異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

悲痛な叫び〜ガルーダを添えて〜

 更に奥へと進み、ようやく”ガルーダの巣“と呼ばれた場所まで来ることができた。
目の前に広がるのは、森の中にあるちょっとした平原のようだ。
開けたこの場所には、アリアが先程言っていたブイブと呼ばれる7、8メートルはありそうな巨大な木が点々と伸びている。
 上を見ると、雲ひとつない青一色の空に、大型の鳥が何匹か飛んでいた。
多分、こいつらがガルーダだろうと俺は予測する。
ただ、あれだけ上空にいるとどうやって戦闘をすればいいのか分からないな。
魔弾を撃っても良いが…当たるかどうか不安が残る所だ。
「あれがガルーダです。…それでこのままじゃ戦えませんので、近くのブイブの木に近付きます。するとガルーダはブイブの木の一番上にある卵を守るために、ここまで降りてきますのでそこを狙って討伐するようになりますね」
 色々考えていると、アリアが隣で助言をくれた。
成る程。あの木の上には卵があるのか。
卵を囮…というと言葉が悪いが、囮としてガルーダを呼び出しそこを討伐する。
何とかなりそうだ。


「ガルーダは風のスキルや耐性を持ってますので、そちらに注意してください。後は…」
「後はぁ〜、ガルーダの爪と嘴には気をつけてねぇ。アレは剣なんかと同じでかなりの鋭さだからさぁ〜」
 先程、説明を横取りされたからだろうか、リーシャが途中で説明を引き継いだ。
してやったり顔のリーシャをアリアが小突き、リーシャは歯を見せながら笑っている。
「わかりました。ガルーダは3体討伐になってますので…。じゃあアリアさん、リーシャ、キュア。宜しくお願いします!」
「頑張りましょう!」
「りょお〜かい!」
「キュイ!」
 3人が返事をしたと同時に、俺はマテバを強く握る。
同時に、身体から力が抜ける感覚がやってくる。
10秒ほどその状態が続き、それ以上力が抜ける感覚が無いのを確認してから魔力回復のポーションを飲み干す。
 アリアから聞いた所だと、十中八九それは魔力だろうとの事だったのだ。
小瓶に入った甘酸っぱいを液体を飲み干すと、抜けていった力が戻る感覚がする。
アリアの言う通りだった。


 飲み終えた小瓶を鞄に戻し、ブイブの木へと近づいていく。
リーシャが前、俺が真ん中、アリアは後ろでそれぞれが武器を持ちながら、少しずつ近づく。
 残り1メートル。バクバクと高鳴る心臓をおちつけるように深呼吸をし、ブイブの木との距離が30センチメートルほどになった時だった。


「キュルルルルルゥ!」
「ピュルゥゥゥゥ!」
 キュアの警戒音と共に、ガルーダの鳴き声が上空から聞こえてくる。
それに合わせ、俺たちは迎撃態勢に移る。
 大きな鷹の様な魔物───ガルーダが空を切りながら、此方へとものすごい勢いで来ている。
「初手は勢いを乗せた突進で来ると思います!ですので…“風の精よ術者アリアが命ずる彼の者達に風の守りをプロテクション”」
 アリアが詠唱を終えると、俺とリーシャの前に薄い風の壁の様なものが出現する。
「一度目の攻撃はそれで防げます!ガルーダは突進をした後、勢を殺すため地上に足をつけますので、その隙を狙って下さい!」
「はぁ〜い!」
「わかりました!ありがとうございますアリアさん!」
 そこまで言うと、ガルーダはもう目の前まで迫っていた。
「ピュイィィィ!!」
 大きな鳴き声と共に、鋭く尖った爪を俺たちに向けながら突進をし、その爪が俺たちを引き裂こうとしたが、アリアが展開したプロテクションに弾かれた。
プロテクションは破片となり崩れていき、ガルーダはアリアが先程言った通り、地上に足をつけ、そのまま土をえぐりながら勢を殺している。


 此方に背を向けている状態のガルーダ、その右翼の付け根に標準を合わせ
「“魔弾マジックバレット”!」
 青い光を持つ銃弾を発砲する。
焦りからか、狙った場所ではなかったが右翼に風穴を開ける。
「最初から飛ばすよぉ〜!”腕力強化ストレングス”!“脚力強化アジリティ”!」
 リーシャは自身を強化し、レイピアを構えた…と思ったらいつのまにかガルーダの背中の方まで移動していた。瞬間移動かよ。
リーシャがいた場所は、地面が軽くえぐれていてリーシャの速度の速さを物語っていた。
「じゃあついでにこれもぉ〜“刺突ピアシング”!」
 リーシャのレイピアが赤色の光を帯び、鋭い突きが放たれる。
 あまりの早さに視覚情報が追いつかずに、気がついた時にはガルーダの背中にリーシャのレイピアが突き刺さり、血が流れる。
「リョウ〜!左翼も撃ってぇ!」
 リーシャの姿に圧倒されていた俺は、急いでマテバの照準を左翼に合わせ、魔弾を放つ。
今度も付け根部分を狙ったのだが、少し左にずれ翼に穴を開けた。
「ありがとぉ〜!アリアぁ〜!」
「わかった!避けてねリーシャ!“燃え盛る炎の球 ファイヤーボール”!」
「“跳躍強化リープ”!」
 アリアの前から放たれた三つの火球はガルーダへと一直線に向かっていく。
火球がぶつかる直前で、リーシャは跳躍強化を行い、レイピアを抜きつつ上に飛んだ。
「ピュイィイイイッッ!」
 背中の毛や肉が焼かれ、叫び声をあげているガルーダは翼を大きく広げもう一度上空へと飛び立とうとするが───翼には風穴が空いているためにうまく飛べずに走り回っている。


 チャンスだ。


 マテバを構えながら、ガルーダとの距離を詰める。
側面から近づき、ガルーダの顔へと照準を合わせマテバのトリガーを引く。
魔弾がガルーダの目に命中し、そのまま貫通した。
目を貫通した弾が脳まで届いたのか、もう一度大きな叫び声をあげたガルーダはそのまま地へと伏せた。


 ガルーダの生死を確かめた後、次の戦闘のためにマテバに魔力を補充していると
「リョウ!!後ろ!!」
 リーシャにしては珍しい、間延びがない声が響く。
俺はとっさにローブで身を守る様にし防御の態勢に入った。
「キュルルルルルゥ!キュイッ」
 キュアの警告がなった直後だった。
 身体に強い衝撃が走り、いた場所から吹き飛ばされ、地面をバウンドする。
ローブで守られていない脚が地面に当たるたびに切り傷を作っていき、かなり痛い。
自動車に跳ねられたらこんな感じなんだろうか。
そのまま十メートルほど転がり、やっと止まった。
ギャグ漫画の様にバウンドしたせいで、身体中が痛い。
 しかしローブで守られていたところは、そこまでの痛みを感じなかった。やはりこの黒ローブは相当のものだよゲインさん。
 ただ、守られていなかった脚を恐る恐る見てみると、深く擦りむいたのか、あちこちが血だらけになっていた。その状態を視覚でとらえることにより、脳へ痛いという信号が更に強められてしまった。
 めちゃくちゃ痛い…が、なんとか立てそうだ。


 地に手をつき、身体を起こそうとした時、伸びていた脚になにかが掴まった。
そして、何かはそのまま俺の脚を破壊するように力を込めていく。
「ああぁああああぁあああッッ!がああッ!」
 今まで生きて来た中で経験したことない痛みが俺を襲い、あまりの痛さに叫び声が出てしまう。
痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い…。
 ミシミシと、骨が軋む音とが聞こえた後だった。
  
 ───バキッ。


 嫌な音が俺の耳へと入ってきた。



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