異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

昇格とブロンズカード〜宴を添えて〜

「よおォ!早かったなァ!…ってなんだぁその荷物はよォ?」
 アリシアに戻ってきた俺たちに、ガルダンは厳つい顔をさせながら陽気に話しかけて来る。
既にギルドカードも提示しており、後は街に入るだけだ。
「ゴブリンの洞窟にこれだけの量の物がありまして…荷車もそこで入手しました」
「だぁいぶ好き勝手やってくれてたみてぇだなァ…、衛兵として例をいうぜ。ありがとよォ」
「リョウってば気前良くてさぁ〜、売った金額3人で分けるっていってんだよぉ〜?私たち何てひとっつも戦ってないのにねぇ〜?」
「そりゃぁ景気のいいこったなァ?こりゃ本当に近々奢ってもらわねぇとな!」
 ガハハと大きな声を上げ、俺の背中をバシバシ叩く。
「はは…、もう少し余裕が出ましたら是非ご馳走させて下さいね」
 社交辞令でも何でもなく、ガルダンには世話になったみたいだからな…。恩は返さなきゃな。
「おうよォ!気長に待ってるぜェ! 急いでんだろぉ〜?早く行ってこい!」
「はい!またお声をかけさせてもらいますね!失礼します!」
  ガルダンとの会話を終え、ギルドに向かって荷車を押す。
  
「あぁ…、リョウ!」
「はい?」
 ガルダンが後ろから声をかけてきたので、後ろを振り返り返事をする。
ガシガシと頭をかきながら
「まぁ、なんだ…、お疲れさん!よく戻ってきてくれた!」
 気恥ずかしいのだろう、照れながらガルダンはそう言った。
こうして、心配してくれて、帰還を喜んでくれる人がいる。それだけで嬉しさで胸が一杯になる。その声に答えるように、俺もいっぱいの笑みを浮かべ─
「はい!」
 と答えるのだった。
  
「まさかこんなに早くクリアしてくる何て思いませんでしたよ…?」
  ギルドに入って、直ぐにルイの元に行った。扉から荷車を引いて入ってきたのでほかの冒険者から不振な目で見られている。
「ええ…僕もこんなに早くに終わるとは思いませんでした」
「しかもねぇ〜、ぜぇーんぶリョウ一人で討伐したんだからねぇ?」
「本当に凄かった…としか言いようがありませんよ」
  二人が俺を持ち上げてくるが、そんなに大層なものじゃない。現にゴブリン相手にダメージを受け、意識を飛ばして居たぐらいだ。


「ええ…少し、動揺してしまいましたが…。受付嬢としての仕事を果たさせて頂きます。討伐の証を提示して頂けますか?」
「はい、こちらになります」
 ゴブリン倉庫で見つけた布袋に詰め込んだ、ゴブリンの耳達を渡す。 布袋に詰め込んだせいで底が少し血で滲んでいて生々しい。
「ありがとうございます。では確認させて頂きますね」
  作られた完璧な笑みを浮かべ、ルイは布袋の中身を取り出し一つ一つ確認していく
ああ…ひとつだけいっておかなければ
「あの…ルイさん?」
「はい?なんでしょうか?」
「洞窟に居たゴブリンの中にですね…ゴブリンリーダーが1体だけいたんです」
「ゴブリンリーダーですか?」


  怪訝そうな顔を浮かべて、本当ですか?と顔で訴えるかのように言うルイだが
布袋の中を確認しているうちに、ゴブリンリーダーの耳が出てきたのだろう。驚きを隠せないような顔へと、表情を変化させた。
「…ゴブリンリーダーは通常Dランクの魔物です。こう言っては失礼になりますが…駆け出しの冒険者が倒せるようなものではないと…」
「ただぁ〜、私とアリアはリョウが倒すところをただ見てただけだよぉ〜?」
「何度か援護をさせて頂こうと思いましたが…すべて断られてしまいましたので…」
  二人の答えを聞きながら、俺をじっと見つめるルイ
その目に目線を合わせしっかりと見つめ返すが、人形のように整ったそれを数秒間程見つめていただけで、気恥ずかしさから視線をそらしてしまう。


「アリアとリーシャを信じましょう。ただFランクの冒険者がDランクのモンスターを討伐してくるのは中々ない事ですし、クエストのランクも少し上がると思います…。ギルド長と話をしてきますので少々お待ち下さい」
  ルイは一礼をし、受付から外れ受付後ろにある階段を登り姿を消す。
「凄いじゃんリョウ!なかなかない例だってさぁ〜?」
「迷惑かけちゃったかなぁ…、なんだか申し訳ないな」
「そんな事ありませんよ?誇ることはあっても、謝ることは無いと思います」
  笑顔でそう告げるアリアの言葉に慰められ、軽く頷きルイが戻ってくるのを待つ


 数分後ルイが階段から降り、受付に戻ってくる。ただ、その手には先程までは持っていなかった一枚の書類を手にしていた。
「お待たせしました。まず…今回のクエストですがクエストランクがFからDランクまで上がったものとされます。なのでリョウさんは通常受けられないランクのクエストを受けたことになります。しかし、今回は目撃情報と相違しており、ギルドでもそこを把握しきれていなかった…という点でクエストはリョウさんがクリアしたものとさせて頂きます」
 よし、と内心ガッツポーズをする。
ここまでして、全くの無駄足だった…とかシャレにならないしな
「更にですが…、リョウさんはFランクでは成し得ない実績を出しました。ギルド長と話をさせて頂き今回のクエストでギルド長推薦として、150ポイントのギルドポイントを付与、リョウさんのランクをDランクまで昇格させて頂くはこびとなりました」
  おおぉ…、一気に飛び級みたいなことになったな。そこまで厄介な敵だったのかゴブリンリーダーって言うのは。


「しかし…、中々ない例になりますのでリョウさんには明日から5日間の間でDランクのクエストを受けてもらい、Dランクとしてもう一度実力があるかどうかを確認させて頂きます。
 万が一期間中にクエストを完了できなかった場合はEランクへの昇格までと致します。勿論今回のようにパーティーを組んでクエストを受けても構いません…。以上がギルド長との話で決定した事項になります。リョウさん如何でしょうか?」
 俺は正直戸惑っている。
俺自身の力がどの程度あるのか、どこまで戦えるのか…なにもまだわかりきっていない。
  そんな俺がこのままDランクというランクまで上がっていいのだろうか?ゴブリンはたしかにまだ弱かった。それでも、危険な場面はあったし、ゴブリンリーダーに関しては肩を切られた。


  少し考えていると
「リョウ〜。受けちゃいなよ?私たちとパーティー組んでやれば特別問題ないしさぁ〜?丁度後衛が欲しかったところだしさぁ〜」
「そうですね…。リーシャが前衛で、私が最後衛、リョウさんが中衛〜後衛…。そうすれば今まで以上に戦いやすくなります。Dランクのモンスターとの戦い方も私たちと一緒に覚えていければそれでいいんじゃないでしょうか?」
 二人は、自分たちのパーティーに入らないか。と勧誘をしてくれていた。
それはとても嬉しいことだ。ただ、俺が足を引っ張ってしまうのではないか?と俺はそう考えてしまう。俺が居ることで二人になにかが起こったら…と考えるとソロでやったほうがいいのだろうか…。


「…お二人がもし宜しければひとまず次のクエストを完了するまで、パーティにいれて頂けますか?」


  考えた結果こうなった。
 一度、ランクDの魔物がどの程度の強さなのか、俺が一人で倒せるのかどうかを判別した後でソロでやるか、パーティを組むかをしっかり考えていこう。
 俺が言った言葉を聞き受けた二人は、明るい笑顔を浮かべ
「次とは言わずにずっとでもいいんだけどねぇ〜?とりあえず宜しく!」
「ほんとですよ?リョウさんの力はさっきのクエストで十分見せて頂きましたので…、でもリョウさんにも考えがあると思いますので、ひとまずよろしくお願いしますね」
  二人と軽い握手をかわし、俺はアリア率いるパーティーに加入することとなった。
  
「…こほん、では承諾していただくという事で宜しいでしょうか?」
「ああっ、すいません、すいませんっ。はい!それで宜しくお願い致します!」
  会話の中に入れなかったルイがひとつ咳をし、話を進めてくる。
会話に入れずに暇になる時ってよくあるよな。俺は学校でよくあった。
「では、こちらの書面にサインをお願いします…それとなにか売却するようなものがあればそちらも一緒にお預かり致します。 一応商人等にも売却は可能ですが…如何しますか?」
「すべてお任せします…、この荷車ごとすべて買い取って頂きたいのですが可能ですか?」 


  こちらの世界での相場価格や、通貨の事情は全く知らないので全て丸投げする事にした。
「大丈夫ですよ。ただ、荷車等は通常の商人に売却する金額より低くなりますが…それでも宜しいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。お願い致します。」
  売った金額は3人で分け合うようになるのだから、本来であれば少しでも高く売れる商人などに売り払うのがいいのだろうが…今回はお任せしよう。
  書面にサインをしてそれと一緒に2台の荷車とほかの品々を全て渡す。
書面は、先程ルイが説明してくれた内容が全て書いてあり、以上のことに同意をするという意味でのサインだった。
「…はい、確かに受け取りました。今から魔物の素材及び武器や防具、荷車と言ったものの査定を行いますのでこのままお待ち下さい。………あっ、申し訳ございません。ギルドカードを一度お借りしても宜しいでしょうか?」
  言われた通りに、ギルドカードを胸ポケットから出し、ルイに渡す。
「先にこちらの手続きを済ませてしまいますね」
  そう言い、ルイは近くにあった器具にギルドカードを乗せ何かを入力した後、受付後ろの棚から一枚のカードを取り出し、俺のギルドカードの上に重ねた。
すると、ルイが持ってきたカードが淡く光を放ち、その光が落ち着くとカードには俺のギルドカードの情報が乗っていた。


「…はい、こちらで完了になります。無くさぬようにお願いします」
 ルイから手渡された新たなギルドカードは、銅で出来た、ブロンズカードだった。
現在のランク、自分の名前、そして年齢、職…最後に累計のギルドポイントが記載され、カードの右端にはエレイユ王国の紋章だろうか?なにかの紋章とアリシアの街名が記されている。
「それと…こちらがクエスト報酬です。ゴブリンリーダー討伐が含まれてましたので少々金額が増額してます。そこから銅貨30枚を引かせていただいてますので…合計で銀貨4枚と銅貨70枚です。宜しければ酒場で食事でもされてお待ち下さい。では失礼致します」
  姿勢、角度、全てが完璧な一礼をしてからルイはもう一人の受付嬢と共に、受付横に設置されている部屋へと移動して行った。
  
  ルイの姿が完全に見えなくなってから、俺は二人に向き直り
「お二人とも本当にありがとうございます!」
「なぁんもしてないってばぁ〜」
「リョウさんが頑張った結果ですから…」
「いえいえ…お二人がいたからああやって無茶ができたんです。本当にありがとうございました。
 お礼と…パーティーを一時的に組むという事の祝福を兼ねて…お食事でも如何ですか?」
  内心、断れたりしたらどうしよう等ビクついていたが
「いいねぇ〜!さっさと席取ってくるよぉ〜」
「いいですねっ。是非しましょう!」
 どうやらそれは杞憂で終わったようだ。
  風が吹き抜けるか如く、人の間を縫って端っこの方の席をとったリーシャが手を振って、こっちだよー!と大声で叫んでいた。
全く…と言った風にアリアがため息をつき、やれやれと俺は両手を上げながら、リーシャが待つ席に向かう。
  「すいませぇ〜ん!エール2つと果実酒1つお願いします〜!」
 程なくして、エールが2つ俺とリーシャの前に置かれ、果実酒がアリアの前に置かれる。
それぞれが木で出来たグラスを手に持ち、そして───
「リョウ!乾杯してよ!」
「ええっ!?俺かよ!?」
  唐突な無茶振りをされたが、期待するかのようにアリアがこちらを見ているので、なし崩しに乾杯の音頭を取る。 こんなのやったことねぇけど…
「えぇーっと…こんなのやったことないからわかんないけど…、アリアさん、リーシャ。命を救ってもらって、クエストを手伝ってくれて本当にありがとうございました。何度言っても足りないぐらいです。…えっと…、今回のクエスト完了と、一時的なパーティ結成を祝って!乾杯!!」
  自分でもびっくりするぐらいのグダグダさだったが、二人は乾杯!とグラスをかかげ、3つのグラスがぶつかり合う音が響く。
  ───こうして、俺は二人とクエスト完了、パーティー結成の喜びを分かち合うのだった。

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