ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 

湊湊

13.「学園脱出計画の果てに」



「は?外の世界が滅びた?おいっ!どういうことだよっ!」
 俺は彼女に詰め寄ってその発言の真意を問いただしたくなったが、俺の身体は依然と固定されてしまっていることで動くことは不可能だった。
 金髪の少女は腰を屈めて地面に説き伏せられている俺と視線を交差させながら語り始めた。
「君のお父さんの考えは英断だったね。外部世界と断絶されたこの白花咲女学園に入学させることで生を繋ぐか。……なるほど。親子の愛とは、かくも尊いものなんだね。愛莉ちゃんも流石にその尊き思想には感嘆しちゃうよ。愛莉ちゃん自身は親子関係の仲が悪いから憧れちゃうなー」
「だ、だからお前何言って……」
「君もいい加減に理解しなって。元の世界は『此度の一件』により全消失してしまった。そして、君のお父さんは事前にそれを把握し、何とか君だけでも逃すように画策をしたんだ。他の人類を置き去りにしてでも……君を助けたかったんだろうね。そうして、君は断絶された異空間である白花咲女学園にやってきたことで今も生き永らえている。状況は理解出来た?」
「は?お前……そんなことって……」
「まだまだ正気ではいないようだね。今のままじゃあ今後の人類生存競争の中で生き伸びることは不可能かもしれないよ。ありのまま起こった現実を受け入れなさい。櫻井芳樹君?」
 唐突過ぎる彼女のその発言を受け入れることなど出来ず……俺はただ打ちひしがれることしか――――――


「ククククっ!ハハハハハハっ!面白い―。ねえ、木葉。この人は本当に面白いよ?愛莉ちゃんのノリに真っ向から着いてきている。ほんといい人かもしれないっ!」


「ああ。お前の訳のわからん妄言に付き合える人間などそれ程いないだろう。この男は面白みがあるのやもしれん」
「は?待て待てどういうことだよ?」
 俺が聞くと彼女が八重歯を見せ純粋な笑顔を浮かべながら俺に言った。
「だからそういうことだってば。流石に全部冗談だよ。世界が滅びるとか、あくまで愛莉ちゃんの妄想だよ。そうなれば面白いってのは本気だけどねー。だけど……本当に少しでも信じるとは思ってなかったけど。でもまー、満足したからもういいかな。そろそろ生徒会に連れて行こう。それじゃあ、木葉―。よろしくねー」
「って冗談だったのかよっ!悪趣味過ぎるわっ!無駄に尺を使い過ぎなんだよお前っ!何かやべえ展開に巻き込まれたと勘違いしちまうじゃねえかっ!」
 夜の学園に俺の空しいツッコミが響くが、眼前の金髪の少女は腹を抱えて笑っているだけだった。
「さて……それでは移動するぞ。しっかりと捕まっていろ。振り落とされたくなければな」
「ちょ……うぉおおおおお!早っ!」
 そして俺は身体を固定されたまま、校門から学園の校舎へと高速で運ばれることとなった。






 それから約十分後。俺は第四校舎の一室に連れて来られていた。それは俺の寝室からさほど距離は無い一室だった。既に深夜の時間帯ではあるが、煌々と電気は照らされており俺は眩しさのあまり思わず瞬きを繰り返していた。
 俺はその一室の中で身体の拘束を解かれ、柔軟性に富んだ高級ソファーに座らされた。
 部屋の広さは理事長室ほどではないが、それなりに広さをしており、何十人と集約することが出来るようなスペースがあった。そして俺の正面にはここまで俺を導いた女性が二人席に座った。
 一人は先ほど思わせぶりなセリフを吐いて俺を惑わせた金髪の美少女。笑った時に見え隠れする八重歯が可愛らしいというのが特徴だった。
 そして、もう一人は俺を地面に伏せた屈強な女性だった。先ほどまでは姿を確認することは出来なかったが、今は正面に座っているので、どんな人物なのかはっきりとわかった。 
 身長は174センチある俺とさほど変わらないことから女性としてはかなりの高身長だろう。足はすらりとしており、モデルのようにスリムな体型をしていた。
 漆黒色の毛髪は艶やかであり相当な美人と呼んでも過言では無いのだろう。到底女子高校生とは思えないような凛々しい容貌をしていた。恐らく外見だけで言えば、推定二十台前半の立花さんと同程度の成熟した女性だった。
 豊満な胸は異性を魅了するだけの破壊力を持っているだろうが、今の俺からすれば、ただの無粋な脂肪に他ならない。
 と俺が彼女の観察をしている時のことだった。今までの沈黙とは異なり快活な金髪少女が口を大きく開き、オーバーなリアクションを俺に見せる。
「あっれー。もしかして今、木葉のおっぱい見てなかったー?君って意外とえっちだね?」
「なるほど……その点に関しては貴様も男子という訳か。理解した」
 金髪少女は俺を煽るようにしながらそんなことを言い、黒髪の女性は冷静に俺を深く観察するような挙止動作を示す。
「いや別に……おっぱいに関心があった訳じゃねえよ。ただ、そんな物が胸にくっついていて大変じゃねえのかなとは思うけど?」
「うむ。貴様の着眼点は素晴らしいな。その通りである。私の胸の脂肪はあまりにも戦闘に不向きなのだ。一度は切り落とすか本当に悩んだのだがな。周囲の人間に止められたので、結局のところ実行はしなかったが」
「切り落とすとかアマゾネスかよっ!ってか…戦闘ってなんなんだよ。ここは日本だぞ?ほんと……あんたら何なんだよ?」
「にしし……君ってばもしかして愛莉ちゃん達について興味あったりする?」
「ああ。興味はあるよ。だってこの一室に強引に誘拐されたんだからな。あんたらの要求と正体くらいは、はっきりと知りたいのが俺の本音だ。ってか、何の説明も無かったらそりゃ気にもするわ」
 ひとまず情報収集しないことには始まらない。俺はこの二人と会話をすることでどうにか情報をかき集めてその後にここから脱走することを決意した。
「にしし……それじゃあ、君に質問タイムを上げるよ。何でもどうぞー。ああ。ちなみに私が好きなのは漫画ねー。漫画のことだったら多分相当詳しいよ。その辺りの事情から愛莉ちゃんはさっき思わせぶりな発言をしたしね」
「俺が漫画についてはあんまりわかんねえよ。えっと……まず、ここはどこなんだ?あまりにも行動が迅速で第四校舎ってことくらいしかわかんねえぞ?」
「にしし……ここは第四校舎の四階の生徒会室だよ」
「生徒会室?……この学園にもそんな組織があったのか?」
 まあ、どこの学校にでもありそうなものだが、この学園の校則とか風潮などが、実際にどこまでが世俗的な規律になっているかが曖昧だったのだ。あの入学式とか考えてもどう見ても異端だったし。
「ああ。君はまだ新入生だからあまり知らないのも無理はないかー。でもさー。普通に考えれば、ここは高校なんだから生徒会くらいは存在するのは常識だよ」
「まあそう言われればそうとも思うな。で、……あんたら二人は生徒会の役員ってことか?」
「そだねー。生徒会役員共ってところだよ。それじゃあ、改めて自己紹介でもしとこうかなー。私は生徒会会計の高野愛莉こうのあいり。苗字で呼ばれるのは嫌いだから愛莉ちゃんって呼んでくれて構わないよ。ああ、あとは敬語使われるのは嫌いだから、私にはため口で構わないからねー」
「別に敬語を使わないのも名前呼びするのも構わねえけどさー。……ってか、上級生なのか!?」
「もう君ってば察していなかったの?私は二年生。君は一年生。オーケ?」
 どう見ても年下にしか見えなかった。その天衣無縫とした態度からは上級生としての威厳など全く存在していないように思えた。主な原因としては自分の下の名前をちゃん付けで呼びそれを一人称で使用していることが一番の原因なのだろう。
「ああ。とりあえずわかったよ。それじゃあ愛莉。今後宜しくな」
「……にしし……宜しくね。櫻井っち」
「櫻井っちって呼び方は……どうなんだ?」
 恐らく愛莉からすれば親愛の情を示すような言い回しなのだろうが、俺としては少しだけその呼び方は何とも言い難いというのが正直な意見だった。
 ひとまず愛莉のことはいいだろう。そしてもう1人の黒髪の女性が俺の方を向いた。
「うむ。それでは私の番という訳か。愛莉と比べれば陋劣たる挨拶になってしまうことはやむを得ないだろうが何卒許して欲しい。私の名は柊木葉ひいらぎこのはだ。愛莉と同じく二学年に在籍をしている。役職は副会長だ。以後よろしく頼むぞ」
「ああ。宜しく……柊先輩」
 最初は野蛮で話が通じないようなやばいタイプかとも思ったが、この様子を見ていると実直であり信頼出来そうな気配もある。俺は少しだけ好印象を感じつつも彼女に挨拶をしたのだ。
「ちょっと……愛莉は呼び捨てで木葉には先輩付けとかおかしくない?差別だー」
 奥歯から少し見える八重歯を覗かせながらも彼女は不平を零した。
「お前が呼び捨てでいいって言ったんだろうがっ!」
「何か寂しいじゃん。差別だ―差別だ―。これは徹底的に交戦だねっ!殺し合いが始まっちゃうパターンの奴だよ?夜道気を付けてね櫻井ッち」
「我儘かっ!つーか、物騒だなお前っ!更に言えばさっき生徒会室に誘拐されているから夜道気を付けても糞もねえなおいっ!」
 ったく……俺の周りにはどうして、ここまで自由人が集まってしまっているというのだろうかと憂いを感じてしまう。まあ、愛莉も柊先輩も本質的に悪い人じゃなさそうだからひとまず安心はしたが。
「でだ。話を進めたいんだが……俺はどうしてこの一室に閉じ込められているんだ?」
 俺は彼女達に問いたいのはそこだった。部屋には暗証番号式のロックが設置されており、どうやら俺が入り口の扉から脱出することは適わないようだ。
 そして、二人は好意的な態度で接してくれているものの、俺から視線を外すことはない。これでは案に「身体の拘束はしないが、逃げることは絶対に許さない」と宣言をされてしまっているようものだ。
 彼女たちとは、仲良くやれそうな予感も無いとは言わないが、少なくとも現状では俺と彼女たちでは敵同士というのが実際的なところだろう。
 俺のそんな問いに鼻を鳴らしながら愛莉は答える。
「愚問だなー。櫻井っちだって言わなくても何となく予測がついているでしょー?櫻井っちが……この学園の校則を破っちゃったからだよー」
「……」
 校則とはつまりそういうことなのだろう。俺が学園外に無許可で脱出を図ろうとしたことだ。あるいは計画企図の段階ですら校則違反なのかもしれない。
「校則を破った生徒は生徒指導という名目においてこの学園の理事長である天上ヶ原さんから何らかの処罰が下るんだよ」
「げえっ!ここであいつの名前が登場すんのかよ……」
 俺はげんなりとしてしまった。……俺が校則を破りそのことによって何らかの形で罰を受けるのは予想の範疇だ。
 だが、ここでもあの忌々しい理事長が絡んでくるとは……ってか、絶対それじゃあ処罰が加虐的なものになってしまうだろう。
「なあ、もしかしてだ。理事長が俺の処罰内容を決める。そしてなおかつ、この深夜の状態でも、俺は待たされている。それはもしかして……」
「櫻井っちの予想通りからは知らないけれど……これから理事長がこの生徒会室にやって来る予定だから……それ待ちだねー」
「うぉおおおっ!あいつに会いたくねえええええええええっ!」
 日常生活でさえあいつの存在を認知すると疲労感が募るというのに、この状態であいつに会うなんてことになったら……先ほどまでは学園から脱出できるだろうと最高の気分であったのに今は最低な気分まで落ちこんでしまった。
「……おっと話をすれば理事長様のおなーり♪」
「……帰りたい。おうちに……」
 思わず零した俺の言葉は紛れもない本心だった。生徒会室の機械式の扉のロックが解除されたようで扉が開く。
 そして、残念なことに忌々しい理事長との何度目ともなる邂逅が果たされたのだ。彼女は生徒会室の中を軽く見渡した後に俺に視線を向けた。
「おや……おやおや。これは櫻井芳樹君ではありませんか。こんな深夜に奇遇ですね。ところで本日はどうしてここにいらっしゃるのですか?」
「あんた絶対わかってて言ってんだろう……」
 顔元がニヤついているのが丸わかりだった。何とも意地が悪く性格の悪い女だ。本当にこいつとだけは友人になれる気がしない。彼女は一度頬を緩ませてから俺に告げる。
「ああ。そうでしたね。思い出しました。櫻井君は学園の屋上から校門を俯瞰し、脱出の為の方法として有刺鉄線を乗り越えることを思案した。そして軍手を購入し私を出し抜き、この学園から脱出することが出来ると勘違いをした状態で無様にもその計画は露見し、計画実行に失敗し、現在は為す術も無く捕らえられてしまっていると。プププ……それで間違いないですよね?」
「言い方っ!言い方、もうちょっと配慮してくれてもいいんじゃない?っ!ってか、笑い過ぎだよあんたっ!」
 この女は俺の失敗を確実に蜜の味と言わんばかりに楽しんでいたのだ。それにしてもだ。
「何で俺の突発的な学園脱出計画に気が付くことが出来たんだよ?」
 俺が理事長に問うと代わりにと言わんばかりに愛莉と柊先輩が答えてくれるようだ。
「就寝時間である二十二時以降は、外部からの侵入者を察知するという目的と、櫻井っちみたいに学園内から外部に出ようとする人間を妨害するために、校門の周囲には防犯警報装置を設置しているんだよー。それが作動したから櫻井っちは物の見事に捕らえられてしまった。主な原因はそれだね」
「その警報は、その場で直ちに音が鳴り響くというシステムなわけではない。何故なら鳴り響いてしまえば、犯人に犯行を察知している事実を伝えてしまうからな。それに深夜でそのような防犯音を鳴らしてしまえば、騒音ともなりかねん。故に単純に理事長室と生徒会室、そして校門前の事務室内に設置されている機械に点灯という形で知らせているのだ。愚直にも校門から脱出しようとした櫻井の行動は筒抜けだったわけだ」
「ちょっと待ってくれ。それはわかったが、問題なのはタイミングだ。あんたらが、その警報の作動を確認して脱出時のタイミングを察することが出来るってのは確かにわかった。だけど、俺が脱出を試みたのは午前一時スタートだぞ。こんな夜遅い時間で尚且つ突発的な行動であんたらはどうして迅速に対応することが出来たんだよ?」
 俺が実際に校門の直下まで行ったのは、作戦開始の直前だったはずだ。もしも彼女たちが警報の合図を受け取った瞬間から駆け付けたとしても、流石に行動が早すぎる。
 事前に俺の行動と決死タイミングを予想していない状態ではとてもではないが対処など出来る筈がないと思うのだが―――――
 そんな疑問に理事長は「いえいえ。簡単なことですよ」と鼻を鳴らしながら答える。
「あなたが学園から脱出することは予想していましたからね。事前に行動するであろうと予測を立てておけばこちら側も事前に対策を講じることが出来ますから。例え深夜で生徒の多くが寝静まったこの時間帯であってでもです」
「……俺の脱出を予測していた?ちなみに根拠は何なんだよ?」
「色々とありますね。単純にあなたが、学園の外に出て男成分を補給したいという欲求が出始める頃だと思ったこと。昨日私があなたの性的欲求をわざと煽りフラストレーションを蓄積させたこと。私が今日の昼間に外から学園に帰還した際にあなたが屋上から景色を見渡していた様子を私も見逃さなかったこと。あの時あなたは私を注意深く観察していましたが私もあなたを見ていたんですよ?相思相愛というやつですね?」
「……っ!」
 相思相愛と言う言葉には俺も予想していない程に抵抗感を覚えた。絶対露ほどにも俺のことを好きじゃないだろこの女。
「そして決定打となったのが、奉仕作業に従事する処罰を与えられていないあなたが、購買で軍手を購入したこと。まさか私も有刺鉄線をよじ登っていくという浅ましい行動に出るのは、全く予想していませんでしたが。そうした幾つかの点からあなたが近日中に何らかのアクションを起こすことは当たり前のように把握していたのです」
「……なるほどな。けど、どうしてこの生徒会の二人はあんなに迅速に俺を捕らえることが出来たんだよ?愛莉と柊先輩はそれにしても駆けつけるのが早すぎだろ」
 俺は作戦決行直前に事務室を含み、周辺に人の気配が無いかを再三に渡り確認した筈だ。故に先ほどの話を参照すると、俺が行動を起こしたタイミングでは、事務室を除く理事長室あるいは生徒会室で待機をしていた筈だ。
 そして、理事長室か生徒会室で警報が作動し、俺の行動のタイミングを捉えたとしても、実際に校門の下に行くまでは数分は要する筈だ。
 一方で俺が実質的に有刺鉄線を登っていたのは体感としてはかなり長いが、現実時間では二分程度のはずだ。明らかに俺が頂上に辿り着く時間に愛莉と柊先輩があの場に辿り着くことは不可能だとしか思えない。第四校舎からここまではそれなりに距離があるからな。
 理事長はそんな俺の問いを嘲り蹴り飛ばすかのような視線を寄越しつつ語り始める。
「あなたがもう少ししっかりと確認をしていれば自体は変容していたのかもしれませんね。本当に注意不足とかいいようがありません。いいですか?あの校門近くにある事務室には奥に隠し部屋があるんですよ。二人にはそこで待機して貰っていました。もしかしたら学園から櫻井芳樹という唯一の男子生徒が脱出しようと画策をしているかもしれない。ですから、そこで深夜に逗留して欲しいと私が事前にお願いしていたんです」
「事務室に奥の部屋……そんな場所があったのか?……気づいてねえよ。そんなの……」
 中から軽く見渡した様子では人がいないと俺は安心してしまっていた。くそ……そんな初歩的なミスを犯すなんて。やはり俺は脱出のプロでも何でもないのだ。だからこそ、穴だらけの計画を発案し当然のように失敗してしまうのだ。
「理事長からの依頼には流石に愛莉ちゃんも驚いたよねー。まさか、そんな滅茶苦茶なこと言われるとは思わなかったからさー。だって深夜の間ずっと監視をしてなければならないなんて睡眠不足もいいところだよー。もし、櫻井っちの行動開始時間が深夜三時とか、数日後とかだったら愛莉ちゃんも精神の限界だったよー」
「……ずっと監視をしていたって訳か……それじゃあ、どのタイミングで行動を起こしても無駄だってことか」
 理事長と邂逅した時点で俺の行動は筒抜けだったのかもしれないとも思ったが、それにしてもまさかこんなことになるとは……俺は徒労感を催しつつも、喉奥から言葉を吐き出した。
「……俺の負けだよ理事長」
「それはつまり、「あのムカつく女を出し抜けるぜっ!ヒャッハーっ!」と粋がっていた自分の過去を悔やみ、情けなく降伏宣言をするということで宜しいですか?」
「宜しくはねえけど、そういうことだよ……つーか、ヒャッハーっ!とか言うキャラじゃねえぞ俺はっ!あんたの中で俺のキャラどうなってんの!?」
 この女の掌で踊らされていたという事実は悔恨の念を募らせるには十分な要素だったが、最早俺の敗北は覆すことは出来ないだろう。素直に負けを認めるしかないだろう。認めたくはねえけど。もう一度言うぞ。認めたくはねえけどっ!
「それじゃあ、理事長。今後は学園を脱出することは諦めるよ。今後はもうしねえよ」
「は?そんなことは当たり前じゃないですか?馬鹿ですか?死にますか?君はそれなりに頭がいい設定ですが馬鹿へと変更しますか?いいんですよ?あなたが大学進学をする際には内申書の特記事項にでも馬鹿と書いておきましょうか?」
「ほんと辛辣だなあんたっ!ってか権利濫用も甚だしいな!」
「さて……そんな馬鹿なあなたには伝えなければならないことがあります。……これから、あなたには学園内の校則を破ったということで理事長である私自ら処罰を決定します」
「そうか……しんどいけど規律を破ったのは確かに俺だ。甘んじてそれは受け入れないとな」
 流石に言い訳をして何とか責を逃れようというのは無視の言い話だろう。それにこの場で俺が逃げることが出来るような状況では無い。だから処罰を被ることは仕方がないのだ。   
 俺は少し緊張した面持ちのままで理事長に問う。
「でだ。俺は何をすればいいんだ?折角軍手を持ってるんだから草むしりとかなのか?」
「フフフっ!芳樹君は面白い冗談を言いますね。学園内でかなり重罪となる学園からの逃亡を企図し実行をした時点で君の処分がそんなに軽い筈がありませんでしょう?草むしりなどと言うことよりももっと面白い罰を与えましょう」
「面白い罰……って、おいっ!何でそんなにヤバイ顔してんだよっ!え、ちょっ……」
 最悪で最低な理事長が考える罰など残酷な物以外にありえないだろう。危険な予感しかしねえぞ。
「それでは処罰の内容を伝達しましょう。高野さん。柊さん。櫻井君の身体を用いて――――――」


「―――――保健体育の演習を自由に行ってください」


「は?保健体育の演習って……」
 俺は唖然とし口をぽかんと開いたまま硬直してしまう。……いやいや。まさかな。ここは教育機関。そして伝統と誉れがあり格式高い名門学園のはずだ。
 まさか、そういうことなど起こり得ない筈だ。俺はそう信じている。だが、愛莉も柊先輩も頬を少し赤らめた身体を火照らせるようにしながら俺に近づく。いやいやいや、そんな反応はすべきじゃねえって。普通拒絶すべきだからマジで。
「やったー。理事長さん。本当にやっちゃっていいの?愛莉ちゃん、こういうの初めてだから好き放題にやっちゃうよ?引っ張っちゃうよ?伸ばしちゃうよ?撫でちゃうよ?」
「周囲の人間が行為に及ぶさまは目撃したことが何度もあったが……自分が経験することは初めてでな。好き放題やってしまうかもしれないというのは同意見だ。理事長。自由にやってしまって構いませんか?」
「ええ。構いませんよ。あなたたちの気の澄むまで芳樹君を蹂躙してしまって構いません」
「お、おいっ!近づくなよ。待て待て。落ち着け二人ともっ!何だかんだ言っても俺たちこれから仲良くなれそうじゃん。だからこんなことは辞めようぜ?なっ!?」
「ごめんねー櫻井っち。でもしょうがないじゃん?これは懲罰なんだよ。だから櫻井っちには拒否権はないんだよ。それに……愛莉も櫻井っちは嫌いじゃないし抵抗感ないから……全力でいっちゃうよ?」
「すまんな櫻井。だが、この学園の学園生も、お前と同じように性欲を催す対象とは隔離されているものでな。異性を見てしまっては……欲求を抑えることはそれなりに困難だ。特に学園に長期間通っていればな。……そういうわけで観念してくれ」
「それでは―――――懲罰開始っ!♪」
「いやあああああああああああああああああああっ!」
 俺は異性に対するトラウマを絶賛彷彿させて、絶望の夜明けを迎えることになった。



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