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ひととかぜと日常

香月 玄_コウヅキ ハル

Episode8 離



1

『わざわざお見送り、おおきに』
「さっさと帰れ」
迅は冷たい目で睨み、踵を返して玄関のドアを開けようと手をかける。
 一方久遠は細い目を更に細め笑い、口元を服の袖で隠し言った。
『お嬢さんがおらんときは随分態度がちごうなるねんなぁ?』
 迅は扉は開けぬまま、黙っている。
『何でもええけど、モタモタしとったらお嬢さん、誰かに取られてまうで~』
久遠の軽い一言に振り返り、眉をひそめた。
『……意味がわからぬ』
さぞ面白そうにニコニコと笑みを浮かべる久遠に対し苛立ちに似た何かが蓄積していくのを感じる。
首根っこを掴もうと動いたが、流石猫。はらりと避け、塀の上に逃げられてしまった。
『自分のお胸に聞ぃてみぃ?ホンマにアンタにとってお嬢さんは“妹”かぁ?そこいらへん、もう一度考えてぇな』
 そう言い終わるなり、スッ、と笑みを消した。


『そのつもりがないんやったら、一定の距離を保ったほうがええで迅サマ・・
 それだけ言い残したかと思うと、もう久遠の姿は、そこになかった。


 …神は何を思って、ヒトとアヤカシを隔てたのだろう。
 隔てはきっと、幸せは生まないだろうに。

 距離を保つ。迅にとってそれは、相当な寂しさを感じるものであり、勇気のいる行動であった。

『……零』

 □□□

 結局、怪しい紙は今まで通りの普通じゃない普通の日常を壊す様なものではなかった。
 1つ未だにわからないのは、迅がギリギリまで手紙の内容を隠そうと、取り上げていたこと。

 ひょっとしてヤキモチか?とか自惚れてみたり。

 あれ、もしかして私、ブラコン……。

 血が繋がっているわけではないが、産まれたときから一緒の彼は兄とも取れるわけで…それでもって、その彼にヤキモチを期待するのは……それはまさかブラコンというやつに近いのでは?!
 まって、迅は私をどう思っているのだろう。面倒とか思われて………はないな、逆だな。

 ちゃんと年相応の妹に見えていたらいいが、実は彼的には“2歳か3歳くらいの妹”って感じかもしれない。
「…………ありえる」
 私が高校生にもなったというのに、昔と変わらず布団に入ってきたり、間接キスとか全く気にしてなかったり、それどころか“ちゅーしてくれないの”とか聞かれる時点で大いにあり得る話。

 いや、でも、最近おかしいのだ。
 久遠が勝手に家に来た日から数日経った今日の日まで、迅がおかしいのだ。
 何となく距離が離れたという感じで、寂しい。
 もしかすると迅も同じ寂しさを感じてきたのかもしれない。
 大好きのちゅーは小3で終わった。抱っことか、一緒にお風呂は小4。手を繋ぐのは小5。
 それ以降も一緒に寝る事とか、間接キスとかでさえ私は抵抗を感じ初めた。

 まぁ…本当の兄妹はこれが普通なんだろうけど。

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