異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

ご都合主義な異世界〜家主と対面〜

 その後、光る球体…改め小精霊といくつか話をしてわかったことがあった
俺が今いるこの場所…いや、国といった方がいいだろうか。
 大陸の名前までは、小精霊は知らないとの事だったが、この国の名前はエレイユ王国。
この街は、エレイユ王国の中でも有名なダンジョンのある街だそうだ。
言語は、エレイユ語。
街の中でもかなり大きく、ほぼ都市といっても過言ではないらしい。
ダンジョンもあると言う事で、おきまりの“冒険者”達がかなりこの街にくる。
 そんなこの街の名前はアラシス街と言う…らしい。


 らしいらしいばっかりだが、小精霊がどこまで本当の事を言っているのか分からないので
仕方ない。
 聞くところだと、この世界は異世界にありがちな中世ヨーロッパ風な場所みたいだ。
テレビやなんかが一切見当たらないのはそこにあたるのだろう。
比較的娯楽が少ない世界なのかもしれないな。まぁ…異世界ってだけで俺にとっては娯楽みたいなものだけど。


 そうそう、魔法なんかもあるみたいだ。
魔法にも属性があるようで、人気どころの火、水、氷、土、風、闇、光は勿論のこと
エルフがよく使う、精霊術ってのもあるみたいだ。
 ただ、この世界では人間も精霊術が使えるらしい。本職のエルフに比べると威力等は落ちるみたいだけど…。


と、まぁ小精霊からこの国のことやこの世界のことを少しだけ聞くことができた。
自己紹介を済ませたので、先程から「りょー、りょーだ!」とか「こんにちは!こんにちは!」ときゃっきゃしてる。
 小精霊の姿をぼーっと眺めていると
「かえった?かえってきた!」
「もどった!もどった!」


 帰ってきた?と不思議に思いながら、家のドアに視線をやる。
ドアがゆっくりと開き、そこから女性が二人…現れた
 俺は思わず息を飲んでしまった。
そのぐらい綺麗な女性がそこには居た。
細く華奢な体躯長く伸びた薄い緑髪、清楚な顔立ちに、淡いピンク色の唇。全身から溢れ出る優しさ…。
 もう一人は
活発そうな雰囲気の女性。肩までで揃えた赤髪、ほっそりとした体型に、少し気が強そうなキツめの顔立ち。ハーフパンツを履いているせいか健康そうなおみ足が…こちらもなかなか…
 女性を目の当たりにし、硬直している中


「おっ!起きてんじゃ〜ん!」
「お目覚めになられたのですね!良かったです…。お怪我はありませんか?」
 美少女二人が俺に対し声をかけてきてくれた。
おお…、現実世界じゃ美少女に声をかけられるなんてイベントはなかったが…
き、緊張する…
「は、はい!特に怪我もなく…。貴女達が僕をここまで運んできてくださったんですよね?」
 声がうわずらないように、出来るだけゆっくりはっきりと声を出す
「私がここまで背負ってきてあげたんだよ〜。感謝してよねぇ?」
 活発そうな女の子が俺のそばまでやってきて、肘をグリグリと押し付けてくる
この子はかなりフレンドリーみたいだな
「こらリーシャ!全く…、すみませんね?」
 落ち着いた雰囲気を出す此方の女性は、リーシャと呼ばれたこの女性の行動に対し非礼を詫びてくる
「いえいえ…お気になさらず。こちらは貴女がたに命を救っていただいたのですから。」
 出来うる限り、丁寧な言葉をと気をつけながら言葉をくちにする。
「私達は突如として現れた光の正体を確認するためにアラシスの森へと向かいました。その際に、貴方が道の真ん中で倒れているの発見して…ここまで連れてきたんですよ。」
 やはりこの人たちが俺のことを発見し、ここまで連れてきてくれた方々のようだ


 まさか、女性に担がれて運ばれるとは思っても見なかったけども…男として情けない限りだな。
「そうだったんですね…、あ…っと申し遅れました。僕はいがら…いえ、“リョウ”と言います。」
 五十嵐と口にしようとしたが、途中で言い直す。
俺の記憶が正しければ、異世界だと姓があるのは貴族だけ…だった気がする。
とりあえず、ここにいる間はリョウという名前で統一しよう。
「リョウさん…ですね。素敵なお名前ですね。私はアリアと申します。この家の家主です」
「はいはぁい!リョウね!宜しく〜。私はリーシャだよん!」
「アリアさんに、リーシャさん…ですね。宜しくお願いします。 ここはアリアさんのご自宅だったんですね。ベッドまでお借りしてしまいすみませんでした…」
「そうだよぉ〜?今まで誰一人として入る事がなかったベッドにリョウは入ってたんだからねぇ〜?」
「リーシャ!!」
 にやにやとした表情を浮かべながら、リーシャはそんなことを言ってくる
隣では、顔を真っ赤にしたアリアがリーシャを怒鳴っている。
 成る程なぁ…この二人はこういう関係なんだな。
俺と隆二、慎みたいな…そんな感じの関係か
 それにしても、このアリアっていう女性は可愛らしいのなんのって…
ちょっと俺も一緒にからかってみるとしますか。


「そうだったんですね!僕みたいな男性が初めてを頂けるなんて…嬉しい限りですね?」
「リョウさんまでっ!」
 俺にまでからかわれると思っていなかっただろう、アリアさんは
驚愕の意を込めた声を上げて、俺の方を振り返る
「リョウはなかなかノリがいいねぇ〜?嫌いじゃないよぉ?」
「全くもう…酷いですよぅ…」
 一連の流れに、俺とリーシャがくすくすと笑いあう
様子を見ていた小精霊がここぞとばかりに、光を強め
「かえる!かえるね!」
「またね!またね!」
 と俺に伝えてきた。
光が急に強くなったため、アリアとリーシャはそちらの方に目をやっていた
「うん。君達もありがとうね。今度またアリシアの森に行くからその時またお話しようか」
「やくそく!やくそくね!」
「待ってるよ!待ってるよ!」
 最後に大きく光を放った後、小精霊はその場所から姿を消した。
小精霊の残した残光を見届け、二人に向かい直す。
 二人は驚きを隠せない…といった風の表情を浮かべていた。
「ね、ねぇ…?リョウってエルフか何かなの…?」
 などと、突拍子も無いことをリーシャは俺に尋ねる。


「ん?どうして?一応人間のはずだけど…?」
「で、では…あの、小精霊とお話をしていたように感じましたが…それは一体…?」
 おずおずと、アリアが質問をしてくる。
何だろうか?俺は何か変なことをしてしまったのだろうか?
 …というか、そうだ。
俺は今日本語を話していないのか?アリアやリーシャと普通に会話ができている。
とすると、何故?
俺の言葉がアリアやリーシャからすると、エレイユ語を使用しているように聞こえるからだろう
考えられるとすれば、それしか無い。
 異世界にきた人間は自然とその世界の言葉を話せるようになっているらしいが…、まさか俺もそうなのだろうか。
だとすれば、アリアやリーシャが驚いていることにも頷ける。
きっと、小精霊とは話ができないのだろう。
それこそ、エルフと言った種族で無い限り。
 …となると、俺はかなり妙な事をしていたという事に
「…小精霊と会話が出来るのはエルフのみ、なんでしょうか?」
「そ、そうね。エルフは普通に会話ができて、上位の精霊術師がギリギリ言葉を聞き取れるぐらいだって、聞いたことがあるけど…」
 未だ動揺を隠しきれてないリーシャは、言葉につまりながらも返事をくれる
「どうやら僕は、上位の精霊術師でもなければエルフでも無いのに、小精霊と会話ができる…ようです」
 俺の発言の後、家の中に静寂が訪れる。
1秒、2秒…何秒経っただろうか、誰も何も話さない時間が続く。
 そんな中、目の前の二人がワナワナと震えはじめ…


「なんですかそれは!!」
「なんだそれー!!」
「「聞いたことない(です)!!」」


 どうやらこの世界はご都合主義なようだ。

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