異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

キュアのキュア〜クエスト終了〜

「──ッァあぁッ」
 声にならない声が、俺の口から発せられる。
脚から伝わる痛みが、全身に感じられる。
これが所謂…死ぬほど痛いというやつなのだろうか。
「キュイッキュ…?キュッ、キュ!!キュイキュッキュキュイ!!」
「どけぇぇええええ!」
 俺のローブの中に入っていたキュアが、俺の様子を見てあたふたとしている中、リーシャの声が聞こえてきた。
 同時に、ガルーダが羽ばたく音が聞こえその音は遠ざかっていく。
「リョウ!?大丈夫っ!?」
「ぁがッ…あ…あ、ほね…折れて…る…」
「リョウさんっ!」
 ガルーダに向けてファイヤーアローを放ったアリアも、俺の元へと駆け寄ってきてくれた。
ただ、ガルーダは大丈夫なのだろうか。
「キュイッ…、キュ…」
 近くで慌てふためいていたキュアが、俺のすぐ側へとやってきて、ゆっくりと目を閉じた。
 キュアのいる場所に緑色のパーティクルが現れ、毛がふわふわと風に揺られているかのように揺れている。そして、額に埋め込まれている赤い宝石が色を変え、緑色へと変色した。
「キュア、キュ」
 そう小さくキュアが呟くと、俺の身体が緑色の光に包まれる。
パーティクルが俺の足へとくっつくと、俺の足へと吸収されていく。
 すると、先ほどまでの痛みが嘘のように無くなり、折れた骨すらもくっつき…俺は立ち上がることができた。
「キュ…キュイ…キュ…」
 キュアは魔力をかなり消費したのだろうか、かなり疲弊している。
「キュア、ごめんな…。ありがとう」
「キュッ…キュア」
 弱々しく優しげな表情を浮かべたキュアを抱きしめ、優しく撫でる。
そのまま肩へと乗せた後、二人にむかって俺は言う。
「お二人とも、ご心配おかけしました…。油断してました」
「良かったぁ…。キュアちゃんに感謝しなさいよぉ〜…」
「良かったですリョウさん…本当に…」
 二人とも心底安心した様子でいてくれる。残りの感謝の言葉と謝罪の言葉は、ガルーダを討伐してからでいいだろう。
「ありがとうございます…。まずは残り2体のガルーダを倒しちゃいましょう。一度マテバに魔力を注ぎたいのでお二人に注意を引きつけて頂きたいのですが…」
「大丈夫だよぉ〜!準備ができたら声かけてねぇ!」
「お任せ下さい!とりあえず…“風の精よ術者アリアが命ずる彼の者達に風の守りをプロテクション”!」
 もう一度、プロテクションをかけてもらい準備をする。


 俺は、装着をし忘れていた魔力増加の指輪をはめてマテバに魔力を流し込む。
先ほどは途中でガルーダに襲われた為全てを補充しきれていなかった。その分を今補充しきってしまう。
 魔力増加の指輪をつけた途端、自分の力が強くなるようなそんな感覚がする。そのまま強くなった分の魔力をマテバに補充していると、先ほど補充した時よりも、多くの魔力がマテバに吸収されて行く。魔力を数値化するのであれば、先ほどまでは50と言ったところだが、今は100程…だろうか。
 そこまで注入をし、マテバに魔力が注がれなくなるタイミングに合わせガルーダが俺たちに向かって襲いかかってくる。
 1体目と同様に突っ込んでくるだけだろうと思っていると、ガルーダは翼を大きく広げそのまま風を仰ぐように翼を動かした。
「ガルーダの風魔法、来ます!その後突進がくると思いますので気をつけてくださいっ!」
 大きく動かされた翼からは、ウィンドスラッシュに似た風の刃がいくつも飛んでくる。
飛ばされたそれは、俺とリーシャに向けて放たれており、プロテクションに当たり金属音の様な音を立て消えていく。プロテクションも風の刃を受けて崩れていった。その機会を逃さずにガルーダは俺に向かって急降下してくる。
 再度突進を仕掛ける気だろう。
「リョウ!狙われてるよ!」
「分かった!マテバも準備できてる!」


 リーシャが声をかけ、マテバを構えようとして違和感に気付く。
先ほどまでシリンダー(マグナムの弾を込める為の物)が6つしかなかったそれが、10個に増え、マテバのサイズが一回り大きくなり、銃口も少し大きくなっていた。
(なんだこれ…?10発装填できてる…っていう事なのか?)
 心の中で不思議に思いながらも、マテバを急降下してくるガルーダに向け──
「さっきはどーも!“魔弾マジックバレット”」
 トリガーを引き、魔弾がガルーダに向け発射されたが…魔弾の様子がおかしい。
 青く淡い光を持っていた魔弾の色が、赤く淡い光へと変わり弾自体が2倍ほどに大きくなっている。スピードもほぼ実銃と変わらない程の速度に変わり、ガルーダは避けきれず真正面から魔弾を受けた。
 顔へと着弾した魔弾はそのままガルーダの身体までもを貫通させ、上空数十メートル先まで行きそこまで行ってやっと消えた。
 急降下中だったガルーダは、空中で命を落とし重力に逆らい地面に叩きつけられた。
 明らかに魔弾の威力が上がっている。
スピードも、弾数も…だ。魔力の注ぐ量によって変わっていくのだろうか?
ここら辺は…要検証だ。落ち着いてからやろう…って、落ち着いてからやることが多すぎるな。


 落ちて来たガルーダを確かめると、眉間のあたりから入り、尾羽の方で抜けていった様な痕が見られた。
 このガルーダは魔石を運良く貫通したらしく、1発で仕留められたようだ。魔石を確認したら真ん中に穴が開いていた。
「また随分と強くなったねぇ〜?それは本当になんなんだろうねぇ?」
「形や大きさも変わってる様に見えますが…?」
「僕も全然分かってないですけどね…。大きさも形も、威力もスピードも格段に上がってます。ただ、先ほど魔力増加の指輪をして魔力を注いだところ、いつもより多く入っていくのがわかりましたので…一定の魔力量に応じて変わっていくのかもしれません」
「じゃあさぁ!アリアこのクエストが終わったら魔力込めてみようよぉ〜!」
「ええっ…?」
「あ…確かにいいかもしれないな…。アリアさん申し訳ないんですが、一度試してみて頂いてもよろしいでしょうか?」
「えっと…宜しいのですか?大事な物なんじゃ…」
 さっきのええっ、って言うのは申し訳ないからって言う意味だったか。
俺の持ってるものなんて触りたくないよって言う意味の方かと思って少ししょげてしまった。
「勿論ですよ。アリアさんでしたら雑に扱うことも無いと思いますので。此方からお願いします」「わ、私なんかで宜しければ…」
 少し顔が赤くなっているアリア。
純粋なアリアの事だからな。人のものとかは大事にしてくれそうだし…、むしろ綺麗にして返すぐらいの勢いだ。
 …そろそろ、次のガルーダ討伐に向かうか。
二人に、声をかけ最後の1体を討伐しに向かう。


「リョウ今だよぉ〜!」
「はいよ!“魔弾”!」
 地上で勢いを落としているガルーダに向け、魔弾を3発程お見舞いしてやる。
赤い光を帯びた弾丸が、右翼、左翼、そして頭部へと飛んでいきそれぞれに風穴を開けた。
 怯んでいるすきに、一気に距離を詰める。
その間も2発ほど魔弾を撃ち、牽制をし攻撃する隙を作らせないようにする。
 10発になった事で少し無理をすることが可能になったので、これでかなり戦略が広がった。
騒ぎ立てるガルーダの懐まで詰めたところで、マテバをガルーダの顎元に突きつけ───
「“魔弾”」
 顎を突き抜け、脳を撃ち抜かれたガルーダはその巨体を、地面へと叩きつけるのだった。


「骨折った時は、本当に終わったと思いましたよ…、元いた世界じゃあんなことありませんでしたから」
「いったいよねぇ〜…、前衛してるから経験することも多いんだけどさぁ〜」
「私は後ろで援護しかしてませんので…、そういった大きな怪我はしたことありませんが、とても痛そうです」
「本当に死ぬかと思いました…そのぐらい痛かったですよ。キュアが居てくれて助かりました。ありがとな、キュア」
 痛みを想像したのかアリアが青い顔になってしまった。出来れば二度と経験したく無い痛みだったけど…これから先も怪我はするだろうからなぁ…覚悟しておかなければ。ただ、一度経験した痛みってなんとなくこのぐらいかな?って考えられるから少しはマシになるんだよな。突き指的な。
「キュイ!キュッキュ〜」
 感謝された事が嬉しかったのか、元気な返事をするキュア。
 先ほど、俺が持っていた魔力回復ポーションを少し分けたおかげか疲労が回復した様子のキュアは、撫でて撫でて!と言うように身体を擦り付けてくる。
 優しく感謝を込めながら撫でてやると、気持ちよさそうに目を細め甘えた声をあげた。
本当に猫とか犬みたいだ。クエスト報告をすれば時間も作れるだろうから…そうしたら、キュアと沢山遊んでやろう。


 ガルーダの討伐証である、嘴と素材である尾羽、魔石を回収し、食用として人気が高いと言うガルーダの肉もいっしょに持っていくことにする。
 どんな味がするのか今から楽しみだ。焼いて食べてもいいらしいが、宿屋に持って行って出してもらおう。
「さて…。色々ありましたが、無事討伐も終了しましたので、アリシアに帰りましょう!」
 二人とキュアが元気な返事をくれた。
 帰り道の途中で、森にしか採取出来ない木の実や果実、薬草等を回収してアリシアへと向かった。
俺の異世界生活二日目にして、二度目のクエストが終了した。


 ……そう言えば、小精霊に会えなかったな。また今度こよう。

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