狂った世界をクルクル廻して。

まろく

お化けの話

演習場から聞こえるやる気に満ちた声を聞こえないふりしてアパタイトに連れられ使ったのは彼の仕事部屋、扉を開けると2人の妖精がそわそわと部屋中を飛び回っていた
「お待たせしましたね二人とも、先ほどの話を魔王様方にもお願いします」
待ってましたと言わんばかりに一気に話だす
「あ、あのですね、お化けがいたんです!」
「目しかなくて、鼻と口がなくて、」
「真っ白で」「真っ黒で」
ん?
「小さくて」「大きくて」
んん?
「女の子の声でした」「男性の声でした」
わけがわからない、出鱈目言ってる?違う少なくとも2体いるということか?からかってるのかと思いアパタイトを見ると真剣な顔で何か考えているようだった
「まてまてまてまて、途中からめちゃくちゃじゃないか、一応聞くがこれはイタズラじゃないんだな?」
イタズラ好きの妖精達なら今のデタラメな話が嘘ということもありえる
「それはないと思うよ、だって魔王様にイタズラするのに私を誘わないなんてありえないもん」
ティアのことはひとまず置いておき、アパタイの方を向き意見を求める
「私もないと思います、そのお化けというのを私も見ましたので…」
「捕まえたか!?」
「申し訳御座いません逃げられました」
魔法抜きでは動きが極端に遅いアパタイトだが、逃げるだけとはいえこの城でトップクラスの戦闘ができるアパタイトから逃げ切るということはつまり
「ねーねーそのお化けどこで見たの?」
ティアが落ち着いた妖精2人に声をかけるとまたしても悪い報告が耳に届く
「私は食糧庫でした」「私は武器庫でした」
「…ホントならかなりまずいよね?」
「あぁ、正体不明の者が少なくとも2人は潜んでるんだからな…アパタイトはどこで見たんだ?」
考えるには情報が少ない、それに曖昧すぎる。助けを求めるように質問をなげかける
「私は先ほど昼食の確認の後、グレートホールに通じる廊下で白いお化けに鉢合わせました、その後近くにいたこちらの2人に声をかけると先ほどの話が…あ、ちなみに昼食はステーキでしたよ」
わからない、いつから、何のために、どれだけの数が…これは本格的に調査をした方がいいんでは?
「…わっかんねーなー、一度皆でお化け退治でもするか?」
その後状況の確認とすり合わせを行っていると軽いノックの音が扉から聞こえる
「アパタイト様ごはんですよー、あ、魔王様もいたんですね、ティア様も今度は遅れないでくださいね」
話が進まなくなってきたところにお昼の知らせがやってきた
「よし、この話は後で皆にしておこう、演習場の防御魔法が緩まってたのもきになるしな」
「そうですね、ステーキが冷めてしまっては台無しです」
「魔王様、お昼の後は事務作業ですからね?忘れないでくださいね?」

グレートホールにつくと妖精達がテキパキと料理を運んでいる。そこに混ざってエプロン姿のロネリーとアリエが手伝いをしていたので、邪魔をしないようにさっさと席に着くことにする
「魔王様今度は早かったのですね」
エプロン姿のアリエが水を注ぎながら優しい声ではなしかける
「アパタイトと一緒だったからな、知らせが一番にきたよ」
「それでしたら、お聞きになりましたか?お化けの…侵入者の事を」
「ああ、武器庫と食糧庫に現れたらしいな」
「妖精達の間では二週間ほどまえから噂があがってたらしいです」
並んだコップに水を注ぎ終わる

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