コールドスリープ

堺94

新天地



カプセルが閉じ、視界が真っ暗に。記憶はそこで途切れている。

百年後、植民船は惑星αに到着する。
乗組員全員が目覚め、船内から外を眺める。
そこは太古の地球のような、原始的な風景。

鮮やかな緑。遠くで恐竜の声。

「お父さん、お母さん」
「ん…ああ、テッド。おはよう」
「もう百年の旅が終わったの?本当に一瞬だったわね」

エディが、乗組員全員の健康を確かめに来る。テッドは思わず呼び止める。

「エディ、ミーティア人たちは…」

しかし、言いかけてから気づく。

「そうだった…エディは記憶を消去されたんだ。
ロボットに魂はないから、魂から記憶を復元することもできない…」

テッドは少し寂しく思う。
後に、テッドは自分の眠っていたカプセルに、メッセージが残されているのに気づく。
インクではなく、光で書かれている、見たこともない文字。

「なんて書いているのかしら?」と、お母さん。
エディにも答えられない。
だが、テッドにはおおよその検討がつく。

「たぶん、こう書いてあるんだよ。「やっぱり百年待つのは退屈なので、帰ります」ってさ」
「なんだそりゃ?」

お父さんとお母さんは顔を見合わせる。
それから三人は宇宙船の窓辺に立って、こんな会話をする。

「ねえ、お父さん。コールドスリープ(冷凍睡眠)の間は、夢を見ることもないんだよね?」
「ああ、脳の活動も止まるからね。お前、まさか夢を見たなんて言わないだろうね?」
「夢?まさか」




END

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