魔術師ユウキ
終わりが始まり
何でこんな事をしているんだろうか――。
勇気の口癖だった。つい先ほども家賃を三ヶ月滞納した自宅を追い出された時に荷物を抱えながらそう呟いた。
西条勇気、二十歳のフリーターで両親とは疎遠の一般人だ。
バイトもろくにせずいつも遊び歩いていた結果が先ほど現れた。
「全く――仕方ないですよね。三ヶ月滞納したら出て行ってもらいますと言ってありましたものね」
大家がお昼頃に勇気の部屋に現れてそう言った。
勇気はまさか本当に出て行くことになるとは思ってもおらず、暢気にゲームをしていた。
そんな時に滞納した事で判決が下った。
二十歳でホームレス。かつて同級生だった人たちは大学へ行ったり、仕事をしていたり、夢に向かって頑張っていたりとしているであろう時に勇気は何も夢を持たず、仕事もせず、その日暮らしで一日一日を過ごしてきた。
その結果がホームレス。
どうしょうもない男だが根は物凄く優しい男なのだ。
十八歳で地元を飛び出し東京へ。その時は歌手になりたいという夢があり、必死にバイトしてレッスンしてという忙しい日々を送っていた。
そして東京に出て一年が経ったとき、芸能事務所から誘いの話が来た。勇気は飛んで喜び、その話に乗った。しかし事務所に所属して直ぐにその会社は倒産。何故か勇気にまで借金が入った。周りの人からは「騙されたんだ」「裁判を起こせ」等と言われたがお人好しの勇気はそんな訳ないと言って騙された事を否定し、訴えを起こす事を否定した。
しかし勇気は内心騙された事を分かっていた。その事から働く事、頑張る事が全く無意味だと感じてしまい働く事をやめてしまい、遊び三昧の生活に鳴ってしまった。
そんな男の日常が非日常に変わってしまう様をご覧下さい――。
何でこんな事をしてるんだろうか――。
俺の名前は西条勇気。二十歳の住所不定無職だ。何でそうなったのかはさっきナレーションで説明があったと思う。
今俺がいるのは近所の公園。冬の真昼間だが人は全くいない。たまに車が通るくらいの田舎なのだ。
俺これからどうなるんだろうな――。二十歳でホームレスって地元の奴らに知られたら笑い者だよ……。
しかもかなり曇ってきた――。雨降らないでほしい――あ、降ってきた……しかもかなり強い雨だし!!
土砂降りの雨が降り始めたが、俺はベンチから全く動かない。動けない。動く気力が無い。面倒くさい。
雨の音で周りの音が全く聞こえなくなり始めた頃雷まで鳴り始めた。
ふと頭上を見上げると真っ黒な雲が時々光って幻想的に見える。何で俺こんな事考えてるんだろう――。死にたいな――。
でも親父とお袋に何も親孝行してない――。今は全く連絡とってないけど元気にしてるかな。
ドシン――。
あぁ、近くに落ちたな――。何か寒くなってきた。
ドシン――。
また近くに落ちた。近づいてる気がする。地響きが――。
その瞬間俺は意識を失った。
俺は死んだのか? 最後の記憶は――あぁ雷に打たれたんだ。
冬なのにあんな雷雨ってどんだけ季節外れなんだよ。
死にたいって思ったけど本当に死ぬとはな――。
ん? 何か体に衝撃が――。痛い――。電気ショックみたいな感じがする。胸の辺りが凄く痛い。
「戻ってこい! 君はまだ若いんだから!」
「先生! 脈拍戻りました!」
「良かった――。じゃあ後はICUで様子を見よう」
「はい!」
ん? ICU? ここは病院か? 俺死んだんじゃないの? 生きてるんだ――。何か眠くなってきた――。
ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――
天井が見えるって事はやっぱり俺生きてるんだ。
「あっ、目が覚めたんですね! 先生! 西条さんが起きました!」
看護士か――。まだボーっとしてて良く分からん。
「西条さーん、ここが分かりますか? 自分の名前分かりますか?」
ドクターか――。
「西条勇気です――」
「よし。西条さん、あなたは雷に打たれたと思われるんですが、体に全く傷が無いんですけど何でですか?」
そんな事知らねぇよ――。
首を振るとドクターはそうか~と唸って俺の目にライトを当てたり足を確かめたりと色々した後看護士に話しかけた。
「この分では普通病棟に移しても良いから移しておいて」
「分かりました」
俺傷無いんだ。何かテレビでよく雷に打たれた人は全身火傷になったりしてたけど何で俺は無傷なんだ? まぁ良いや。眠い――。
ん、眩しい――。
さっきと違う場所だ。そうか、病棟移ったんだった。
良く寝た気がする。頭がすっきりしてるな。ここは一人部屋みたいだけど俺治療費払えないよ――。どうすればいいんだろう。
そういえば体に傷が無いって言ってたけど本当に体痛くないな。どうしてだろう。
コンコン――。
「はい」
病室のドアが開き、一人の男が入ってきた。何か外人みたいな風貌だ。
「失礼するよ。私はマクベルス・テロリアだ。君の名前を伺っても良いかい?」
何だこの男いきなりなんだよ。俺と同じ年くらいか?
「俺は西条勇気ですけど何です?」
マクベルスは笑って手を差し出してきた。
気持ち悪いから……。
俺はマクベルスが差し出した手を無視して睨んでいると一冊の本を出してきた。
「君は見事魔術師になった。これから魔術を学んで頑張ってくれたまえ。これは簡単な魔術の教科書だよ」
何を言っているんだこいつは――。魔術師? この男精神科から抜け出してきたんじゃないのか?
マクベルスは本を俺の膝の上に置くと笑顔で手を振って出て行った。
何だったんだ――。魔術ってバカバカしい――。でも魔術が使えたら良いな……。
置いていった本をベッドの隣にある棚に置いてテレビをつけようとリモコンに手を伸ばした。
――届かない――。ギリギリ届かないよー。めんどくせ~。
ちょっと動けば届くのだが面倒くさがりな俺はその場で何とか届かないかと必死で手を伸ばし続けていると――
「!!」
リモコンが手のに飛んできた――。どういうこと――。リモコンが勝手に動いた――。
「今のは何だったんだ」
リモコンをまじまじ見て思わず呟いてしまった。
俺の錯覚か? いや、でも現に俺の手の中にある。
魔術。俺の頭の中にマクベルスの言葉が浮かんだ。
でもそんなはずはない。魔術なんてこの世に存在するはずがない。
そうは思ったがリモコンを置いてマクベルスが置いていった魔術の本を手に取った。
『魔術――それは古代よりありし魔を司る術である。それを扱うには試練あり。その試練は数あり。その内の一つ乗り越えた時魔術師として始動せり』
最初のページにはこれが書かれていた。
俺は試練なんて何もやってないけど――まさか雷に打たれる事が試練? まさかな。
そして目次を読み、初心者呪文と書かれているページを見つけ、開いた。
『魔術は自分で編み出すものなり。しかし先人が編み出した呪文で一般術は成り立つ』
そして次のページをめくった。
『初心者呪文。炎=フローガ。太古より炎は全ての源なり』
フローガか――よし!
「フローガ」
手を前にかざして唱えるとメラメラと燃えるが掌に出た。
炎なのに熱くない――。って言うか魔法使えた……。
その後俺は興味がグンと湧き、次々と呪文を試していった。危なそうな呪文はやめて簡単そうな魔法を試していると、一つあることが分かった。それは漫画やアニメみたいに魔力というものは無いのかもしれないということだ。全くの初心者の俺が次々と魔法が使えるということは魔力というものは無いのだと思う。しかし経験によって魔法は左右されると本には書いてあった。
本当に魔術が使えるなら――ってもう使ったけど――人生が変わるかもしれない。今までやってきたことが全て無駄になってきたけど今からやり直せるかもしれない。でもどうやってやり直す? テレビとかでマジシャンのように出るか? それよりも超能力者として売り出していくか? どっちにしろ俺はチャンスを与えられた。頑張るしかない。
正午を回った頃病室のドアがノックされた。
「はい」
「失礼します。西条さんお昼ご飯ですよ。食べ終わったら全身を検査して何も問題なければ退院ということになりますのでよろしくお願いします」
「分かりました。あ、そうだ俺マジシャンなんですけどちょっと見ていきません?」
「そうなんですか? 見せてください!」
看護士の女性が目をキラキラさせて身を乗り出してきた。
よし。こっからが本番だ――。さっき炎を出す呪文を試したから紙を燃やすか。
「何かいらない紙をください」
すると看護士は手元にあるファイルを取り出して「いらないもの――」と言いながらページをめくっていた。
そして数枚めくった後一枚の小さいメモ用紙を出した。
「この紙は今取り出してもらった物で俺が出したものではないですよね? 種も仕掛けもないですよね?」
俺がそう言うと看護士はしっかりと頷いて俺の紙を持つ手を凝視している。
「ではこの紙をさらに小さく折っていきます。――これで良いでしょう。これを手の平に乗せて、ワン、トゥー、スリー、フローガ」
その瞬間俺の手の平にあった紙は一瞬で燃え、灰になった。
「え~!! どういう事!? だって私が渡した紙だし、西条さんはただ折ってただけですよね? 何でですか!?」
看護士は俺の手にある灰と俺の顔を交互に見ながら驚きで目を丸くしている。
やった――。大成功だ。
「本当に凄いですね――。驚きすぎて何も言えません……」
看護士は自慢したいからと言って灰を受け取って病室を出た。
手応えはある。でも問題は他の魔術師に魔法だって気づかれるって事だな――。
そういえば本に魔術師は自分で魔法、呪文を作るって書いてあった。これだったら自分で作った呪文でもただの合言葉にしか聞こえないだろう。
これからしっかりと作っていこう。勿論勉強もしなきゃな――。
取り合えず飯食ってさっさと検査して退院して――俺ホームレスだった……。
勇気の口癖だった。つい先ほども家賃を三ヶ月滞納した自宅を追い出された時に荷物を抱えながらそう呟いた。
西条勇気、二十歳のフリーターで両親とは疎遠の一般人だ。
バイトもろくにせずいつも遊び歩いていた結果が先ほど現れた。
「全く――仕方ないですよね。三ヶ月滞納したら出て行ってもらいますと言ってありましたものね」
大家がお昼頃に勇気の部屋に現れてそう言った。
勇気はまさか本当に出て行くことになるとは思ってもおらず、暢気にゲームをしていた。
そんな時に滞納した事で判決が下った。
二十歳でホームレス。かつて同級生だった人たちは大学へ行ったり、仕事をしていたり、夢に向かって頑張っていたりとしているであろう時に勇気は何も夢を持たず、仕事もせず、その日暮らしで一日一日を過ごしてきた。
その結果がホームレス。
どうしょうもない男だが根は物凄く優しい男なのだ。
十八歳で地元を飛び出し東京へ。その時は歌手になりたいという夢があり、必死にバイトしてレッスンしてという忙しい日々を送っていた。
そして東京に出て一年が経ったとき、芸能事務所から誘いの話が来た。勇気は飛んで喜び、その話に乗った。しかし事務所に所属して直ぐにその会社は倒産。何故か勇気にまで借金が入った。周りの人からは「騙されたんだ」「裁判を起こせ」等と言われたがお人好しの勇気はそんな訳ないと言って騙された事を否定し、訴えを起こす事を否定した。
しかし勇気は内心騙された事を分かっていた。その事から働く事、頑張る事が全く無意味だと感じてしまい働く事をやめてしまい、遊び三昧の生活に鳴ってしまった。
そんな男の日常が非日常に変わってしまう様をご覧下さい――。
何でこんな事をしてるんだろうか――。
俺の名前は西条勇気。二十歳の住所不定無職だ。何でそうなったのかはさっきナレーションで説明があったと思う。
今俺がいるのは近所の公園。冬の真昼間だが人は全くいない。たまに車が通るくらいの田舎なのだ。
俺これからどうなるんだろうな――。二十歳でホームレスって地元の奴らに知られたら笑い者だよ……。
しかもかなり曇ってきた――。雨降らないでほしい――あ、降ってきた……しかもかなり強い雨だし!!
土砂降りの雨が降り始めたが、俺はベンチから全く動かない。動けない。動く気力が無い。面倒くさい。
雨の音で周りの音が全く聞こえなくなり始めた頃雷まで鳴り始めた。
ふと頭上を見上げると真っ黒な雲が時々光って幻想的に見える。何で俺こんな事考えてるんだろう――。死にたいな――。
でも親父とお袋に何も親孝行してない――。今は全く連絡とってないけど元気にしてるかな。
ドシン――。
あぁ、近くに落ちたな――。何か寒くなってきた。
ドシン――。
また近くに落ちた。近づいてる気がする。地響きが――。
その瞬間俺は意識を失った。
俺は死んだのか? 最後の記憶は――あぁ雷に打たれたんだ。
冬なのにあんな雷雨ってどんだけ季節外れなんだよ。
死にたいって思ったけど本当に死ぬとはな――。
ん? 何か体に衝撃が――。痛い――。電気ショックみたいな感じがする。胸の辺りが凄く痛い。
「戻ってこい! 君はまだ若いんだから!」
「先生! 脈拍戻りました!」
「良かった――。じゃあ後はICUで様子を見よう」
「はい!」
ん? ICU? ここは病院か? 俺死んだんじゃないの? 生きてるんだ――。何か眠くなってきた――。
ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――
天井が見えるって事はやっぱり俺生きてるんだ。
「あっ、目が覚めたんですね! 先生! 西条さんが起きました!」
看護士か――。まだボーっとしてて良く分からん。
「西条さーん、ここが分かりますか? 自分の名前分かりますか?」
ドクターか――。
「西条勇気です――」
「よし。西条さん、あなたは雷に打たれたと思われるんですが、体に全く傷が無いんですけど何でですか?」
そんな事知らねぇよ――。
首を振るとドクターはそうか~と唸って俺の目にライトを当てたり足を確かめたりと色々した後看護士に話しかけた。
「この分では普通病棟に移しても良いから移しておいて」
「分かりました」
俺傷無いんだ。何かテレビでよく雷に打たれた人は全身火傷になったりしてたけど何で俺は無傷なんだ? まぁ良いや。眠い――。
ん、眩しい――。
さっきと違う場所だ。そうか、病棟移ったんだった。
良く寝た気がする。頭がすっきりしてるな。ここは一人部屋みたいだけど俺治療費払えないよ――。どうすればいいんだろう。
そういえば体に傷が無いって言ってたけど本当に体痛くないな。どうしてだろう。
コンコン――。
「はい」
病室のドアが開き、一人の男が入ってきた。何か外人みたいな風貌だ。
「失礼するよ。私はマクベルス・テロリアだ。君の名前を伺っても良いかい?」
何だこの男いきなりなんだよ。俺と同じ年くらいか?
「俺は西条勇気ですけど何です?」
マクベルスは笑って手を差し出してきた。
気持ち悪いから……。
俺はマクベルスが差し出した手を無視して睨んでいると一冊の本を出してきた。
「君は見事魔術師になった。これから魔術を学んで頑張ってくれたまえ。これは簡単な魔術の教科書だよ」
何を言っているんだこいつは――。魔術師? この男精神科から抜け出してきたんじゃないのか?
マクベルスは本を俺の膝の上に置くと笑顔で手を振って出て行った。
何だったんだ――。魔術ってバカバカしい――。でも魔術が使えたら良いな……。
置いていった本をベッドの隣にある棚に置いてテレビをつけようとリモコンに手を伸ばした。
――届かない――。ギリギリ届かないよー。めんどくせ~。
ちょっと動けば届くのだが面倒くさがりな俺はその場で何とか届かないかと必死で手を伸ばし続けていると――
「!!」
リモコンが手のに飛んできた――。どういうこと――。リモコンが勝手に動いた――。
「今のは何だったんだ」
リモコンをまじまじ見て思わず呟いてしまった。
俺の錯覚か? いや、でも現に俺の手の中にある。
魔術。俺の頭の中にマクベルスの言葉が浮かんだ。
でもそんなはずはない。魔術なんてこの世に存在するはずがない。
そうは思ったがリモコンを置いてマクベルスが置いていった魔術の本を手に取った。
『魔術――それは古代よりありし魔を司る術である。それを扱うには試練あり。その試練は数あり。その内の一つ乗り越えた時魔術師として始動せり』
最初のページにはこれが書かれていた。
俺は試練なんて何もやってないけど――まさか雷に打たれる事が試練? まさかな。
そして目次を読み、初心者呪文と書かれているページを見つけ、開いた。
『魔術は自分で編み出すものなり。しかし先人が編み出した呪文で一般術は成り立つ』
そして次のページをめくった。
『初心者呪文。炎=フローガ。太古より炎は全ての源なり』
フローガか――よし!
「フローガ」
手を前にかざして唱えるとメラメラと燃えるが掌に出た。
炎なのに熱くない――。って言うか魔法使えた……。
その後俺は興味がグンと湧き、次々と呪文を試していった。危なそうな呪文はやめて簡単そうな魔法を試していると、一つあることが分かった。それは漫画やアニメみたいに魔力というものは無いのかもしれないということだ。全くの初心者の俺が次々と魔法が使えるということは魔力というものは無いのだと思う。しかし経験によって魔法は左右されると本には書いてあった。
本当に魔術が使えるなら――ってもう使ったけど――人生が変わるかもしれない。今までやってきたことが全て無駄になってきたけど今からやり直せるかもしれない。でもどうやってやり直す? テレビとかでマジシャンのように出るか? それよりも超能力者として売り出していくか? どっちにしろ俺はチャンスを与えられた。頑張るしかない。
正午を回った頃病室のドアがノックされた。
「はい」
「失礼します。西条さんお昼ご飯ですよ。食べ終わったら全身を検査して何も問題なければ退院ということになりますのでよろしくお願いします」
「分かりました。あ、そうだ俺マジシャンなんですけどちょっと見ていきません?」
「そうなんですか? 見せてください!」
看護士の女性が目をキラキラさせて身を乗り出してきた。
よし。こっからが本番だ――。さっき炎を出す呪文を試したから紙を燃やすか。
「何かいらない紙をください」
すると看護士は手元にあるファイルを取り出して「いらないもの――」と言いながらページをめくっていた。
そして数枚めくった後一枚の小さいメモ用紙を出した。
「この紙は今取り出してもらった物で俺が出したものではないですよね? 種も仕掛けもないですよね?」
俺がそう言うと看護士はしっかりと頷いて俺の紙を持つ手を凝視している。
「ではこの紙をさらに小さく折っていきます。――これで良いでしょう。これを手の平に乗せて、ワン、トゥー、スリー、フローガ」
その瞬間俺の手の平にあった紙は一瞬で燃え、灰になった。
「え~!! どういう事!? だって私が渡した紙だし、西条さんはただ折ってただけですよね? 何でですか!?」
看護士は俺の手にある灰と俺の顔を交互に見ながら驚きで目を丸くしている。
やった――。大成功だ。
「本当に凄いですね――。驚きすぎて何も言えません……」
看護士は自慢したいからと言って灰を受け取って病室を出た。
手応えはある。でも問題は他の魔術師に魔法だって気づかれるって事だな――。
そういえば本に魔術師は自分で魔法、呪文を作るって書いてあった。これだったら自分で作った呪文でもただの合言葉にしか聞こえないだろう。
これからしっかりと作っていこう。勿論勉強もしなきゃな――。
取り合えず飯食ってさっさと検査して退院して――俺ホームレスだった……。
コメント