異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

新しい仲間〜名前を添えて〜

「キュイ…?」
 名前を呼ばれてか、それに呼応するように鳴き声をあげるカーバンクル。小動物みたいでめちゃくちゃ可愛い。
「え…えと、驚かせてごめんな?」
 ひとまずカーバンクルを怯えさせないようにしゃがみ、先程急に近づいて来たせいで驚かせてしまったことを謝る。言葉が通じるかどうかなんてわからないが、気持ちは伝わるだろう。
「キュ?キィキュ!」
 良いよ!とでも言っているんだろうか、鳴き声をあげた後俺への方へと向かって来る。
「ありがと。どうしたの?」
 トコトコという効果音がぴったりな歩き方をしながらこちらに向かって来ている。
なんだろう。野良猫が声をかけたらついて来たみたいな時の嬉しさがある。
カーバンクルは俺の目の前まで来ると、口からなにかを出した後それをちょんちょんと前足で指差しをしていた。
 それをよく見てみると、先程まで俺が食べていたルコルの実だった。という事は…俺が持っていた実が全部なくなったのは、カーバングルがいつの間にか食べていたからなのか。
 全く気づかなかったなぁ、隠れるスキルでも使ったのだろうか?
「キュイ!キュッキュッ、キュイキュ、キュッキュッキュッ。キュキュゥゥゥ!キュウ……」
 ルコルの実を差した後、自分の口を指差し、もぐもぐというモーションを起こし、俺を指差し、毛を逆だたせ怒った!という風にし、最後にずーん…という感じで意気消沈したカーバンクル
 なんだこの可愛い生き物。連れて帰りてぇ。


 伝えたいことがなんとなくわかったので、言葉にしてカーバンクルに聞いてみる事にした。
「んーっと…、ルコルの実を見て、おいしそーって思ったのかな?だから俺が持ってたルコルの実を取って食べた。でそれを知った俺がカーバンクルを怒った!反省してる…っていうことなのかな?」
「キュッキュイ!」
「そっかそっか。それなら大丈夫だよカーバンクル。俺は怒ってないよ?ただ他の人にやったら怒られちゃうかもしれないから気をつけるんだよ?わかった?」
 カーバンクルはこちらが言ってることがわかっているようなので、子供をあやすようにカーバンクルに話す。
「キュ!」
 了解しました!と言うように前足を額に当てビシッと敬礼をするカーバンクルの様子に、可笑しくなり思わず吹き出してしまった。
 それが気に障ってしまったのだろうか、カーバンクルは不機嫌そうな表情を浮かべ。
「キュゥゥキュイッ」
 低く唸った後、ぷいっと顔を背けてしまった。あまりにも可愛いその反応に、もう一度笑わないように気をつけながら、俺は両手を広げて
「ごめんごめん…、カーバンクル?おいで?」
 野良猫を相手にするように優しく呼びかけると、横目でチラチラッとこちらの様子を見た後
「…キューイ?」
 反省した?と言ってるかように鳴いて来たので、反省したよごめんね?と伝えると、カーバンクルはひろげた両手に向かって飛び込んで来た。
「キュッキュィ!」
 鳴き声を上げながら、俺の胸元に顔をスリスリしてくるカーバンクルの毛を優しく撫でる。
 上質なシルクのような手触りに、ふわふわとした毛がとても気持ちいい…。猫や犬とは違った触り心地だ。ひとしきり身体を撫でた後に、首元を掻くように触ると気持ちいいのか、キュイィ…と甘えた鳴き声を発していた。


 数分ほど、カーバンクルと戯れていると足音が二つ近づいて来るのが聞こえて来た。
「リョウさん?どうかされましたか…、って。そ、それってカーバンクルじゃないですか!!」
「え、なになにぃ〜……カーバンクル!?」
 アリアとリーシャが俺が遅かったせいで道の方からこちらまで戻って来ていた。
 その二人は、カーバンクルの姿を見ると驚愕の声を上げた。
その声に驚き、竦んでしまったカーバンクルに小声で、大丈夫だよ、と伝えながら優しく身体を撫でる。
「しっ…、急に大きい声出すとこの子がビックリしちゃいますから」
「す、すみません…。で、でもカーバンクルなんて私初めて見たので…つい…」
「大声出すなっていう方が無理があるよねぇ〜…、カーバンクルなんて言い伝えか何かと思ってたよぉ〜…」
 先程より幾分か声を下げて話をするが、二人ともかなり動揺をしているようだった。
そんなに珍しいのか、と視線を下げカーバンクルを見つめると、キュイ?と不思議そうに此方を見ていた。
何でもないよと、頭を撫でると嬉しそうな表情を浮かべ、撫でている手に頭を擦り付けてくる。


 その様子を見ていたアリアが、あの…と、おずおずと言った感じで声を上げる。
「リョウさん、あの…出来れば私も触らせてもらえますか…?」
「あ、はい。とりあえず聞いてみますね」
「私も私もぉ〜!」
 二人とも、俺が抱きしめて撫でているのが羨ましかったのだろうかそのように言って来たのでカーバンクルに聞いてみる。
「カーバンクル。この二人が撫でたいっていうんだけど大丈夫かい?」
「キュ?キュルゥ……………キュ」
 かなり長い間を経て、了承の意を込めた頷きが出た。
その様子を見ていたアリアとリーシャが俺の横に立ちゆっくりと手を伸ばし、カーバンクルの綺麗な毛に触れた。
「ふわぁぁあ…、凄い…」
「なにこれぇ〜!めっちゃふかふかだぁ〜!」
 二人ともどうやらご満悦のようだ。
 ただ、撫でられてる当のカーバンクルはあまり嬉しくなさそうな、微妙そうな顔をしていた。
撫で方が悪いのだろうか。こっちの世界じゃ愛玩動物なんていないんだろうしな。
「リョウ〜、私も抱っこしたいんだけど!」
 とリーシャが言うので、そちらに向けてカーバンクルを差し出そうとするが、カーバンクルは四肢を使って俺から離れないようにがっしりとホールドしていた。
 カーバンクルをみると、不貞腐れたような表情を浮かべたまま、そっぽを向いている。
その行動に苦笑を浮かべながら、リーシャに伝える。
「残念だな、リーシャ。抱くには好感度が足りないみたいだ」
「えぇ〜!リョウは良くて、私はダメなのぉ〜?」
 ガクンと項垂れるリーシャをチラッとみたカーバンクルは、前足をリーシャの頭へとのせ撫で撫でするように前足を動かした。
 唐突に頭に置かれた前足に、びっくりしながらもその正体を確認したリーシャはにこやかに笑った。
「慰めてくれてるのぉ〜?ありがとぉ…、じゃあ抱かせて!」
「キュイッ!」
 それはダメ!とカーバンクルはそっぽを向き、また俺の身体につかまった。
 リーシャがカーバンクルを抱くにはまだまだ時間がかかりそうだ。


 そんな一幕の後、アリアが口を開いた。
「その子…どうしましょうか?」
「どうするって言うと…?」
 まさか、魔獣は街に連れていけないとかなんじゃ…
「かなりリョウさんに懐いているご様子ですし…そのまま“契約コントラクト魔物モンスター”として登録するのは如何でしょうか?何が条件なのかはわかりませんが…テイムに成功しているようなので、すんなり行くと思います」
「じゃあカーバンクルを街に連れて帰れるんですか?」
「はい。…ただカーバンクルを連れたテイマー…えっと契約魔物を連れた人の呼称ですね。そのテイマーは見たこともありませんので、周囲から目をつけられるかもしれません」
「そう…ですか」


 アリアとリーシャがあそこまで驚く程に珍しい魔獣だ。攫って解体しよう…等と考える輩もいるかもしれないからな…。
 そこまで考えてると、下からくいくい、っと引っ張られる。
視線を下に落とすと、カーバンクルがこちらを見て何かを言いたげにしていた。
「…カーバンクル。もしお前がよければ俺と一緒に行かないか?」
 そう言うと、カーバンクルは嬉々とした表情を浮かべ
「キュルゥ!キュイキュッキュ!」
 うん!行きたい!とでも言うように鳴き声をあげた。カーバンクルを撫でながら俺はアリアに視線をもどし尋ねた。
「アリアさん、その契約魔物にするに当たって重要な事などあったら教えて貰えますか?」
 ある程度の事が先にわかっていれば、対処のしようもあるからな。
ただ、アリアは少し表情を曇らせ困ったように言った。
「すいません…、私もそこまで詳しくないので…。ただ、契約魔物の登録であれば街の門付近にある詰所の中で行なっていると、聞いたことがあります」
 アリアでも詳しくはわからないか…。ただ場所がわかれば今はそれでいいか。詳しくは詰所で聞いてみよう。
「無理言って申し訳ございません…。ありがとうございますアリアさん」
 アリアに謝罪をし、笑顔でお礼を言う。
お力になれずすいません…と謝るアリアに、いえいえ、と返す。


 そこから気持ちを切り替え、クエストに向かおうと言う旨を二人に話す。
二人は、頷きついでにカーバンクルも頷いてくれた。
可愛かったのでもう一度頭を撫でると、そのままシュルシュルと器用に俺の身体を登り、肩の位置で止まり、キュル!と鳴き声をあげた。
その姿に3人で口元を綻ばせながら、先に進もうとする中リーシャがあ、そう言えばと口を開いた。
「その子の名前決めてあげたらぁ〜?カーバンクルって呼び続けるのも可哀想でしょぉ〜?」
「名前…名前か。そうだな」
 たしかに、これから先カーバンクルと一々呼ぶのも大変だしな。
しかし…名前か。あんまりこういうのは得意じゃないんだが…。
 考え込みながら肩にいるカーバンクルを見ると、これから名前を決めてもらうのが嬉しいのかキュルゥと、高い声で鳴き声をあげていた。
 シンプルで、かつ変じゃない名前…カーバ…カバじゃないか。バンク…なんか屈強な男のイメージになってしまう…。
その後もいくつか候補を出すが、なかなかしっくりくるのが来ない。アリアやリーシャも一緒になって名前を考えるが、結局決まったのは10分後の事だった。


「よし…と、じゃあ皆行こうか!」
「はぁ〜い!」
「はい。行きましょう!」
「キュイッ!」
 二人の声と、一匹の鳴き声が聞こえるのを確認し、森の奥地へと向かう。
「キュウ!キュッキュキィ!」
「ああ!改めて、宜しくな”キュア“!」
 楽しげに鳴くキュアの頭を撫でながら俺は歩いて行く。


 ───俺に新しい仲間が増えた。

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