異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

ガルーダの巣へ向かう道〜障害を添えて〜

 森の奥地の別れ道まで俺たちは向かい、ガルーダの巣へと行く為別れ道を左に曲がった。
カコの実の場所まで何にもなかったこともあり、このまま簡単に着くだろうと思っていたが、流石にここから先はそうも言っていられなかった。
移動途中に、アリアやリーシャから言われたのだが、別れ道を左に曲がると魔物が多くなるらしい。


 ───そしてその言葉は嘘でもなんでもなく、本当の言葉だったことが現在進行で分かっている。
「“燃え盛る炎の矢 ファイヤーアロー”」
 詠唱を終えると、アリアの前方に火の矢が出現しそのまま真っすぐ標的である───”巨大蟻ジャイアントアント“へと穿つ。
ファイヤーアローは巨大蟻にぶつかった瞬間に燃え上がり、巨大蟻を火だるまにしていく。
 ギィギィと呻き声をあげながら巨大蟻は反撃をすべく、口から酸を撒き散らす。
撒き散らされた酸は、かなり強力な酸のようであったものが全て溶けていく。当たったらひとたまりもなさそうだが…当たらなければどうと言うことはない。
 その間、リーシャは酸を避けながら巨大蟻の足元へと距離を詰めレイピアで左脚の節を狙い定めて
「“腕力強化ストレングス”!せい、やぁああ!」
 腕力強化を唱えた後、掛け声と共に節目掛けてレイピアを突き刺す。
6本ある内の1本の足が節から下を無くしバランスを崩して体重を支えきれなくなったのか、右側へと倒れた。
 それを機に、俺はマテバを取り出し、左側にあるもう一本の脚に照準を合わせ
「“魔弾マジックバレット“!」
 魔弾を撃った。
 寸分の狂いも無く巨大蟻の脚へとヒットした魔弾は、そのまま脚をつきぬけ巨大蟻の腹部を抉った。腹部からは緑色の体液が吹き出し、巨大蟻は叫び声をあげている。
 合計二本の脚を失った巨大蟻は起き上がることが出来ず、地面で足掻き、顔だけを此方へと向け酸を撒き散らしている。
「リーシャ!リョウさん!今がチャンスです仕留めましょう! ”凍てつく氷の矢アイスアロー”!」
 アリアが放った氷の矢が巨大蟻の頭部に当たり、騒ぎ、酸を撒き散らしていた顔を凍らせる。
声に合わせ俺も巨大蟻の頭部へと照準を狙い、魔弾を放つ。
凍った巨大蟻の顔に魔弾サイズの穴をあけたが、それでもまだ巨大蟻は倒しきれていない。
「“跳躍強化リープ”!危ないから離れてねぇ〜!」
 跳躍強化と言う新しいスキルを唱えたリーシャは、人の身では叶わない程高く飛び、巨大蟻の真上で止まる。
そのままリーシャは重力に従って落下をはじめ、レイピアを巨大蟻の頭部へと向けた。
「よ〜いしょぉおおおおお!」
 可愛らしい掛け声とはかけ離れた威力を持った、リーシャの落下攻撃は的確に巨大蟻の頭部を捉え、深く突き刺さった。
凍って脆くなっていた首は、リーシャの攻撃で胴体と離れ、巨大蟻は命を断った。
  
「巨大蟻が出てくるのなんて珍しいねぇ〜…、久しぶりに戦ったよぉ!」
「確かに…、いつ振りかな?前よりも楽に倒せたよね。私たちも経験積んできたのもあるでしょうけど…リョウさんも居るからですね。ありがとうございます」
「いえいえ…、それにしてもあの酸はかなり厄介ですね。防具にあたったら溶け出しそうです」
「そうだよぉ〜、私なんて初めて戦った時防具ぜぇ〜んぶ溶かされちゃったもの」
 巨大蟻の素材である顎と魔石を取り出しながら、二人と話す。
先程の戦いでは危ないからと離れさせていたキュアも今は一緒にいる。
3人で戦うとかなり優位に立てるもんなんだな。ソロ狩りよりも複数、パーティーで組んだ方がやっぱりいいのだろうか?
このクエストを終了させたら、一晩ゆっくり宿で考えてみることにしよう。
 巨大蟻の顎と魔石をバッグの中に詰め終わり、先に進もうとすると──


「キュルルルルルルゥ!』
 突然キュアが低く唸った。
これは先程巨大蟻が登場する前にも見た光景だ。
どうやら、キュアは索敵のようなスキルを持っているようで、このうなり声がなったということは付近にまだ魔物がいるのだろう。
「アリアさん、リーシャ!まだ魔物がいるようです!」
 二人に声をかけると、アリアは後ろに下がり杖を構え、リーシャは前に出てレイピアを構え警戒態勢になる。
 キュアが向いている方向にマテバの照準を合わせ、出てくる魔物を待つ。


 数秒待ってみるが何も来ない。
しかし、キュアは先程よりも大きな声を上げて警戒をし続けている。
 数秒…数十秒たつがその魔物は姿を現さない。
不審に思ったリーシャが、キュアが鳴き声をあげるようにゆっくりと近づいて行く。
「……っ!?危ないリーシャ避けてっっ!」
「キュルゥ!!」
 後ろで警戒をしていたアリアがリーシャに向けて回避を促し、キュアが来た!と言うように声を上げるが、その声への反応が遅れ────道外れの草薮に入ろうとしていたリーシャの身体が横に飛んだ。
「がっ…!」
 飛んだ先に、大木がありそこにリーシャは打ち付けられ呻き声をあげた。
何が起こったか分からずに自分の身体が吹っ飛んでいったリーシャは、自分が先程までいた場所を睨みつけている。
俺もそれに習い、草薮付近を注視していると。
 草薮近くの木が何か様子がおかしい。
そこだけ、色が違うといえば分かるだろうか…明らかな違和感がそこにあった。
マテバを構え、違和感の場所に狙いを定め魔弾を放つ──残り3発。
 放たれた魔弾は違和感の元へと到達し、違和感の場所からは鮮血が飛び散る。
血が違和感全体を塗り、その姿がようやく視認できるようになった。


 元いた世界でも見たことがあり、それは擬態が得意だったことを思い出す。
ぎょろりとした目玉に、トカゲのような体躯…カメレオンだ。
「あれは…、“シャドウレオン“!リョウさん今のうちに仕留めてしまいましょう!隠れられてしまいます!」
「わかりました!キュア、危ないから離れてろ!”魔弾”!」
「キュ!?キュウ…キュイ」
 本日4発目の魔弾を放つ──残り2発だ。
しかし、シャドウレオンは魔弾の気配を察知したのか、木の上を登りそれを避ける。
 キュアは渋々といったように肩から降り、リーシャの方へと向かっていった。
怪我をしているであろう、リーシャのことも気にかかるがひとまずはキュアに任せよう。
「“切り裂く風の矢 ウィンドアロー!”」
 アリアが作り出した風の矢は、魔弾を避けたシャドウレオンへと向かって行くが、それすらも避けられる。


 ───が、ウィンドアローがシャドウレオンの横を通った際に、風の刃がシャドウレオンの身体を切り裂く。
傷の深さはそこまで深いものではないが、シャドウレオンは切り傷から出血し、身体を染めていった。
 すぐさまアリアは次の詠唱へと移り、俺は至近距離からシャドウレオンを仕留めるために、距離を詰めた。
リーシャのように身体強化が使えればいいのだが──、無い物ねだりしても仕方ない。
「“切り裂く風の刃 ウィンドスラッシュ!“」
 アリアが援護として次の魔法を発動してくれた。
シャドウレオンが居る木に、先程よりも大きく強い風の刃が出現し一帯を切り裂いていく。
草や枝は切り刻まれ、木には大きな傷をつけている。
シャドウレオンにもウィンドスラッシュは避けきれなかったようで、通常のカメレオンの3倍はあるだろう身体には剣で切られたかのような傷がいくつも出来ていた。


────チャンスだ。
 一気に距離を詰めて、シャドウレオンとの距離が1mほどのところまで近づき、頭へと照準を合わせ魔弾を放つ───残り1発。
 シャドウレオンは姿を隠そうと透明化の様になっていたが、その前に魔弾が頭へ直撃し、捕まっていた木から地面へと落ちていった。


 シャドウレオンの死体をきちんと確認してから、すぐさまリーシャの元へと急ぐ。
先程かなりの勢いで木にぶつかっていたので、怪我をしているはずだ。
 アリアも俺に続いてリーシャの元へと駆け寄るが───


「キュアちゃぁあん〜!優しいんだからもぉ〜、ぎゅーしてあげるほらほらぁ〜!」
「キュアァァァ!キュッ?キュッキュキュイ〜!」
 キュアのことを追いかけ回しながらなんとか抱こうと頑張っていたが、俺に気づいたキュアが一目散に俺の肩へと登ってきた。
 リーシャは怪我などしていなく、健康そのものだった。
「リーシャ!?思いっきり木に当たってたけど…怪我とかはないの?」
 アリアは心配そうにリーシャに問いかけたが、リーシャは軽い口調で
「めっちゃ痛かったし、多分骨が折れてたんじゃないかなぁ…」
 骨が折れてたらそんなに元気でいられないと思うのだが…
骨が折れたという言葉を聞き、取り乱したアリアが回復魔法を唱えようとするが、リーシャはそれを手で制する。
「大丈夫だってぇ〜、今はもう完全に治っちゃったから!キュアちゃんが治してくれたんだよぉ〜、ね?キュアちゃぁん」
 リーシャがそういうと、俺とアリアの視線がキュアの方へと移動する。
「キュイ?」
「キュアが、リーシャのことを治してくれたのか?」
 不思議そうに首をかしげるキュアに聞いてみると、キュアは明るい表情を浮かべた。
「キュッキュイ!キュルキュイキュッキュア!」
 そうだよ!褒めて褒めてぇ〜と言わんばかりに、顔を俺の頬へと擦り付けてくる。
そんなキュアの頭を撫でてやりながら、アリアの方へと視線を移すと、唖然とした表情をしていた。
「す、凄いね…キュアちゃん。と、とりあえず…リーシャは大丈夫なのね…?」
「へーきだよぉ〜。さっさとシャドウレオンの素材取っちゃって、ガルーダのとこに向かおうよ〜」
 あっけらんと言うリーシャに、アリアは少しため息をついた。


 いや、気持ちはわからないでもない。
本当にキュアはなんなのだろうか。急に俺の元へと現れ、索敵や回復といったスキルまで持ち合わせている。
他のカーバンクルがどんな魔獣なのかなど検討もつかないが、全部のカーバンクルがこうなのだろうか?
 肩の上で俺に撫でられているキュアを見つめながらそう考えていると、視線に気づいたのか不思議そうな表情を浮かべ、キュイ?と鳴いてくるキュア。
 ま…いいか。こんなに可愛いんだしな。可愛いは正義だ。難しいことは考えない様にしよう。キュアはキュアだ。頼もしい仲間なんだからな。
 顎の下を撫でてやり満足げにしているキュアを見ながら、そう思う。
2体の魔物に道を憚られてしまったが、ガルーダの巣はもうすぐだ。
 俺たちは、シャドウレオンの皮と眼球、魔石を回収し、道なりに進んでいくのだった。



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