狂った世界をクルクル廻して。

まろく

魔王様がお目覚めです。

「…さま……お…さま……おうさま…起きて下さいよ魔王様!朝ですよ!」
椅子に座った状態で寝ていたらしく、そのせいで疲れがあまり取れていないが意を決して半目をあけると長い銀髪を腰まで垂らした小さな妖精が目の前をパタパタ飛び回って騒いでいる
「ああぁ…ティアか、………」
怒っているのか一生懸命小さな自分をアピールしようとする姿が可愛らしくて微笑ましくて見ているとまた眠気が
「ダメですってば!起きてください!皆様グレートホールにてお待ちですよ!」
「わかったわかった、直ぐ行くから」
「ホントに早くしないと、ロネリー様に怒られますよ…アパタイト様なんてもう食べ始めちゃってるんじゃないですか?」
「それはマズいな…でもな、昨日の夜新しい魔法が完成しそうだったんだよ!」
「凄いじゃないですか!あー、それでこの部屋にいたんですね」
椅子のまわりには割れた瓶や丸められたら紙などが散乱している。前の机には縁の方で整えられた実験器具がコポコポ音を立てて稼働しているが目の前には幾つもの魔法陣や大量の計算式が書かれた紙が無造作に並んでおり、横にはインクの入った瓶がいくつもの並んでいた
「それでな、あと一歩何だがな、この式とこの陣がどうにも合わなくてそれでこっちの陣をもってきて………それでそれで…」
「分かりました、もう十分解りましたから」
「そうなのか…?」
「そーなのです。ですから早く立って下さい、行きますよ」
椅子から立ち上がろうとする巨体は2mを超えており、鍛え上げられた強靭な肉体を深い深い漆黒の外骨格が覆い、頭部には赤い目と一対の大きな角が見るものを存分に恐怖させるには十分すぎる姿をしている。
そんな巨体が何の躊躇もなく立ち上がろうとすると足が机にぶつかり大きく揺らした。
「「あ、」」
すると並んで稼働していた実験器具やインク瓶が勢い良く連鎖的に倒れ机の上に散らばった紙を芸術的なまでに綺麗に読めなくしていった
「あーーーーーーっ!やってしまった…俺の…俺の徹夜の頑張りが…もうすぐだったのに…」
ゴツい見た目の魔王が目の前でどんどん落ち込んでくのを見かねてティアはまた騒がしくパタパタ飛び回り始めた
「ほ、ほらココとかまだセーフですまだ読めますって」
「そんな初期の計算なんて見せても…」
「それならこっちの魔法陣とかは」
「それは単体じゃだめなんだよ…」
「でしたらこっちの」
「もういいよ…朝食を食べに行こう…皆が待ってる」
散らばった机をそのままに2人は部屋を後にした。

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