屋根裏見たら異世界降臨

ノベルバユーザー198902

7話 ナツとイア

「あっあの〜お兄さーん」


「えっえっえっ?」


「あー、声しか聞こえないからそりゃビビるよね~」


幼い声の少女はそう言うと目の前に姿を表した。


「やっぱり幼女か。絶対異世界来たら何らかの形で会うと思っていたけど」


「ようじょ?」


不思議そうに聞いてくる。


「そう幼女。てか君は?」


「私の名前はない。名も無き少女だよ。」


「名前がないのか。」


「ふふふごめんね、私はナツねぇの妹なんだ。」


そう言ってクルって回って見せる


「へー、ナツねぇの…はっ!?」


「シリア・ウルフ・イアって言う名前なんだ!」


ナツにそっくりの妹の姿。イアと言う少女だった。


「ってか出口は?」


「出口は私が許可しないと出れないよ。」


「へっ?何をやったか知らないが許してくれ出してくれ」


とりあえずド☆ゲ☆ザ


「ふふふ、大丈夫だよお兄ぃさん。要件が済んだら出してあげるから」


「本当に?ホントのホントに?」


「うっうん、ホントだよ」


「なら良かった。で要件とは?」


「まぁまぁそう急かさないで!」


「でも現実はすすんでる。のか?」


もっともな疑問を今更思い出す。進んでたらナツとメネルが危ない。


「進んでないよ。安心して」


「なら良かった。」


安心により1息つく。


「って事で世間話でも、しよ?」


「見た感じ10歳が世間話だなんて」


「むっ。聞き捨てならないな」


ほっぺたを膨らませてそう言う。


「私だってナツねぇのスリーサイズや家族が亡くなった時のこと話せるんだからね」


「スリっ。家族が亡くなった時のこと?それを教えてくれないか?話したくなければ別にいいんだ」


スリーサイズは気になるが今聞くのは家族が亡くなった時のことだ。


「私達はごく普通の家庭だったんだ」


そう言い、話し出す。


「ある日ね、父と母が帰って来なかった。後からネクロマンサーに殺られたと知ったんだ。」


イアはニコッと笑うが場を和ますための、だけの薄いもの。


「…」


「それを知った次の日私達は狩りに出てたんだ。二人で生きていくためには食料が問題になってくるからね。だけどその日に悲劇は起きたんだ。」


静かに。そっと。それでも空間には響く声。だけど優しくて悲しい声。


「帰ってる最中に目の前に現れたんだ。ネクロマンサーが。」


そこだけ力がこもる。


「私は薄れゆく景色の中、ナツねぇが死にかけの私を庇って戦おうとしてた。だけどあっさり一撃で殺られたんだ。」


思い出したくないはずなのに教えてくれる。


「私は亡くなったけどナツねぇは生きてる。ネクロマンサーを倒したら自殺しようと、私のところに来ようと思っているはず。」


それを聞き、ハルキも返す。


「ナツの知ってる辛さと俺の知ってる辛さは比べ物にはならないけど、俺も知ってるんだ。家族がいなくなる悲しさ。」


「?」


「俺のお父さんはある日突然消えた。母はそれでも、育ててくれた。作り笑顔で大丈夫と言ってたの分かってたのに。それなのに!」


「…」


「長話が過ぎたな。そうだ!本題聞いていいか?」 


高ぶる感情を抑え心を殺し本題に入る。


「そういえばそうだったね。まずは、最初に言ったように一度だけ魔法を使わせてあげる!」


「一度だけ魔法?なんの魔法だ?」


「私が、いや私だけが使えた特殊能力。」


「イアだけが使えた?名前とかは?」


「名前はないんだ。」


「名前がない?またからかってるのか?あんまり年上からかうと…」


「からかってるんじゃないよー」


ぷんぷんと顔を膨らます


「からかってるんじゃないよって…マジ?」


「うんまじ」


周りから見たら和んでるな~。真剣に話してると思うけど周りから見たらね、まぁ誰もいないけど


「でどんな魔法?」


「それは変身する魔法。」


「変身?この世界ではイアしか使えなかったのか?」


「うん。私以外はまだ誰も使えないの。」


「ってかまてよ?魔法の名前がないって言うなら詠唱はどうなるの?」


「詠唱もないよ?」


「じゃあどうやって発動するの?」


「なんかこう。頭の中でイメージするの」


「イメージか?うーん」


「ちょちょちょ、今使っちゃダメだよ。」


「あっそうか一回しか使えないんだった」


「そうだよ!危ない危ない」


「てかそろそろ帰らなきゃな。」


今更思い出すハルキ


「分かった。次まぶたを閉じて開けた時戻ってるよ!」


「まじか。さて戻るか」


「じゃあな!」と言いまぶたを閉じる。


「じゃあね!ナツねぇを頼んだよ!」


元気な声が帰ってきたあとまぶたを開ける。


「任せておけ!」


そうつぶやいたハルキだった。

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