異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

アリシアの門〜強面男と対面〜

「結局…武器を借りることになってしまって申し訳無いです…」
 俺たちは今アリアの家まで戻ってきた。
 ゴブリン討伐のクエストを受注…無理やり受注させられた俺は、直ぐにでもゴブリンを討伐するために武器を得ようとしていた。
ただ、武器を購入するためにも金は必要だ。
どれだけ安い武器でも銅貨30枚は必要だそうで。まぁ俺に買える金も何もないと途方にくれていると
「あの…もし宜しければですが…、私は弓を使ったこともありますのでそれでよければ自宅にありますが…」


 最初は、私たちが何かしら購入してあげると、先に立て替えてあとで返してくれればと
そんな提案をされたのだがそれでは俺のメンツが立たない、と俺は意地になってそれを拒んだ。
 その結果、アリアがそのように言ってきてくれたのでその方向で進むことにした。
「いえいえ…、この弓も使わずに取っておかれるより使われた方が幸せに決まってますから」
「そう言っていただけると助かりますが…本当にすいませんアリアさん」
 ニコリと笑うアリアに頭を下げて、お礼を言う。
ルイに比べて幾分か幼いような雰囲気を醸し出してるアリア、その笑顔は純粋な綺麗な笑顔だ。


「まぁ〜、アリアは弓がヘッタクソだったしねぇ…私も何回か誤射されそうになったしねぇ?」
「リーシャ!余計なこと言わないでよっ!」
 にししと歯を見せながら笑うリーシャに、顔を真っ赤にして怒鳴るアリア。
アリアはどうやら弓の扱いに長けてはいなかったようだ。
「でも、アリアさんは魔術師なんですもんね?十二分過ぎるぐらいに凄いと思いますし…かっこいいですよね」
「いえ…そんな、私なんてまだまだ駆け出しの魔法使いなだけですから…」
 照れたような笑みを浮かべながらアリアはそう言う。
怒ったり照れたり気を使ったり、大変だな
「弓の装着はこれでいいんですかね?矢筒は背中に背負うようにすればいいんですよね…」
「そうそう〜、なかなか似合ってるじゃん〜」
「よくお似合いですよ、リョウさん」
 二人からそんな言葉を頂き、照れから頭をかく
 左肩に弓を背負い、右肩から左の脇腹の辺りにかけて矢筒を背負う。これが弓の装備方法だそうだ。
直ぐに右手で弓矢を取り出し、そのまま弓に装着。弦部分に弓矢の羽を引っ掛けそのままひきしぼり放つ。
基礎はアーチェリーと一緒みたいだ。多分大丈夫だろう。


「それにしてもさぁ〜?その“えあがん“って言うのも持っていくの〜?しかも、でっかいやつじゃなくて、ちっこい方?」
「ああ…うん。なんとなくコイツらはあった方がいい気がしてさ」
 俺の腰のホルスターにはナインがささっており、マテバは腰のポケット部分にしまってある。
どちらもサバゲーで入れいたポジションなので、直ぐにひきぬけるようになっている。
玩具でしかないコイツらを持っていくのは邪魔になるかとは思ったんだが…、ただコイツらが居ないとなんとなく、戦えそうな気がしなかった。
 慣れしたんだ道具は大事ってことだ。
「身につけ慣れている物というのは、あるだけで落ち着きますからね」
 どうやらアリアは俺と同じ意見の持ち主のようだ
その答えに興味がなさそうに、ふーんと一言発したリーシャ。
「準備ができたらさっさと行っちゃお〜!時間もあんまりないしねぇ〜」
「そうだね。リョウさん準備は大丈夫でしょうか?」
「はい!お二人には本当に頭が上がらないですが…もしも何かがあった時の援護よろしくお願いします」
 二人には、俺が万が一ゴブリンにやられそうになった時のために着いてきていただくことになった。初めてのクエスト受注でしかも討伐。戦い方というものになれて居ない俺は、何があってもおかしくない。
 というわけで、二人は護衛担当としてついてきてくれることになった。
 本当に申し訳ないとなんども頭を下げたが、二人はここまできたらどこまでも付き合うよ、となんとも頼りになる事を言ってくれた。
 先程貰ったばっかりのギルドカードを無くさぬよう胸ポケットにしまいこむ。
「それじゃ…お二人とも宜しくお願いします!異世界人リョウ!初めてのクエストスタートです!」


 アリアの家を出て、アリシアの門に向かう。
 街全体は大きな壁で囲われていて、何処からか奇襲をかけられたとしても耐え切れる設計になっているらしい。その壁の一部が大きな門になっている場所…それがアリシアの門だ。
ここ一つにしか出入りができる場所がないため、かなりの人で溢れている。
 門にはゲートが設置されており、そこに衛兵や門番兵が居て出て行く人や戻ってくる人を確認してこのアリシアに不審なものが入ってこないかどうかを見ていて、付近に詰所も用意されている。
門の上には大きな鐘のようなものもあり、魔物の襲撃時などに鳴らし街内に危険を知らせるようだ。
 かなり万全の対策を練っているようにも見える、更に街全体には魔物除けの魔法具が設置されているらしく弱い魔物等は街まで入ってこないようになっているらしいが、強い魔物に限ってはそうではない場合もある、そう言った際にルイから聞いた緊急クエストが貼られたりするみたいだ。


 そんな門に俺たちも到着した。
外に出るためにゲートに向かうと鎧を身につけた男が近づいてくる。
 その男は見るからに厳つい顔をしている、眉間にしわを寄せ怒っているのか?と思ってしまうほどの雰囲気を醸し出しながら俺に近づいてくる。
 ガラの悪いヤンキーに絡まれる前みたいな焦りが…
男は俺の目の前まで立つと、その厳つい顔をいきなり笑顔にさせ
「よぉ!オメェはさっきリーシャに背負われてた坊主か!無事に目ぇ覚ましたんだな!良かった良かった!」
 そう言い、背中をバンバンと叩いてきた。
ガタイがいいせいか、かなり痛い…
 だが、このおっさんかなり気さくな性格なようだ。人は外見に寄らないというけど、まさにこのことだな。
「ちょっとぉ〜、ガルダン。そんなに強く叩いたらリョウの骨が折れるでしょ〜」
「ガルダンさん、先ほどはありがとうございました」
「なぁに!いいってことよォ!坊主も俺に感謝しとけよォ!」
「リョウさん、こちらは衛兵のガルダンさんです。先ほどリョウさんを森から運んできた際に通行料の免除を申し立ててくれた方なんですよ」
 通行料とな。…街に入るために一度料金を支払わないと行けないって事なのか。
んで、その料金をこのおっさん…ことガルダンが免除してくれたと…めっちゃいい人だな


「それは…ガルダンさん、ですね。僕はリョウと申します。その件については誠にありがとうございます」
「かってぇなぁ!かってぇよ坊主!いいんだよ、人間誰しも協力しあって生きてんだからよォ!
 ある程度の稼ぎが出来たら一杯奢ってもらうとするかァ!」
 ガハハと大きな声で笑うガルダンは、その強面に沿わずにかなりの良心を持ってる男のようだ。
「ここに来たってぇこたァ、坊主クエストか?」
「あ、はい。ゴブリン討伐のクエストを受注しましたので…」
「おーおー、ゴブリンか!あいつらはほんと繁殖力がたけぇからいくらぶっ倒しても、湧いて出てくるからなぁ!そういう事なら行ってきなァ!」
 ゴブリンはゴキブリみたいなもんなのか。1匹見たら30匹は居るみたいな。


 先程、軽くゴブリンの生態については聞いた。
 相手がどんな種族だろうと、構わずに交尾をするらしい。多くの子を成し群で生活をする。
その相手は人間も該当するらしく、女性からすると身の毛もよだつような話だ。
 そのほかにも、オーガ、オーク等と言った人型の魔物も人間を攫い子を孕ませると言った卑劣の行為をする。その為、ゴブリンやオーガ、オークは確認次第討伐をするようにギルド規定で決められている。オークの肉は市場でも出回って居るらしく、かなり美味な肉らしいので食料としても利用されるが、オーガやゴブリンに関しては生き繋ぐだけの食料として有名らしく、言ってしまえばゲロマズだそうだ。
 そんなゴブリン討伐を今回俺は受注したわけで…、女性二人を連れいてくのだから、なおさら気をつけて行かねば。
「何か手続きなどは必要になりますか?」
「街に入る時に一回やりゃ後は大丈夫だ!ただ、本人確認だけはしっかりさせて貰うぜ?」
 なるほどね…それで今この街に誰が居て誰が居ないのかがわかるのか。なかなかしっかりしてるんだな。
「成る程…ではこちらのギルドカードを」
「はいよォ!…坊主、職が不明ってのはなんだ?」
「ああ…いえ、恥ずかしい話なのですが僕はまだどの武器が自分にあって居るのか確認しきれて居ないのです。ですので…不明、と」
「そりゃ坊主なかなかおもしれぇことしてんじゃねぇーの!10年以上この仕事やってっけどよ、ここに不明なんて書くやつは坊主お前だけだ!」
 胸ポケットからギルドカードを取り出し、ガルダンに渡すと
そのように言われ、ガルダンはまた大きな笑い声をあげる。道行く人がなんだ、ガルダンかみたいな感じの雰囲気でちらっと見てはすぐに元に戻る姿から、これが普通のガルダンの対応なんだろう。
「リョウ…っとな、はいよ完了だ!後一つだけ言わせてもらうがな!」


 ギルドカードを返され、もう一度胸ポケットにしまって居るとガルダンが深妙な面持ちでこちらを見てくる。
「生きて帰ってこいよ!いいなァ?」
 そこまでいうと、ガルダンは大胆な笑みを浮かべまた大きく笑った。
「はい!ありがとうございますガルダンさん!」
 見知らぬ誰かにここまで心配して貰えてるのは、かなり嬉しいものがあった。
後ろに控えて居た二人も微笑を浮かべている。
「それじゃ、行きましょう!アリアさん!リーシャ!」
「はぁ〜いよっ!」
「はい。行きましょうリョウさん」
 リーシャは小走りに俺のところまで来て、俺の背中をバシンと一つ叩き
アリアはゆっくりと俺の隣に来てくれる。
「帰ってきたら、話聞かせろよォ!リョウ!」
 後ろから聞こえる声に、一度振り返り一礼をして俺たちはゲートをくぐる。
 行き先は、アリシア平原にある一つの洞窟。ゴブリンの住処とされた、今回のクエスト場所だ。
全く知らない土地での、初めての冒険。
 俺は自然と高鳴る鼓動を抑えきれず、口元をニヤリとさせる。
──さぁ…ゴブリン討伐に行きますか。

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