異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

契約魔物の手続き〜キュアの正式登録〜

 アリシアの門付近で俺はキュアをローブの中へと隠した。かなり珍しい魔獣との事だったので、騒がれるのを回避するためだ。当分この街にいる予定だから、あんまり意味がないのかもしれないが、それでも今すぐ騒がれるよりは俺の精神衛生的に良いからな。二人にもその旨を伝え、ギルドカードを準備しながら門をくぐった。


 門をくぐると、直ぐに強面の大男───ガルダンが声をかけてきた。
「よォリョウ!よく帰ってきた!」
「ありがとうございます。ガルダンさん」
 アリアとリーシャは、ただいまと声をかけて、今回のクエストで起こったことを話し始めていた。「リョウもリーシャも怪我したみてェだな?にしては…、そうは見えねぇけど…。アリアが回復したのか?」
「ああ…えっと、ガルダンさんその件で少しお話が──」
 ガルダンにアリシアの森での出来事を細部まで伝え、カーバンクルのキュアを契約コントラクト魔物モンスターとして登録したいと言う旨を伝えた。
 すると、俺の両肩をガシッと力強く掴んできたガルダンは、そのまま俺のことを激しくゆすり始めた。
「その話は本当かァ!?俺だって見たことねぇぞ!?」
 ぐわんぐわんと、視界が揺れる。
強面が近づいたり遠ざかったりで忙しい。
「ほ、ほんとです…ほんとですから…。で、出来れば詰所へ移動したいのですが…」
「おうよォ!ちっと待ってろ!中にいるやつ全員追い出してくっからよォ!」
 そう言い、すぐさま詰所へと移動していくガルダン。数秒後詰所の中から数名の衛兵や門番兵が出てきて、皆顔が訝しげだ。かなり無理をしたのだろう…。
 そんな彼らに心の中で謝りながらも、俺たちは詰所へと向かった。


 詰所の中は簡単な作りになっていた。
テーブルと椅子が数個。書類が端の方に積み上げられ、下へと続く階段が奥に見える。
 二人と一緒に椅子へと座り、対面にガルダンが座る。一応入り口の鍵を閉め他者が入ってこない様にする。話によると、詰所には防音の魔法がかけられているらしく、外部から中での話を聞かれることはないらしい。
 お茶を3人分出してもらい、そこで俺はキュアに声をかけた。
「キュア、出ておいで」
「キュイ?キュッキュィ」
 もう出て良いの?とローブの中から顔を出して俺の肩まで登って来たキュアを、人差し指を使って撫でてやる。
「ほ、本物だ…、こいつァ…スゲェもんを懐かせたもんだなァ…」
「キュ?」
 驚きの表情を浮かべているガルダンが視界に入ったのか、誰これ?とキュアが首をかしげる。大丈夫だよ。と伝えると、俺の指に頭を寄せ、撫でて〜と甘えてくる。
「先ほども話した通りですが、アリシアの森途中で見つけた池で休んでいたら、キュアが出てきたんですよ。そのままついてくるか?と聞いたら返事をしてくれたので、ここまで連れてきました。ガルダンさん、契約魔物の登録をお願いしても宜しいでしょうか」
「あ…ああ、そうだったな。すまねェなカーバンクルの物珍しさに忘れてたぜ…」
「まぁ〜、それが当たり前の反応よねぇ〜。私も本当びっくりしたもんなぁ〜」
「私もです…。本当にリョウさんは不思議な方ですよ」
「ちょっと待ってろ、確かァ…この辺りに…」
 ガルダンがガサゴソと辺りを探って一枚の紙を取り出した。その紙は一見普通の物に見えるが…きっとファンタジー世界だ。何か魔法がかかっているに違いない。
「これだこれ…、契約魔物にする為のスクロールだ。注意事項とかが書いてあるからよく読んでから下にサインしてくれや。本当だったら契約魔法が使えるヤツがやるんだけどよォ、生憎アリシアにはいねェからなァ…」
 ボヤきながら、ガルダンは俺に契約魔物用のスクロールを渡してくる。記載されている内容は次の通りだった。


 1.契約魔物が他人に危害や損害を及ぼした場合、それは契約魔物の主人へ罰が与えられる
 2.契約魔物に危害が加えられた場合、主人は防衛の為に危害を加えた者に対し攻撃をしても良い
 3.契約魔物は国に守られる代わりに税が課せられる。その税を支払わずにいた場合、契約魔物としては扱われなくなる。
 4.契約料として銀貨1枚を支払う。


 以上の4点だった。
 国に守られるっていう点がよく分からないな。契約魔物には手を出してはいけないっていう事だろうか?契約魔物を攫うと、犯罪になるっていうことだろうか。ガルダンに聞いてみよう。
「ガルダンさんこの、国に守られるっていうのは…?」
「ああ、そりゃァ契約魔物も人と同じく扱われるって事だなァ。攫ったり、襲ったりした場合犯罪扱いになるってことだ」
 その認識でいいんだな。よし、じゃあ名前を書いちゃおう。
「終わりました」
「そんじゃァ、紙に手ェ置いて“契約コントラクト”つって、カーバンクルの名前を呼べば終了だ」
「わかりました!」
 ガルダンの指示通り、紙に手を置き
「“契約”キュア」
「キュイ!」
 自分の名前を呼ばれ返事をするキュア。紙に幾分かの魔力を吸収される様な感覚に陥ったあと、キュアが光に包まれる。急な出来事にガルダンを見るが、大丈夫だと一つ頷き返してきたのでそのまま、光が消えるのを待つ。
 光が徐々に無くなっていき、待つ事10秒程。
完全に無くなった光から出てきたキュアの首元には、首輪の様なものがつけられていた。
「これで終わりだなァ…。リョウ分かってるとは思うがよォ…」
 言いづらそうに、ガルダンは頭をかきながら言ってくる。まぁおおよそ言いたいことは分かってる。「はい。キュアはかなり珍しい魔獣ですから、極力人目につかない様にします」
「悪いなァ…。なんかあったら頼ってこいよォ!」
 ガルダンはそう言う。何か困ったことがあった時は真っ先に相談しよう。


 感謝の言葉を述べながら、俺たちは頂いたお茶を飲み干し、詰所を後にした。

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