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ひととかぜと日常

香月 玄_コウヅキ ハル

Episode2 風 Ⅰ

カゼ

1

 チュンチュン、と今度はヒヨドリが庭で木の実を突きながら鳴く声に起こされる。見ると空はまだ白く、時計の針は5:00を指していた。
 起き上がってついた手に何かあたった。
恨めしい事に寝息を立てて眠る男は昨日の彼だ。しばらく状況を理解するのに時間がかかったのだが、開いた窓を見て納得。眠過ぎて飛んでいた記憶も戻ってきた。
 しかし…睡魔とは恐ろしいものだ。いくら眠かったとはいえ、布団に潜り込んできたのに小言すら言わずに、ここで寝ることを許可をしてしまったのだという事を思うと重い溜息が漏れる。
 年頃の娘(うん?)が同じベットで年頃の男(ううん?)と眠るなど言語両断。普通悲鳴を上げる所だが皆さんご存知、残念ながらこの世には慣れというものが存在している。

 しばしボーッと白い空を仰いでいると服を引っ張られた。
 男はおっとりふんわりした性格で、喋り方も、色白の美形顔も、おっとりふんわり。微笑む時なんか、まるで周りに花が咲いたようにフワッとなる。
「おはよう。今日は早いんだね」
「…あまりに寝苦しかったものでね」
彼の言葉に皮肉を返して肩をすくめて見せた。
『大丈夫』
皮肉だと気付かない彼は眉をひそめてそんな事を問うが…主にお前のせいだぞ、おい。

 彼はまだ寝てたい身体を起こし、欠伸をした。


 あぁ、紹介がまだだった。
悪いが彼は少し待って欲しい。まずは私。

 名前は的場マトバ レイ
 歳は16で高校1年生の女子。
 髪は邪魔なのでショート、でもって化粧は面倒なのでしない。勉強、運動、顔面偏差値等々、全てに至って中の上(せめて上と言わせてくれ)。友達は普通に、まぁそれなりというやつだ。
 彼氏?そんなのいたら今頃、慣れはあるにせよ隣にいる奴を外に投げてるよ。

 次はお待ちかねてるかは知らないが次は彼の番。

 名前はジン
 歳は当本人が秘密だ、と主張。だが見た目は高校生くらいの青年で、歳を取る様子はない。髪は少し茶色味掛かった黒で、目は若草色である。
 眉目秀麗、身長も高くスタイルもいい。全てにおいておっとりかふんわり、が付きまとう。
 私との関係?…腐れ縁、とでも言っておこう。

 とりあえずこれくらいか。あとは後々わかってくるだろう。


 私達は朝御飯を買いに外に出た。朝の空気はとても心地が良いし、不思議と癒やされる気がする。早起きは大変だが、これを味わえるのならたまにはそれもいいかも知れない。
 しばらく歩くと河に沿うように真っ直ぐに伸びる遊歩道があって、河の反対側の脇には桜並木が見える。その桜の木の中で一段と大きい木はいつの時代からあるものか。
『花姫だ』
彼はその木の傍に静かに微笑みを浮かべて立つ、綺麗な花の紋様の和服を纏った女性に向かって手を振った。相手も同じ様に手を振り返す。
が、そのように視えるのは彼の他、私だけなのだが。
 花姫、というのは人ではないのだ。だから他人には視えない。ちなみに手を振る彼も。
「迅、そういうのは姿を消してから。怪しまれるよ」
そう言うと迅は、そうだね、と微笑った。
『でも姿を消したら零が1人で喋ってるって思われてしまうよ』
「気にしない気にしない」
彼は私の言葉に、今度は哀しそうに微笑んだ。

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