異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

ソロクエストpart1〜熊の胆嚢を添えて〜

 その声を聞きすぐさまマテバを抜き、キュアが見ている方向へ銃口を向ける。

「”索敵サーチ“、“精密射撃プリシスシュート”!」
 覚えたてのスキルを2つ使用し、索敵の範囲内に敵が来るのを待つ。
 どうやら、俺の索敵範囲よりも、キュアの索敵範囲の方が広いようだ。さすがはキュア。
 緑色の視界の中、木々の間から赤色のもやが見え始める。そのもやは俺の索敵範囲内に入ると、ハッキリと形になりその姿を露わにした。
 体長2メートルはあろうその大きさ。手からは長い爪のようなものが伸びている。
 ”索敵“スキルが切れ、俺の前には赤い毛皮に包まれた、大きな熊がいた。熊は俺の姿を姿に気付くと、身の毛がよだつほどの大きな鳴き声をあげ、木々を倒しながら此方へと向かって来た。

 恐怖で震えそうになる身体を抑えつけ、俺は熊の足にマテバを向け
「”魔弾マジックバレット“!」
 赤い光をもつ弾が、熊の足に命中し、風穴を開ける。
 痛みからか熊はより一層大きな鳴き声をあげて、土埃をあげながら此方へと突進を仕掛けてくる。次弾を放つため、俺は熊の頭部に照準を合わせ幾分か反動を持つようになったマテバに、腕を持っていかれないようにしっかりと腰を構えて、魔弾を放った。

 精密射撃を使い、距離的には問題なく当たる。頭部に魔弾が当たれば仰け反るような仕草を見せるか、そのまま一度倒れると予想される。そうしたら、すぐにマテバを熊の心臓部分に向けて魔弾を撃つ。
 これで勝てるだろう。

 ───しかし、そんな俺の予想は大きく外れることとなってしまった。

 此方に一直線で向かって来ていた熊が、魔弾を警戒したのか当たる直前で横に避けたのだ。そして熊は横に避けた時の反動と足の力を使い、飛ぶようにして一気に距離を詰めて来た。

「キュイイィ!」
 キュアの鳴き声が聞こえると同時に、俺は大きな影に覆われた。太陽を隠すようにして、熊が俺に飛びついて来ていた。
 あと少しで、俺は熊に襲われる───が、俺は知らずのうちに口角をつり上げた。

「“瞬動クイック”」

 俺は一瞬で熊が来た方へと移動し、すぐさま俺が先程までいた場所へと振り返る。
それと同時に、熊が地面に叩きつけられる鈍く重い音が森の中に響く。
 熊は、俺が居ない事に気付き、あたりをキョロキョロと見回しながら、辺りをウロウロと徘徊を始めた。

 バレてしまう前に、トドメを刺してしまおう。

 マテバをもう一度構え、ウロウロとしている熊に照準を合わせる。
 位置がバレていないこの状況であれば、避けられることも無い……と思う。ゆっくりと深呼吸をし、集中を高め───マテバのトリガーを引く。
「“魔弾”!」
 そのまま立て続けに、3発…合計4発の魔弾を熊へ撃つ。
 頭に2発。胴体に2発。完全な不意打ちのおかげか、全弾がヒットする。
 1発1発当たるごとに、大きな鳴き声を発していた熊だったが、最後の胴体への1発が当たると、鳴き声を発しなくなり、そのまま大きな身体を地へと伏せた。
 大きな振動と音が鳴り、1分、2分と立っても熊は動かなかった。
「キュッキュア!」
 キュアの鳴き声が、戦闘終了を告げた。

 動かないことを確認し、念のためにマテバを構えながら俺は熊へと近づいていく。
 熊が歩いた場所には大きな足跡がつき、飛びつきを回避した場所は大きな窪みになっていた。これだけでも、この熊どれほどの力を持っていたのかが伺える。
 本当に、接近戦にならなくてよかった…。そして、スキルを覚えておいて本当に良かった。と思う。
 先ほどの場面、跳躍強化で横に思いっきりとんでも避けれたが、その間に熊が態勢を立て直しすぐに襲いかかってくるのが容易に想像ができる。
 そういった面でも、瞬動はかなり便利なスキルだ。このスキルを得られたことを感謝しなければ。そんなことを考えていると、熊のすぐそばにまで到着した。

 足に1つ、胴体に2つ、そして頭に2つの風穴を開けた熊が横たわっている。ここまで近づいても動く気配はない。ただ、念のために熊の脳部分に向けてもう一度魔弾を撃った。
 頭を貫通し、溜まっていた血が少量流れる。
 熊が息絶えてることを確認した後、ナイフを取り出し熊の解体を始める。
 この魔物が何という名前で何が売れるのかがいまいちわからないので、爪や牙、毛皮を取り、魔石を取り出す。
 心臓部位にあった魔石は運良く魔弾に破壊されずに、綺麗な形で残っていた。青色に染まった手のひらサイズほどの石を取り出し、爪や牙とともに鞄にしまう。
 そして、最後に熊の胆嚢を取り出した。
 現実世界では熊の胆と言われ、薬として取引されている熊の胆嚢だが、この世界ではどうなのだろうか?まぁ、もし売れなかったら処分してしまおう。
 胆嚢は皮袋に包んだ後鞄にしまう。

 一通り剥ぎ取りを済ませた後、水袋を使い手を洗いその後喉を潤す。
 その後、洗い流した手に水を出し、キュアに差し出す。
「キュア水だよ。飲むかい?」
「キュ?キュイッ!」
 喉が渇いていたのか、舌を器用に使い手に注がれた水を飲んでいく。その姿を見つつあたりを見渡すと、解体時に出た血や撃った時に出た血で血だまりが出来ている。早い所移動しないと、血の匂いで魔物たちが寄って来てしまうだろう。
「キュッ!」
 飲み終えたのか、キュアが身体を俺に擦り付け、鳴き声をあげる。ふさふさの毛並みが気持ちいい。
 そんなキュアの頭を撫でながら、アリシアの森奥へと向かった。

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