な生徒よりも遥かに長くしているのも地味な印象を推進させているのだろう。
 地味で普通な印象を受けるが、勿論悪い人では無さそうだ。きっと理事長よりは百倍マシだ。ああ、そうだ。肯定的に捉えていこう。多分学園内屈指の良識人だと俺は考えを改めることにした。
「あの……生徒会長さん。最初はあの傍若無人の理事長と親戚ってことで警戒していましたが……すみません。それは偏見でしたね。どうにも真面目っぽい人で安心しました」
 俺は微笑みながら彼女にそんな風に言葉を返した。いやー、生徒会長は常識人っぽくて良かったなー。愛莉のさっきの発言はただの脅しだったのかもしれない。
「ね?だから言ったっしょ。心配なんかする必要は無いって!ねっ!生徒会長さんっ!」
「おい、愛莉……」
「にしし」
 至って楽しそうにいう愛莉と柊先輩の態度が対象的だった。……ん?何か様子がおかしい?
 俺の眼前では生徒会長が少しプルプルと震えた様子を見せながら俺に言う。
「真面目っぽいって言わないで下さいよっ!気にしているんですからっ!」
「ああ、これは失礼しました。ごめんなさい。生徒会長さん」
「大体何ですか先ほどから生徒会長ってっ!もしかして愛莉ちゃんは彼を騙しているんですか?」
「にしし……ばれちゃったか。ばれちゃあ、生かしては返せないかな」
 愛莉は再び八重歯をほのかに見せつつも、笑った。ん……ちょっと待てよ。いやいやいやいやいや、そんな筈はないだろう。……と、言いたいところではあるが、正直流石に深層心理の中では見当がついてしまっていた。
「おい、愛莉もしかして……」
「多分正解だよーん。彼女は生徒会長ではありませーん。実は生徒会書記の、小鳥遊美春ちゃんなのでしたー」
「……やっぱり、生徒会長じゃなかったのか……だからこんなに普通で真面目っぽい人なのか……」
 俺は本音を漏らしてしまう。すると、彼女は少し目に涙を浮かべながら俺に懇願をする。
「だから真面目とは言わないでくださいっ!この生徒会の中で私が地味で存在感が無く融通が効かない無能だって言われていることを知っているんですからっ!」
「ああ、これはすみません……」
 勿論罪のない彼女を傷つけることなど俺の本懐ではない。それに俺にとって数少ない良識人である彼女とはいい関係を築きたいのだ。俺は普通や真面目という単語を控えることにした。
 彼女は一度深呼吸をして心を落ち着けてから改めて俺に挨拶をする。
「それでは櫻井君。改めてましてご挨拶を。私の名前は小鳥遊美春と言います。生徒会では書記を担当しています。学年は二年生です。愛莉も木葉も会長も根は悪い人ではないのですが、個性が強くて大変な部分があると思います。ですから、そんな時は気軽に私を頼ってみてくださいね」
 笑顔で微笑みながら彼女は俺にそんなことを言った。……なんだよ、まじでいい人って感じじゃねえか。俺の心のオアシス的な存在になりそうだ。
「はい。その時は宜しくお願いします。頼りにしていますよ小鳥遊先輩」
 俺は彼女に揺蕩うことのない信頼感を抱いたのだった。そして、そんな彼女に対して愛莉と柊先輩は感想を述べる。
「いやー流石美春っちは、普通に真面目な自己紹介っ!素敵!生徒会役員としてあるべき姿だね」
「ああ。流石は生徒会唯一の良識人と呼ばれていることはある。私も美春を見習い、平凡な所作を学びたいと考える所存だ」
「だから真面目って言わないで下さいよっ!真面目なんて同級生から言われても嬉しくともなんともないんですからっ!」
 目に涙を浮かべながら必死に二人に嘆願する姿を見て俺は……あ、この人は俺と同じでツッコミ側の人なんだと親近感を覚えていた。……周りが変人ばかりだとしんどいですよね、ほんとに……
「それにしても……いい加減に生徒会長は登場しないのか?」
「まあまあ、あの方はマイペースだからね。世界の中心は自分だと信じて止めないから」
「どんだけ傲岸不遜な奴なんだよ……」
 やはり、行き先が心配だった。その後しばらく俺は三人と談笑をしながら、交友を深めていた。二人は、一週間前に俺を性的に襲ったりしたが、それ以外の点では決して悪い人たちじゃない。そんなわけで、生徒会のメンバーとも仲良くなることに成功していた。
 そして、俺がこの生徒会室に来てから早一時間が経過した時のことだった。先ほど小鳥遊先輩が生徒会室にやって来た時と同じようにして扉の部分から音が漏れていた。そして―――――


「……ようやくたどり着いたぜー。ちょっと生徒会室って遠すぎなんだよな。しんどいぜ。神にも等しい存在である俺が階段登らせられるとか本当に笑えないジョークだよな?」


「……っ!」
 傲岸不遜。天上天下。そんな形容が似合う程の女性が生徒会室に訪れた。髪は理事長と同じく深紅に染まりし悠然とした色を帯びていた。艶やかであり、はりのあるその容姿には驚愕の念を覚えさせられる。
 背丈は愛莉よりは大きいものの、柊先輩と比べると遥かに小柄な体躯をしていた。しかし、その小さな体からは畏敬の念を感じずにはいられない程のカリスマ性を醸し出していた。
 なるほど……この人物こそが生徒会長だ。一般人とは一線を画したような圧倒的なオーラには、ここが千葉県屈指のお嬢様学校であることを思い出させるには十分だった。
「にしし、会長。愛莉ちゃんはしっかりと会長が望んでいた通りに学園内の唯一の男子生徒を連れて来たよーん」
「ん?おう。それはご苦労だったな愛莉。良くやった」
 部下を労う上司のように軽く愛莉の頭を撫でながら褒めた後に彼女は俺を目視した。俺は彼女からなんて言われるのだろうか?心配で心配で仕方なかった。
「なるほど……お前が雅によってこの学園で唯一の男子生徒となってしまった人間という訳か。そして、あの名画家である櫻井堅一郎の息子。ふふふ、こいつは面白くなってきたな」
「あの……あなたも親父のことを?」
「ああ。知っているさ。櫻井堅一郎はいい男だ。あいつとは、以前に会ったことがあってな。あいつの息子ともあれば、大層立派な人間であることは言わずももがなって奴だな。だから俺は息子であるお前にも無条件で信頼出来そうだな」
「……」
 相変わらずあの親父が称賛されていることは全く納得がいかないが、どうやら親父のお陰で俺の評価も悪くはないようだ。それに関しては素直に親父に感謝をしとこう。
「おっと自己紹介が遅れたな。俺の名前は東雲麗衣華だ。もう既に知っての通りにこの学園の神であり生徒会長だ。何か困ったことがあれば雅のところじゃなく私のところに来い。可能な限りに対処はしてやるからよ」
「会長……」
 予想していた人物像とまるで異なっていたために、俺は何とも言えない気持ちになっていた。確かに目元やその威風堂々とした様は理事長に似ており、傲岸不遜な部分も大きく類似している気がするが、本質的な部分はまるで異なるようだ。あの理事長よりは遥かにこちらの会長の方が実直であり信頼感を募らせるには十分だった。
 そんな俺を見かねてか、愛莉は俺に少し意地の悪そうな笑みを浮かべつつも、言葉を述べる。
「ね?だから言ったでしょ?会長は悪い人じゃないって……理事長に似てこそはいるものの、カッコいい人なんだよ」
「ああ……そうかもしれないな。理事長ほどはやばい方じゃなさそうでよかった」
「ああ。当たり前だろうが。そもそも俺とあいつを比べること自体が正しくねえんだよ。幾ら親戚関係だって言ってもよー。俺とあいつは結局他人だからな。櫻井。その辺の認識ちゃんとしとけよ。じゃねえとただじゃおかねえぞ」
 多少の含蓄を含んだように東雲会長は俺に忠言をしたのだった。俺が頷くと満足したかのようにして言葉を放ち始めた。
「よし……それじゃあ、折角唯一の学園内の男子生徒を囲ったんだ。愛莉……飲みの準備は任せたぞ」
「はいはーいっ!」
「飲みって……ちょっと待ってください。私たちは学生……」
「固いことを言うな美春。まあ、あれだよ。限りなく酒に近くて描写的には酒を飲んでいるようにしか見えないけれど、酒では無い酒を飲もうぜ?」
「いやいや、それ完全に酒じゃないですかっ!何か上手く誤魔化した感がありますけど結局酒ですよっ!」
「描写的には酒じゃなく限りなく酒に近い酒のような物を飲もうぜ。これは祝い事なんだからよ」
「……だから駄目ですよっ!いいですか会長っ!私たちは生徒の手本としてあるべき姿を……」
「しょうがねえな。わーったよ。普通に真面目な美春に免じて酒は辞めとくか……」
「だから真面目って言わないでくださいってっ!」
 かくして酒を飲むことは中止になったが、必死な小鳥遊先輩の配慮がなければどうなっていたことか。……恐るべし生徒会。会長の指示の下で愛莉が主導となり俺の歓迎会的なことを行ってくれるようだ。愛莉は多彩なジュースと庶民的なお菓子を準備しだした。
「さーて。それじゃあ大体準備も出来たところで乾杯しましょうか。それじゃあ会長。お願いしますね」
「おう。任せとけ。それじゃあ櫻井芳樹の白花咲女学園入学と俺たち生徒会の人間の邂逅を祝って乾杯っ!」
『乾杯っ!』
 俺たちは声を合わせてその祝杯の言に追従した。






「それで……聞いてくださいよ会長。あの忌まわしき理事長と親父は俺に許諾も得ないままにこの学園に入学させたんですよ。マジで酷いと思いません?俺は男が好きなだけなんですよっ!」
「ああ。お前も随分と苦労してきたんだな。心中察してやるよ。今日は嫌なことを全部忘れて飲んどけよ」
「有難うございますっ!」
 俺は乾杯の後に某有名炭酸飲料しか飲んでいないにも関わらず、何故か酒を飲んだ時のようなテンションになっていた。……今まで、愚痴る相手も碌にいなかったので、この際には俺の事情について詳しくぶちまけてしまいたかったのだ。
 だから俺は俺の個人的な情報……主に俺が同性愛者であることと、学園に入学させられた経緯について仔細に情報を話したのだ。
 どうやらこの場にいる生徒会の人達は理事長から少しの情報しか教えられていないようでしっかりと聞いてくれたので俺は全てを打ち明けていたのだ。会長だけではなく、柊先輩も小鳥遊先輩も、しっかりと傾聴してくれるので俺としては非常に話し易かった。愛莉は終始大爆笑しているようで、なんだこいつはって感じだけどな。
「それにしても……会長って凄くカリスマ性ありますよね。あの理事長も凄いですけど、東雲会長の場合だと……なんていうか、思わず愚痴ってしまうんですよね」
 勿論炭酸飲料の効果(炭酸飲料の効果って何だよ)があるだろうが、俺がこうして愚痴を吐き出せたのは東雲会長から発せられているような『懐の大きさ』に大きく起因していた。 
なんというか……この人になら全てを任せられるような……そんな気がしてしまうのだ。俺のそんな発言に東雲会長は鼻を鳴らしてから返答を述べた。
「ふん。俺は仮にも東雲本家の次期当主だからな。凡愚とは一線を画すように堂々として、毅然たる振る舞いをしなければならねえんだよ。だから、誰か一般生徒が本当に困っているようなことがあればそれを全力で聞いてやるし、問題があれば解決してやるように図る。それがこの学園の長としての俺の責務だ」
「会長……」
 何か凄く大仰な発言に普通なら笑ってしまいそうにもなるかもしれないが、この会長には確かなカリスマ性があり、笑いごとではなかった。
だから、俺はただただ感服させられたのだ。この人にならついて行けるってそう思わせてくれるような……力強さがあった。
「だけどな櫻井。改めて言っておくぞ」
「はい?」
「俺のことをどう評価しようがお前の勝手だ。俺を慕い敬意の念を払おうが、傲慢不遜として侮蔑しようが一向に構わん。だがな。俺を天上ヶ原雅と比較した上で語るなよ。さっきも言ったが、俺とあいつはあくまで血縁上のつながりがあるだけだ。血の繋がりがあろうがあくまで俺とあいつは他人同士に変わりねえ。今はたまたま同じ学園に通ってはいるけどな。それだけは努々理解してから俺という人物を評価しろ。いいな?」
「は、はい」
 彼女の気迫には周囲が凍りついてしまいそうになる。……何か理事長とあんま仲良くないのかなと俺は疑念を肥やしてしまう。あまり触れない方がよさそうな部分だから今後は気を付けようと思わされた。
「さーて、気を取り直して飲みの続きだ。それじゃあ美春。とりあえず余興として一気飲みをしてくれ」
「その言い回しだとまるでお酒を飲んでいるみたいじゃないですかって、そもそも一気飲みなんて危険な行為は到底容認出来ませんよっ!?」
「悪いな。そうだったよな美春は真面目だから一気飲みなんかできねえよな。すまねえ。俺の配慮が足りていなかったわ」
「にしし。美春は真面目だからしょうがないよねー」
「うむ。真面目な人間なら例え炭酸飲料と言えど、一気に飲み干す下賤な行為はしないだろう」
「も、もうっ!何ですか皆さん。私を煽っても一気飲みなんてしませんよ。というか、真面目真面目って言わないくださいよーっ!気にしているんですからー」
 泣きそうになる小鳥遊先輩のおかげで生徒会室の中は何だか穏やかな様子にうって変わった。さっきまでは東雲会長が怖かったからなー。
 その後もしばらく雑談は続いた。そして、夕刻の六時半頃になったタイミングで俺は立ち上がった。
「それじゃあ、そろそろ俺は自室に戻りますね」
 流石にいつまでもここにいては迷惑だろうし、そろそろ夕食の時間になるので、失礼することにした。
「おう。またいつでも遊びに来いよ。生徒会は基本的に暇だからな」
「暇じゃなくて忙しい時もありますよって生徒会長は基本的に私に全部仕事を押し付けているじゃないですかっ!たまには会長も仕事してくださいってばっ!」
「会長が構わないということから、いつでも訪れるといい」
「ってなわけで、また遊びに来てね櫻井っちっ!」
「ああ。それじゃあ、皆さん今日は本当にありがとうございました」
 何だかんだ言いつつも素直に楽しむことが出来た俺は正直な話結構満足していたのだった。今後も生徒会の人達とは交流を続けていきたいなと心の中で思うのだった。



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