君と俺の一年

星河☆

オリオンの輝き

 まりあが倒れてから三日が経った。
 毎日帰りにまりあの家に寄っているがまりあには会えていない。
 それでも俺はまりあに会いに行き続けるつもりだ。




 「星河……気持ちは分かるけど元気出さなきゃ……皆に気づかれるぞ」
通学路で匠と奈津美と歩いていると匠が言った。
 匠にはまりあの事を話した。
 匠も最初は驚いたが受け入れた。
 ただ、俺にはそんなに簡単に受け入れられなかったがまりあをサポートすると決めて受け入れた。




 「二人とも何話してるの~?」
奈津美は愛くるしい笑顔で言ってくる。
 奈津美にはまりあの病気の事は言っていない。
 恐らく俺よりショックを受けてしまうだろう。






 「おはよう!星河!渡辺さん最近休んでるけど何か情報ない?」
俺たちが教室に入ると直ぐに幸成が聞いてきた。
 「風邪だよ。そうとしか聞いてない」
匠が俺に代わって答えてくれた。
 しかし幸成は食い下がってもっと教えてよ~と来た。
 「いい加減にしろ!!!」
ついつい言ってしまった……
 幸成どころかクラスの皆までシーンとしてしまった。
 「ごめんごめん! ふざけてただけ!」
匠がすかさずフォローしてくれたが
 「なんだよ……」
幸成はそう言って去っていった。


 「悪ぃ」
俺は匠にそう言って自分の席に座った。








 「渡辺の為にも星河はしっかりしてなきゃダメだろ? 作業もあれからやってないんだろ?」
昼食を屋上でとっていると匠が言った。
 今日は言い訳して奈津美には他の場所で昼食をとってもらっている。


 「うん……そうは分かってるんだけどさ……」
俺がそう言って手元にある弁当をじっと見つめている
 「それに、学校に戻ってきた時に作業が進んでなかったら自分のせいだって思っちまうよ?」
匠は本当に俺のため、まりあの為びちゃんと物を言ってくれる。


 「そうだな……今日からしっかりやるよ」
俺は静かにそう言って弁当に蓋をした。






 「鈴木! 最近作業してないみたいだけど大丈夫なのか?」
実行委員の集会の中で佐藤が聞いてきた。
 「はい。すみません。ちょっと体調が悪くて……でも、もう大丈夫です!」
俺はそう言って少し笑った。


 匠の言った通りだ。
 まりあが居ない中でしっかり俺がやらないとまりあ自身が負い目を感じてしまうかもしれない。
 ここで俺がダメになったらまりあを支えると決めた事が全て笑い事になってしまう。




 集会が終わってから俺が一人、教室で作業していると
 「鈴木君! 大丈夫? 手伝おうか?」
教室に入ってきたのは由美だった。


 「どうしたんだ? もう帰ってたのかと思ったけど……」
俺はそう言って作業の手を止めた。


 「帰ろうと思ってたんだけど最近まりあちゃん休んでるから鈴木君一人だと厳しいかなって思ってさ!」
そう言うと由美は後ろを振り返った。


 すると後ろから匠、奈津美が入ってきた。
 「どうしたんだよ皆! 早く帰れよ!」
俺が笑いながら言うと
 「だって星河兄ちゃん不器用だからまりあ姉ちゃん居ないと出来ないでしょ?」
奈津美はそう言うと俺の隣に座って作業の仕様書を見ながら作業を始めた。


 匠を見ると頷いて奈津美と同じように作業を始めた。


 匠以外はまりあの病気の事知らないはずなのに皆協力してくれる。
 俺はついついニヤけてしまった。






 部品が予備を含めて完成すると
 「やっと終わった~! この前星河兄ちゃん今日で終わるとか言ってたのにこれ星河兄ちゃん一人じゃ終わらなかったでしょ?」
 奈津美がプクっと頬を膨らませて怒るそぶりを見せた。






 由美とはお礼を言って別れ、匠、奈津美と帰っていると匠が
 「今日も行くのか?」
そう聞いてきた。
 「行くよ! そう決めてたもん」
俺が胸を張ってそう答え、空を見上げた。


 俺は何かがあると空を見上げる癖がある。
 特に夜の天体が好きだ。






 「じゃあ、明日な!」
 「星河兄ちゃんまたね!」
匠と奈津美がそう言って二人と別れた。






 それから15分程歩くとまりあの家に着いた。
 インターホンを鳴らして少し待っていると
 「星河君……」
そう言って出てきたのはまりあだった。
 「まりあ……元気にしてる?」
俺はそう聞くと頷いて
 「中に入って。お母さんも待ってるから」
そう言って玄関を大きく開けて中に入れてくれた。




 「星河君! いらっしゃい! さぁ、座って!」
そう言ってリビングのダイニングテーブルを指して言った。


 「じゃあ、私はお買い物行って来るから!」
俺にお茶を出した後そう言って出て行った。
 「ちょ、お母さん!」
まりあはそう言ってお母さんの後を追うが諦めて戻ってきた。






 「体調は大丈夫?」
しばらくの沈黙の後俺がそう聞くと
 「うん・・・お母さんが言っちゃったんだってね・・・」
まりあは俯きながらそう言った


 「うん。聞いた。でも俺は変わらない。変わるはずないじゃん」
俺はずっとまりあの方を見ているがまりあはずっと俯いている。


「星河君がそんな人じゃないって分かってても前の学校では病気がうつるとか言われていじめられて……」
そう言ってまりあは黙ってしまった。
 白血病はうつるものじゃない……
 その位俺にもわかる。




 「今の学校にそんな奴が居るなら俺が許さない」
俺は静かにそう言い、お茶を一口飲んだ。もう、少しだけ温くなっている。


 「星河君は何でそんなに私に優しくしてくれるの?」
やっとまりあは顔を上げて俺に向いてくれた。


 「俺は……まぁ、当然でしょ?」
まりあのお母さんにはまりあが大好きと言ったのにまりあの前だと言えない。
 言えるはずがない。


 「そっか……でもさ、学校の皆には絶対に言わないで欲しい。約束してくれる?」
まりあは目を少し大きく開いてそう言った。
 「分かった。まりあがそう言うなら約束する。でも匠にはバレちゃった……あいつとは古い仲だから俺に異変があると追求されちゃって言っちゃった。でも奈津美には言ってないよ?」
俺がそう言うと
 「うん。分かった。星河君を信じる。ありがとう。明日はまだ学校無理だと思うけど明後日は行けると思うからさ!」
まりあは少し笑顔になってそう言って深く息をついた。


 「それと、まりあが俺に約束させるように俺にも一つ約束して欲しい。」
俺がそういうとまりあは何?というような顔で見てきた。
 「何かあったら直ぐに俺に言う。辛かったら直ぐに俺に言う。迷惑になっちゃうとか言わない。約束して?」
俺が真剣な顔で言うと
 「でも、そうしたら星河君に迷惑がかかっちゃう……」
まりあはそう言うと俺は直ぐに
 「だから、俺は迷惑なんて思わないって。俺がそんな事を言うと思ってるの?」
俺が首を傾げてそう言うと
 「そうじゃないけど……星河君に迷惑かけられないもん……」
まだ言うか……
 まりあは優しいけどその優しさがたまに自分自身を追い込んでしまっていると俺は思う。
 俺はただ、まりあを助けたい、まりあが学校等で居やすい環境にしたい。そう思っているだけだ。


 「分かった。星河君が良ければ約束する」
少しの沈黙の後まりあが約束してくれた。
 「良かった! 絶対だからね!」
俺がそう言うとうん。と強く頷いた。




 「そう言えば今日匠と奈津美と由美が部品作り手伝ってくれてやっと終わったよ~」
雑談している時に俺がそう言うと
 「本当に? 星河君手伝ってもらったんだ……」
そう言ってまりあは少し頬を膨らませて怒るそぶりを見せた。
 こんな所みるの初めてだ……
 可愛い……
 「でも、ありがとう。良かった。三人にも俺を言わなきゃね」
まりあは普通の顔に戻ってそう言った。
 もっと見たかったのに……
 そう思っていると
 「どうしたの?」
まりあは首を傾げてそう言った。
 「い、いや、何でもないよ!」
俺は慌てて誤魔化した。
 「あと、体に負担かかるから私は夜あんまり出歩けないからこの前新井君の家でも直ぐ帰っちゃったんだ……ごめんね?」
まりあがそう言った。
 俺はそんな事気にしないっての!
 「大丈夫だよ! まりあの体が第一だからさ!」
俺は笑ってそう言った。




 「ただいま~」
まりあのお母さんが帰ってきた。


 「じゃあ、僕もそろそろ帰ります。お邪魔しました」
俺はそう言って立ち上がると
 「何もお構いできなくてごめんね」
まりあのお母さんがそう言って謝った。
 「そんな! とんでもないです!」
まりあのお母さんは本当に優しい。
 買い物に行くって言いながら買い物袋を一つも持っていない。
 俺とまりあがちゃんと話せるように気を利かして出て行ってくれたのだ。
 それを踏まえて俺は再びお礼を言って玄関に行くと
 「あ! そういえばまりあ携帯持ってる?」
ずっと聞こうと思って忘れてた。
 「持ってる! 交換しようか……」
恥ずかしいのだろうか? 少し顔が赤くなっている。
 「お願い!」
俺がそう言うと直ぐに携帯を持ってきた。


 番号とメアドを交換した。


 「じゃあ、明日も帰りに寄るからさ! 迷惑じゃなければ」
後半笑いながら言うと
 「迷惑じゃないよ。友達が来てくれると嬉しいからさ」
まりあはそう言って手を振って俺を見送ってくれた。
 友達か……
 悪くないけどな……






 空を見上げるともう空は暗くなっていた。


 オリオン座が輝いていた……





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