異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

アリアとの夜会話〜1日を終えて〜

 アリアの家に着いた俺はリーシャをベッドに寝かせた後、アリアから寝具を貸してもらい
入り口付近に設置し、横になった。
そこで、少しばかり今日1日のことを振り返ってみる。


 この世界に来て、アリアとリーシャと共に冒険者ギルドへ。
初クエストを受注する事になったが…、ゴブリン退治というもの…、戦闘経験など無い俺が受けるには最初は重いぐらいのものだったな…、ただ今こうして終わってみれば中々得るものが多かったように感じる。


 リトルボアを討伐した後、洞窟を見つけ…ゴブリンとの対決。
かなり苦戦もしたが…マテバのお陰でなんとか助かった。


 その後の、洞窟内の探索、そしてゴブリンに…殺されてしまった人達の物資を貰い受け
アリシアへと戻ってきた。


 ギルドではじめてのクエスト達成と共に、一気にDランクまであげてもらえるという何とも良い話。ただ、これから5日間の間に一度でもDランクのクエストを完了させる…という条件付きだが、アリアとリーシャと共にであれば、なんの問題もなくクリアできるだろう。


 クエスト報酬を貰い、3人でクエスト完了とパーティ結成のお祝い。 初めての酒は異世界で飲むエールだった。


 思えば…なんとも怒涛な1日だった…。
と、同時に濃い1日だった。
こんなにも早く1日が終わるのはいつぶりのことだろうか…
…親父を待たせてるのもあり…出来れば現実世界には戻りたいとは思う。
 しかし、この世界であれば俺は強くなれるはずだ。
この世界で、強くなり誰かを守るぐらいの力をつけてからでも…戻るのは遅くない。…いや遅いと思うけど…。
親父や妹、アイツらには悪いが…あっちのことは忘れて、今はこの世界で生きていこう。


 今日あったことを振り返り終わると、眠気が一気に来る。
もともと疲れていた身体だ、ゆっくり休もう。
 そう思い、瞼をゆっくりと閉じようとすると
「リョウさん、起きて…ますか?」
 アリアが、ベッドの上から俺に話しかけて来る。
「はい、起きてますよアリアさん」
 閉じかけた瞼を開き、ベッドの方に視線を送る。テーブルと椅子の間から離れたベッドで横になっているアリアが見える。
 アリアも、こちらを見ていた。


「今日は、お疲れ様でした。色々と大変でしたよね…」
「ありがとうございます。…そうですね、大変でした。右も左もわからないまま此処に来て…初めて魔物を討伐して…、元いた世界じゃ考えられない事ばかり経験していますよ」
「ふふ…、リョウさんは凄いですよ。初めて使ったと言っていた弓もうまく使えて…そしてあの“えあがん”弓の時もそれは勿論びっくりしましたが…“えあがん”を持ったリョウさんは、別人のような動きをしていました」
「そうでしょうか?そう言っていただけると幸いですが…、弓は元いた世界で似たようなものがありましたし…コイツは僕がずっと使い続けてきた物で…僕が唯一誇れるものですからね」
 近くに置いてあるマテバを手元に引き寄せ、俺はアリアにそう言う。


「…リョウさんは元の世界に戻ってしまうのでしょうか?」
「え?」
 アリアは、奇しくも俺が先程まで考えていたことを言葉にしていた。
「そう…ですね。戻れるのであれば戻りたい思っています…」
「…そうですか」
「ただ──、僕はこの世界で強くなろうと思います。強くなって…誰かを守れるぐらいの力をつけるまでは…、この世界に居たいと考えていますよ。それに…本当に帰れるかどうかもわかりませんしね」
「本当ですか?」
 そう言うアリアの声は少し弾んでいるように感じた。
「はい、本当ですよアリアさん。ですから…それまでの間宜しくお願いしますね?」
「こちらこそ…、よろしくお願いします。リョウさん」


 そう言い終わると、家の中にリーシャの寝息のみが聞こえるだけとなった。
数秒間それが続き、俺は口を開いた。


「…寝ましょうか、アリアさん」
「はい。リョウさん」
「では…、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
 そうして、俺は瞼を閉じ眠りにつく


数分後…家の中には3つの寝息が聞こえていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品