ひととかぜと日常

香月 玄_コウヅキ ハル

Episode5 紙 Ⅰ

カミ

1

『今日は風がとても綺麗な色をしているよ』
 隣をフヨフヨと付いてくる迅は虚空に手を伸ばした。(…姿を消している間…霊体の時は浮遊したり通り抜けたりする事ができる。ちなみに視える人は実体霊体関係なく触れる。)

「風に色とかあるんだ?」
 そう聞くと彼はあるよ、と微笑った。日に照らされて、手を伸ばして微笑うその姿は絵になるほど綺麗。
「私も見れたらいいのに」
『見れるよ。見ようとしないから見れないだけ。本来人間は皆見えるはず』
「いつか、見れるようになりたいなぁ」

 □□□

 下駄箱を開けると、4つ折りにされた紙が1枚入っていた。
 この場合ラブレターか果たし状だろう(…古いか)。開いて見ると訳のわからぬ字が1文書いてあった。象形文字とか、ヘブライ文字とか…そういう文字だ。
 首を傾げ紙を見つめていると、迅がそれを見るなり、慌ててヒョイと取り上げる。
『…っ。これは、駄目』
 彼がこういうことを言うのは、アヤカシ関係だからだ。だが、いつもと違って少し焦った様に見えたのは何故だろう。
 結局今日は1日中授業を受ける私の顔の横で寝転がる様に浮き、紙とにらめっこをしていたのだった。


「あれ、今日も入って…あ」
『駄目』
昨日と同じようにそれを開こうとしたが、すかさず迅に取り上げられる。
「見るくらい問題ないっしょ?」
『…駄目だよ』
「何で?」
ムスッとして、言い返したがスルーされた。


 次の日も、そして次の日もそれは続いた。手紙の内容がわからないというのも怖いが、それよりも迅の事がわからないのが何よりも怖かった。何だか不愉快だしさ。
「1週間も続いてるのに何も教えてくんないの?」
家に帰って聞いてみたのだが、迅は肩をすくめるばかりで、何も教えてくれない。

 何故だろう。何故見る前に取り上げるのだろう。内容に問題があるとしても私には読めないことくらい、彼にはわかっているだろうに。
 それなら一体何を恐れてる。
読めないものを読めるようになること?それなら読まれたくない内容って?

 言っておくが、私の願いは、“普通じゃない、普通の日常が変わりませんように”それだけなのだ。

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