異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

クエスト完了とエナの絶品料理〜ガルーダ肉を添えて〜

「ル〜イ!」
「ルイ、こんにちは。クエスト完了の報告に来たよ」
「ルイさん、只今もどりました」
「リーシャ、アリア、それにリョウさん。お疲れ様でした。此方にどうぞ」
 詰所を出た後、俺たちは冒険者ギルドへと出向いていた。
今日はいろんな意味で疲れたので、早々に休みたいと思い先にクエスト報告に来たんだ。素材等も全部売り払ってしまおう。


 受付に、ルイが立ちクエスト報告をしていく。まずはカコの実だ。10個ほどルイに手渡した。続いてガルーダの討伐証である嘴を3つ渡す。一つ一つ数え、全て確認が取れたところでルイが小さくうなずいた。
「確かに受け取りました…。此方でクエスト完了になります。二つ合わせまして合計90ポイントのギルドポイントが付与されますが…今回はパーティーでのクエスト完了となりますので人数で割らせて頂きます。よって一人当たり30ポイントのギルドポイント獲得になりますのでよろしくお願いいたします」
 そう言う仕組みになってるのか。ソロの方がランク自体は上がりやすい…が危険性はます。パーティーで組めば危険性は少なくなる代わりに、ランクは少しずつしか上がらない…。当然といえば当然なんだろうか。
「わかりました。それでお願い致します。それとこっちの素材も買取をお願いしたいのですが」
 そう言って俺は巨大蟻とシャドウレオン、ガルーダの素材と魔石を全て渡す。
「巨大蟻と、シャドウレオンですね…。シャドウレオンは現在在庫が少なくなっていましたので…助かります。クエストの報酬と合わせてお渡ししますね。査定して参りますので少々お待ちください」
 可憐な所業で一礼をし、ルイは受付を離れていった。さて…どのぐらいの報酬額になるんだろうか。今から楽しみだ。


 ルイから手渡されたのは合計で金貨1枚と銀貨87枚。銅貨が96枚。とすると…一人当たり銀貨62枚と銅貨65枚と余り1枚だ。今回のあまりの分はパーティーリーダであるアリアに渡した。相変わらず、俺の計算の早さに驚いている様だ。
 一番高かったのがシャドウレオンの皮と魔石だ。これが大体銀貨50枚ほどになった。
 Dランクの相場は大体金貨一枚ぐらいだろうか?もっと魔物の素材とかを集めてくれば、金額は上がる可能性はあるな…とりあえずこれで俺の所持金は銀貨66枚と銅貨95枚だ。銀貨50枚はゲインにあとで渡しに行こう。


 アリアとリーシャも報酬を受け取りホクホク顔だ。気分が良くなったのかリーシャはクエスト完了の祝いとして飲んで行こうと言うが、俺は辞退した。
 申し訳ないが今日は宿屋で出る料理がどの程度の物なのか…確認したいからな。
「じゃあぁ〜、二人で飲んでいくからいいもぉ〜ん」
「ごめんな、リーシャ。アリアさんもすいません」
「いえ!大丈夫ですよ。お気をつけて下さいね…キュアちゃんもバイバイ」
「キュ…」
 不貞腐れたリーシャが、頬を膨らませながら言ってくるので、謝っておいた。アリアは誰にも聞こえない様な小さな声でキュアに挨拶をすると、キュアはローブの下から手だけを出して返事をした。
「僕よりもお二人ですよ。女性なんですから…お気をつけて」
「はい!ありがとうございます、リョウさん」
「ばいば〜い」
 頰を膨らませてそっぽを向きながら手を振るリーシャに苦笑しつつも、二人に何か用事があれば宿屋まで来てくれと伝え、俺は宿屋へと向かった。


 夕暮れ時のこの時間帯。夕陽の光が街全体をオレンジ色に染め上げていて、アリシアの街を彩っている。
“蒼の月亭”
 今晩から俺がお世話になる宿の名前だ。
看板を確認しつつ、俺は宿の中へと入った。


「いらっしゃい、宿泊かい?それとも食事かい…ってああ、リョウさんじゃないか」
 長い栗色の髪を後ろでまとめ上げて、全体的にぽっちゃりとしたおっかさんことエマさんが俺に挨拶をしてくれる。宿屋の時に自己紹介を済ませているからな。
「こんにちは、エマさん。クエストを終了させ戻って来ましたよ」
「おかえりなさいっと…。リョウさん食事は済ませたのかい?」
「いえ、エマさんが作る料理を食べてみたくてそのまま来ちゃいました」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ!食堂の方で待ってな!作って来てあげるよ」
 紛れも無い本心をエマさんに伝えると、にっと笑ったエマさんが厨房の方へと向かって行こうとしていたので、俺は慌てて引き止め、バッグの中からガルーダの肉とカコの実を取り出す。
「当分の間お世話になりますので…今日クエストで討伐して来たガルーダの肉とカコの実です。良ければ受け取ってください」
「あらあら…、いいのかい?カコの実はうちの娘も好きでねぇ…」
「ええ勿論です。ただガルーダの肉は食事に少し使っていただけると嬉しいです」
「まかせておきな!本来は銅貨10枚頂くんだが…これだけの物をくれるんだ、当分の間お代は要らないね。じゃあ待ってな!」
 食事代をまけてもらうことになった。少し申し訳ない気もするが…またクエストで手に入れて来た物をちょこちょこ持ってこよう。
 それにしても、エマさんはお子さんがいるのか。じゃあ本当のおっかさんな訳だ。会う機会があれば挨拶でもしよう。
 食堂と言われた場所まで行くと、そこには木でできた長テーブルが二つと、丸い木の椅子がずらりと並べられており、そこの一角に俺は腰を下ろした。


 席について待つこと20分程。
お待たせ、というエマの声が聞こえそちらに目をやると木で出来た器が2つと籠が1つ並べられたお盆が俺の目の前に置かれた。籠の中は黒パンが2つほど入っており、木で出来た器にはクリームシチューの様な物だった。いくつかの野菜や木の実、そしてガルーダの肉が入っている。もう1つは6等分されたカコの実が盛り付けられていた。
 湯気が立ち込めており、出来立てのそれをみていると空腹が刺激され、身体が早く早くと食事を求めている。


 食事をいただく前に、俺は手を合わせ
「いただきます」
 と慣れしたんだ言葉を言った。するとエマがその行為を不審に思ったのか声をかけて来た。
「それは何だい?何かの儀式か何かかい?」
「ああ…申し訳ございません。これは僕がいた故郷でよくされていた事で…。食事を頂く前に野菜を作ってくれた方や肉となったガルーダ…そして作ってくださった方に感謝を込めて“いただきます”と言うんです」
「そんなのをされたのは初めてだねぇ…ただ、悪い気はしない。時間を取らせて悪かったね!冷めちゃう前に食べちゃいな!」
「ええ、では遠慮なく」
 盆に置かれた木でできたスプーンを取り、まずはクリームシチューの様な…いいやクリームシチューで。クリームシチューを掬う。ガルーダの肉とシチューの汁を一緒に掬い、少し息を吹きかけ冷ましてから口へと運ぶ。
 味はシチューそのものの味がするが、ただ市販で販売されていたシチューと言うよりは一から作った家庭の味だ。ガルーダの肉は口の中で噛むと程よいかみごたえと上質な味がする…、味は鶏肉に近いか。ただ俺が知ってる鶏肉の数倍は美味い。下味がついているのだろうか少し香辛料の香りもする。
 口の中で何度も咀嚼し、飲み込んだ。
「すっごい美味しいです!エマさん!お料理お上手なんですね!」
「はっはっは!まあこの宿の一つの取り柄でもあるからねぇ。それでもそうやって言ってもらえるのは嬉しいよ」
 そう言うとエマさんは厨房の方へと戻って行った。


 それにしても本当に美味しい料理だ。手が止まらない。今度は黒パンをちぎりシチューにつけて食べてみる。芳香なパンの香りとシチューの味がなんとも…。元々黒パンは固めに焼かれたものなので、こうして汁物と一緒に食べるらしいのだがその汁物がシチューとなると格段に美味しく感じられる。
 俺の食事は止まることを知らずに、黒パンを1個と半、シチューを少量残したところでカコの実を食べ始める。
 瑞々しいカコの実を味わい───幸せな時間を過ごした。


 数分程食休みをしていると、エマさんが声をかけて来た。
「あら、もう食べ終わったのかい…。ん?……そうかお口に合わなかったんだねぇ」
 それぞれを少しずつ残しておいたせいか、エマさんが寂しげな表情を浮かべながらそのようなことを言ってきた。
 俺は慌ててエマさんの誤解を解く。
「そんな事ないんです!寧ろ逆なんです!美味しかったので、夜食用に少し残しておこうかな…と…無作法で申し訳ございません。後ほど食器はこちらまでお持ちしますので、部屋まで持っていってもよろしいですか?」
 一瞬きょとんとした顔をしたあと、大きな声で笑ってくれた。誤解はうまく解けたようだ。
「なぁんだ!びっくりしたじゃないか!そう言う事なら構わないよ。食べ終わったら持ってきておくれよ?」
「はい!…では僕はそろそろ部屋の方に向かわせて頂きます」
「はいよ。部屋は二階に上がって一番奥の部屋だよ!あそこは一番月が綺麗に見えるんだ。夜見てみな!一応食堂は夜までやってるからね何かあったら降りてくるんだよ」
 エマさんに部屋の鍵を受け取り、礼を述べ俺は自分の部屋へと向かうために階段を登った。

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