異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

異世界の世界へ〜プロローグ〜

 
「クリア…」
 薄暗い廃墟の中をくまなく見渡し、俺は小さく言葉を口にする
壁に背を当て、慎重に窓から顔を出す。
目標の白いコンテナがもう目と鼻の先にある、だがヤツが先ほどまであそこにいたはずだ。


目を凝らすと、やはりヤツはいた。
こちらに背を向ける形で


 顔を下げ、一度深く深呼吸をし体勢を整える
絶対に外してはいけない。勝負は一度きり。
 もう一度窓から顔を出し、ヤツに狙いを定め…
俺は引き金を引いた。


「いってぇ!!!ヒットぉ!!!!」


最後の1人を仕留め、俺は白コンテナまで走りきる
そして、奥にあったベルを取り思いっきり振り回す   
ベルの音が周囲一帯に鳴り響くのと同時に
「ゲーム終了でーす!!赤チームの勝利ぃ!!」
 拡声器を使ったスタッフの声がフィールド全体に伝わり、試合終了…


 いやぁ、本日ラストの試合で活躍できてよかった良かった


 張り詰めた空気が無くなり、ほっと一息をつく。
コンテナからフィールド外へと向かって草の中を歩いていく
 フィールド外では、同じ赤チームのメンバー2人が俺のことを待っていたので
セーフティをかけ腰のホルダーに戻し、声をかける
「お疲れ様! 2人の支援のおかげでフラッグ取れたぞ!」
「おーう!亮!グッジョブ!グッジョブ! お前は相変わらずつえぇな!」
「おつかれ亮君!さすがだねぇ…、僕なんて始まって数分でヒットしちゃったよ…」
「おつかれおつかれ〜、いやいや、俺なんてまだまだ弱っちぃよ 本当に強い人なんて一人で殲滅すんだぞ?」


 大柄な男と小柄な男、どちらも俺の友人だ
 180cmまである身長に、THE 体育会系って感じのガチムチ短髪ツンツン男が
大野隆二
   
 本人は160cmだと言っているが実際は157cmの身長、ひょろい身体つきで不健康そうな顔色の男
こいつは小野慎
2人とも顔は中の上って感じかな?いや、俺も人の顔のことを言えるほどいい顔をしてるわけじゃないけれども。


「そんな事できんのは一部のバケモンだけだろうが…、お前はそんなイロモノばっか使ってるくせに戦績いいからなぁ…」
「そうだよねぇ…、僕、亮君以外でその銃使っている人見たことないもんなぁ」
「イロモノって言うなよ。まぁサバゲーだからな。実銃とはまた別だろ?他人が使ってないようなものってワクワクするじゃんか。」
 そう言って、ホルダーにしまってる銃を指の関節で叩く
「言わんとしてる事はわかるけどな…、まぁいいわ。今更だしな。」
 やれやれと言った雰囲気で隆二は手をあげる
む…なんだ俺が変人みたいな扱いは、異議があるぞ。
「ふふ…、そうだね。亮君は亮君だからね。 そろそろ帰ろっか。みんなも帰っていってるみたいだし。」
「あぁ、わり。先帰ってていいぞ。シューティングレンジで玉使い切ってから帰るからさ。」
 今回の試合でかなりの数の玉を持って来ていたが、実際に使ったのは6割程度。
次回の試合にまで持ち越すのもありだが、久し振りに出した銃もあることだし
調整を兼ねてここでうちきっていくことにする。


「おー、了解。んじゃ先帰るぞ。じゃあな!」
「亮君気をつけて帰ってね!また明日ね」
   手を振るふたりに軽く手を挙げシューティングレンジ(サバゲーフィールドにある射撃練習場)へと向かう。


 シューティングレンジに用意されている机に今日持って来た銃を置いていく。
今日持って来た数は10丁。実際に今日使ったのは7丁。 アサルトライフルが6丁にハンドガンが4丁
試合で使っていたものは別として、この後調整したいのは3丁のみだ
 まずは一つめ、こちらはアサルトライフル
独特なデザインに、専用のスコープが搭載されている
アメリカ軍が正式採用しようとしたが、結局されなかったこの武器
XM8と呼ばれるアサルトライフルだ
 スコープを除き、まずは10mの的を狙う
引き金を引くと、1秒後に金属音が鳴り響く。
調整は特別いらなさそうだ。


 買った当初は本当に捨ててやろうかっていうぐらいに酷かった。海外製なこともあり、内部カスタムをしてやっと実戦投入できるレベルまで持ってこれた。
自慢ではないが、特別手先が器用なわけではないので、かなりの時間をこの銃に使っていた。
 次々に、20m、30mの的も狙って行く
多少のPOP調整はしたものの、そのほかは何も必要なさそうだった
時間が許す限り、俺は銃を撃ち続けた


「これでおしまい……っと」
 3丁の銃の調整を終了させ、あらかた片付けもおわったころ。
あたりはもう暗くなっていた。


 残り2丁はハンドガンだった
Mateba Modello6 Unica
愛称「マテバ」
というリボルバーだ。
 回転式拳銃の6発装填。試合上は装弾数のせいで使うことは滅多にないが
リボルバーというものは、そのものがロマン。持っているだけでも、たまにこうして撃てれば
それで十分だ。


 もう一つはberetta9
こっちは愛称「ナイン」
 通常のハンドガンよりも大きい、オートピストルだ
有名な映画で主人公が使っていたこともあり、かなり有名になってしまったこの銃だが
珍しい形をしていた為、購入した。
 実戦でもかなり使えるぐらいの高性能な銃なので重宝している。
ハンドガンで連射をするってなんか、ロマンを感じるんだよなぁ。
  
 2丁持ちで突撃とかしたらかっこいいと思う。そう思うのは俺だけじゃないはず。
最後にこの3つを車まで運ぼうとしたが、俺はある事に気づく
「あっ……ちゃぁ……、マガジン廃墟の中において来たな……」
 最後の試合で廃墟の場所にマガジンをおきっぱなしにしてしまっていたのだ
通常試合中に置いて行ったとしても、別のプレイヤーの方々が持って来てくれたり
管理人の方が拾ってくれてたりして、声をかけてくれるのだがそういったことが今日はなかった。
「拾いに行って、そのまま車まで行くか……やっちゃったなぁ…」
 俺は荷物を持ち、そのままトボトボとフィールドの内の廃墟へと向かう


 草を踏みながら廃墟へと目を向けると、一つの違和感が
廃墟が妙な明るさを発している。
俺はおもむろに、ケースから「マテバ」を取り出し構える
腰を低くし、慎重に。
 人は誰もいないはず、管理人の人も俺に「フィールド閉めてから帰れよー」と言付けをし、先に帰宅をしていた。つまりこのフィールド内には誰にもいない。
少しずつ、少しずつ、廃墟へと足を運ぶ
音を立てずに、ゆっくりと。


 廃墟の入り口ですぐさま俺は壁に背を当て、中の様子を確認する。
廃墟の一部から光が漏れている。
 俺の記憶が正しければ、そこは廃墟となった建物の一部屋だったはずだ
スナイパー役の人が身を潜めていたりするスポット、もちろん電気などは通っていないので明るくなるはずは無い。
 不安、恐怖、興味
込み上げてくる感情を、深呼吸をしながら抑えつけマテバを構え進んで行く。
 廃墟の中を、右、左とクリアリング(敵が居ないかを確認すること)をし徐々に部屋へと向かう。
聞こえてくるのは、俺が地面を踏む音だけ
近づくにつれ、光の明度が強くなってくる


 部屋の前に到着し、深呼吸
意を決して、マテバを構えながら突入すると
明らかな異物がそこにはあった。
 ───扉だ。
大きくて、白い扉
扉は少し開いていて、そこから光が漏れていた。
(なんだこのでかい扉…、今日の試合中には無かったぞ…?)


 俺がシューティングレンジでばかすか撃っている間に、管理人の人が作ったものかもしれない。
扉をマテバの銃床で叩くが、一般的な木製の扉とおなじ音がするだけだ
恐る恐る扉を奥に押してみると、ドアは完全に開ききり、中から漏れていた光が全て放出されている。


 眩しさに、目を細めながら、これは何なのかを確かめる為、マガジンポケットに入っていたスマホを取り出し、管理人に電話をする
光だけがある空間で、コール音が三回ほど鳴り、管理人が電話に出た
「おー。亮君かい?どうしたんだ急に、まさか鍵無くしたとかじゃあないだろうね?」
「あ、もしもし。いや!無くしてないですよ!管理人さん、今日廃墟のところになんか扉みたいなのつけました?」


 どうやら、鍵を無くしたものだと思われたみたいだが心外だ。鍵はきちんと持っている。
管理人さんの声を聞けてよかった。少し、気分が落ち着いた
 だが、その落ち着いた気分を一気に落とす発言が、管理人さんの口から発せられた
「扉ぁ?そんなもんつけてないよ? あの廃墟はあれで完成品なんだ。これ以上手をつけるつもりは一切ないよ」
「え…?」
 あまりの驚きに、スマホを手から滑り落としそうだった
管理人さんじゃない…?だとしたらこれは?
「なんだ、どうしたのさ亮君?」
「い、や…あの…、廃墟のスナイパースポットの…部屋に…でかくて、白いとびらが───」
 唐突に、背中に重い衝撃がはしる。それはまるで、思いっきり誰かから押されたような……
身体が重量にしたがって、扉の向こうの光の中に入って行く
「部屋に何があるってー?亮君?」
「た…すけ───」
「おーーい?亮君ー?聞こえてるー?」
 俺の意識はそこで切れた。



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