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自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体はいつのまにか最強になっていたようです〜

ねっとり

第21話:いいか、深呼吸は大事だ。目を瞑ってゆっくりと呼吸するだけでも気持ちは落ち着くぞ

「はぁ?何を言ってーー」

 ヤバイ。これはやばい。

 目の奥が痛くなるような頭痛に襲われた瞬間に俺は横に飛び跳ねた。

 ザブラの剣が俺の背中に切り傷をつける。

 しかし早めの回避のおかげで致命傷にはなっていない。


「ぐっ!」


 飛び跳ねた先にリムがいた。

 心配そうなリムが弱々しく俺に近づいてくる。


「ケイド……」

「あぁ大丈夫だ。少し予想外だったけどな」


 本当に予知眼ビジョンアイにはお世話になりっぱなしだ。

 今回も飛び跳ねてなければ致命傷だっただろう。

 しかし何故だ。そんなに俺は恨まれてるのか?


 リムが弱々しくも回復魔法で背中の傷を塞いでくれている。

 身体強化しているとはいえ、随分とボロボロになっている。

 その上ザブラまで敵となっちゃ分が悪い。


「ケイド……酷いよ……あいつら……本当に酷いよ……」


 涙目になりながら俺を見てくるリム。

 ……いや何をしてるんだ俺は。

 俺はパーティを追放されて自由を手に入れた。

 そして出会ったじーさんとリム。

 絶望に打ちひしがれていた俺を救ったのは誰だ?

 じーさんとリムだ。

 だから俺はリムと一緒に旅をする事にした。

 少しでも恩返しがしたかった。

 リムと一緒にいて、俺はリムを泣かせないと決意した。


 それが今はどうだ?

 リムはボロボロ。

 さらには涙を溜めながら俺を癒してくれている。

 魔王がコアを破壊したって言ってたが、その影響か?

 あんなに元気だったリムが本当に弱々しい……。


「……ありがとなリム」


 俺はリムの頭に手を置いて笑顔で答えた。

 そうだ。俺はリムと一緒にこれからも過ごしたい。

 それなのに泣かせていいのか?悲しませていいのか?

 心配かけるような男なのか俺は!?


 違う。そうじゃない。そんな事はしちゃいけないんだ。


 俺はもう一度立ち上がった。

 魔王とザブラがずっと戦っている。

 戦狂薬のせいか、魔王と互角に渡り合ってやがる。

 魔王の方は……少ししぼんで見えるが気のせいだろう。

 ……はっ。やはりザブラは天才か。

 だけどな、俺は周りを泣かせる男に育てた覚えはねぇ。

 自分だけを考える男なんてカッコ悪い。

 だからもう一度ザブラには教えなきゃな。

 本当の力の使い方を。




 この戦いを終わらせるなら方法は1つ。

 魔王討伐とザブラの無力化。

 もう二度とリムを泣かせないとは思ったが……すまんな。

 あと一度だけ泣かせちまうかもしれない。


「ケイド……もういいよ。ケイドがこれ以上傷つくとこ……見たくない!」


 あぁ……そうだな。心が折れそうだ。

 もういいんじゃないか?このままリムと一緒に逃げてもいいんじゃないか?

 そう思ってしまうほど、リムが愛しくてたまらない。

 ……だけどな、大人ってのはしっかりとけじめをつけるんだ。

 だから……すまんなリム。


 俺が改めて魔力を練り上げ構えると、感知した魔王とザブラも振り返る。

 ザブラも魔王も随分と生傷が増えた。

 いや、魔王はやはりしぼんだんじゃないか?

 どっちにしろ好都合だ。

 ザブラの攻撃を避けつつ、魔王を仕留める。

 もう、終わらせよう。


「イコル!俺の鞄のポーションはまだあるか!?」

「もうないわよ!なんでもっと持ってこなかったのよ!」


 空のポーションビンが飛んでくる。

 あいつ元気だな。いやそれよりもかなり多くの量持ってきたぞ?

 使う頻度が早すぎんだよ。


「フレイ!回復魔法は撃てるか!?」

「もうないです!!」


 そうか、フレイは限界か。

 となると……なんだこりゃ。最終決戦みたいじゃないか。

 あとは根性だけが頼りってか?

 ははっ。巨大な荷物持って山越えした時並みだな。

 ……いやそれ以上か。


「2人はザブラの援護をしてくれ!頼むから俺に当てるんじゃねーぞ!」

「言われなくても!」
「はい!」


 さぁ最終決戦の始まりだ。

 ザブラと魔王の対角線上に間合いを取り、ザブラの攻撃からも身を守る。

 ザブラが引けば俺が攻撃を始め、ザブラが突っ込んでくれば俺は身を引く。

 剣と拳と肉体のぶつかり合う音が響き続けた。




 ◇



 ーー時は少し遡るーー


 リムは魔王から一撃を受け気絶をしてしまう。

 そして目を覚ました時、ケイドが自分を守るために抱えている事に気付く。


「あれ?ケイド……」


 リムは困惑した。

 最後に覚えているのは、魔王からの一撃。

 自身の油断で、腹部に強烈な一撃を貰ってから記憶がない。

 そして目を覚ましたはいいが身体中の力が抜け落ちてるかと思い違える程体が動かなかった。

 なんとか現状を認識しようと目を動かす。


「……!ケイド!その怪我!」

「ん?あぁ大丈夫だ」


 嘘つき!そう叫びたかったがうまく言葉が出ない。

 ケイドの顔はいつもの優しい顔だった。

 自分と一緒にいる時に見せる笑顔。

 こんなにも傷付きながらもリムを心配させまいとしている。

 しかしそれはリムに見抜かれている。

 自分のために無茶をしてる姿は何度も見てきた。

 このままではケイドが……。


「ケイド!死んじゃうよ!」

「……ははっ。カッコいい男は死なねーんだよ」


 その瞬間ケイドに魔法が着弾した。

 リムの目がさらに丸くなる。

 魔法を撃ち込んできたのは……あの酒場であった女だ。


(許せない……)


 ケイドの作り笑顔を見ながらリムが思い込む。

 自分の大好きな人が傷付けられている。

 それがあの女。いやあの女だけじゃない。

 ケイドから声をかけられ、なんとか体を起こそうとするが無理だ。

 腹部の痛みが尋常ではなく、その痛みに邪魔をされて動けそうにない。


「リムは……リムは平気だよ!」


 言葉ではなんとか無事なことを伝えたいがケイドにはばれているだろう。

 優しく頭を撫でられた瞬間、その腕の傷がひどいことを知った。

 この傷も自分を守るため……。

 治したい。ケイドの傷を少しでも軽くしたい。

 体内で魔力を練ろうとするが、ほんの少ししか練り上げられなかった。


「ケイド……ケイドっ!」

「あ、あぁ大丈夫だ。俺はまだピンピンしてるぜ」


 違う。ケイドはもう限界に近い状態だ。

 それでもケイドは自分を守るために戦うだろう。

 リムは自分のために傷付くケイドを見たくなかった。

 別に今戦っているケイド以外の人間も魔王もどうでもよかった。

 ただ、ケイドを傷付けた奴らを許すことは出来ない。

 リムに負の感情が溜まっていく。


 目の前で人間が魔王に吹き飛ばされた。

 自分たちもこのままでは襲われる。

 しかしリムの体は意思に反して動かない。

 さらにケイドが人間に近づく魔王へ向きながら立ち上がった。


(行っちゃう……)


 無意識にケイドの服を掴んだ。

 ここで離したらもう帰ってこない気もした。

 だがケイドから出た言葉は、ある意味予想通りだった。


「ケイド……行かないで……」

「ごめんなリム。俺、バカだからさ」


 そんな事はない。

 リムにとってケイドは世界一カッコよくて優しい男だ。

 その男が自分の命をかけて戦場に行く。

 リムの手から握力は無くなっていた。



 そして激しい戦闘が始まった。

 リムが見てわかる事は、自分が守られているという事。

 体力も魔力も回復しそうにない。

 腹部の衝撃はそれほど大きかったのか。


 激しい戦闘によりケイドが傷付いていく。

 リムは人間にも、魔王にも憎い感情が生まれていた。

 ケイドを、自分の最愛の人を傷付ける悪人。

 それを決定付けたのがザブラの一撃だ。


(ケイドっ!!)


 リムはなんとか自力でも動けるように魔力を練り続けた。

 その甲斐あってほんの少しだけ魔力を練り上げられた。

 ケイドがリムの方へ来たのは幸いだ。

 リムがケイドに触れて、練った魔力を治癒へと変換する。


 その時に改めてケイドを見た。

 服も腕も……いや全身がボロボロなケイド。

 どうしてそこまで出来るのか。

 そしてなぜあいつらはケイドにこんな仕打ちをするのか。


 憎い。

 憎い憎い。

 ……許せない。


ケイドはまた何かを叫ぶと魔王と戦いに行ってしまった。

休んで欲しいのに。休まず戦い続けてる。

魔王だけじゃない。あの対峙しているザブラもケイドを狙っている。

そして仲間の女達。リムの目には同じ敵にしか見えなくなっている。

 リムが睨みつけるようにしてザブラ達や魔王を見る。

 そして怒り、憎しみなどの感情がリムを包み込んでいく。



 その瞬間声が聞こえて来た。


『憎いか。許せぬか。殺したいか』


 その声の主は聞いたことがある。

 いや今までの八柱全員が知っている気がしていた。

 その中の1人の声だ。


(憎い……)

『憎ければ恨め。恨み滅ぼせ。全てを……』

(憎い、憎い憎い憎い……)

『滅びの時が来た……』





「あああああああああああ!!!」


 突如リムの叫び声と同時に体から光が放たれた。

 ケイドも魔王もザブラ達も動きが止まる。

 断末魔のような叫び声。

 リムの体から放たれた光が、上空の暗雲に突き刺さる。


「くそっ!コアは破壊した筈だ!!」


 魔王が叫ぶと同時に後ろを振り向いた。

 魔王からさらに後方の奥。祭壇からも光が漏れている。

 封印が解けたのだ。

 すぐに魔王はリムを排除すべく突進し始める。

 その動きにケイドがリムを守ろうと距離を詰めた。


「まてっ!」

「邪魔だぁ!」


 体制が悪かった。

 ケイドは魔王の一撃を喰らい、壁へと叩きつけられた。

 魔王とリムの間に障害はない。

 無防備に叫び続けるリムへ、魔王の全力を載せた拳が突き出される。


 バチン!
「グハッ!」


 だが魔王の拳が届く事はなかった。

 見えない障壁に跳ね返され、魔王までもが壁に叩きつけられる。

 暗雲への光がさらに強くなり、全員が声を聞いた。


『人間にしてはよくやった』

『我々の悲願』

『ようやく晴らせる』

 リムが空中へゆっくりと浮き上がった。

 先程と違い、戦闘態勢に姿が変わっていく。

 それを囲むようにして光が8つ現れる。


「なんだよ……どういう事だよ!じーさん!」


 その光は八柱へと変化し、ケイドたちを見下ろした。

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