君と俺の一年

星河☆

突然の告白・・・・・・

 由美との約束から一ヶ月が経った日の事…… 




 「おはよう!」
いつも通り朝8時半にまりあを迎えに行き、挨拶をすると
 「おはよう。今日も元気だね」
まりあは笑いながら言った。




 「土台の部品そろそろ完成するね!」
俺とまりあは学校で行われる花火大会の実行委員で俺たちの役割は花火を打ち上げる際に使う土台作りだ。
 その土台に使う部品がそろそろ完成するのだ。
 「そうだね……」
まりあはちょっとしかめっ面をして言った。
 「どうかしたの?」
心配になった俺はまりあに聞いてみた。
 「うん。ちょっと体調悪くてさ……」
まりあはそう言って咳をした。
 まりあは転入してきてから約一ヶ月経つが結構体調不良で休みが多くなっている。
 「大丈夫? 辛かったら今日の作業は俺だけでやるよ?」
俺がそう言うと
 「ううん。大丈夫。ありがとう」
そう言って笑顔を見せた。


 まりあは体がどこか悪いんじゃないかと最近思うようになっていた。体育は常に見学しているのだ。
 聞こうと思ったが相手に悪いかなと思って聞かないようにしている。


 「今日で部品仕上げちゃおうね!」
俺がガッツポーズしてまりあに言うと
 「うん!」
そう言ってガッツポーズを仕返した。


 この一ヶ月まりあとは進展ないが、まりあは良く話してくれるようになった。
 このままでも十分幸せだが、人間の心理は奇妙で恋人同士になりたいと思ってしまうものだ……




 「やっほ~」
いつもの匠達との待ち合わせ場所に着き、挨拶すると
 「今日俺たち早いだろ?」
匠がニヤけながら言った。
 「知るかよ! 早いんじゃないの?」
俺が軽く流そうとすると
 「実は目覚まし買ったんだ!」
自慢げに匠は言うが匠以外のここに居る三人は皆ポカンとしている。
 「お前何言ってんの? 目覚ましなんて携帯で出来るじゃねぇかよ……」
俺が普通に突っ込むと
 「……そこは……まぁ、な、あれだ……」
そう言って言葉を濁し歩き始めた。匠以外の俺、まりあ、奈津美は笑っている。


 学校に着き、奈津美と別れ、三人で教室に向かっていると
 「おはよ~! 三人仲良いね~!」
後ろから走って言ってきたのは由美だった。


 「お~。おはよう~」
俺が挨拶すると
 「何? 軽すぎ!」
そう言って俺の額を叩いて教室に逃げ込むように入っていった。
 「良かったね。元に戻って」
まりあとの約束のおかげで由美とは友達で居られる事になったのだ……
 「うん。ありがとう」
そう言って三人で教室に入っていった。










 「今日で部品完成するんだろ?」
昼に屋上でいつもの四人に加えてこの前から由美が混ざる事になり、皆で食べていると匠が聞いてきた
 「まぁね。っていうか今日終わらせないとまずい」
軽く笑いながら言うと
 「部品ってどういうの作ってるの?」
奈津美がそう聞いてきた。
 「土台を取り付ける時に使うボルトとか填め具とかを石灰とセメントで作るの」
まりあがそう説明するとふぅんと言って再び弁当を食べ始めた。
 部品は相当な数があるので作るのに一ヶ月も掛かってしまった。
 しかし、今日でその部品製作も終了する!!!
 俺が喜んでいると
 「何? そんなニヤニヤしちゃって」
奈津美が俺を見てそう言って、続けて
 「変な事考えてたんでしょ~」
笑いながら俺をからかう様に言ってきた。
 「違うよ! 今日で部品製作も終わるな~と思って嬉しくなっただけだよ! 変な事言うなよ奈津美!」
俺が半分本気で半分笑って言うとヘヘと笑った。
 こうやって毎日楽しく昼食をとっている。


 チャイムが鳴り奈津美がばいばい~と言って一年生の教室に帰っていった。




 廊下で三人で歩いていると
 「それでまりあちゃんとは進展あるの?」
小声で由美が聞いてきた。
 由美はまりあと仲良くなり、名前で呼び合っている。
 「特になしだね……」
俺が首を振りながら言うと
 「だらしないね~ちゃんとしなきゃ!」
由美がそう言って俺の背中を結構強く叩いた。
 「どうしたの?」
まりあと匠が由美が俺の背中を叩いた音に反応して聞いてきた。
 「いや、なんでもない」
咳払いしながらごまかし
 「何すんだよ!」
小声で由美に言ったら何でも~と言って走って教室に行ってしまった。
 変な奴……
 その後三人で歩いて教室に戻って午後の授業を受けた。






 放課後……
 「じゃあ、皆各自の作業に入ってくれ!」
実行委員の担当教師の佐藤がそう言って皆各自の教室に向かった。


 「じゃあ、教室に行こうか!」
俺がまりあに言って、自分の教室に向かった。






 「後は3つだから直ぐに終わるね!」
一時間程した時に俺がそう言うと
 「う……ん」
まりあの様子がおかしい。
 「どうした? 大丈夫?」
俺は立ち上がってまりあの所に行くと
 「大……丈……夫」
いや、大丈夫じゃない!!!


 「しっかりして! まりあ!! おい!」
そう言うがまりあは大丈夫しか言わない。
 俺から見て全然大丈夫には見えない。
 「直ぐに先生呼んでくるから!」
そう言って教室を出ようとすると
 「待って! 本当に大丈夫!! ちょっと眩暈がしただけだから……」
そう言って俺の目をしっかり見ている。
 「でも……じゃあ、今日はこれで終わりにする! 帰るよ!」
まりあが大丈夫と言うがそうは見えないので帰りの準備をする為部品を片付けようとすると
 「大丈夫だよ……今日やらないと大変な事になっちゃうよ……」
まりあは反論するが言い訳させない。
 「ダメだ。今日は帰るよ! 先生に言ってくるから待ってて」
そう言って反論させる暇も与えずに教室を出て佐藤に許可を取りに行った。




 会議室から帰ってくるとまりあが部品を片付けていた。
 「よし! 今日は帰って良いって言われたから今日は帰るよ! 後は俺が片付けるからまりあは帰りのしたくしてて良いよ」
 「うん。ごめんね……」
そう言って自分の帰り支度を始めた。
 先程よりは少し顔色が良くなってはいるがやはりまだ辛そうだ。
 俺はなるべく急いで片付けをして自分の帰り支度も始めた。




 「じゃあ、帰ろうか?」
片付けが終わり、まりあに言うと
 「うん。本当にごめんね……」
前のように小さい声になってしまった。
 俺の事より自分の心配をして欲しい。
 「俺なんかは全然良いよ! 作業も俺が明日頑張るからさ!」
俺的には励ましているつもりなのだが、まりあはどう思っているか分からない。




 「大丈夫? 辛かったら言ってね?」
帰り道の途中にまりあが心配になり聞くと
 「うん。大丈夫。ありがとう」
まりあはそう答えるがやはり声が小さくなっている。
 俺は妙な胸騒ぎを覚え、無性に心配になった。




 いつもよりゆっくり歩いて一時間程してまりあの家に着くと
 「よし! 着いた! 大丈夫?」
振り向くとまりあが倒れていた……


 「まりあ!!!」
直ぐにインターホンを鳴らすと
 「あら? 鈴木君? どうし・・・」
悠長に聞いている暇は無いので
 「早く出てきてください!!! まりあが!」
そう言うとまりあのお母さんが直ぐに出てきた。


 「まりあ!!」
そう言ってまりあを抱きかかえ
 「鈴木君! 家の中に運ぶから手伝って!」
直ぐに返事をして指示をされながらまりあを家の中へ運んだ。




 運び終わるとまりあのお母さんが俺をリビングの椅子に座らせた。
 学校でも異変があり、早く帰ってきた事を伝えるとまりあのお母さんが話し始めた。
 「ありがとう。あの子はね、未熟児で生まれてずっと病弱で入退院をずっと繰り返して、去年の暮れに急性リンパ性白血病って診断されたの。今まで通ってた病院じゃ対処出来ないっていう事で大きい病院があるこの町に引っ越してきたの。ずっと体調が悪かったけど鈴木君達に出会って一緒に登下校できて、一緒にお昼まで食べてくれる。そう言って毎日学校であった事を話しててすっごく嬉しそうだったの……そのおかげで大分体調は良くなってたんだけどやっぱり不調になる時があってね……そういう時は休ませてたんだけど最近は休みたくない。学校に行きたい。学校が楽しい。そう言って聞かなくてね……仲良くしてくれてる鈴木君にでも病気の事話せば? って言ったのに話したくない。嫌われる。迷惑掛けたくない。そう言って話さなかったんだと思うの。悪く思わないでね?でも毎日鈴木君の事を話してるのよ……本当に毎日楽しそうで……」




 お母さんはそう話した。
 まりあにそんなことがあったなんて……
 俺は何も言い出せなかった。
 何も言う事が出来ない。
 声が小さかったのは病気のせいだったのか……
 リビングのソファーで眠っているまりあを見ると突然涙が出てきた。
 何かあったら言えって言ったのに……
 迷惑? 嫌いになる? そんなのあるわけないだろ……
 涙が止まらずにどんどん溢れ出てくる。
 そんな俺を見てお母さんが
 「鈴木君って優しいのね……鈴木君ってまりあの事好きなの?」
突然そう聞いてきた。
 「俺は……大好きですよ……」
何故か戸惑うことなく言葉が出てきた。
 俺はこの時、改めて思った。
 まりあが大好きだ。


 まりあは優しい。
 その優しさが時に邪魔になっている。
 でもまりあは俺に迷惑にならないようにって言わなかった……
 それは分かる。分かるけど俺には言って欲しかった。
 別に付き合っている訳じゃないけどまりあには俺を頼って欲しかった。




 お母さんはゆっくり頷いて
 「ありがとうね。まりあ、幸せだと思う。鈴木君みたいに優しい子が傍に居てくれて」
お母さんの話しは聞こえているが相変わらず涙で前は見えない


 「俺が……迷惑だなんて……嫌いになるなんて……そんな事あると……本気で思ったの?」
未だ眠いっているまりあを見てそう言った。


 俺は以前聞いたことがある。急性リンパ性白血病の5年生存率は40%って……
 でもそんなの信じない。
 まりあは生きる。生きてくれないと困る……








 しばらくして俺も落ち着き、お母さんに
 「すみませんでした。取り乱してしまいました。」
そう言って頭を下げると
 「ううん。そんな事きにしてないよ。そんな事より鈴木君……星河君でいいかな?」
俺が頷くとお母さんは続けた
 「星河君がもの凄いまりあを想っててくれていて本当に優しい子なんだっていうのが改めて分かった。改めて言うわね……これからもまりあをよろしくね」
 そう言って深く頭を下げた。
 「僕が出来る事は何でもします。何でも言ってください」
俺がそう言うとお母さんは笑って
 「ありがとう。本当にありがとうね」
そう言って再び頭を下げた。








 玄関を出ると俺はお母さんに頭を下げた。
 「明日は休ませるからよろしくね」
お母さんはそう言った。
 「これから毎日まりあが休みのときは来ます。なるべく来ます!」
そう言ってまた頭を下げてまりあの家を後にした。










 まりあが白血病……
 現実なんだけど現実じゃないような気がしていた……


 けど俺はまりあをもっと、もっとサポートしていきたい。
 俺はまりあの傍でずっとサポートしていく。


 強く誓った日だった……




 空を見上げると真っ赤な茜色の空が広がっていた。



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