ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 

湊湊

3.「天上ヶ原雅との邂逅」



「……」


 目を覚ますと、そこは、ほとんど日も差し込めていない暗い一室だった。天井を見上げると高級そうな照明灯が……ってかなんだよ、高級そうな照明灯って。だが、その表現を改める気はない。確かに地元の中学校の照明灯が対照的に水ぼらしいと感じさせるような豪華絢爛な照明灯が存在していたのだから。
 仄かに消毒液の香りが鼻腔をくすぐる。俺は、柔らかいベッドの上で眠りについていたようだ。俺の四方には白いカーテンが敷かれており外の景色を俯瞰することは適わない。光がほとんど入ってこないのはこれが原因だろう。


「ってか……ここは……」


 何だか記憶がはっきりとしていなかった。待て待て。少しずつ思い出そう。こういう時は、自分の記憶を一つずつ遡ればいいだけの話だ。
 昨日俺は何をしていたのか……春休みってことで、昼前くらいまで深い熟睡をして……適当に高校の授業の予習をこなして……それくらいか。いや、問題はその後か。
 やがて俺は少しずつではあるが、記憶を取り戻し始めた。


「そうだっ!あのクソ親父が変な黒服を呼び起こしやがったんだっ!」


 瞬間的に俺は全ての記憶を手繰り寄せた。そうだよ……あの親父の手先である黒服連中に囲まれ、俺は昏睡させられてしまったのだ。
 そして恐らく親父が率いる黒服主導の下で、俺はどこかに運びこまれたのだろう。そして、現在この謎の一室に眠りにつかされていたのだ。


「……取りあえず状況は芳しくないってことだけは分かるよな……」


 ここがどこなのかは知らないが、とりあえず俺は幽閉されている状態にあるのだろう。親父や母さん、雫、恭平からのメッセージについて改めて考えると、やはり俺はこの施設の中で閉じ込められてしまっているのだ。
 更に今までのことを考えると、あの一件によって生じた俺の女性へのトラウマを解消するための何らかの策を講じていることは簡単に想像できる。


「それに関しては感謝したいところだけど……やり方が強引過ぎるんだよ」


 ひとまず、俺はこの訳の分からない状況から離れたかった。俺は白いカーテンを強引にこじ開け、外に出ようとした瞬間のことだった―――――――


「あら……ようやくと目を覚ましたようですね。おはようございます。櫻井芳樹君」


「……」


 眩い光が眼光を刺激した後に待ち構えていたのは一人の女性だった。彼女は悠然と椅子浅く腰を掛けていた。格好は清楚な制服を身に纏っており、どこかで見たことのあるようなデザインだった。
 彼女の容姿を軽く眺めると、女嫌いになってしまった俺でも一目でわかってしまう程の麗人だった。肌は艶やかであり皺も染みもないその顔貌からは美意識の高さと強烈な素質を感じさせる。深紅に染まりし長髪は優雅であり、俺の好きな夕日の光景を彷彿させた。
 そして全身からはどことなく高潔さを表し、自分が如何に一般市民であるかを自覚させるに十分なオーラを醸し出していた。
 きっと普通の男であれば、高潔さを兼ねている麗人に見える彼女に惚れてしまうことはあり得るだろう。残念なことに俺は男性が好きなので美しい人と認知しようとも心は揺れ動くことはないが。


「で……あなたは誰なんですか?」


 恐らくそこまで大きく年齢は離れてはいないだろうが、年上の可能性も考えられる。だからこそ、一応は敬語で語り掛けることにしたのだ。


「フフフ、お目覚めの一番で私の名前を聞くとは……あなた、私に欲情していますね?」


「どんだけ自意識過剰なんだよっ!別に誰も欲情なんてしてねえよ!美人だからって自信満々過ぎるだろっ!」


 思わず、ツッコミのために敬語を使うのを辞めてしまったじゃねえか。


「フフフ、分かっていますよ。照れ隠しなど不要。まあ、私はあなた程度の人間と交際をするつもりはないのであしからず」


「だから誰もあんたのことが好きなんて言ってねえだろうがっ!ってか、勝手に勘違いでフラれるって最悪のパターンじゃねっ!?恭平の時よりショックよ!?」


「……それもそうでしたね。何故ならあなたは女性に対して忌避感を持ち合わせており、性的関心を失ってしまっているのですから。私など眼中にないのでしょう。櫻井芳樹。プロフィールとして年齢は十五歳。誕生日は十二月十四日。血液型はAB型。家族構成は世界的な芸術家である櫻井堅一郎を父親に持ち、地元では美人と知られている櫻井美穂子さくらいみほこが母親。更には一つ年下の文武両道であり、中学校では生徒会にも在籍している櫻井雫さくらいしずくという妹が。あなたを含めて仲良しな四人家族。それがあなたの家族状況ですね。櫻井芳樹としての情報としては……運動神経抜群であり、学業成績もそれなりのもの。将来の目標は公務員。奔放に見える父親を嫌悪しており、模範的であり理想的な大人になることが理想。座右の銘は、「困った人は絶対に助けること」。……あらあら。あなたの座右の銘はとても立派ですが……この心構えのせいで中学三年生の時には、『とある事件の被害者』になってしまっていますね。……ひとまず、こんなところですが何か言いたいことはありますか?」


「……」


 俺は思わず沈黙をしてしまう。既に予想はついていたが、この女は俺のことを詳しく知っているようだ。更に『例の一件』に関しても把握しているとは困ったものだ。俺は少しの溜息を吐いた後に問う。


「あんたは親父の協力者か?」


「ええ。あなたの実父である櫻井堅一郎さんとは知己の仲ですよ。堅一郎さんとは、絵画の展覧会においてたまたまお目にかかったことがありましてね。それ以来、私と堅一郎さんは同好の士となり友人ともなりました」


「なるほど……芸術関係か」


 見たところ、眼前の女は高貴な佇まいと高潔さを顕している。一つ一つの動作ですら優雅であり気品を感じさせる。恐らく金持ちが好むような芸術関係者なのだろう。


「で、あんたが親父と知り合いなのはわかった。だけど、どうしてわざわざ親父に協力するんだ。そんなことをしても、特別あんたに利益なんてあるのか?」


「利益……私が利益の為に行動をしていると。あなたはそうお考えですか?」


「だって普通、利益の為に行動するもんじゃないのか?」


 俺がそう問うと、まるでこれだから庶民は言わんばかりに彼女は、少し呆れた表情を俺に見せながら答える。


「いいですか櫻井君。私は堅一郎さんとは年齢の離れた友人なのです。友人が困っていることがあれば、それを手助けする。それは極めて当然のことだと私は思っていますが、あなたはそうは思わないのでしょうか?」


「……それは……」


「例えばあなたが以前に渋谷恭平君を冤罪から救い出したことには何か大きな理由がありましたか?」


「いや……ないな……」


 俺は恭平の一件を思い出す。理由など……無い筈だ。本当にただ恭平があまりにも不憫だと思ったからだ。だけど彼女のその問いに、心の奥底では名状し難い感情が浮き彫りになっていた。俺はそれを押しつぶすようにして彼女の問いに肯定を表明する。


「あなたが、不登校気味であり虐めの対象となっていた鈴木瀬里奈さんを助けようとした時には、利益を求めていましたか?」


「……」


 その人物の名前を呈示されたことで、俺は少しだけ身体のとある部位が疼いてしまう。彼女はその反応まで理解をしているようだ。……どうにも俺はこの女を好きにはなれそうになかった。全てを見透かしているようなその笑顔に恐怖心すら覚える。


「理解して頂きましたか?」


「ああ。悪かったよ……」


 俺は少しばかり反省することにした。この女のうさんくささのせいで何とも訝しんでしまっていたが、実際は二面性があるわけでそこまで悪い人間ではないのかもしれない。


「まあ、実際のところ堅一郎さんの最高傑作である『美と秀句』を貰い受けなければ聞く気なんて毛頭にありませんでしたけどね。やはり利益は最重要ですよ。いぇーい利益最高っ!」


「やっぱり、利益の為じゃねえかっ!ちょっとだけ見直した俺の感動返せよっ!」


 何だか一瞬この女を善良でいい人だと思った自分が非常に恥ずかしかった。彼女は妖艶に微笑み俺を嘲った後に話を続けた。


「さて……櫻井君を揶揄うことは楽しいですが……そろそろあなたも目が覚めて少しは落ち着いてきたことでしょう。今なら私に何でも質問を投げかけても構いませんよ?」


「……それじゃあ……」


「まあ、1つの質問毎にお金を取りますが?1つに一千万円位でいかがでしょうか?」


「取るのかよっ!しかも高すぎるだろうっ!」


「冗談ですよ。本当に芳樹君はリアクション芸人ですね。堅一郎さんが言っていた通りです」


「……褒めてんのか貶されているのかわかんねえな」


「え?最大限に馬鹿にしているに決まっているじゃないですか馬鹿ですか死にますか?」


「……」


 まだほとんど何も情報を掴むことは出来ていないが、一つだけ完全に理解することが出来た。この女の性格はすこぶる悪く、絶対に仲良くはなれないと。


「さあ、今だけ出血大サービスです。何でも質問をどうぞ?」


「それじゃあ……まずは、ここはどこだ?」


 そんなありきたりの質問から始めることにした。そして名も知らぬ彼女は、さも当然のように衝撃の事実を俺に告げた。


「率直に申し上げましょう。ここは白花崎女学園です」


「……は?」


 俺は人生で最も滑稽であり醜悪たる声を吐き出したかもしれない。それ程までに彼女の発言は脳内で処理することが適わなかった。今この女生徒は何を言っているのかわからない。白花崎?その学校名には聞き覚えがあった。知らない筈が無い。
 彼女は俺が相当間抜け面を晒していたことが大層心地良かったのだろう。追い打ちを掛けるようにしながら残酷な真実を打ち明ける。


「恐らくあなたもご存知でしょうが、改めてご説明致しましょう。白花崎女学園。千葉市内で数少ない女子校です。正確に言えば、女子校というのは男女比が圧倒的に女生徒の方が多いだけであり、明確な規律があるわけではないのですがね。あくまで、女子だけしか入学できないという風潮……というか伝統的な流れが存在しているだけなんですよ。名前で誤解をされることも多いですが」


「……いやいや、そんな言い訳が……」


 俺が反論をしようとするが、彼女は全く聞く気がないのか、そのまま話を続けた。


「この学園は今から30年程までに建設され、今もなお、千葉市内の進学校として名を馳せています。偏差値は七十を超えており、千葉市内で三番目の進学実績を誇っています。学力的には三番目であり最高位ではありませんが、一番と二番はあくまで公立の学校ですらかね。私立では事実上トップの高校というわけです。そして、この学園に通うためには莫大な入学資金と寄付金が必要であり、富裕層の人間が通う由緒正しき学校などというのが世間一般の評価です。まあ、概観はこんなところでいいでしょう」


「……なあ、俺はもしかしてだが……そんなふざけた学校に入学させられるってのか?」


「はい。その通りですよ」


 彼女はにっこりとした笑顔のままで頷いた。俺は一瞬真顔になった後、彼女に対して思いの丈をぶつける。


「いやいやいやいやっ!マジで待ってくれ。凄く優秀で素敵な学校だってことは分かっているけれど……何で男の俺が女子高に通うことになるんだよ。絶対アウトだろっ!」


「いいえ。問題ありませんよ。先ほども言いました通りにこの学園の規律には男子生徒を入学させてはいけないというルールはありませんからね。たとえ、現在の二年生と三年生、そして新入生にあなた以外に誰一人として男子生徒がいなくとも問題ありませんよ」


「は?やっぱり……俺以外に誰も男はいないのか?一人も?」


「ええ。いませんよ。貴方だけです」


「そんな……待ってくれよ。男いないとか辛すぎるだろう……欲求発散どうすればいいんだよ」


 既に俺の精神状態では男が居ない状況に耐えられる気などしない。


「ってか、そうだっ!学園側は男一人っていう現状を問題視していないのかよ?絶対倫理的に問題が……」
「ええ。安心してください。学園側は問題視などしてはいませんよ。尤も女子生徒達の保護者が何と言うかは分かりませんからそちらの方では問題が生じてしまうかもしれませんがね」


「やっぱり問題ありそうじゃねえかっ!くそー。こうなったら、この学園の校長先生にでも言ってどうにかして貰うしか……」
 このままでは親父の策略に乗らされてしまい俺は白花崎女学園に入学させられてしまう。それだけは避けなければならない。
 この学園に入学してしまえば、俺は男に会えなくなってしまう。普通の異性愛者からしてみれば、男子校で過ごすようなものだ。何たる地獄。何たる苦行。
 男子校出身者は、男子校での生活は楽しかったと答える一方で、異性との交流がないことで、その後の異性関係で苦労するという話は幾らでも聞いたりすることだ。事実、工業高校に進学した先輩が言っていたからな。今の俺はまさしくそのような状況だ。
 このままではいけない。どうにか、校長先生。あるいは、理事長などの権力者に直訴して俺の入学を取りやめにして貰わないと。
 そんな風に俺が考えていたところで彼女は徹底的に俺を追い詰めるような発言を交わす。


「ああ。そう言えば私の身分を明かしていましせんでしたね。こちらをご覧ください」


「ん?なんだよこれ……」
 それは学園案内のパンフレットだった。教職員紹介というページの中で様々な大人たちの顔写真と共に担当している教科や簡素なコメントなどが綴られていた。
 そしてページをめくると、副学年主任や学年主任。そして、教務主任や教頭の姿が映る。そして更に次のページには、幾人かの理事の姿が。そして最も後ろのページにはこの学園の最高責任者たる理事長の姿が……


「ん?」
 どこかで見たことがあるような顔だった。そこに映るのは、成熟した他の理事や責任者とは異なり、どこからどう見ても十代の少女だった。赤い髪は優雅であり、見る者の心を魅了する。どこからどう見ても完璧な笑顔。だけど、作り笑顔にしか見えないその表情。


「ってこれお前じゃねえかっ!」


「ようやくお気づきになったようなので、ここで改めてあなたに挨拶を申し上げたいと思います。私の名前は天上ヶ原雅てんじょうがはらみやび。この学園の最高権力者であり理事長です」


「……十代の理事長って……アニメの中だけの話じゃなかったのか……」


 俺の脳内で思い描かれていた常識が跡形も無く崩れ去って行く。……こんなことがあっていいのかよ。


「そんなわけで、あなたが仮に校長や教頭、あるいは他の理事に相談したところで何の意味も為しません。あしからず。この学園内での規律や規則を牛耳っているのは全て私です」


「……つまりは、俺に逃げ道は無いって言うのかよ?」


「……はい」


「一応確認しておきたいんだけどよ。俺はどうにか、この学園を辞めて男性が過半数の美浜高校に行くってのは?」


「残念ながらその願いは聞き入れることは出来ませんね」


「……それじゃあ、男と接する機会は……」


「学園の中では教職員も全て女性なので、あなたが男性と触れ合うことは事実上不可能ですね」


「……そんな……」


「ああ。勿論あなたにはわかっているかもしれませんが、それでも説明しておきましょう。この学園は完全に寮制度を取っているので、何らかの緊急を要する時と課外活動以外では、学園の敷地外に出ることは適いません」


「……っ!」


 そうだった。白花崎は一度入学してしまえば、早朝の規則正しい生活を送ることや放課後に非行を走ることが無いようにと、寮に住んで三年間を過ごさなければならないという厳格たる規則が制定されているのだ。つまり、俺がこのままこの学園に入学することになれば、三年間誰一人として男と接することもなく、生活を送らなければならないということだ。


 ……そこでようやく恭平がレコーダで言っていたことがリンクする。要するに「三年間会えなくなる」とは、三年間とは学園に在籍している期間のことを指すのだろう。


「……冗談じゃねえぞ。理事長。俺はどうにかこの学園から抜け出す方法はないのか?」


「今のあなたが今後取れる方法は二つだけあります」


「ほ、ほんとか!?」


 今の俺は藁にもすがる思いだった。それとは正反対に至って余裕を醸し出す理事長は楽しそうに言葉を放った。


「一つは、通常の生徒と同じように勉学に励み単位を取得出来れば問題なく三年間で卒業出来ますよ?」
 天使のような笑みで悪魔の言葉を容赦なく告げる女に顔面パンチを入れたくなったが、ここで状況を悪くするわけにはいかない。


「それじゃあ困るって。もう一つの方法は?」


「もう一つの方法は……これは特例ですよ。あなたがこの学園の中で女性に対するトラウマを克服することが出来たと私が判断をした時点で、あなたの好きな高等学校に編入する手続きを取って差し上げます」


「女性に対するトラウマの克服って……具体的には?」


 俺は嫌な予感と焦燥を胸に抱きながら、彼女の発する言葉を待ちかねる。


「ふむ……そうですね。あなたが女生徒と恋愛関係に発展し、肉体関係を持つことが出来たらでしょうか?」


「いやいやいやいやっ!それはおかしいってっ!何でそこまでしなければいけないんだよっ!」


「どうして……とは?そんなものは当然でしょう?いいですか櫻井君。既にあなたも存じ上げていることでしょうが、今回の一件は堅一郎さんがあなたを心配して企画した内容です。彼は自由奔放であり家庭を顧みないような性格に見えますが、本当は家族思いであり、最愛の息子であるあなたのことを大切に思っているのです。友人である私は彼のそんな真摯な情を理解しているつもりです。そしてそんな風にあなたを心配しているのは、あなたの周囲にいる人間であれば誰しも同じことです。人望のあるあなたですから。あなたは沢山の人から想われているんですよ?」


「……いや……まあ、そうかもしれないけどさ」


「あなたを慕い、あなたを心から心配している人を安心させるためにあなたが行わなければならないこと
は、あなたが抱えているそのトラウマを克服することだけなのです。そして、それを表現する明確な手段は性行為以外あり得ません。ちなみに、私を始めとして周囲の皆さんは同性愛の存在を否定している訳ではありません。同性愛も現在では非常に認められており、かくいう私も腐女……とそれは置いておくとして……同性愛者も世間的に認知されています。ですが、あなたの場合では女性にトラウマを持ってしまい、それを起点として同性愛者になっているのでしょう?以前のあなたは女性に対してそれなりに興味を持っていた筈です。つまりは、器質的な問題では無いのです」


「……器質的な問題ではない……か」


 実際それはその通りだと思う。今の俺の女に対する感情は終わらない賢者タイムのようなものだ。以前は普通に女が好きだったからな。


「ですからあなたが女性に対するトラウマを克服し、克服してもなお、現状と変わらずに男性を愛すると言うのであれば、最早あなたに言うことはありません。長くなってしまいましたが、話を纏めましょう。あなたはこの白花崎女学園の中で沢山の女生徒と関わり、その中で女性に対する免疫力を取り戻し、トラウマを克服してください。それが出来ればあなたを解放してあげます」


「……わかったよ。あんたの言うことも少しは納得することが出来たよ。要するにこの学園で上手く適応すればいいんだろう?」


「ええ。何か困ったことがあれば私に相談して頂ければ気まぐれで答えて差し上げますよ」


「気まぐれなのかよ理事長」


 何とも適当な理事長だった。とそこで―――――
 キーンコーンカーンコーンと。定番のチャイム音が耳を刺激した。


「あら……貴方とお喋りをしている内にどうやらもうすぐ入学式が始まりますね」


「入学式?」


「ええ。本日の日付は四月一日。公立の学校であれば四月七日を起点として入学式が行われますが……この学園は私立でありカリキュラム上は早急に進められるのです」


「なるほどな……」


「そんな訳で寝起きのところ申しわけないのですが……貴方も新入生ということで、入学式には参加して頂きます」


「ああ……」
 少しだけ身体が重く気乗りしなかったが、この権力者に逆らうのは後が怖そうだ。ひとまず俺は従順な態度を見せることにした。


「入学式は講堂で行われることになりますので、しっかりと参加してくださいね」


「参加してくださいねって……お前は案内してくれないのか?」


「私は理事長として挨拶をしなければならないのでお先に失礼します。恐らく新入生たちが在学生に案内されながら講堂に向かっているとは思うので迷うことは無いと思いますよ。集団の流れに身を任せれば問題ないでしょう」


「ほんとかよ?」


「ええ。本当ですよ。私は嘘や冗談は嫌いですから。私の自慢は嘘をつかない真摯な人間だということです」


「早速嘘ついているじゃねえかっ!これまでの会話だけであんたが真摯な人間じゃねえことは把握済みだっ!」


「全く……心外ですよ。困った者ですね櫻井君は……」


 頬を膨らませた理事長の姿は少しだけ年相応の少女のように映った。だけど、騙されてはいけないぞ。この女の性格はあまり宜しくないことは既に把握済みなのだから。


「……まあ、分かった。とりあえず、入学式に出ればいいんだろう?」


「ええ。よろしくお願いします」


「それではここで失礼します。夢のハーレムの築くことが出来るように頑張ってくださいね?」


「ハーレムなんて築くわけねえだろうっ!ていうか、理事長の発言とは思えないな、おい!」


 理事長は大層楽しそうにしながら、保健室の扉を開けて外へと消えて行った。


「……」


 何だか急展開過ぎて納得のいかないことだらけだが、少なくとも確定的なことは、ここは白花崎女学園で、俺は本当に女子しかいないこの学園で生活をしなければならないということだろう。
 というか親父に騙されたことで少しずつ苛々し始めたぞ。……だが、ここはひとまず怒りを抑えて指示に従うことにしておこう。今のままでは情報量が足りなすぎるからな。
 ひとまず……入学式とやらに参加しよう。参加していないことがばれたら、あの理事長からどんな仕打ちを受けるか分かったものじゃないからな。
 俺は部屋着だったので、手元にこれ見よがしに置かれている制服に着替えて、無人となっている保健室の扉を開けて、一歩を踏み出すことにした。





「ガチホモの俺がお嬢様学園に入学させられてしまった件について 」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「学園」の人気作品

コメント

コメントを書く