ヤンデレ化した幼馴染を救う108の方法
13話 「ミッションインポッシブル」
  あたりはまだうっすらと暗い。
  腕時計を確認すると時刻は六時三十分を少し過ぎたところだった。
  石の柱と鉄檻のような門の間で息を潜めてターゲットの到着を待つ。
  仕事へと向かう車の音と校舎から朝練をする吹奏楽部の音が響いている。
  朝のHRは八時四十分からなので本来ならこんな時間に来ることはなかった。
  六時三十七分ターゲットを捕捉した。
  気づかれないようにゆっくりと後をつける。
  ターゲットは靴箱で三分ほど細工をしたのちに、校舎の中へと入って行った。
  それを確認してから靴箱へと音を立てないように向かう。
  まずは出席番号一番のところを見る。
  ハートのシールで閉じられた手紙が入っていた。
  少しにやけながらそれをリュックの中に詰め込み、上履きに履き替えた。
  次に十八番のところを見る。
  一見それは他のところと変わらないように見えた。
  しかし靴側の窪みに手を突っ込むと上側面からカッターの刃が勢いよく飛んできて手に突き刺さる。
  ゴム手袋と軍手を交互に二回付けた四重防御をしていなければ切り裂かれていただろう。
  二層目で止まった刃を抜き取り黒の袋に詰めた。
  多重防御の代償として触覚はなかったが軍手をよく見るとピアノ線が付いていた為そういうトラップであることが分かる。
  その仕掛けは一旦置いておいて上履きに手を伸ばす。
  上履きの中は剣山と見間違える程に画鋲が上を向いていた。
  それを全てを流し込むように黒の袋へと移す。
  他に罠がないか側面をベタベタと触れる。
  もう無いことを確認すると最初に仕掛けられていたカッタートラップの刃の部分を黒ずんだ赤マジックの芯に差し替えて何事もなかったように罠が発動する前に戻した。
  周りに誰もいないことを再度確認して教室へと足音を消して進む。
  校内にはトランペットの練習音が鳴り響いていた。気分は完全に工作員だった。
  教室にたどり着き、背中を壁に添わしたまま窓の端から中を覗く。
  ターゲットは教室の中央付近で何かをしているようだった。
  ドス黒い闇と薄い笑顔が見えた。
  恐怖からくる体の震えを気合いで抑え、リュックの中の秘密兵器を取り出す。
  教室の廊下を挟んだ向かい側にある生徒用のロッカー。その左端の上の段に秘密兵器を入れる。
  後ろを振り向き熱心にまだ何かをしているターゲットを見てホッとする。
  その場を離れてトイレへと逃げ込んだ。
  ポケットからスマホを取り出し、『体育の前に着ていたTシャツをロッカーに忘れたかも』という文を送信した。
  五秒後、『あったよ。畳んでおくね』と返信が届いた。
  それを確認した十秒後、トイレ前の廊下を走る足音が聞こえた。
  音を立てないよう慎重に体を動かして教室へと戻る。
  ターゲットは消えていた。よし、計画通り。
  中に入り中央の席に近づく。それは靴箱と同じく一見なんの変哲もない。
  まずはイスを引いてみる。
  イスを最大まで引くと机の中から真っ黒の便箋に入った手紙が椅子の上に落ちる。
  それはイスの背もたれに付けられたピアノ線とくっついていて引くと落ちるような仕組みだった。
  便箋の中を確かめず黒の袋に入れる。
  その時、イスを引いた手の軍手がズタズタになっていることに気がついた。
  腰を低くしてイスの後ろを見る。
  そこにはカッターの刃がおびただしい量付いており、素手で触ろうものなら確実にタダでは済まなかった。
  それらを全てを剥がし黒の袋に入れる。
  刃の付いていたところには斜め上から見ても分かるような感じに極彩色のねりけしを貼り付ける。
  さらにイスの上には黒の画用紙に『昨日のようなことはするな。これはクラスの総意だ』と白字で書いたものを置く。
  これで事前に罠を回避したように見えつつ、行動を控えてくれるだろう。
  その後、机周辺を調べたが罠らしきものはなかった。
  僕はホッとして登校時間が来るまでトイレに身を隠した。
  便座に座りスマホゲームをすること約一時間半、時刻は八時二十分になっていた。
  外からは活気にあふれた声が聞こえてきている。
  「もうそろそろ行かないとな」
  席を立ち普段通りに教室へと向かった。
  我ながらなかなかの作戦だと思う。
  昨日のヨウの感じからして獅子道さんに危害を加える可能性は感じられていたし、さらにその被害を受けた獅子道さんが取るであろう行動も推測できた。
  その両方を一気に潰す工作員作戦は本当に完璧だと思う。
  教室では痛い目に合わせることができたとほくそ笑むヨウとクラスの意見を第一に考えて僕たちから手を引く獅子道さんの姿が想像できる。
  しかし現実はいつも非情で僕に苦難を投げかける。
  教室内はざわついていた。
  扉を開けると、すぐのところにいたヨウが悲しそうな表情をしてこちらを見ている。
  しかし、僕の目にはそれよりも大切なものを捉えていた。
  僕の机に上に倒れかかる黒髪の女子生徒。
  気を失っているのかピクリとも動かない。
  ずっと教室に居座るべきだったと後悔してももう遅い。
  瞳を閉じたままこちらに顔を向ける委員長。
  自分の浅はかな行動が起こした最悪の結末。
  獅子道 礼奈は動かない。
  「ねぇテル。どうして邪魔するの」
  ヨウの手は赤黒く染まっていた。
  腕時計を確認すると時刻は六時三十分を少し過ぎたところだった。
  石の柱と鉄檻のような門の間で息を潜めてターゲットの到着を待つ。
  仕事へと向かう車の音と校舎から朝練をする吹奏楽部の音が響いている。
  朝のHRは八時四十分からなので本来ならこんな時間に来ることはなかった。
  六時三十七分ターゲットを捕捉した。
  気づかれないようにゆっくりと後をつける。
  ターゲットは靴箱で三分ほど細工をしたのちに、校舎の中へと入って行った。
  それを確認してから靴箱へと音を立てないように向かう。
  まずは出席番号一番のところを見る。
  ハートのシールで閉じられた手紙が入っていた。
  少しにやけながらそれをリュックの中に詰め込み、上履きに履き替えた。
  次に十八番のところを見る。
  一見それは他のところと変わらないように見えた。
  しかし靴側の窪みに手を突っ込むと上側面からカッターの刃が勢いよく飛んできて手に突き刺さる。
  ゴム手袋と軍手を交互に二回付けた四重防御をしていなければ切り裂かれていただろう。
  二層目で止まった刃を抜き取り黒の袋に詰めた。
  多重防御の代償として触覚はなかったが軍手をよく見るとピアノ線が付いていた為そういうトラップであることが分かる。
  その仕掛けは一旦置いておいて上履きに手を伸ばす。
  上履きの中は剣山と見間違える程に画鋲が上を向いていた。
  それを全てを流し込むように黒の袋へと移す。
  他に罠がないか側面をベタベタと触れる。
  もう無いことを確認すると最初に仕掛けられていたカッタートラップの刃の部分を黒ずんだ赤マジックの芯に差し替えて何事もなかったように罠が発動する前に戻した。
  周りに誰もいないことを再度確認して教室へと足音を消して進む。
  校内にはトランペットの練習音が鳴り響いていた。気分は完全に工作員だった。
  教室にたどり着き、背中を壁に添わしたまま窓の端から中を覗く。
  ターゲットは教室の中央付近で何かをしているようだった。
  ドス黒い闇と薄い笑顔が見えた。
  恐怖からくる体の震えを気合いで抑え、リュックの中の秘密兵器を取り出す。
  教室の廊下を挟んだ向かい側にある生徒用のロッカー。その左端の上の段に秘密兵器を入れる。
  後ろを振り向き熱心にまだ何かをしているターゲットを見てホッとする。
  その場を離れてトイレへと逃げ込んだ。
  ポケットからスマホを取り出し、『体育の前に着ていたTシャツをロッカーに忘れたかも』という文を送信した。
  五秒後、『あったよ。畳んでおくね』と返信が届いた。
  それを確認した十秒後、トイレ前の廊下を走る足音が聞こえた。
  音を立てないよう慎重に体を動かして教室へと戻る。
  ターゲットは消えていた。よし、計画通り。
  中に入り中央の席に近づく。それは靴箱と同じく一見なんの変哲もない。
  まずはイスを引いてみる。
  イスを最大まで引くと机の中から真っ黒の便箋に入った手紙が椅子の上に落ちる。
  それはイスの背もたれに付けられたピアノ線とくっついていて引くと落ちるような仕組みだった。
  便箋の中を確かめず黒の袋に入れる。
  その時、イスを引いた手の軍手がズタズタになっていることに気がついた。
  腰を低くしてイスの後ろを見る。
  そこにはカッターの刃がおびただしい量付いており、素手で触ろうものなら確実にタダでは済まなかった。
  それらを全てを剥がし黒の袋に入れる。
  刃の付いていたところには斜め上から見ても分かるような感じに極彩色のねりけしを貼り付ける。
  さらにイスの上には黒の画用紙に『昨日のようなことはするな。これはクラスの総意だ』と白字で書いたものを置く。
  これで事前に罠を回避したように見えつつ、行動を控えてくれるだろう。
  その後、机周辺を調べたが罠らしきものはなかった。
  僕はホッとして登校時間が来るまでトイレに身を隠した。
  便座に座りスマホゲームをすること約一時間半、時刻は八時二十分になっていた。
  外からは活気にあふれた声が聞こえてきている。
  「もうそろそろ行かないとな」
  席を立ち普段通りに教室へと向かった。
  我ながらなかなかの作戦だと思う。
  昨日のヨウの感じからして獅子道さんに危害を加える可能性は感じられていたし、さらにその被害を受けた獅子道さんが取るであろう行動も推測できた。
  その両方を一気に潰す工作員作戦は本当に完璧だと思う。
  教室では痛い目に合わせることができたとほくそ笑むヨウとクラスの意見を第一に考えて僕たちから手を引く獅子道さんの姿が想像できる。
  しかし現実はいつも非情で僕に苦難を投げかける。
  教室内はざわついていた。
  扉を開けると、すぐのところにいたヨウが悲しそうな表情をしてこちらを見ている。
  しかし、僕の目にはそれよりも大切なものを捉えていた。
  僕の机に上に倒れかかる黒髪の女子生徒。
  気を失っているのかピクリとも動かない。
  ずっと教室に居座るべきだったと後悔してももう遅い。
  瞳を閉じたままこちらに顔を向ける委員長。
  自分の浅はかな行動が起こした最悪の結末。
  獅子道 礼奈は動かない。
  「ねぇテル。どうして邪魔するの」
  ヨウの手は赤黒く染まっていた。
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